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弱い場所が狙われる、フィリピンの受難

アジア
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フィピン軍が公開した動画だが、こういったことがちょいちょい発生しているようだ。

南シナ海で中国船との衝突撮影した動画公開、フィリピン軍

2023.10.28 Sat posted at 17:50 JST

フィリピン軍は、主権論争が長引く南シナ海で今月22日、同国沿岸警備隊の艦艇や補給船と、中国海警局や中国の「海上民兵」の船舶との間に起きた2度にわたる衝突の模様を収めた動画をこのほど公開した。

CNNより

フィリピンの大統領、ボンボン・マルコス氏だが、なかなかどうしてやり手のようだ。ドゥテルテ氏が大統領だった時代は、色々と派手なニュースがあったが、マルコス氏の時代になってめっきりその手のニュースは鳴りを潜めたのだ。まあ、有能かどうかというより、日和見主義者のような感じもするんだけど。

シーレーン防衛のために

傾いたフィリピン経済

武漢肺炎感染拡大からこっち、フィリピン経済は意外に好調だった。が、フィリピンの支那依存度はかなり高くて、支那経済の不調に引っ張られる格好になって、最近は若干不安材料を抱えている。

フィリピン経済:22年10-12月期の成長率は前年同期比7.2%増~リベンジ消費により高成長を維持

2023年01月27日

2022年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比7.2%増1(前期:同7.6%増)と低下したものの、市場予想2(同6.6%増)を上回る結果となった。

なお、2022 年通年の成長率は前年比7.6%増(2021年:同5.7%増)と上昇、政府の成長率予測の6.5%~7.5%を上回った。

ニッセイ基礎研究所より

フィリピン経済、4~6月は4.3%成長に鈍化-予想下回る

2023年8月10日 11:13 JST

フィリピン経済の4-6月(第2四半期)成長率は予想を大幅に下回った。インフレ率が目標を上回り、借り入れコストは2007年以来の高水準となっている。

統計当局が10日発表した4-6月の国内総生産(GDP)は前年同期比4.3%増加。ブルームバーグがまとめた24人の予想中央値(6%増)を下回った。1-3月(第1四半期)の6.4%増からも成長が鈍化した。

Bloombergより

簡単に言えばインフレに向かっているということだね。

それでも、就任1年目のマルコス氏は、そこそこの舵取りではあったようで、国民からの支持は高いようだ。

支那にとって都合の良い位置にあるフィリピン

ただまあ、地政学的に支那に狙われ易い環境が揃っているのが残念だね。

現場は、フィリピンが実効支配を主張するアユンギン礁(中国名・仁愛礁)近くの海域。 比補給船は、現場近くで領有権を誇示するため故意に沈め、部隊が常駐する拠点となっている船舶へ物資を運ぶ途中だった。

CNNより

逆さ地図のほうが分かり易いね。

支那にとって太平洋に出ていく為には、日本も邪魔だが台湾、フィリピンも邪魔なのである。

が、逆に言えば支那がフィリピンを手に入れる事ができれば、太平洋に出ていく上で都合が良い。というわけで、支那はここのところ積極的にフィリピンにちょっかいを掛けているわけだ。

バイデン氏、南シナ海で攻撃あれば「フィリピンを防衛」 中国船との衝突めぐり警告

2023年10月27日

アメリカのジョー・バイデン大統領は25日、中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海で両国の船が2度衝突したことを念頭に、南シナ海でフィリピン側に何らかの攻撃があった場合、アメリカはフィリピンを防衛すると中国に警告した。

BBCより

フィリピンを狙われるのはアメリカにとっても都合が悪い。だからバイデン氏は名指しで批判したが、しかしイスラエルやウクライナ支援で忙しいのは事実。

岸田氏、フィリピンへ

で、岸田氏がメッセンジャーとして派遣されたわけだ。この辺りは、別の記事にも書いたね。

日本とフィリピン 首脳会談 沿岸監視レーダー供与で合意

2023年11月3日 23時38分

フィリピンを訪れている岸田総理大臣は、日本時間の3日夜、マルコス大統領との首脳会談に臨み、中国を念頭に安全保障協力を強化するため、新たな支援の枠組みを通じて沿岸監視レーダーを供与することで合意しました。

NHKニュースより

岸田氏との握手シーンが写真として報道されているのだが、何とも。

img

まさに、ボンボン同士の握手である。意外に波長は合うのかもしれない。

で、ここで話題になったのがOSAである。

政府安全保障能力強化支援(OSA:Official Security Assistance)

令和5年7月4日

我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中、力による一方的な現状変更を抑止して、特にインド太平洋地域における平和と安定を確保し、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するためには、我が国自身の防衛力の抜本的強化に加え、同志国の抑止力を向上させることが不可欠です。

こうした目的を達成するため、開発途上国の経済社会開発を目的とする政府開発援助(ODA)とは別に、同志国の安全保障上のニーズに応え、資機材の供与やインフラの整備等を行う、軍等が裨益者となる新たな無償による資金協力の枠組み(「政府安全保障能力強化支援(OSA)」)を導入することとしました。本枠組みは令和4年12月16日に閣議決定された国家安全保障戦略においても記述されています。

外務省のサイトより

簡単に言うと、安全保障に関わる物資の提供をするという話なんだが、日本の安全保障的にはODAよりも悪くない。

そのOSAの第一号になったのがこちら。

フィリピンに管制レーダー納入 完成品の装備を初めて海外輸出 中国けん制も

2023/11/02 18:47

防衛省は先月、フィリピン空軍に三菱電機の警戒管制レーダーを1機納入したと発表しました。国産の防衛装備品の完成品を海外に輸出したのは初めてです。

テレ朝Newsより

岸田氏がアメリカのメッセンジャー的立ち回りをしているとしても、現実問題として日本のシーレーン防衛のために何らかの手を打たねばならないのは現実で、死活問題に関わるのだ。

原油問題でイスラエルの方にも首を突っ込んでいるが、その輸送路が確保できなければ意味はない。

支那は猛烈に反対

で、この岸田氏の行為に意味があることは、支那がきっちり証明してくれている。うんうん、分かりやすいね。

Japan’s implementation of OSA framework with Manila is anti-peace, a cause for

Published: Nov 01, 2023 09:46 PM

According to NHK, Japan has decided to provide the Philippines with maritime surveillance radar and other equipment, marking the first application of the Official Security Assistance framework (OSA) by Japan. This move – driven by Japan’s desire to create chaos and provoke conflicts – will further escalate tensions in the South China Sea, which is detrimental to peace and security in East Asia.

~~対訳~~

日本がマニラとのOSA枠組みを実施することは反平和的である。

NHKによると、日本はフィリピンに海上監視レーダーなどを供与することを決定した。この動きは、混乱を引き起こし、紛争を誘発したいという日本の願望によって引き起こされ、南シナ海の緊張をさらにエスカレートさせ、東アジアの平和と安全にとって有害である。

Global Timesより

まあ、そういうわけなので、支那が吠えようとも、日本は国益のために色々動くしかない。

なお、岸田氏はフィリピンでホセ・リサールの記念碑に献花をしている。これもなかなか粋な計らいである。

img

ホセ・リサールは1861年生まれ1896年に没したフィリピン独立運動の英雄で、フィリピンでは「国民的英雄」と呼ばれる人物だ。なかなか多才な人物で、医者でもあり作家でもあり画家でもあり学者でもあったらしく、海外留学を経てフィリピンに帰国した後に、独立運動に従事。しかし、その運動を危険視したスペイン官憲が彼を逮捕。35歳にして銃殺されてしまった。

だが、リーサルの意思を継いだ人々が、フィリピンの独立運動を展開していくことになる。ホセ・リサールと日本との関係は、彼が留学の途中で日本に立ち寄ったことで交友を深めた人物が何人もいたことがきっかけとなっている。

つまり、ホセ・リサールは日本とフィリピンの間の関係を深める上では、象徴的な人物となりえるのだ。

支那にとってはそういうことも、面白くないのだろうね。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    こんばんは。ドゥテルテ氏が強烈だったので、マルコス氏に変わったの失念してました。だって印象うすいもの。
    この人で大丈夫なんかね?
    しかし…台湾の蒋介石の曾孫といい、なんか世襲みたいのばっかだなぁ。クーデターでアキノ夫人への政権交代を起こしたラモス参謀長とか生きてるんですかね?
    ちなみにクーデター時、いたんですよ現地に。んで現場は何が何だか解らないので、米国人ビジネスマンらとホテルで衛星放送みてましたね(笑)
    現地は混乱してて、衛星放送TVの報道の方が全体像が解るんです。海外で騒動にあったら、慌てて外へ出る前にテレビつけた方が良いです(笑)

    • アバター 河太郎 より:

      うわ、ボンボン・マルコスって本名なのですか! 世襲たからボンボンなのかと思ってた。
      すみません。ドゥテルテみたく面白くないんで興味無かったものですから……

      • 木霊 木霊 より:

        いや流石に。
        彼の本名はフェルディナンド・ロムアルデス・マルコス・ジュニアで、通称がボンボン・マルコスです。
        フェルディナンド・マルコスとイメルダ・マルコスの息子。ただ、フィリピンではボンボン・マルコスといえば彼のことで、選挙でも本人がボンボン・マルコスだと紹介していたようですから、日本語で言う「ボンボン」とは若干意味合いが違うのかもしれません。

    • 木霊 木霊 より:

      ドゥテルテ氏は強烈でしたねぇ。
      彼は良くも悪くもインパクトの強い個性でしたが、敵も多かった。
      ところが、ボンボン・マルコス氏はフィリピン国内でもどうやらウケが良いようで。
      「ダメ息子」だと思ったら、案外悪くない程度の事らしいんですが、それでもトラブルらしいトラブルを起こしていないし、ドゥテルテ氏が支那に近づいて利用する立場であったのに対し、ボンボン・マルコス氏は親米派路線で行っています。
      なお、このボンボン・マルコス氏、ドゥテルテ氏の推薦で大統領になり、副大統領は娘のサラ・ドゥテルテ氏なので、完全にドゥテルテ政権の傀儡になるんじゃないかと言われていましたが、どうも別路線でそれがOKってことになっている模様。なかなか興味深い人物ですよ。

  2. アバター 河太郎 より:

    ああ…納得。フレイザーの金枝篇に
    「偽の王」て話があるでないすか。
    信長→秀吉&家康で考えると解りやすいのですが。
    国が内憂で危機な時に、過激な改革派が出るんですよ。でも過激な改革には痛みと犠牲が必要なので軋轢と禍根は増える。これが偽の王。
    なので改革が一定の成果を得た処で、もう少し穏健なのが後を継ぐ。
    これが真の王。
    ドゥテルテさん過激でしたが、あの国の麻薬カルテルの横行はメキシコなみで。
    彼みたいな人が必要だったと想うです。
    また中国は利用しつつも、牽制をいれる必要があって、剛腕が必要だった。
    マルコス氏が支持を得てるのは、過渡期をどうにか渡ったという事なのかも知れませんね。問題は山積みとしても。
    それでも心肺蘇生にドゥテルテさんは成功したという事なのでないかと思います。

    • 木霊 木霊 より:

      「偽の王」の話は恥ずかしながら読んだことがありません。
      が、おっしゃられている意味はわかりますよ。

      ドゥテルテ氏は役目を果たし、穏健派に交代した。
      そういう意味では狙ったにせよ、狙ってなかったにせよ成功と言えるのかもしれませんが、この判断はもう少し後の歴史家に任せればよいでしょう。

  3. アバター 砂漠の男 より:

    フィリピンと支那の海上バトルもさることながら、最近の南支那海では、B-52爆撃機が支那戦闘機に煽られたとか、加対潜ヘリが支那戦闘機からフレアで脅されたとか、支那が攻撃性を見せ始めている。海洋諸国の対支那共同封じ込め策が地味に効いているんだろうね。

    他方で、米大統領は政府閣僚を何人も北京詣でさせて、支那との首脳会談開催に奔走している。日本では高市大臣が岸田首相との支那話をX(エックス)で暴露して、永田町界隈が震撼した。

    • 木霊 木霊 より:

      支那の空軍はどうにも美味いことコントロールされていない感じですよね。
      カナダ軍は随分と舐められている感じですから、侮られないようにするのが大切ですよね。

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