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とうとう完成か?インドネシアの高速鉄道に李強氏が試乗

アジア
この記事は約13分で読めます。

そういえば、脱線とかしていたっけ。

中国 李強首相 建設請け負ったインドネシアの高速鉄道に試乗

2023年9月7日 15時27分

ASEAN=東南アジア諸国連合の首脳会議のためにインドネシアを訪問している中国の李強首相は、中国が建設を請け負ったインドネシアの高速鉄道に試乗し、経済協力の成果としてアピールしました。

NHKニュースより

本当ならば習近平氏がアピールするケースだと思うんだけど、どうやら今回は乗らなかったらしい。そりゃまあ、今回のインドネシアへの李強氏訪問は習近平氏の代理でASEANの首脳会議に臨むためだったわけだから、高速鉄道への試乗も代理で行われるのは自然ではあるんだけど。

盗んだ鉄道で走り出す

インドネシアの高速鉄道受注騒動

そもそもこのインドネシア高速鉄道の一件は、過去に散々批判している、まあ酷い話で。

日本とインドネシアの関係はそこそこ古くて、鉄道関連は日本の中古車両を持ち込むことも結構あった。インドネシアの鉄道敷設には、日本の技術も随分使われているのだ。

そうした関係があって、2008年に日本はインドネシアに対して新幹線輸出を持ちかけた。インドネシア側も前向きで、その当時既に輸送網の目詰まりがそこかしこに見られ、旅客や貨物輸送は追いつかない状況が続き、道路は渋滞が頻発する状態であった。

で、インドネシアも前向きであり、日本側による現地調査が行われるに至る。その調査に7年の歳月をかけて、2014年1月にはより詳細な事業化調査の開始された。

が、2014年10月に大統領だったユドヨノ氏が任期満了により退任すると、新大統領として着任したジョコ氏によってこの計画は「金が掛かりすぎる」と中止が発表されてしまった。

そして、2015年3月に何故か支那が受注競争に参加することを表明。当時からジョコ氏と支那との癒着ぶりが指摘されてはいたが、入札の金額を見て日本はビックリすることになる。日本側が出していた詳細見積もりと計画がそのまま流用されて、金額だけ安くなった計画が出てきたからだ。

結局、2015年9月にインドネシア側によって一方的に高速鉄道計画の凍結が発表されると、支那が作った別プランが浮上してインドネシアがその案を採用するという事態になる。

インドネシアの首都ジャカルタと、およそ140キロ離れたバンドンを結ぶ高速鉄道は、中国が日本と激しい受注競争を行った末、2015年に建設を請け負いました。

NHKニュースより

NHKによると、それが「激しい受注競争」という表現になるらしいが、どう考えても騙し討ちに近い所業である。

計画通りなら2019年開業

なお、日本のプランと支那のプランで大きく勝敗を分けた理由は3つあるそうな。

インドネシア新幹線、「白紙撤回」の裏事情

2015/09/22 6:00

7年がかりの日本側の努力は、水泡に帰すこととなった――。9月3日に白紙撤回された、インドネシアの高速鉄道計画である。2009年から日本政府による事業化調査が進められ、一時は日本の受注が確実視されていたが、紆余曲折の末、計画そのものが消滅した。

東洋経済より

この記事は、白紙撤回が報道された時のもので、この7日後に支那が見事な受注を決める。

鉄道

敗因として最も大きいのは「政治」である。支那はインドネシアの運輸大臣とかなり密接に関わっていて、大統領のジョコ氏も取り込んだ。裏金が動いただろうことは容易に想像が付くわけだが、国際社会におけるこの手の受注合戦は、汚い手を使っても勝てば良い(この時にお金が動いたかは定かでない)。

特に独裁国家の支那であれば、その手の「政治」はお手の物だし、インドネシアの政治の腐敗っぷりもかなりのものなので、まあ、「何かあった」と考えても不思議ではない。日本はそれを阻止できなかった、それだけの話である。

次に「情報」。「政治」の面では、前大統領との関係が深かったために、情報収集が疎かになっていた面が強く、新大統領のジョコ氏がまさかちゃぶ台をひっくり返すとは思っていなかったようだ。支那側は、事前情報として運輸大臣が采配していることを知り、しっかりと囲い込んでおいたお陰で日本の見積もり情報を支那が横流しを受けることが出来た。コレは大きかったと思う。それに、最終局面で「白紙撤回」した後の水面下の動きも察知できていなかった日本側が、支那に良いようにやられてしまったのは事実で、完全に情報戦に破れたと言っていいだろう。

また、ジョコ氏が納期に拘っていたという情報も、足りていなかった。支那の計画では2019年開通が可能であり、日本の計画の2023年開業プランではジョコ氏の大統領選挙が行われる2019年に間に合うとし、彼の実績として高らかに掲げられる予定だった。少なくともそのような皮算用をしていたことは間違いない。

そして「金」だ。実は、支那案では、インドネシア政府の財政支出や債務保証を必要としない計画であったのだ。インドネシア政府が巨額の財政支出や債務保証を求められるのを嫌がったのである。そこで、支那はインドネシアと合弁会社を立ち上げて、民間企業として採算面のリスクを背負うと発表したのだ。日本案では円借款による貸付で高速鉄道を作ることになっていたので、長らくインドネシア政府が借金を背負う事になったはずだ。結果は後ほど言及するように、インドネシア政府が公金投入する事になったが、入札時点ではインドネシア政府にリスクのない話しだったのである。

そもそも支那高速鉄道は日本の技術

というわけで、支那の戦略に見事負けて失注した日本だった。が、この話で最も悔しいのはインドネシアにしてやられたことではなく、支那の高速鉄道技術が、日本の新幹線の技術から派生したものであることだ。

この話はこちらの記事でも触れている。

二階氏が旗振り役となって、日本の新幹線技術は支那に売られたのだ。

新幹線技術「中国移転は失敗」 いまや日本のライバルに

2017/4/22 20:51

「ずうずうしくも大ぼらを吹く」「中国の高速鉄道技術は、すでに日本の新幹線をはるかに凌駕している」

平成23(2011)年7月7日、中国鉄道省宣伝部長の王勇平は、中国国営新華社通信のインタビューにそう答えた。

川崎重工業などの技術供与をもとに高速鉄道を共同生産した中国の国有メーカーが、「独自の技術」として米国での特許申請を目指す動きが明らかになったことについてだ。中国政府がいわゆるパクリ疑惑に公式反論するのは異例だ。

~~略~~

中国が独自開発をあきらめ、日独仏の技術導入を決めたのは、わずか13年前。だが一昨年には、インドネシアが日本の提案する高速鉄道計画を蹴り、中国案を選んだ。採算リスクまで引き受けて海外展開に突き進む中国は、日本の手ごわいライバルとなった。JR東海名誉会長の葛西敬之は「新幹線は日本の宝。中国への技術移転は大失敗だった」と移転の判断を批判する。

産経新聞より

その結果、インドネシアでは日本は支那との受注戦争で負けたのだ。支那は高速鉄道技術を見事自分のモノとしたのである。

ジャワ島鉄道の準高速化も白紙へ

なお、この後で日本に対してインドネシアが、「準高速化の話があるんだけど」と話を持ちかけてきたが、結局挫折してしまった。

日本が調査、ジャワ島鉄道「準高速化」空しい結末

2023/08/16 4:30

7月下旬、インドネシア政府は日本が調査を行ってきたジャワ島の在来線鉄道、北幹線のジャカルタ―スラバヤ間のスピードアップを図る「ジャワ北幹線鉄道準高速化事業」について、国家戦略プロジェクトから削除する方針を表明した。

今後、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が正式にサインすることで、国家プロジェクトとしてのジャワ北幹線準高速化は白紙撤回され、人知れず始まったプロジェクトはこれまた人知れず歴史の彼方へ消えていくこととなる。

東洋経済より

またしてもジョコ氏にやられてしまった訳だ。

鉄道2

日本が高速鉄道の失注をした後に出てきた話で、僕自身はコレには反対していたのだが、案の定ダメになった。インドネシアなど信用するものではない

同事業は2016年の伊勢志摩サミットに前後して急浮上した。そして2017年1月、ジョコウィ大統領と安倍晋三首相(当時)の会談の中で日本とインドネシア合同で行う旨が合意され、同年8月にはJICAによる「ジャワ北幹線における都市間鉄道準高速化に向けた情報収集・確認調査」としてスタート。2019年6月からは「インドネシア国ジャワ北幹線鉄道準高速化事業準備調査」として、さらなる具体化のための事前調査が始まった。インドネシア側では両者ともにフィージビリティスタディ(F/S)と呼んでいる。

東洋経済より

調査だけ日本にやらせて、結局なかったことになった。

とはいえ、この準高速化計画はジャワ北幹線という路線の高速化案で、実は採算が取れる見込みがないしょうもない計画である。それをちょっと調べれば分かる話が、多額の調査費用を突っ込んで、そして失敗した。

まあ、こんな話に乗る日本もどうかと思う。インドネシアは勝手に鉄道計画を進めれば良いのである。

10月開業予定

とまあそんなわけで、詐欺のような話を2本お伝えしたが、受注に勝利した支那は見事に高速鉄道路線を完成させた(その予定)というのが、冒頭のニュースだ。予定よりも遅れが出たし、予算は膨らんだが、まあ仕方ないね。この手の計画は往々にして遅れることが多い。

寧ろ、突貫工事で随分と早く進行したと見るべきだろう。そして、工期が延びれば予算も膨らむ野は仕方がない。

だが、去年報じられた工事中の事故なんかを考えると、不安の残る船出になりそうである。

工事車両暴走で死者「インドネシア高速鉄道」の闇

2022/12/22 4:30

インドネシアの一大国家プロジェクトとして進む鉄道建設の現場で、またしても信じられないような事故が発生した。

12月18日17時前、ジャカルタ―バンドン高速鉄道の建設工事現場で、機関車の後押しにより回送中だった軌道敷設用の機材(連続軌道敷設機材、TML)が線路終端部分を突破、冒進して掘割ののり面に衝突し大破した。当時、この機材に乗車していたと思われる中国人作業員のうち2人が死亡、5人が重軽傷を負った。

東洋経済より

どういうわけか、線路のない区間を100mも暴走してしまったのである。

高速鉄道とLRTジャボデベックは共に国費を投入しないPPP事業として着工した、ジョコ・ウィドド大統領肝いりのプロジェクトだが、どちらも2019年開業という当初目標から大幅に遅れている。予算が膨れ上がり、やむなく国費を投入、それでもなお資金が不足しているという点も両プロジェクトは共通している。大統領の任期満了も迫る中、関係者には「2023年開業厳守」という圧力が政府からかかり続けており、その歪みが再び露呈したといえる。

東洋経済より

なかなか不安の残る事故で、オーバーランの原因はスピードの出しすぎだったらしい。

そして、事故にあった路線を写す写真を見ると、かなり不安を覚える。多分レンズによる圧縮効果が働いているからだと思うのだが、随分と線路が蛇行しているようにも見える。

支那の得意なのは真っ直ぐな路線で、起伏の激しい場所に作る高速鉄道の経験があるのか?というと、少々怪しいのだ。

そういった不安を感じる事故を経て、なんとか完成の目処が立ったというのが冒頭のニュースである。

事業主体の企業によりますと、進捗率は90%を超え、インドネシア政府は10月の開業を目指しています。

同行したインドネシアのルフット海事・投資調整相は「この鉄道を第2の都市のスラバヤまで延伸する可能性についても話し合った」と述べ、中国との協力継続に期待を示しました。

鉄道計画をめぐっては、当初、中国側がインドネシアに国の財政負担が生じない案を提示していたものの、建設費は日本円にして1兆700億円余りにまで膨れ上がっていて、インドネシア側に負担が生じる事態となっています。

NHKニュースより

9割完成していると言われているインドネシア高速鉄道は予定より4年遅れて、80兆ルピアの予算で始まったのにいつの間にか115兆ルピアにまで膨らんでしまった。日本が提案した予算よりも4割以上高くなっている。

ただ、費用が膨らんだ理由の1つは、土地の買収に想定以上にお金がかかったせいでもある。その辺りは、政府の鶴の一声で立ち退きを迫ることのできる支那とはちょっと事情が違う。インドネシア側の不手際も大きかったようだしね。

それでも完成した(予定)のだ、そこは素直に凄いと思う。

不安要素は採算性にも

ちなみに、この話は鉄道自身の安全性以外にも不安な点を抱えている。

それは、ルートの話だ。

実は、日本が提案したルートはA案からC案までの3案。その上での見積もりだったのだが、どうやら支那案はこれをしっかり加味していなかった模様。

JAICAが提出したレポート『インドネシア国・ジャワ高速鉄道開発事業準備調査 ファイナルレポート』には、他の案と比較した上でのメリットやデメリット、コストなどが提示されている。

支那の見積もりがどうだったかは不明だが、実際に出来上がったルートはこちら。

これは、東洋経済に紹介された現行ルートで、ハリムを出発してデガルアールに到着する路線となっている。

東洋経済は、この路線変更の経緯についてこんな風に解説している。

実はこれを匂わす動きは昨年4月にあった。KCIC社長がワリニ駅の建設計画を白紙に戻し、代わりに在来線に接続するパダララン駅を設置すると発表したことだ。

テガルアール駅からバンドン市内までのアクセスは非常に悪く、距離の割に車で1時間弱を要する。国産AGT(新交通システム)を建設して市内中心部と結ぶ案も存在したが、国産化計画が頓挫したため、この問題は解決していなかった。

そこで、KAI在来線のパダララン駅に隣接して高速鉄道の駅を設置して市内へのアクセスを確保することにした。在来線にいわゆる「新幹線リレー号」を運行し、KAIバンドン駅との間を20分ほどで結ぶ。KAIはすでに、このリレー号用の気動車を用意している。

東洋経済より

利便性を高めるはずだった高速鉄道だが、主要都市のジャカルタからバンドンを結んでこそ意味があったのに、何故かジャカルタ側の駅もバンドン側の駅もおかしな事になっている。

尚、ジャカルタ側の駅のハリムだが、前述のJAICAレポートに寄れば、日本側が6案出したウチの1つだが、最も評価の低い場所にあり、建設コストは安いが在来線との接続が悪く拡張性が無い。利便性を考えると採用を見送るべきとの判定だった。

バンドン側の駅は、バンドン中心部から約20km離れたテガルアールに作られた。それだけでも意味が良く分からないが、日本案ではグデバゲまで延長して駅を作る話だったが、支那案ではそれは破棄した模様。バンドン周辺で駅を作るのは大変なようで、資金的な話とのバランスなんだろう。

ただ、グデバゲはジャカルタから首都が移転される予定の都市なので、ここまで結んでおけば色々便利だったのでは無いか?という懸念はある。何より、ハリムーテガルアールを結んだ路線に何処まで利用者が出るのかは、現時点は評価が低い。そのうち改善される可能性はあるんだけど。

習近平氏肝入りの案件だったはずだが

このように、突貫工事でも完成の見込みとなったインドネシア高速鉄道だが、支那にとっても大型案件であったために、失敗はできない。きっと最後まできっちり仕事はやるのだろう。

6日はASEAN=東南アジア諸国連合の首脳会議のためにジャカルタを訪れている中国の李強首相は建設中の始発駅を視察したあと、隣の駅まで中国製の鉄道車両に試乗し、工事の進捗を確かめました。

NHKニュースより

だけど、高速鉄道に乗ったのは習近平氏ではなく、首相の李強氏だった。

注目の案件と言いつつ、支那にとっての注目度は国内事情も伴って、少し低下しているのかもしれないね。

追記

どうやら、試運転も始まったらしい。

中国受注インドネシア高速鉄道が完成間近に 無料試験運行開始

2023年9月18日 16時28分

日本との激しい競争の末、中国が建設を受注したインドネシアの高速鉄道が完成間近となり、一般向けに無料の試験運行が始まりました。

NHKニュースより

NHKは日本と支那は正当な入札競争をやったみたいな印象操作をしているが、まったくそんなことはなかったんだが!

さておき、「無料の試験運行」が始まったとのこと。

無事に開通すれば良し。おそらくはその性能も含めて明らかになるだろうし、予定通り運行できれば「支那高速鉄道は直線だけじゃないよ」と言うことにもなるだろう。トラブルなく運用開始は難しいかも知れないけれど、安全に運行できるようになって欲しい。

経緯はともかく、人の命を運ぶ鉄道だからね。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    こんばんは。あのS字カーブの線路……レンズによる圧縮は写真好きだから解るのですが……でも高速鉄道を走らせるのには……
    事故起きるだろうなぁ。
    別に期待してる訳ではないですが。
    習氏が乗らない訳ですね。

    • 木霊 木霊 より:

      習近平氏は外国に気軽にお出かけできるような状況ではないのです。
      それでも乗ってアピールするのが今までのやり方でしたが、今はその覇気が無い感じですね。

      • アバター 七面鳥 より:

        横合いから失礼します。

        張作霖爆殺事件再び!的な。

        北の将軍様は飛行機嫌いですが、鉄道は一番やりやすそうではあります。
        まあ、飛行機ほどは「やられたら1発即死」ではないでしょうけれど。
        ※つい最近、実例が増えましたし。

        • 木霊 木霊 より:

          北の将軍様も、プーチン氏も鉄道大好きですよね。
          撃墜されたら終わりという恐怖があるんでしょうかね。

  2. アバター 匿名 より:

    インドネシアの高速鉄道ですが日本は首を突っ込まなくて良かったと思っています。
    日本は別案件のインド高速鉄道に人手を取られています。新しい海外高速鉄道計画に人員を投入しようにも、輸出経験が少ない日本にはそれを統率出来る人材や技術者が足りていません。タイやベトナムの高速鉄道計画に日本が及び腰なのも採算性以外で実は人材不足も理由の1つですね。
    インドをきちっとまとめてから別の海外案件に乗り出すのが良いかと思います。それにしてもインドは安倍首相がトップダウンで決めてしまった案件ですが現地生産の要求が高いですからね。技術移転するにしても日本企業も関われるような技術移転方法を考えないといけませんね。

    • 木霊 木霊 より:

      そうですね。
      インドネシア案件はかなりやばい感じです。元々、日本はリソースがたくさんある国ではありませんから、確かにインドネシアに取られなくて良かったかなと。多分、アメリカにかかりっきりのところが漸く手を離れたので、そこを投入する展開はあったかもしれませんけど。

      まあ、インドの案件は遅々として進んでいる、そんな状況らしいのでそこに集中して欲しいですね。

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