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台湾初の自主建造潜水艦の完成と、検察の捜査

台湾ニュース
この記事は約8分で読めます。

めでたい!と言うべきか、きな臭い!と言うべきか。

台湾初の自主建造潜水艦 中国への機密漏えい疑惑 検察が捜査へ

2023年10月2日 20時58分

台湾が初めて自主建造した潜水艦の機密が中国に漏えいした疑惑が浮上し、台湾の検察が捜査に乗り出すことになりました。

NHKニュースより

台湾初の自主建造潜水艦は、先月28日に完成して進水式が行われている。ところが、この潜水艦を巡って早速スパイ疑惑が。

短い記事だけれども、前の記事、人気なさそうなので追加で1つ。

台湾にもスパイは一杯

自主建造潜水艦

台湾が台湾周辺海域を守るにあたって、どうしても欲しかったのが潜水艦だ。

台湾が初の自主建造潜水艦を披露 対中防衛を強化

2023年9月28日

台湾は28日、初となる自主建造の潜水艦を披露した。台湾は、中国が攻撃してきた場合の防衛力を強化している。

~~略~~

この電気式ディーゼル潜水艦の建造費は15億4000万ドル(約2300億円)。今後数回の試験を経て、2024年末に海軍に引き渡されるという。中国語の古典に登場する、空も飛べる巨大な魚にちなんで「海鯤」と名付けられた。

BBCより

台湾がこれまで潜水艦として保有していたのは、オランダ海軍のズヴァールトフィス級潜水艦を原型として作られた海龍級潜水艦2隻のみ(正確には4隻+2隻)で、1987年より運用されて長らく更新されていなかった。それ以前にアメリカから調達した潜水艦に関しては老朽化が激しく使用に耐えないレベルらしい。コスモス型潜水艦も2隻保有しているが、これを戦力に数えて良いかは微妙だ。一応魚雷は装備しているが、水中排水量が僅か70tの小型艇だからね。

で、海龍級潜水艦はオランダから購入する形で取得していたのだが、支那共産党の介入によって後続艦を手に入れることはできなくなった。

其れ以降、アメリカに働きかけてみたり、ドイツに声をかけてみたり、日本に打診してみたり、という噂は聞いたが、結局外国から購入する路線は実現に至らず、自国建造の道を模索することに。

8隻を建造する予定

2020年に入ってこんなニュースが流れる。

台湾、潜水艦8隻の建造開始 高まる中国の脅威に対抗

2020年11月24日 21:13

台湾は24日、潜水艦8隻の建造を開始した。中国政府が好戦的な姿勢を強める中、防衛力の増強を目指す。

AFPより

当初は2025年までの引き渡し予定をしていたが、冒頭のニュースに示すように本年9月28日に漸く進水式に漕ぎ着けたというわけだ。

戦闘システムや魚雷は、米ロッキード・マーティン社から調達したもので、おそらくはアメリカ海軍との連携をある程度想定しているものと予想される。尤も、詳しい情報は報道されていないが。

海鯤級潜水艦の1番艦は、これからテストを繰り返して2025年の就役を目指すのだと思うが、台湾有事が危惧されているだけに、一刻も早い引き渡しが求められるのだろう。

国家の安全と国防の機密に関わる

ところが、この建造計画が漏れているという指摘が出てきた。

この潜水艦をめぐっては、建造を指揮した元参謀総長が、一部の台湾メディアに対し、 ▽国会議員にあたる立法委員の中にプロジェクトを終始妨害した人物がいるとか、 ▽落札できなかった業者が機密資料を中国に漏らしたなどと話し、その内容が報じられていました。

こうした報道について台湾の最高検察署は2日、「国家の安全と国防の機密にかかわるもので、各界の重大な関心を引き起こしている」として、高等検察署と台北地方検察署に対し、迅速に捜査するよう指示しました。

最高検察署は、疑惑の詳しい内容や具体的な人物の名前などには言及していません。

NHKニュースより

こうした事態は、さほど驚くべき話でもない。

台湾には支那共産党親派が結構いて、前政権の馬英九氏も外省人がいしょうじんと呼ばれる支那より台湾に移住して定住した人物だとされている。

台湾の馬英九前総統、双十節の式典欠席へ 現政権の「台湾独立路線」に抗議

2023/10/2 18:08

台湾の最大野党、中国国民党に所属する馬英九前総統は2日、建国記念日に相当する10日の「双十節」を祝う式典に出席しないことを明らかにした。蔡英文政権が同式典の英語表記を「Taiwan national day」に変えたことに抗議するためだという。

産経新聞より

こういった人物は台湾でも珍しくなく、寧ろ台湾独立派の方が少数である。現政権も台湾独立を口にしたことはあるが、独立派というよりは「既に独立した国家である」という立場を示しており、現路線を維持する立場である。

そうすると、反政府を掲げる野党やその支持者の多くは潜在的にスパイの素養そようがあるわけで、其れとは別に実際にスパイ活動も行われている。

近年、台湾では、中国のスパイ活動が政治、経済、国防や情報、文化、イデオロギーなどあらゆる分野に浸透し、特に民進党政権となって以降、その活動が一段と強化されている。

台湾で暗躍する中国のスパイの数は、5000人以上と見られ、蔡英文総統は2019年1月、政府の捜査機関、法務部(法務省)調査局の式典で「昨年は(スパイ行為など)国家安全に関わる事件で計52件、174人を摘発した」ことを明らかにし、「(台中)交流活動を名目に情報収集をしたり、台湾にスパイ組織を構築したりするケースがある」(以上、括弧は筆者)と中国当局による諜報活動に強い警戒感を示した。

THE GOLD ONLINEより

摘発される人も後をたたないのだ。

参謀総長の乗ったヘリが墜落

また、軍部の中にもスパイがいる可能性があり、近年も恐ろしい事故が発生している。

台湾軍ヘリが墜落、参謀総長ら8人死亡 国防省発表

2020年1月3日 2:41 

台湾国防省は2日、13人を乗せたヘリコプター、UH60Mブラックホーク(Black Hawk)が同日、台北近くの山地に墜落し、沈一鳴(Shen Yi-ming)参謀総長(62)ら8人が死亡したと発表した。残る5人は救助されたという。

AFPより

この事故は、発生当初は「斬首作戦か?!」と騒がれたが、調査の結果、「複合要因によるもの」という曖昧あいまいな結果報告となった。

台湾・空軍ヘリ墜落事故で調査結果発表 天候と地形、人的要因

2020/2/15 14:49

台湾の国防部(国防省に相当)は15日、参謀総長ら8人が死亡した1月のヘリ墜落事故について、天候と地形、人的要因の3つの複合要因によるものだとする暫定的な調査結果を発表した。

墜落した多用途ヘリUH60Mのブラックボックスを製造元の米国に送って解析した結果、機体に異常はなかったことが確認された。

産経新聞より

メーカーからは「機体に異常が無い」という報告があり、軍部は「天候と地形、人的要因の3つの複合要因」と判断している。

国防部によると、事故機が台北を離陸した後、目的地の北東部・宜蘭県付近で急速に雲が発達。同機は目視飛行で上空の雲を避けて飛行していたが高度が下がり過ぎ、航路沿いの雲に隠れた山の峰に衝突した。操縦士は墜落直前まで、台北の管制塔と通常の交信をしていた。

産経新聞より

しかし、この事故の直近に第15回台湾総統選挙が行われており、与野党共に選挙運動の真っ最中であった。当時は野党有利という下馬評もあっただけにかなり緊張した雰囲気での選挙で、開票は2020年1月11日。あまりにタイミングとしては出来すぎている。小説が1本書けるレベルだろう。

とはいえ、ヘリコプターの墜落事故は自衛隊でも今年5月に発生したばかりで、陸上自衛隊第8師団長の坂本陸将他10名を失っている。自衛隊の将来を背負って立つ人物だと目されていただけに、他国からの干渉を疑われたが、現時点では事故だという発表のままだ。

おそらくは台湾のケース同様、真実はどうあれ「不幸な事故である」という扱いのままだろう。(注:両方とも事故である可能性は高いとは思っている)

話は脱線したが、この2020年のヘリコプター墜落事故の際にも、真っ先にスパイ工作が疑われたのは事実である。

台湾侵攻の抑止力としては弱い

もっとも、実際に台湾有事が発生した場合には、潜水艦の有用性はさほど高くないだろうと見積もられている。台湾防衛の為にはどうしても潜水艦が必要であるとは言え、だ。

ただ米シンクタンク、ランド研究所の政治学者レイモンド・クオによれば、潜水艦の有用性はより低い。中国が対潜戦能力を高め、移送プラットフォームの展開力を拡大しているためだ。

Newsweekより

支那海軍が空母などによる活動を活発化させているために、潜水艦の複数保有は抑止力としての意義は大きいものの、支那との距離が近い上に対潜哨戒能力や対戦攻撃力を高めているために、物量作戦を展開すると予想される台湾侵攻に対しては効果が限定的だという意味だ。

台湾海峡は潮の流れが速くて浅いために、潜水艦が活動するには都合が悪いという事情もある。

だが、抑止力として効果が高いというのは、支那が配備を嫌がっていることからも明らかだ。

台湾のこの動きに、中国は公に反応していない。しかし国営の環球時報は今週初め、台湾は「白昼夢」を見ており、潜水艦の計画は「ただの幻想」だと記していた。

また、中国の人民軍は「すでに島の全周に多元的な対潜網を構築している」と報じていた。

BBCより

おそらくは行われたであろう今回のスパイ活動も、台湾防衛における潜水艦の有用性を示していると言えるだろうね。

ただ一方で、今回の潜水艦建造には、アメリカ、日本、ドイツやオランダの技術協力があったとされていて、本当にスパイ活動が行われて情報流出があったとなれば、台湾としてもメンツにかけてそのあたりを明らかにしていく必要がある。

……あれ?短い記事で終わるはずが、何故か陰謀論めいた話まで書いてしまった。お付き合いありがとうございました。

コメント

  1. アバター 匿名 より:

    台湾のようにスパイが摘発されるのは公安が正常に機能している証拠とも言えます
    日本にも多数の中国スパイがいると考えられますがなかなか摘発されないですね。孔子学院も放置だし、中国警察の日本支部が国内にあるのがわかっているのに放置している。全く日本の公安は何をしているのやら。
    逮捕出来ない理由でもあるのでしょうか

    • 木霊 木霊 より:

      少なからず摘発されていますから、機能しているのは間違いないでしょう。
      日本だって、と思うのは、仕方がないかなーと。
      日本の公安調査庁ですが、とても残念なことに法務省管轄下にあり、調査は出来ても逮捕権がありません。実動隊は警察なんですが、情報の共有が難しい(公安調査庁は国家機密に関わる案件を扱うため)こともあって、警察が挙げた証拠に基づいて逮捕って事に。スパイ防止法が出来れば、警察も逮捕しやすくなるんでしょうけれど。

  2. アバター 河太郎 より:

    こんにちは。シャーロック.ホームズに
    潜水艦設計図をめくる攻防の話しがあり、一次大戦前夜も今も潜水艦技術というのが先端技術てあるのは変わらないようで。そしてそれを巡るスパイも。
    やはり防諜は大事で。日本もホントにスパイ防止法を制定しないと!
    そういう意味ではTVでVIVANTなるドラマが成功したのは良かったです。基本的に陸自の諜報組織とか、存在の有無に関わらず「悪者」と描かれるのが普通てしたから。たかがドラマなれど、ヒットの背景には危機感の認識があるからだろうと。もちろん警告を発信し続けてきた木霊様らブロガーの頑張りもある。何にせよ必要性の認識が広まるのは良い事です。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      シャーロックホームズは読みましたが、潜水艦設計図の話ってありましたっけ?と思って調べたら、「ブルースパーティントン設計書」がそれに該当しそうですね。残念ながらこの話は読んだことがありません。
      そして、紹介頂いたVIVANTも観てないんですよねぇ。主演を堺雅人氏がやっているだけに気にはなっているんですが。

      日本では「スパイ」というと、まだまだ忍者と同様にアクション中心のイメージなんですよねぇ。
      ですが、陸軍中野学校の卒業生で構成された藤原機関などの実績や、非公式の「別班」の存在なんかもありますから(VIVANTの監督だったかも別班の存在をラジオで聞いてからスタートしたそうな)、もうちょっと現実的なドラマや映画、マンガなんかを増やしても良いのかなと。その上で実際に諜報機関を整備すべきでしょう。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    タイトル見て「すわ日米技術を台湾にタダで渡したか!」と思いましたが、実の所はある意味中共の平常運転で。
    まあ、「ちょうどいいから釣り針仕込んどくか」位のことはすると思ってますし、魚を逃がしたのか生け簀状態なのかは、多分当人にすら分からないでしょう。
    その意味で、本邦も釣り針いっぱい仕込んでおいてくれているのなら良いのですが。

    中国が潜水艦をあまり気にしないのは、洋上艦が出てくる前に掃討しきる自信があるのか、あるいはその前に台湾島そのものの反撃能力と政権を奪う目算があるのか、かなって思います。
    そうでなければ、脆弱な揚陸艦にとって、潜水艦は恐怖の対象でしかないですから。
    ※それとも、これが就役する前にやらかすつもりなのかな?

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      いやー、織り込み済みだったとは思いますが、釣り針を仕込めたかどうかは。アメリカがガッツリ噛んでいるので、リスクヘッジしていることは確実だと思うんですがね。

      それと、支那が潜水艦の有用性を重視していない理由は……、恐らく海戦経験がないからじゃないですかね。
      良くも悪くも陸戦重視の国だと思います。

      • アバター 七面鳥 より:

        >恐らく海戦経験がないから

        ああ……

        本邦みたく、潜水艦で通商破壊されて干上がった経験はありませんね。
        その反動が、今の海自の対潜絶対殺すマンぶりですが……

        海戦経験、定遠鎮遠で止まってますし……

        太平洋で四年間、本気と書いてガチのデスマッチした日米とは何もかもが違うのかも知れませんね。
        ※この意味では、欧州も話にならない。

  4. アバター 匿名 より:

    台湾の潜水艦は何処の設計だろう、台湾で開発できない装備は?
    アメリカを中心とした影のコンソーシアムがあるんだろうねぇ。

    • 木霊 木霊 より:

      Wikiなんかにも書いてありますが、アメリカや日本の技術協力はあったことが確実です。アメリカの戦闘システムが入っていますからね。
      ただ、設計はおそらく台湾自身がやったんじゃないですかね。

  5. アバター 匿名 より:

    中国の原潜の噂が気になりますが、放射能は漏れてないのかな?
    本当に浮上出来たのかな?
    家に帰らない人がいるようですしね。

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