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北朝鮮の木材が足らないという話

アジア
この記事は約8分で読めます。

ちょっと面白い話を聞いたので触れることにしたのだが、コレは結構深刻なことなのかも知れない。

「木の枕」を肌身はなさず持ち歩く北朝鮮軍兵士の奇行

11/17(金) 6:05

北朝鮮北部・両江道のある住民の話によると、金正日時代までは軍人の寝床というと、きれいに整頓された白いマダラス(マットレス)と、四隅をきちんと折り揃えた枕を思い出すものだったという。だが、今ではすっかり変わってしまったそうだ。

Yahooニュースより

木の枕……?

資源管理が疎か

木の枕

なかなか不思議な感じの話だが、要は軍人に支給される備品にもお金が使われなくなっているということのようだ。

建設工事に当たる朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士や、突撃隊(半強制の建設ボランティア)の隊員には、新しい枕が配給されなくなったため、自費で購入した木枕を使うのが当たり前になっているようだ。

Yahooニュースより

木製の枕が販売されているという事実も衝撃なのだけれど、調べてみたら日本でもAmazonで売ってたよ。何でも商品にするんだなぁ。

さておき、この枕を巡ってトラブルが起きるというのがこの記事の内容なんだけど、記事を書かれたのが高英起氏だということなので、まあ、話半分に聞いておいた方が良いかもしれない。

「彼らは木枕を常に持ち歩くのは、部屋に置いておくとちょっと目を話した隙に盗まれてしまうからだ」(現地情報筋)

先月末、道内の甲山(カプサン)郡で、農村住宅の建設にやって来た突撃隊員が、別の中隊の隊員の木枕を盗み、薪にしたのがバレて大喧嘩になったという。硬い木を使っているため、薪にちょうどいいのだとか。

冬の寒さが厳しい両江道では、暖房用の燃料として薪が使われるが、国からの供給がないため、木枕を盗んで薪に使うのだという。薪の値段が上がっていることもあって、木枕は物々交換でも重宝されるアイテムとなる。木枕1つに豆腐半丁、2つなら1丁、4つもあれば酒1本と交換してもらえる。

Yahooニュースより

とはいえ、このニュースをみてちょっと気になった事がある。そういえば、似たようなニュースをどこかで見た気が。

枕木を輸入する

そもそも木の枕というのが意味不明で、最初は枕木の話かと思っていたのが思い出した切っ掛けなのだが。

レールと枕木を輸入か 北朝鮮、ロシアから

2023年09月01日

北朝鮮がロシアから、枕木が取り付けられた形のレールを輸入しているとみられることが分かった。共同通信が撮影した写真を分析した北朝鮮の鉄道事情に詳しい専門家が1日までに明らかにした。国内の木材不足を補いつつ、鉄道インフラの整備を急ぐ思惑とみられる。

47NEWSより

こちらのニュースもソースが怪しいのだけれど、「北朝鮮がロシアから枕木とレールを輸入」という内容で、今考えるとなかなか衝撃のニュースである。

コレに絡んだニュースとして、こちら。

特別列車、ロシアまで丸1日 線路劣悪でゆっくり移動か―北朝鮮

2023年09月12日18時53分

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記を乗せた特別列車は12日にロシアに入るまでの北朝鮮内の移動に少なくとも24時間かかった。韓国統一省は、北朝鮮の線路の状況が劣悪で、安全のため低速で運行したと推定する。

~~略~~

韓国統一省関係者は「北朝鮮の鉄道の状況は非常に劣悪で高速を出すのは難しい」と指摘した。

時事通信より

わざわざレールと枕木が運ばれた背景には、金正恩氏の乗る特別列車が通過する線路を急いで補修したいという狙いがあったと推測できる。

それほどまでに北朝鮮の鉄道の状況が悪化していると見て良いだろう。

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日本統治時代の鉄道インフラが生き残る

朝鮮半島の鉄道路線は、(悪夢の)日本統治時代に整備されている。日本にとっても朝鮮にとっても不幸だったこの時代ではあるが、6,531kmの鉄道を朝鮮半島に敷設したという事実だけでも、どれだけ日本がインフラ整備に腐心したかが分かるだろう。だって、たった35年の統治だったのに、6,531kmの鉄道を敷設したのだ(敷設は統治時代前から始まっていて、最初に敷設工事が完了したのは1900年11月の京仁線(ソウルから仁川を結ぶ路線)でなのだそうだ)。費用の話だけではなく材料や労働力、技術指導を行ったということを考えても、ソレが何を意味するのかは理解出来ると思う。

もちろん、日本にとっては支那やロシアに出て行くために、鉄道輸送網を必要としたという側面があったことは否定しないが。

日本植民地時代の線路見つかる

2023.03.13 16:56

韓国・ソウル中心部にある朝鮮王朝時代の王宮、景福宮の月台(宮殿の正殿などの前に置かれ儀式に使用された広い壇)発掘調査の現場から日本植民地時代に敷設された鉄道の線路が見つかった。

聯合ニュースより
日本植民地時代の線路見つかる
聯合ニュース「日本植民地時代の線路見つかる」より

で、韓国国内では流石に敷設されたレールなどは残っていないのだが、その痕跡はまだそこかしこに見られる。コレを消し去ろうという動きもある様だ。

鉄道は「日帝の残滓」 韓国で進む大改修、文氏に異論も

2020年1月27日 9時00分

鉄道開通から120年を迎えた韓国で、幹線の大改修が進んでいる。高速化でソウル一極集中を緩和する狙いとともに、日本統治時代の遺産を「自主独立」の象徴に転換しようと文在寅政権は意識している。

朝日新聞より

それに力を入れていたのがムン君なのだが……、ほんっとにコイツ、碌なことしねーな。

まあ、さておき、朝鮮半島の鉄道敷設を日本が頑張った過去があるという話を書きたかった。で、その残滓は北朝鮮側に多く残っているようで。

北朝鮮の平壌に眠る日本製の電車 国交がないのに保存されているワケ

2021.03.25

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の首都・平壌近郊に、日本で製造された電車が1両保存されています。その電車は「デロハニ100形102号」と呼ばれる車両で、日本で言うところの鉄道博物館に相当する「鉄道省革命事績館」に隣接した「革命事績車両館」という建物内に展示されています。

乗り物ニュースより

流石に列車の方は今は使っていないのだけれど、インフラの方は未だ未だ日本が建造したものがいくつもあるそうだ。

日本統治時代の枕木が生き残っているなんて話もあるくらいなので、鉄道インフラの更新すらままならないというのが、北朝鮮の実情なのだろうね。多くの鉄道インフラは、接続するロシア、支那、韓国などが出資して整備しているという話もあるので、外国頼みで整備を進めているという側面もあるようだが。

産地の開墾で木材が

さて、話は変わって、コチラのニュースを。

金正恩「青い森、黄金の山」を指示したが…北朝鮮の山林20万ヘクタール消える

2021.03.03 17:39

北朝鮮の山林面積がこの19年間でサッカーコート33万面分に相当する20万ヘクタール以上減ったという分析が出てきた。世界の山林の現況を調査するグローバル・フォレスト・ウォッチ(GFW)が3日に公開した統計によるもの。

GFWは2001~2019年に北朝鮮で約23万3000ヘクタールの山林が消えたと分析した。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の執権後に減少傾向だった森林伐採面積は2019年に急増し2万8000ヘクタールと集計された。調査期間に初めて森林伐採面積が2万ヘクタールを超えたのだ。北朝鮮の地方では依然として木を燃料として使うケースが大部分だ。

中央日報より
北朝鮮のはげ山[写真=ソウル大学山林科学部キム・ソンイル教授]

何というか、日本統治時代前の朝鮮半島が禿げ山だらけだったという話に似ている気がするんだけど、この写真もなかなか衝撃だな。

はげ山と洪水は日本の犯罪? 北朝鮮が金日成時代の失政を責任転嫁 不当な弁済要求も

2018/8/25 18:37

北朝鮮が金日成主席の存命中に行った耕地拡大のための大規模な森林伐採を、朝鮮半島統治時代に「日本が行った略奪行為」と断じ、日本に弁済を要求している。

~~略~~

金主席は1970年代、耕地拡大で農業生産を上げるため、段々畑造りを指示した。人民は命令に従い「速度戦」で山すそや斜面を切り崩し、はげ山にトウモロコシ畑を造った。81年には「自然改造4大課題」の一つとして全国の傾斜地20万平方メートルの開墾が掲げられた。しかし、土留めを造っておらず斜面は崩壊。土砂が流され、85年以降、水害が顕在化し続けた。

産経新聞より

まあ、北朝鮮において木材は山に勝手に生えてくる資材という認識らしく、度々切り過ぎて問題となる。なお、北も南も同じ問題を抱えていて、大体日本が悪いという結論に落ち着く。

両江道の森林伐採が5万3900ヘクタールで最も広く、慈江道が4万8400ヘクタール、咸鏡南道が4万6400ヘクタール、咸鏡北道(ハムギョンブクド)が3万6700ヘクタールなどだ。元韓国政府当局者は「この時期国際社会の対北朝鮮制裁が強化され中朝国境地域で森林伐採を通じて中国に輸出したり大規模工事に木材を動員したためかもしれない」と分析した。

中央日報より

そしてまた勝手に木材を切り出して問題を引き起こすわけだ。

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燃やしてしまう

とまあ、色々書いたのだけれど、北朝鮮における木材に関わる「問題点」というのは、基本的に「足りない」と言うことに尽きる。

そもそも朝鮮半島は乾燥が強くて木材の生育には不向きな面がある。ソレが故に、頻繁に山に入って木材を切り出してしまうと、だんだん禿げ山が増えるという寸法なんだな。

ソレが問題になったのが李氏朝鮮時代末期の朝鮮半島である。そして、今、北朝鮮では似たような状況を迎えているということだ。

もともとは夜間勤務の休憩の際に、椅子として使うために部屋から持ち出していた木枕だが、昼間にも椅子として使うようになり、物々交換にも使うようになった。また、叩けば大きな音がするため、何らかの合図を送るときにも便利だとのことだ。

「兵士たちにとっては木枕は単なる枕ではなく、最終手段として使う非常用の資金も同然だ。枕の使い道が広がり、銃より大切なのは枕と言われるほどだ」(情報筋)

Yahooニュースより

何というか、やっぱり悲しい話なんだけど、そこまで北朝鮮経済が逼迫しているという事でもあると思う。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    こんにちわ。うわ…サムネはゴビ砂漠かと思った。酷いのは知っていたけど、ここまでとは……。
    燃料にするから根こそぎ…って、里山の雑木林を作るとかしないの??
    日本もまぁ鎖国中は燃料にしていたので、松とかが生える粗林だった事がある。でも、薪にしたり、果樹を植えたり
    供給地としての里山は管理していた。
    普通そうするでしょ頭があるならば。

    気候風土の違いはあれど、植民統治時代のせいじゃないですよ。だって鉄道網を引くのに、数千kmの鉄路を引くのに、
    鉄鉱石の炉を「薪」なんかでまかなえる訳が無い。コークスだろ!!
    君らが日本統治まで、「車輪も作れなかった」のとは違うのだよ。石炭をコークスに変えるのを日本は明治にしてたの!!
    燃料で山が丸裸とか、ほとんど古代ギリシア人と変わらないな(笑)古代人か?
    たぶん李氏朝鮮時代に、車輪も作れない国だから、燃やすしかなかった。
    それが延々と続いて、朝鮮戦争で残った樹もやられたのでは??
    日本は日露戦争の後は、大規模な戦闘は半島でやってませんからね。戦火で燃やした事は有り得ないし、インフラ近代化に薪を使うようなトロい事はしてない!
    彼らに正論を言っても仕方ないけど。

    • 木霊 木霊 より:

      こんばんは。
      北朝鮮はあっちこっちで禿山増産しているようですが、さすがに酷い場所ばかりではないでしょう。
      衛星写真見る限りは、東の山間部辺りにはまだまだ緑も多い模様。ですが、西部は随分と緑が減っているように見えますね。
      ただ、鉄道網が随分と寸断されているようですから、長距離木材輸送というのは現実的ではないのかもしれません。

      朝鮮半島で「車輪が作れなかった」というのは眉唾な噂ではありますが、荒唐無稽とまでは言えないというのが。
      1805年の『晝永編』には、朝鮮には針も車も羊もないと嘆いたことが記されており、過去にあった技術が失われてしまったと示唆されています。水車の導入も上手くいかなかったようで、木材を曲げる技術が失われてしまっていたようですね。
      この話を逆説的にとらえるならば、庶民たちの間で貧しい暮らしが続くことで木材を切り出してマキにして燃やすことが優先され、細い木材しかない。そうして木製加工技術にまで回せない状態が続くことで技術が失われたのではないかと。鉱業が発達したことも、木材を燃やす方に優先させる要因になったのかもしれません。両班達は支那から調達するので困らなかった、と。
      また、道路が未整備だったことも、道が狭かったことも、車輪を作るというインセンティブが得られなかったことに繋がったらしいですね。
      そうすると、北朝鮮の今の状況も似た部分があるように思えます。一部の技術だけを発達させて、他は切り捨てるのでどんどんと退化する。
      なんとまあ不幸な話ではあります。

  2. アバター 山童 より:

    因みに記事で北朝鮮が核開発やめないの良く解りました。
    木枕の兵隊、おとぎ話の木靴の兵隊かよ(笑)
    んな状況だから、地上兵力は使い物にならないのでせうね。したらサイバー部隊やドローン、一点豪華主義の核となる。
    武器輸出してるけど、実態はアレでないすかね? 
    ロシア式に銃は二人に一つとかで、撃たれて倒れた奴から拾って戦うとか。
    兵隊にしたら、最低限の衣食住は与えるというのが普通の軍隊なのですが、やはりこの国は普通ではなかった。

    • 木霊 木霊 より:

      北朝鮮の地上軍の実力はどうなんでしょうねぇ。
      ロシア式で進軍してくる可能性は十分にありえますが。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >それに力を入れていたのがムン君なのだが……、ほんっとにコイツ、碌なことしねーな。

    かの国ではよく「歴史を忘れたものは云々」とのたまいますが、どの口が、って思ってましたが、そうですよね、「忘れる」のではなく、彼らは「無かった事にする」のですよね。
    だもの、歴史を鑑みて、反省し、努力するなんて、彼らには夢のまた夢。

    北の木材ですが、昔、
    「山のてっぺんまでトウモロコシ畑にしました。食料大増産待ったなしです!」からの土砂崩れで全滅エンド、とか、
    「畑にトウモロコシを間隔詰めて二倍植えました!作付けの効率爆上げで大収穫間違い無しです!」からの栄養不足その他で全滅エンドとか、聞いた覚えがあります。
    ※記事にある「金主席の70年代の『速度戦』」がこの話ですね。
    同じノリで、というか、燃料にする薪欲しさに山のてっぺんまで苅っちゃったんですかねぇ……すると、次は鉄砲水&土砂崩れフェイズ、と。

    あと、木の枕、網走監獄かと思いました。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      困ったミンジョクですよ。

      大躍進政策を北の将軍様が目指しているのかは知りませんが、同じような結果になっていくかもしれません。

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