スポンサーリンク

スリランカで外相会談が行われて債務問題が話し合われる

外交
この記事は約7分で読めます。

スリランカの話をしておこう。

日本スリランカ外相会談 債務問題で“公正な再編へ協力”確認

2024年5月5日 5時32分

上川外務大臣は日本時間の4日夕方に訪問先のスリランカでサブリー外相と会談しました。スリランカの債務問題をめぐってすべての債権国が関わる公正な債務再編に向けて協力していくことを確認しました。

NHKニュースより

日本から見てスリランカという国は、紅茶の銘柄くらいしか思いつかない人ばかりなのではないか。申し訳ないが、少なくとも僕はそうなのである。

苦しんでいるスリランカ経済

地政学的に日本にとっても重要なスリランカ

ただし、日本にとって「どうでも良い国か」というと、そんなことはない。

スリランカは非同盟の立場を維持しつつ、歴史的、文化的にも関係が深い隣国インドとは、政治・安全保障上極めて重要な国として良好な関係維持に努めている。また経済社会開発の観点から日本を含む先進諸国との関係強化を重視しており、紛争終結前後から、中国との関係も強化されてきている。また、南アジア地域協力連合(SAARC)の加盟国であり、発足当初よりその発展に積極的に関与し、2006年にはアセアン地域フォーラム(ARF)にも加盟するなど、域内及び東南アジア諸国との協力関係強化にも力を入れている。

外務省のサイトより

スリランカの位置はここ。

当然ながら、インドとの関係を考えてもスリランカとの関係は重要ということになる。

もう一つ重要なのがシーレーン防衛という観点からのスリランカの位置づけだ。

スリランカの目と鼻の先を通過していくことと、支那の「真珠の首飾り戦略」が、スリランカを取り込む事で大きく後退してしまう。

自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のプランにおいても、この点は大変危険視されている。

Access Denied

真珠の首飾り戦略が完成すれば、インドは極めて困った立場に追い込まれることになり、インドとの関係を構築しようとしている日本としても困るし、シーレーンにも大きな影響が出てしまう。

経済の脆弱性に付け込まれるスリランカ

さて、そんなスリランカだが、経済状態があまり宜しくない。

9 主要貿易品目(2022年)

(1)輸出:

工業製品(繊維・衣類製品、ゴム製品等)79.8%、農業製品(茶等)19.6%、鉱物0.4%、その他0.2%

(2)輸入:

中間財(燃料・繊維関連等)68.0%、消費財(食料品等)15.4%、資本財16.6%、その他0.0%

外務省のサイトより

ただ、スリランカ経済はあまり順調とは言い難い。2012年頃はかなり好調だったのだが、武漢ウイルス感染症の蔓延による影響で観光業が傾き、赤字が拡大。

2009年以降、観光客は右肩上がりで増加していた中、2020年に発生した新型コロナによって、観光客数は激減した。
JETROより

観光業に軸足を移しつつあったスリランカだが、支那マネーに手を出した結果が借金地獄の始まりである。

スリランカの財政収支は元来、財政支出が収入を上回る状態が恒常化していた。こうした財政赤字が、対外債務の返済を難しくした。その結果、2017年には債務返済と引き換えに、政府が中国に対して南部のハンバントタ港の99年間リースを認めた。それほど、スリランカの国家財政は追い詰められていた。IMFの統計からみると、財政赤字の対GDP比は、2021年には12.6%になった。財政の悪化は、海外借り入れを含め、政府債務の拡大につながる。

JETROより

とはいえ、切っ掛けはスリラン放漫財政にあるので、支那が悪いとまでは言い切れない。弱ったところに国際ヤクザに絡まれた感じというのが、正しい表現だろうか。

スリランカの貿易は、アパレル、茶類などの農産品関連を輸出する一方、国際商品市況に左右される燃料や単価の高い機械類を輸入する構造となっている。それゆえに、貿易赤字体質が続いていた。この埋め合わせのため、外国人観光客の誘致が重要な外貨獲得の手段になっていた。しかし、新型コロナによる逆風によって、ヒトの流入が途絶え、経常収支の赤字は、2021年にGDP比4.3%と一気に拡大。

JETROより

経済構造が問題だとはいえスリランカの国土はさほど広くないため、経済構造の改革はなかなか難しい。外貨獲得の手段が観光に頼りっきりというところがそもそも問題なのだが、そこは簡単に変えられない。

スリランカ大統領、経済改革促す法制度化を推進(スリランカ) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

当面は、苦戦しそうな感じではある。

デモ発生

苦戦した背景には、政治腐敗が関係している。

スリランカで経済危機 なぜ大統領が国外脱出?いったい何が?

2022年7月14日

スリランカで大統領公邸が占拠され、デモ隊が公邸のプールで泳ぎジムでトレーニング。 大規模な抗議デモを受けて、大統領は国外に脱出する事態に。

一体何が起きてるの?

NHKニュースより

2022年の抗議デモ(暴動)発生で、大統領が尻尾を巻いて逃げ出す事態に陥った。

国民の間ではラジャパクサ一族が権力を独占しているという批判が出ていました。

ゴタバヤ・ラジャパクサ氏は2019年の選挙で勝利し大統領に就任しましたが、2015年まで2期10年にわたって大統領を務めた兄のマヒンダ・ラジャパクサ氏の元で国防次官を務めていました。兄弟で合わせて10年以上大統領として実権を握り、首相や財務相に親族をあてるなど一族支配を強めてきました。

また、ラジャパクサ政権は兄弟ともに中国に近いとされ、中国企業などによる大規模な開発事業で国の借金を増やす一方、私腹を肥やしてきたという批判にもさらされています。

NHKニュースより

で、スリランカ大統領は当時首相だったラニル・ウィクラマシンハ氏に就任しているのだが、支那との関係を断ち切ることができなかったようで。

スリランカ大統領、「一帯一路」による開発推進に意欲示す

2023年11月02日

中国の習近平国家主席とスリランカのラニル・ウィクラマシンハ大統領は10月20日、北京で首脳会談を実施した。

同会談を受け、ウィクラマシンハ大統領は「一帯一路」による開発を積極的に推進する姿勢を示している。10月14日に公開された中国国際テレビ(CGTN、中国国営中央テレビ系列の国際放送)のインタビューで、同大統領は「一帯一路」について、両国のみならず世界の国々が参加し、貿易投資やインフラ開発の分野で協力しており、スリランカにとって今後も活動の中心となると語った。また「一帯一路」への期待として、世界的に気候変動が進行し、低・中所得国の債務が拡大する中で、地球規模の課題解消につながる取り組みを求めた。

JETROより

このポンコツ大統領はぁ……。

ただまあ、支那経済も随分と傾いていて一帯一路政策頼みでスリランカ経済が復活するか?というと、そんなわけもなく。

そもそもスリランカにおいてインフラ整備に携わっているのは現地人ではなく、例によって支那人である。スリランカには金もないが技術も無かったので、ある意味仕方のない面はあるのだが。

円借款再開を予定

で、そこで出てきたのが日本である。

スリランカへの円借款再開を予定、債権国と早期合意を期待-上川外相

2024年5月4日 20:29 JST

スリランカを訪問した上川陽子外相は4日、最大都市コロンボで記者団に対し、主要債権国で構成する委員会と同国との間で、基本合意書の「早期署名」を日本として期待していると語った。

Bloombergより

支那経済があっぷあっぷしていて、お金の出が渋くなってきてから、日本が積み上がっている外貨を使って札束外交という流れである。

時として、札束で相手を殴るような外交はそれなりの効果を上げる。それは支那がスリランカに対して仕掛けたように、日本も似た切り口でのアプローチをかけたわけだ。

上川氏と会談したサブリ外相は、インフラとグリーン・デジタル経済を含む分野で、日本のプロジェクトと新規投資の再開を求める意向を示した。

Bloomberg「スリランカへの円借款再開を予定」より

中途半端に終わっているインフラ整備と、グリーン・デジタル経済に投資するという意向を示したのだ。

なお、グリーン・デジタル経済というのは今ひとつ意味が分からないが、恐らくは炭素排出量を減らす「グリーン」と、デジタル・ガバメントの方針を提示したのだろう。

骨太方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~ : 経済社会総合研究所 - 内閣府
2021年6月、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2021」(以下「骨太方針2021」)を閣議決定しました。

旧態依然としたスリランカの政治の改革を、やんわりと促した感じだろう。むしろ、改革しないなら金を出さないぞ、というわけである。

一応、スリランカの現大統領の方針も似た話が出ているので、スリランカとしても乗りやすい話だろうと思う。前大統領が汚職でやられてしまったので、クリーンな政治を目指さざるを得ないしね。

そういう意味で、今回のスリランカへの外交方針は、意外に真っ当な話であった。

上川外相、アフリカ・アジア歴訪へ 中国影響高まる地域で連携強化:朝日新聞デジタル
上川陽子外相は4月27日~5月6日の大型連休中の外遊先として、2~3日のパリでの経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会への出席とともに、アフリカとアジアの新興国・途上国を歴訪する方針を固めた。フラン…

上川氏の外遊先は、主に支那が狙っている地域をピンポイントで巡る感じである。

良いんじゃないでしょうか。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    札びらで横っ面ひっぱたいて、目が覚めてくれると良いんですが。
    その札びらが、「赤い手」に持って行かれないようにもしないとですが。
    現地法人つくって現地人雇用、育児施設付き、とか、そのあたりが現実策でしょうか?

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      札束外交も外交の一環ですから、これだけでOKというわけには行きません。
      紐付きでしっかり監視をし、関与をし、工作活動もやっていかないと、単純に美味しく頂かれるだけですからね。
      ご指摘のような「現地法人企業」を作ることも大切だと思いますが、昔やっていたように知識層の教育にガッツリ関わっていく、現代であればフィリピンなどで行っているように沿岸警備隊の教育や合同演習なんかをやっていくというのが、現実的ではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました