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金門島事変に繋がりかねない漁船転覆事件

台湾ニュース
この記事は約11分で読めます。

また、これがかなり微妙な地域での事件発生だね。

台湾当局取締り中に中国漁船転覆2人死亡 金門島付近の海域

2024年2月15日 14時47分

中国の沿岸に位置し、台湾が実効支配する金門島近くの海域で14日、台湾当局の取締り中に中国の漁船が転覆し、2人が死亡しました。台湾当局は、漁船が台湾側の海域に入ってきたとしていますが、中国政府は「悪質な事件だ」と強く非難しています。

NHKニュースより

NHKニュースは報じていないが、支那には海上民兵が漁船に乗って工作をしているケースがある。

台湾が「実効支配」する島

地理的には間違いが起きやすい

そもそも金門島というのがちょっとね。

支那から目と鼻の先にあるのが金門島で、台湾が実効支配している地域である。

かつて中国をにらんだ台湾の離島・金門島 今や暮らしは中国頼み

更新日:2018.09.06 公開日:2018.09.06

中国南東部、福建省アモイ市のすぐ沖合に金門島という島がある。中国大陸から10キロも離れていない。1949年の中台分裂で国民党政権が台湾に逃れた後、台湾側が島を実効支配している。

台湾本島からは200キロも距離があり、中国と向き合う最前線の離島だ。台湾軍も駐留している。

GLOBE+より

実効支配しているとはいえ、支那に依存しなければ流通などの不都合もあるので、立ち位置としては非常に危うい場所でもある。

それでも台湾島を守るにあたって、金門島の存在は極めて大きな意味を持っている。一口に金門島と言っても、金門県は九龍江口や泉州の囲頭湾を望む大金門島、小金門島および大胆島(別称・大担島)や二胆島など12個の島から構成される。一般的に金門島といえば、大金門島のことを指すみたいだけどね。

支那と台湾との争いは散発的に続いていて、金門島と大陸との間で砲声が止んだのは1979年になってからのこと。1949年に蒋介石が台湾島に移ってから、実に30年も緊張状態を続けたのがこの金門島なのである。散発的に砲弾が飛んでくる環境ではあるが、台湾にとっては支那との有事が勃発した時に、支那ののど笛に食らいつく為にどうしても確保しておきたい島である。

海底ケーブル切断

しかしながら、台湾が維持する離島ではあるものの、様々な嫌がらせも発生する。

海底ケーブル切断で電話やネット遮断、中国船関与か…台湾本島で同様の事態懸念

2023/03/03 07:51

台湾が実効支配する馬祖列島と台湾本島を結ぶ通信用の海底ケーブル2本が2月上旬に相次いで切断され、島民の生活に支障が出た。中国の船舶が関与したとみられ、台湾有事となれば本島が同様の事態に陥る懸念が強まっている。

讀賣新聞より

記事は、馬祖列島と台湾本島を結ぶ通信用の海底ケーブル2本が切断されたケースを報じている。

ただ、この手の海底ケーブル切断は、世界的に見ても珍しい話ではない。問題はその頻度だ。

台湾当局によると2020年以降、ケーブルの人為的な切断は30件あった。世界のケーブル損傷は年100~200件程度とされ、台湾の頻度は比較的高い。

本島と馬祖列島や金門島、澎湖諸島などの離島や、離島同士を結ぶケーブルが被害に遭った。30件のうち漁船や海砂採取船が切断したケースは21件に及ぶ。離島周辺では、以前から中国の漁船や海砂採取船の強引な作業が問題となっていた。

讀賣新聞より

おそらくは、意図的に切断していると思われる事案で、意図せず切断してしまったケースもあるのだろうが、おそらくは幾つかのケースでは切断してから発見するまでの時間や、修復されるまでの時間を計っていると思われる。

通信が途切れてしまえば、作戦遂行に影響がでる。有事の際にそれらの情報が把握されていることは、嬉しくない。

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領空侵犯

更にこんな話も最近増えている。領空侵犯である。

台湾、中国軍機103機を確認 「嫌がらせ」の中止求める

2023.09.19 Tue posted at 09:22 JST

台北(CNN) 台湾周辺で17日から18日にかけ、24時間に中国軍機103機が確認されたことに対し、台湾国防部は声明で「執ような軍事的嫌がらせ」を中止するよう求めた。

国防部は中国軍機の活動を「台湾海峡と地域の安全への重大な挑戦」と非難した。

CNNより

こちらも、台湾空軍の力を削ぐ目的と、台湾空軍の対応力を測る目的があるのだと思われる。

支那の戦闘機が来る度にスクランブルをかけていると、台湾空軍の戦闘機の消耗が激しいし、事故に至る可能性もある。かといって、全部スルーするのも難しいのが悩ましいところである。

漁船による嫌がらせ

というわけで、こういった海底ケーブル切断や領空侵犯などと同じように、台湾に圧力をかける目的の一環で行われていると思われるのが漁船による嫌がらせである。

これについて、台湾当局で対中国政策を担当する大陸委員会は「中国の船が、台湾側の禁止水域に入って操業し、取締りを逃れようと蛇行するうちに転覆した」として、対応に問題はなかったとしています。

そのうえで「われわれの法執行に協力するのを拒んで不幸な事件が起きたことに深い遺憾の意を表し、中国側が類似行為を取り締まるよう希望する」と呼びかけました。

NHKニュースより

台湾側は、不法操業を取り締まる一環であるという説明をしているのだが、おそらくは海上民兵の可能性も考えているだろう。

南シナ海を騒がせる「海上民兵」 中国政府は存在を否定

2023.08.14 Mon posted at 18:05 JST

領有権をめぐる論争が続く南シナ海で、中国海警局の船がフィリピン沿岸警備隊の小型船に対して放水銃を使用した。国際紛争の政治的火種という見方が一般的な海域であることから、非常に気がかりなニュースだ。

だが、この事案を収めた映像を詳しくみれば、間違いなく、より一層衝撃的なものが細部に潜んでいる。専門家によれば、中国政府の「リトル・ブルー・メン」とも呼ばれる海上民兵と中国軍とのつながりを示す、これまでで最も説得力のある証拠だ。

CNNより

海上民兵の存在を支那は否定しているが、状況から考えて確実に存在すると言われている。日本近海に訪れた支那の船団も海上民兵が混ざっていた可能性が高いと言われている。

フィリピンや米国および西側諸国の海上安全保障の専門家は、これらの船が中国政府の支配下にある海上民兵だと考えている。専門家によれば、こうした海上民兵の船は数百隻強に上り、中国が南シナ海および周辺で領有県を主張する際に、非正規の(表向きには否定できる)軍隊として活動しているという。

CNNより

海警局の手先として海上民兵が非正規で活動している可能性は、アメリカも指摘していて、当然、台湾にちょっかいをかけてくる連中もそうした一派である可能性が高い。

金門島付近での揺さぶりに対して、台湾海軍がどう動くのかということまで調査している可能性があるという意味だ。そのうえで、今回は転覆してしまったのだが……。まあ、普通は転覆しないよね。

何をやって転覆したのやら。台湾側の主張を信じるならば、蛇行運転をやっていたからということらしいが。海に投げ出された乗っていた4人のうち、2人が死亡したという事件になってしまったが、台湾軍の行きすぎというのは調査される流れになるだろう。

金門島の周辺では、これまでも中国漁船とみられる不審な船がたびたび目撃され、台湾当局はパトロールを強化しています。

CNNより

不審船が工作船なのか、そうでないのか。まあ、台湾当局としては全部が怪しく感じるだろうし、真剣に対応せざるを得ない。今回はそれが裏目に出たということかもしれないね。

台湾軍の劣化

とはいえ、こうしたこまめな揺さぶりは、台湾軍の警戒を高める一方で、その防衛力を削っていく効果もある。

そうでなくても、台湾軍はかなり弱体化しているらしいのだよね。

【解説】 アメリカが静かに台湾を徹底武装させていく

2023年11月8日

アメリカのジョー・バイデン大統領は最近、台湾に対する8000万ドル(約120億円)の資金供与を承認した。アメリカ製の軍備品を購入させるためのもので、中国は「遺憾であり反対する」とした。

はた目には、たいした額ではなかった。先進的な戦闘機1機の値段にも満たない。台湾はすでにアメリカの軍備品を140億ドル分以上発注している。たかが8000万ドル増えることに、大きな意味はあるのだろうか?

~~略~~

台湾情勢を長年注視してきた専門家らは率直な見方を示す。それは、台湾は中国の攻撃に対して、嘆かわしいほど準備不足だというものだ。

問題は数多い。台湾軍は老朽化した戦車を何百台も保有しているが、新型の軽量ミサイルのシステムが少なすぎる。軍の指揮系統、戦術、方針はこの半世紀、更新されていない。多くの前線部隊には、本来の人員の60%しかいない。

台湾は中国で防諜活動を行っていないとされる。台湾の徴兵制度は崩壊している。

兵役につく期間は2013年に、1年からわずか4カ月に短縮された。ただ来年、また1年に戻される。だが、もっと大きな課題がある。兵役につく若者らから、冗談めかして「サマーキャンプ」と呼ばれるほどの内容なのだ。

「定期的な訓練はなかった」と、最近兵役を終えた男性は話す。「2週間に1回くらい射撃場に行って、1970年代の古い銃を使った。的に向けて撃ちはした。だが、狙い方をまともに教わらないから、みんな的を外しっぱなしだった。運動はゼロだった。最後に体力テストがあるが、何の準備もしなかった」。

BBCより

兵器の老朽化もさることながら、徴兵制度も維持していることが足を引っ張りかねない状況のようだ。韓国軍もそうだが、莫大な費用をかけて徴兵制を維持する意味は、あまりない。

徴兵制度を維持することで、台湾軍への理解を高めるという側面がある一方で、本来は軍備拡張に割きたい予算をそちらに振り向ける必要がある。

実際、台湾軍の装備がかなり老朽化していて、支那の人民解放軍と対峙した場合には数日持ち堪えられないとまで揶揄されている。

アメリカとしては、とにかく自前で持ち堪えられないと台湾防衛処ではないので梃子入れを始めたようだが、まだまだ足りない状況である。潜水艦も漸く更新が始まったところだしね。

尤も、今回の件で台湾有事に近づいたと言うつもりはない。緊張は高まっているが、支那にとって今動いたところでメリットが薄いからだ。……ただ、支那はメリットだけが行動原理を支えている訳ではないから、突発的に始まることは否定できないんだけれども。

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追記

支那がどのような対応をしてくるかを見ていたのだけれど、思いの外弱気な対応だった。

中国 “金門島周辺でパトロール強化”漁船事故受け対抗措置か

2024年2月19日 10時43分

中国海警局は、台湾の離島の金門島周辺の海域でパトロールを強化すると表明しました。先週、島の沿岸で台湾当局の取締り中に中国の漁船が転覆して2人が死亡した事故への対抗措置をとった形です。

NHKニュースより

「金門島付近の海域でのパトロール強化」とあるんだけど、そもそもこの海域での主導権争いというのは、なかなか厄介な話になっている。

本文を書いている時には思い至らなかったのだが、よく考えたら「台湾側の当局」はどこが取り締まりをしているのかが記事には一切触れられていない。

台湾、沿岸警備当局の行動を擁護 中国船転覆で2人死亡受け

2024年2月15日午後 4:52

 台湾で対中国政策を担当する大陸委員会は15日、中国沿岸に近い台湾の離島に近付いた中国のスピードボートが台湾沿岸警備当局の船から逃げようとして横転し2人が死亡したことについて、当局の行動に問題はなかったと擁護した。

台湾側によると、スピードボートは14日、金門北碇島付近の禁止水域に侵入。転覆したことで乗っていた4人のうち2人が死亡した。

大陸委は初期調査を基に、沿岸警備当局は法律に従って職務を遂行し、不適切なことは何もしていないと表明。台湾海域で違法に浚渫したり、爆薬や毒物を使って漁をしたり、ゴミを投棄したりする中国船を止められなかったのは中国であり、指摘しても状況は改善されなかったと主張した。

ロイターより

ロイターの記事に詳しい内容が書かれているが、こちらにも「当局」としか書かれていない。

台湾には台湾沿岸警備を行う海巡署かいじゅんしょなる組織が存在する。日本の海上保安庁よりも武装がしっかりした沿岸警備任務の出来る組織で、今回のこの取り締まりもおそらくは海巡署かいじゅんしょの仕事であったと思われる。

そして、支那の違法操業が絶えないことから、取り締まりを強化している状況なのだが、頼清徳体制になるにあたって更にこのスタンスを明確化させようという時期であったようだ。

金門島は台湾当局が実効支配し、沿岸に中国船が許可なく進入するのを禁じる「禁止水域」や「制限水域」を設定していて、台湾側は、対応に問題はなかったとしています。

これに対して、中国政府で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室は当日、「悪質な事件だ」として台湾の民進党政権を強く非難したのに続き、17日には「『禁止水域』や『制限水域』などというものはそもそも存在しない」という談話を発表しています。

NHKニュース「中国 “金門島周辺でパトロール強化”漁船事故受け対抗措置か」より

NHKニュースは台湾が「実効支配」しているなどの言葉を使っていて、海巡署という言葉は使わない。これは台湾に自治権がないという建前である以上は、警察組織も非合法だという建て付けにしないと整合性がとれないからだろうと思われる。

そして、「禁止水域」や「制限水域」の概念も二重括弧にしてあって、台湾側が勝手に言っているという立場で記事を書いている事が分かる。

台湾という国が実質的に独立した国家であることを認めるのは都合が悪いって事なんだろうね。

しかしそれにしたって、取り締まり強化だけですか。取り敢えず支那国内向けに強い姿勢を示す意味で発信した感じなんだけれども、意外に弱腰な印象である。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    先の共同開発区ではありませんが……

    いくらでも難癖付けようと思えば、火のない所にガソリンぶちまけて放火するのが中韓のやり方ですから……

    そのためには、海警であろうが、民間人であろうが、いくらでもすり潰すでしょうし。
    ※その意味で、中共には本当の意味の「民間人」は居ない、と考えられますね。

    風雲急を告げる情報ばかり、明日開戦しても驚きませんが、困りますよね……

    ※その中で、H3打ち上げ成功は明るいニュースでした。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      共産圏のロジックは良く分かりませんね!
      とまあ、それを言ってしまうとそこで終わってしまいますが、この件は見方を変えれば台湾側の姿勢がより明確になったということでもあるのでしょう。台湾側の姿勢が変わったことで、支那側が対応を変える可能性もあるかもしれませんね。

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