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合成燃料は日本の未来への福音となるのか

環境技術
この記事は約10分で読めます。

コメントで要望があったこともあって、合成燃料(e-Fuel)関連の話を少し取り扱いたいと思う。正直、興味はあったし頑張って欲しいとは思う。

カーボンニュートラルで話題の「合成燃料(e-fuel)」とは? そのメリットから製造方法まで解説!

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進む中、環境に優しくエネルギー密度の高い「合成燃料(e-fuel)」が注目されています。すでに官民一体となって研究開発が進む合成燃料(e-fuel)ですが、実はその裏には、JOGMECが民間企業と共同で開発した、「JAPAN-GTLプロセス」という技術が生かされています。ここでは、合成燃料(e-fuel)がどのようなものなのか、期待される理由や製造方法、そしてJAPAN-GTLとの関わりについて紹介します。

JOGMECのサイトより

しかし、これ、調べれば調べるほど胡散臭い話が出てくる。困ったモノなのだけれど、胡散臭くない部分の切り分けはなかなかに困難である。

研究は大いにやって欲しい

合成燃料を研究した苦い歴史

実は、人造石油に関する研究は、戦中にもあった。

国家予算の26%をつぎ込んだ「人造石油」計画

2017/08/30 9:00

三田紀房(以下、三田):『水を石油に変える人』ですが、非常に面白かったです。いわゆる「水からガソリン」事件のあらましは知っていたので、イカサマ行為が露見して詐欺師らが捕縛されるのは、もうわかっている。でも面白くて読んじゃう。まるで「刑事コロンボ」を見ているような感覚。犯人は最初にわかっているのに最後まで楽しく読める。そんな上級推理サスペンスのような1冊でした。

山本一生(以下、山本):『アルキメデスの大戦』を読ませていただき、フィクションなんだけど、よく史実を勉強されているなと思いました。そして最後をどうまとめるのかが非常に気になる。まだ太平洋戦争どころか日中戦争も始まってないんだけど、この漫画のなかの日本はどうなるのか、そして物語の最後がどうなるのか、この先、三田さんがあの時代をどう料理するのか、それが楽しみです。

東洋経済より

この記事では東洋経済がその歴史について、マンガ「アルキメデスの大戦」の作者三田氏とた歴史ノンフィクション「水を石油に変える人 山本五十六、不覚の一瞬」の作者山本氏の対談という形で語られている。

実はこの時代から人造石油という概念があり、多額の費用を投じて実際に精製している。

先行研究はドイツでも行われていて、フランツ・フィッシャーとハンス・トロプシュによりGTLの技術が開発された。フィッシャー・トロプシュ法と呼ばれる、一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液化炭化水素を合成する方法が知られている。

ただ、コストの問題で合成された人工石油では、天然の原油に太刀打ちすることが出来ていない。バイオ燃料の価格は1Lあたり500円を超え、合成燃料の価格は1Lあたり700円を超える。

山本:しかも、生産された人造石油の製造コストは普通の石油の10倍にも達しており、こちらも完全に度外視されていました。しかし昭和15年度の計画93万キロリットルに対し、2万キロリットル(2%)、16年度は120万キロリットルに対し19万キロリットル(15%)しか生産できませんでした。

東洋経済より

ドイツで研究された成果は一部だけしか日本側に開示されなかったため、日本でも独自研究をせざるを得なかった。そのお陰か、コストは天然物の10倍以上ものぼった。つまり、当時の国家予算の26%も注ぎ込んで研究したにも関わらずモノにはならなかった。詐欺の類いに引っかかったと、評価されている。

二酸化炭素と水素を原料に石油を作る

今回、JOGMECで研究されている合成燃料も、似たようなシロモノである。

合成燃料(e-fuel)とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料として製造する石油代替燃料のことです。石油と同じ炭化水素化合物の集合体で、ガソリンや灯油など、用途に合わせて自由に利用できます。

JOGMECのサイトより

そして、前述した通りコストは未だ高い。だから、日本は「対環境性能」という付加価値を付けて販売をしようとしている。

合成燃料(e-fuel)の製造プロセスの図

この試みが成功するかどうかは怪しいところではあるが、それでも合成燃料だけで使うという発想でなければ、利用可能性は広がる。どういうことかというと、混ぜて使えば良いのである。

CO2排出抑制へ「合成燃料」10%で車走行のデモ公開 石油大手

2023年5月28日 17時57分

二酸化炭素の排出を実質ゼロにできるとして実用化が期待される「合成燃料」で車を走らせるデモンストレーションが静岡県内で公開されました。

デモンストレーションは合成燃料の技術開発を進めている石油元売り大手の「ENEOS」が行い、静岡県にある富士スピードウェイ内の施設で公開されました。

NHKニュースより

価格の問題も幾分か緩和されることになり、環境にもちょっとだけ配慮した格好になる。

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CO2排出(実質)ゼロで

なお、こうした環境的なアプローチは積極的に行われている。

CO2排出“実質ゼロ”合成燃料広がるか エンジン車販売巡り賛否

2023年4月2日 18時11分

EV=電気自動車への転換をいち早く打ちだしたEU=ヨーロッパ連合。エンジン車の新車販売を禁止することを目指していましたが、その方針を修正しました。二酸化炭素の排出が実質ゼロとされる合成燃料の使用を条件に、エンジン車の販売の継続を認めることで合意しましたが、賛否が分かれています。

~~略~~

合成燃料の使用を条件にしたEUのエンジン車の販売継続の方針については、ドイツの自動車メーカーから評価する声も出ています。

傘下のポルシェが合成燃料の生産に取り組むフォルクスワーゲンは、NHKの取材に対し、EVシフトを進めていることを強調したうえで「緊急車両やポルシェの一部のシリーズにおいて合成燃料の利用を追加することは妥当だと考えている」としています。

NHKニュースより

正直、エンジンを売りにしているスポーツカーメーカーにとって、EV化が嬉しいかというと、そんなことにはならない。EVの盛り上がりを作ろうとレースなどもおこなわれてはいるのだが、どれもパッとしない。

一応、EV最高峰のレースとしてフォーミュラEというカテゴリーが作られ、来年は東京でレースが行われることになっている。

電気自動車のF1「フォーミュラE」、東京で来年3月30日開催正式決定[新聞ウォッチ]

2023年6月22日(木)08時15分2023年6月22日(木)08時15分

大きな排気音を鳴り響かしながらサーキットを周回する自動車レースの最高峰がF1(フォーミュラ・ワン)ならば、走行中に排気音や排ガスを出さない電気自動車(EV)の世界レースが「フォーミュラE」で「EVのF1」とも呼ばれているらしい。

responseより
フォーミュラE(シーズン9)
response「電気自動車のF1「フォーミュラE」、東京で来年3月30日開催正式決定[新聞ウォッチ]」より

フォーミュラEは14年の開幕から10年近くも経過してからようやく東京開催に漕ぎつけた経緯があるので、モータースポーツとしてはそれなりに周知された存在になっているらしい。

第1世代のフォーミュラEは25分しか保たないバッテリーの交換が出来ないので、マシン交換という特殊なやり方がなされていたようだが、第2世代になってからバッテリーが大型化できて、レース途中にマシン交換の必要性がなくなったようだ。

回生ブレーキでのエネルギー回収率が高くなったことも大きかったようだね。こんな感じで、レースなどが行われるようになると技術革新が進むので、頑張って欲しいと思う。

だが、未だにレーサーの憧れがF1にあって、フォーミュラEは盛り上がりに欠けるのが現状である。予算が少ないことも影響しているようだね。今後盛り上がる事もあるかも知れないが、現状は苦戦しているようだ。

大阪で始まった研究開発

なお、この記事を書くにあたって最初に調べたのが、大阪の話。ところがこれ、どうにも怪しい感じがする。

水と大気中のCO2等から生成する人工石油(合成燃料)を活用した実証実験を支援します

2023年1月10日

大阪府、大阪市、大阪商工会議所で構成する「実証事業推進チーム大阪(以下「推進チーム」という。)」は、サステイナブルエネルギー開発株式会社が実施する実証実験を支援します。

同社は、本市が実証フィールドとして提供する花博記念公園鶴見緑地において、水と大気中のCO2等から生成する人工石油(以下「合成燃料」という。)による発電システムの構築に向けた実証実験を実施します。

大阪市のサイトより

この合成燃料、コストは何と1Lで14円だという。驚きの価格なのだけれど、社名のうさんくささもさることながら、人口石油の精製方法もまた、うさんくさい。

実証実験のイメージ図
大阪市のサイト「水と大気中のCO2等から生成する人工石油(合成燃料)を活用した実証実験を支援します」より

生成装置の名前はなんと「ドリーム燃料製造装置」。大阪市もよくもまあこんなところに投資をしたな……。

なお、「ラジカル」の名前を見ると思い出すのは、「ヒドロキシラジカル(活性酸素)」を抑制する水の話である。

活性酸素の一種を抑制する水をつくるとうたった装置−飲用による効果を表したものではありません−(発表情報)_国民生活センター

尤も、ラジカル水自体は半導体洗浄などに一般的に用いられるもので、特別なものではない。SPE電解法等を使ってラジカル水は得られる(この装置の説明だと光触媒を使ってラジカル水にしているようだが)ので、コレも不思議ではない。

問題は、この説明だとエネルギー収支が合わないことだ。少なくとも既存の科学的見地では理屈を説明できない。ただ、装置を通すことで5~12%の人工石油が水から変換され、1回の反応に3~5分かかるということになっている。

訳の分からない話ではあるんだけど、理屈は説明できないけど人工石油(軽油らしい)ができるって事になっている。ただ、実証実験をしたハズの大阪市が、その情報を消してはいないけれども、積極的なアクションも起こしていない。手応えは余り良くなかったのかもしれないね。

個人的な印象としては、原理は分からなくても出来るモノは出来る、ソレでも良いのだけれど、現状は確実性があるかどうか良く分からない。

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生産プラントの開発

こういった確実性がハッキリしないモノもあるけれども、生産プラントの研究を続けているところもある。

このうち、ドイツ南西部カールスルーエで7年前に設立された企業は、合成燃料の生産技術の開発に取り組んでいて、実験用のプラントで研究を続けています。この企業は、ことし中にドイツ国内に製造拠点を設け年間およそ3000トンの生産を本格的に始める予定で、現在、設備の整備を急ピッチで進めています。生産量は再来年までに10倍に増やすことを計画しています。

NHKニュースより

ドイツは、先述したポルシェなどスポーツカーを製造しているメーカーを抱えていて、合成燃料の研究にも積極的である。

合成燃料の利用を促進しようとする団体「イーフューエル・アライアンス」の幹部、ラルフ・ディーマー氏は、合成燃料の価格について「現時点ではかなり高く、製造コストは1リットル当たり5ユーロか6ユーロするが、大規模に生産されるようになりスケールメリットが得られれば、1リットル当たり1ユーロから2ユーロほどにコストが下がるだろう。化石燃料より合成燃料を優先する税制が整えば、ビジネスとして成立しうる」と述べ、需要拡大で生産コストが下がることに期待を示しました。

NHKニュースより

ただ、価格は1Lで5ユーロから6ユーロ。つまり800円以上のコストがかかる。1Lで1ユーロになったらガソリンとの競争も可能だけど、スケールメリットでなんとかなるモノなのかは、今のところ不明である。

製造コストを下げる方法はあるのか

では、価格を下げる方法があるのか?という点なのだけれど、「量産効果」という事以上に原料調達価格を下げることの方が重要である。

合成燃料の実用化に向けて、最大の課題となるのがコストだ。経産省は約300~700円/Lと試算している。約700円/Lと試算したのは、原料調達から製造までの全てを国内で実施する場合である。内訳は、H2が634円、CO2が32円、製造コストが33円。つまり、H2がコストの大半で、ここをどこまで低減できるかが合成燃料の普及のカギとなる。

日経XTECHより

水素の製造には莫大な電力が必要なので、電力を使わないようにしよう!エコだ!という話をしていたのでは、コストを下げることが出来ない。残念ながら。

適切な触媒が見つかって酸素と水素の分解がお安く出来るようになったら、色々と助かるのだが、今のところは見つかっていないね。

正直、現状で調べた限りではもうちょっと努力が必要という感じだった。合成燃料は作れるんだけど、コストダウンが難しい。是非とも安く作って欲しいのだけれどね。

ただ現状だと、全固体電池の方が有力かなぁ?そうするとEVは大きな変化を遂げて合成燃料の方は劣勢になってしまうのだけれど。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    木霊様、リクエストへの回答ありがとうございます。しかし……
    ドリーム燃料製造装置……胡散臭過ぎる😁
    とりあえずネーミングなんとかせい!
    んで、ドリーなんとかはともかく、人口燃料の未来性はゼロではないて事ですね。木霊様の「混ぜりゃ良い!」は、目から鱗のコロンブスの卵!
     あ、そか。そーだよな。
    ただ……ちと気になるのが……
    量子論分野でノーベル物理学賞を受賞した科学者が、「脱炭素なんて儲けに群がる企業と、利用する政治家の嘘!」と公言しましたねぇ。ついでコロナで輸送網がズタボロになり、次いでパナマ運河が拡張工事の必要で、船の通過数を半減縮小。そこにスエズ運河ちかくのガザ戦争。この状態でEV化が後退してますね。
    そこは中国にお灸を据えるには良いんですけど。それが研究資金にどう影響するか? 
    木霊様の「混合燃料化」でコスト減して、日本の輸出品に(将来)なれば吉。
    しかし「EVも脱炭素も意味なかった!」となると、急に需要が無くなり、研究資金が出なくなるかも。
    私としては輸出産業としてより、日本国としてのエネルギー独立の為に必要と考えているので、税金投入して継続して欲しいところだが……それ通用するか?
    そもそも「永久機関」と同じで、そういう胡散臭いの錬金術時代から山程の類例ありますからねぇ😮‍💨世間がどう観るか?
    とはいえ農業たって、農薬も窒素肥料もトラクターも100%エネルギーだし。
    戦争できる普通の国になるならば、そこはエネルギー自立が不可欠な事は、大東亜戦争の敗北で解ってる事です!
    なんとか未来に繋がる成果を出して欲しいものですが……そういう期待を持つ事じたいが詐欺に引っかかる弱点となるので、あまり期待値を高く求めても、お金をドブに棄てる羽目になるかも知れない。とても難しいところですね。

    • 木霊 木霊 より:

      この話、似たような技術としてアンモニア混焼にて発電をするという考え方があります。
      尤も、アンモニアは肥料に使う需要が高いこととコストがまだ高い(同じエネルギー価を持つ石炭の3倍程度)ために、有力な燃料とは言えないのですが、水素よりも持ち運びに便利だね、ということで研究が続けられております。
      https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/3-8-4.html

      この手の技術は開発なしには為し得ませんから、胡散臭いと断じた開発も含めて頑張って欲しいところではあります。ですが、詐欺の類いもありますから、何処にどれだけお金を入れるのか?というのは難しいところですね。研究に携わっていた者としては、無駄になる研究は無いというスタンスでやらざるを得ず、成果が出なかったことも成果だと割り切るしかないとは思っております。

  2. アバター がっつ より:

    大阪市の説明イラストで見る限り、特殊光触媒がエネルギー源(おそらく太陽光由来)のように見えますが。
    それをただ燃料にするなんて、なんかアホくさいぞ。(笑)

    昔あった水だけで走る自動車を思い出しました。
    (そのときは、なんやらマグネシウムとかも使わず、ほんとに水だけしか使わないとかなんとか)

    大阪市も、基礎研究ならともかく実証実験なんてのにお金出すなら、荒れて極相モードの人工林を手入れ(森林再生)する方にお金出したほうが、よっぽどサステナブルだと思うんですが。

    しかも、
    https://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000588970.html#QA
    にある、「・・・本市及び推進チームは、実証結果の検証や評価等を行う立場にはありません。」

    おいおい、大丈夫か大阪市。

    論点ずれそうなのでこのへんでやめときますか。(笑)

    • 木霊 木霊 より:

      あー、「実証結果の検証や評価等を行う立場にはありません」のところ、気になっちゃいましたか。
      確かに、市の職員に実証結果の検証や評価をする能力は無い、という意味でこの言葉は必要なんだと思います。
      ですが、じゃあ、何を理由に税金投入して実証実験やったんだ?という事は気になっちゃいますね。事前に評価したとは思いますし、わざわざ逃げる余地を作っている辺り、怪しさを感じてしまいます。どんな事情があったのやら。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ミドリムシ由来の「デューゼル」は、うちの会社の社用バスにも使われてますが、イマイチ、パッとしませんね。

    「宇宙開発における最大の困難は何か!」
    「お金ですか?」
    ってやりとりで2コマでおわりそうになったマンガが、あさりよしとお氏の著作にありますが、結局これですよね……

    あと大阪、ろくな事に手を出してない印象ががが。
    まあ、今に始まった事ではない、維新の一党支配が確立した頃からそんな感じですが……やれやれです。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      ユーグレナ案件ですか。あれも安くできれば良いんですがねぇ。

      ともあれ、世の中の多くのことがお金に関わる話ですから、何をやるにせよ大切ですよね、お金。

      大阪の実情もなかなか厄介ですが、与党が維新というのもアレですが、野党になった自民党と日本共産党が手を組んでいるという異常さは、どうにも。

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