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エクアドルの混乱は内戦状態へ

南米ニュース
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これとパキスタンの関連記事のどちらに触れるか迷ったのだけれど、前の記事の続きでエクアドルの方を扱いたい。

エクアドルが内戦状態に「国家vsギャング」の武力抗争が勃発

2024年1月16日(火)11時55分

エクアドルのノボア大統領は1月10日、国内が「武力衝突状態」だと発言した。

背景にあるのは、今年に入って続く犯罪組織絡みの暴力だ。

Newsweekより

南米エクアドルは経済的には隣国ベネズエラと比べれば安定しているが、治安の悪化は著しいな。

不安定な南米情勢

南米全体が経済や治安の不安を抱える

南米のニュースを積極的に追いかけていないので、アルゼンチンやベネズエラが経済的に微妙でブラジルも好調な経済状況かと思いきや、一転して低調になるなど浮き沈みの激しい状態が続いている。

要は、南米はどこもかなり不安定だと言える。これもアメリカ経済の影響を受けているせいではあるのだが、地理的条件を考えると仕方がないのかもしれない。

ともあれ、エクアドルである。位置はここ。

南米のコロンビアの隣国がエクアドルである。その最大都市で事件が発生したというのが冒頭の記事だ。

最大都市グアヤキルでは1月9日、武装した男たちが国営放送局を襲撃し、生放送番組で声明文を読み上げるよう迫った(その後、全員逮捕)。

一連の事件の発端はグアヤキルで服役中だった犯罪組織のボス、アドルフォ・マシアスの脱獄だ。

翌日の1月8日、ノボアは全土で非常事態を宣言。これを受けて、少なくとも6カ所の刑務所で暴動が起き、看守が人質に取られた。

Newsweekより

もう、メチャクチャだな……。

南米のオアシス

実は、エクアドルは経済的にも治安的にも近年までは比較的マシだった。「南米のオアシス」と呼ばれる程度には、良かったのである。

「南米のオアシス」エクアドル、4年間で殺人4倍に…「町全体がギャングにおびえて暮らしている」[世界深層]

2023/11/09 16:53

バナナの産地で「南米のオアシス」と呼ばれたエクアドルの治安が急速に悪化している。麻薬密売の一大拠点となり、殺人事件の発生件数は4年間で4倍以上に増えた。ギャングによる誘拐事件も後を絶たない。新政権が年内に発足するが、治安回復が最優先課題となっている。

讀賣新聞より

ところが、ここ4年くらいで治安は悪化。麻薬密売の一大拠点となって殺人事件は4年で4倍以上発生する様な事態に。

今年8月9日、大統領選に立候補していたジャーナリスト出身のフェルナンド・ビジャビセンシオ氏(59)が首都キトで演説を終え、車に乗り込もうとしたところを射殺された。

麻薬王でも殺し屋でも来るがいい。私はここにいる」――。支持者らを前にそう語った数時間後のことだった。ビジャビセンシオ氏は選挙戦で組織犯罪の撲滅を訴え、メキシコの麻薬密売組織「シナロア・カルテル」とつながる地元ギャングから殺害予告を受けていた。実行犯として、コロンビア人ら13人が逮捕・起訴された。

讀賣新聞より

大統領選の候補者が暗殺されるような事態である。

マンガの様な安易な展開ではあるが、そこまで治安が悪化しているという意味でもある。その原因は麻薬を取り扱うギャングが激増したからだという。まあ、隣国のコロンビアもペルーもギャングの巣窟になっている国なので、そこから犯罪者が流入してきたというのだから仕方なかろう。

そして、これの理由がまるでフィリピンで見たような光景なのだ。

治安悪化の背景には、反米左派のラファエル・コレア政権下の09年、エクアドルから米軍基地がなくなり、麻薬ルートの監視が行き届かなくなったことがある。16年には、エクアドルのコカイン密輸を支配していた左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」が武装解除し、ギャングが幅を利かせるようになった。

讀賣新聞より

……キューバ危機(1962年10月)の時には、アメリカがカストロ政権を転覆させようとして手を出したのが徒になったんだけど、アメリカが手を引いたらこのザマである。

CIAは本当に碌な事をしないよ。

あれ、これは違うか。CIAが罪深いのは間違いないが。

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刑務所が占拠される事態に

さて、この事態はルフィ事件とちょっと似ている。何が似ているかというと、刑務所が犯罪者の拠点になっている点だ。

刑務官ら200人以上解放、刑務所も奪還 治安悪化のエクアドル

2024-01-16 16:50

犯罪組織リーダーの脱獄を発端に治安が悪化しているエクアドルの当局は14日、7州の刑務所で人質となっていた刑務官ら計201人が解放されたと発表した。南部コトパクシ州を残し、刑務所自体も奪還した。

~~略~~

エクアドルではしばしばギャングが刑務所を事務所代わりとし、麻薬の密売犯罪収益の管理や暗殺の指令を刑務所から行っている。また刑務所内でライバル組織との抗争を繰り広げ、2021年2月以来、計460人以上が死亡している。

時事通信より

エクアドルの刑務所も、犯罪者の事務所になっていて、刑務所から犯罪計画やその指示が出されるような事態になっている。全く以て嘆かわしい。

現エクアドル大統領のダニエル・ノボア氏は、非常事態宣言と夜間外出禁止令を発令して、ギャングに対して戦争を起こす勢いで掃討作戦をやったようで。この辺りの対処もフィリピンのケースに似ている。

この大統領、去年11月に就任したばかりの35歳。なかなか激しい対応をしたようだが、犯罪者に甘い顔をしてもつけあがるだけなので、現状のエクアドルではベターな対応だったかも知れない。

検事暗殺

ただ、これで話が終われば良かったのだが、そうではない模様。

エクアドルの検事が暗殺、テレビ局襲撃事件を捜査

2024.01.18 Thu posted at 12:32 JST

南米エクアドルのテレビ局が襲撃された事件で、捜査を率いていたとされる検事が17日、同国西部のグアヤキルで暗殺された。ディアナ・サラサール検事総長が発表した。

サラサール氏がX(旧ツイッター)に投稿した動画によると、グアヤス県のセサル・スアレス検事は、エクアドルでも特に凶悪犯罪が多いグアヤキルの北部で殺害された。スアレス検事は組織犯罪の捜査に力を入れていた。

CNNより

ギャングからの報復措置のようで、犯罪組織の手によって犯罪捜査を率いていた検事が暗殺される事態に。

エクアドルの混乱はまだまだ続きそうである。

なお、何故この記事を取り上げたかというと、冒頭に言及したようにアメリカの事案に関わってくるからである。

こちらの記事は、コメントを頂いて書き始めたのだが、情報収集するにあたってどうにもアメリカの移民増加の話が追い切れない感じがしていた。アフリカ諸国からの移民、そして支那からの移民。しかし、当然ながら中南米の状況だってこれに影響しているはずなのだ。

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裏庭の争い

イスラエルの話やウクライナの話に目が行きがちな日本ではあるが、シーレーンにも不安があるし、肝心な時にアメリカが動いてくれない懸念があるのではないか?という気がしている。

逆に言えば、アメリカの動きを封じるような画策を支那がやっている可能性にも思い至る。

https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2023/08/15/2308k_takahashi.pdf

こちらのレポートを見た時にもそんな懸念が増していたのだが、その懸念が現実化しつつあるのではないか。

中南米情勢 中国の浸透に警戒が必要だ

2023/09/25 05:00

中国が、中南米地域で拡大する左派政権と連携を深めている。経済力を武器にこの地域への影響力を強め、米国主導の国際秩序に対抗しようとする動きには警戒が必要だ。

~~略~~

習政権は「世界の多極化」を掲げ、米国主導の国際秩序に挑んでいる。中南米諸国の取り込みはその大きな武器となる。8月には中国などの後押しで、アルゼンチンのBRICS加盟が決まった。

讀賣新聞より

支那の南米浸透作戦は順調のようなのだが、これまでは経済的な浸透だけだと認識していた。だが、今回の事案を見ると本当にそうなのか?という懸念が。

実はこんなニュースを見かけたことを思い出したのだ。

イスラエルもびっくり、ハマスの武器庫に中国製の武器が

2024年1月9日(火)18時13分

イスラエルは、ハマスが中国製の最新鋭兵器を保持するようになった経緯を調べている、という新しい調査報告書を発表した。

Newsweekより

これは今回の記事とは全く無関係なイスラエルの事案を扱ったニュースなのだが、ハマスの武器庫で支那製の武器が大量に備蓄されているのを発見した、という話である。また、フーシ派も支那の技術を使っている疑いがあるのだとか。

これ、支那製の武器が中南米に出回っているという話はないだろうか?麻薬の原材料も支那から供給されている疑いがあるのだが、ギャングに武器が提供されれば、南米の混乱に拍車がかかる。

どこまでその影響があって、どこまでか工作なのかは不明だが、支那にはそういった強かさ、悪辣さがあるのは事実である。

ちょっと陰謀論めいた話に逸れてしまったが、エクアドルが内乱状態かその一歩手前まで来ていることは事実である。そして、それがアメリカの移民騒動に関わってくるのも事実だろう。更にそれが日本の国防にも関わってくる可能性があるのだから、今後も注意深く見守っていきたいと思う。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    口出しする気はなかったですが、木霊様の懸念はかなり当たってると想うす。
    南米で左派政権、反米政権が乱立し、そこから異常に治安悪化して、麻薬禍と不法移民の津波が派生してるすね。
    すでにコロナ禍の時に、それは言われてましたが、封鎖が強まってあまり話題にならなかった。でも、その間にかなり話は深刻化してますよね。
    偶発部分はあれど、そこに何らかの誘導が皆無というのは考えられない!

    あとBRICSに、イラン、カタール、サウジアラビア、ベネズエラ、あとアフリカのどこだっけ?
    産油国がどんどん加わる予定ですわね。
    これらが中露のサイドに加わるわけだ。
    それにカタールやUAE始め、基本的に反米的な中東の富裕国は、実は投資を原油に変わる産業にしよとしているようで、その辺りの先端技術や新興産業への投資率は凄いんですね。
    私が米国内戦に怯えるのは、そこで。
    万一、米国が二分したまま膠着すると、
    連邦政府に対峙する側が、ドルを割って、BRICSと背後の中露と手を結ぶ可能性あると想うてるんてすよ。 現況ではSFに過ぎませんけれど。
    ドルが割れた時に、その片方と産油国がくっついたら、それ二次大戦後の世界秩序は終わるのでないですかね?
    それが次の多極化した世界へと激変させるのでは?と予想してます。
    だって今の米国の覇権とは、要は原油と穀物がドル決済である事が支えてます。
    エネルギーと食糧の為に、他国はドルを買わないと決済できない! 
    どれだけ米国が財政赤字を抱えようと、ドル札を印刷するだけで、資金を世界から集められる!
    それが割れた時に、世界はいやおうなしに多極化に向かう羽目になるかと。
    実際にはSDR、各国中央銀行デジタル通貨、メジャー暗号通貨、インディペンデント暗号通貨……と選択肢が色々とあるので、そう簡単に移行はしないと想うけど。
    けれど、アメリカのように自国通貨の強い国は、成長が停止しても他国から国家維持の資金を調達できるのが強味です。
    そういう国は自国通貨の信用が、何らかの衝撃で低下した時に、一気に崩壊する。ドル、ポンドの前に、かつてはオランダのギルダーが国際通貨でしたが、3次に渡る英蘭戦争の敗北で、一気に転落きてしまった。変わった英ポンドも、一次大戦により簡単にドルに支配権を渡しましたよね?
    アメリカの麻薬と不法移民の大移動は解決しない限り、いずれは同じ轍を踏むと私は予想します。
    古代ローマと同じですよ。気象変動で穀物生産が上手く行かなくなった時に、大量の不法移民が来て、内部統制が効かなくなり、地中海全域から中東、アフリカに渡る経済圏が崩壊して分裂した。

    • アバター 山童 より:

      以上の事を前提に考えると、
      結論)
      中露が何も工作していない訳が無い。
      むしろ積極的に後押ししているとしか思えない!
      以上です。

    • 木霊 木霊 より:

      アメリカの裏庭で反米組織を育てているわけですから、「意図的ではない」というのが無理がありますよね。
      古くはソ連、今は支那で、両方とも資金が枯渇しかけているというのが現状である様に思います。

      逆に言えば、支那の関与はピークを少し過ぎた感じだというのが僕の印象なのですが、おそらくはこれから先、支援の増額ができない事態に陥っていますから、どうなることやら。反米組織が自分でお金をかき集める手段を持っていて、政府を打倒する……。その時、支那の関与が無いのは幸か不幸か。
      碌な未来が予想できません。

  2. アバター 砂漠の男 より:

    支那が背後で暗躍している? ― ふつうにアリでしょう。
    中南米を押えることが、米国にボディーブローを打ち込む最適解です。
    米南部国境が開きっ放しの今は、なんでも打ち込めるチャンスですからね。
    工作員とフェンタニルをブッ込むところは、支那のエグいところですが。

    • 木霊 木霊 より:

      暗躍、している、或いはしていたのでしょうねぇ。
      そして、アメリカにはそれが効く。
      厄介な話です。

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