興味深い動きが出てきた。
脱炭素供給網多様化へRISE発足、中国依存から脱却-あすG7開催
2023年10月11日 8:45 JST
主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が12日にモロッコ・マラケシュで開かれる。議長国の日本が主導し、中国の影響力が増している途上国を巻き込んで脱炭素関連の供給網を多様化する新たな枠組み「RISE」も発足する。
Bloombergより
何かというと、脱炭素関連の供給網を支那抜きで作ろうな!という取り組みRISEである。
国際的枠組みの組み替えが狙い
脱炭素関連の供給網
「脱炭素」という合い言葉は欺瞞に満ちたモノではあるが、合い言葉は何だって良いのである。で、軸になっているのはG7(主要7カ国:日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ)なんだそうで。
で、RISE(Resilient and Inclusive Supply-chain Enhancement=強靭で包摂的なサプライチェーンの強化)が受け持つのは、低・中所得国に技術的・資金的支援を行い、人権や環境に配慮した新たなサプライチェーンを構築しつつ、供給国側の産業高度化や持続可能な発展にも貢献するということになっている。
ADB(アジア開発銀行:The Asian Development Bank)と目的が被る部分もあるのだけれど、RISEの方はサプライチェーンの構築(ただし、支那抜きで)というところが重要ということになっている。
露骨だなー。
ちなみに、日本が議長国なので日本主導と言うことになっているが、ADBもそうなんだけど、この手の枠組みを作る時には、アメリカか日本がやるって事が多い。
国際ヤミ金は色々と不都合がある
なお、国際闇金として名高い支那主導のAIIBだが、最近不評である。最初から不評であったのだけれど、本性が露呈してきたということかな。
カナダ政府 中国主導のAIIBの取引 ただちに停止する方針
2023年6月15日 21時40分
カナダ政府は、中国が主導するAIIB=アジアインフラ投資銀行について、カナダ政府主導の取引をただちに停止する方針を明らかにしました。
カナダのフリーランド副首相兼財務相は14日、記者団に対し、中国が主導するAIIB=アジアインフラ投資銀行におけるカナダ政府主導の取引をただちに停止する方針を明らかにしました。
NHKニュースより
取引を停止する国も出てきたのだが、参加国は増えている。
中国主導のAIIB、加盟109カ国・地域に拡大 プロジェクトは235件に
2023/9/26 21:20
中国が主導する国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は26日、加盟国・地域が3カ国増えて109になったと発表した。手がけたプロジェクトは235件、投融資の総額は計448億ドル(約6兆6千億円)になったと明らかにした。
産経新聞より
ただ、プロジェクトが何れも一帯一路絡みなんだけど、一帯一路構想自体が破綻寸前と言うこともあって先行きは不透明だ。
中国企業の海外事業で人権侵害告発が多発=国際NGO報告書
2021年8月11日3:26 午後
国際非政府組織(NGO)「ビジネスと人権リソースセンター」は11日公表の報告書で、中国は海外投資で責任ある投資家と見なされようとしているが、実際には海外事業に関連した人権侵害が多いと指摘した。特に目立つのが鉱業分野だとした。
報告書によると、2013-20年に海外事業に携わる中国企業に起こされた人権侵害の告発は679件。業種別では金属鉱業が最多の236件で、このうち世界第2の産銅国ペルーや、スズやレアアースの主要供給国であるミャンマーでの事例が目立つ。
ロイターより
数年前から支那企業による人権侵害事例が多発しているようで、これがAIIBにも影を落としている。支那のビジネスは、一帯一路構想を立ち上げてこれの関連事業に積極的に金を出しますよ、とやる。そしてAIIBを利用してお金を貸し付けておいて、実際に案件に携わるのは支那企業ということになる。関連で仕事が発生するので全く無意味と言うことではないんだろうけれど、利用する国家にとって旨みが少ないどころか、実利的にはマイナスが生ずる。
ADBも支那支援から足を洗う
ちなみに、これは去年の記事ではあるが、ADBの事業も支那とは手を切る方向に向かっている。
アジア開発銀行、中国への支援終了検討へ 総裁が表明
2022年8月19日 0:00
アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁は日本経済新聞のインタビューに答え、中国への新規融資を終える検討を2023年に始めることを明らかにした。世界2位の経済大国になった中国は所得水準が向上した。アジア向け融資も主導し、支援を受ける立場ではないとの見方がある。ADBは中国が借り手でなくなれば、低所得国の支援に注力しやすくなる。
日本経済新聞より
ADBにとっても、支那が大口の顧客だったという側面があったので、ここから手を引くことは大きな意味がある。
実際にADBが支那への支援を修了しているのか、というと、実はこれ失敗しそうな雰囲気だ。
ADB総裁、中国首相と会談 発展の経験広げたいと表明
2023/07/11
アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁は11日、北京市で中国の李強首相と会談した。浅川氏は、中国はアジア太平洋地域の経済成長に大きく貢献をしていると指摘。「中国が成功した発展の経験を広げていきたい」と述べた。中国国営通信新華社が報じた。
李氏は「ADBが引き続き中国の改革開放を支援し、参画することを期待する」と語り、環境保護や脱炭素化などでの協力を呼びかけた。また、気候変動に対するADBの行動を中国は支持するとし、融資を通じて発展途上国の取り組みを強化することに期待感を示した。
共同通信より
明確に支援打ち切りをしようとしたら、支那からかなり強硬にゴネられている状況だ。「支那が成功した発展の経験を広げていきたい」とは、「オマエんとこ、十分発展して成功しているから手を引いても良いよね」という意味だが、支那は「ADBが引き続き支那の改革開放を支援してくれ」と突っぱねた格好だ。
RISEは支那抜きで
発言力の強い支那に「もう支援しないよ」というのがなかなか難しいという意味だろう。
で、G7は新しい枠組みを作って注力していき、一帯一路とは無関係な分野の事業を積極的に取り込むという方針を示したわけだ。
まあ、支那は「環境保護や脱炭素化」の掛け声は出すモノの、実際には何も手を付けていない状況である。「アイツに足を引っ張られるのは叶わないから、抜きで進めていこうぜ」というわけだ。
同枠組みは潜在的受益国となる途上国を巻き込み、中国一国に依存している脱炭素関連部材のサプライチェーンを多様化するのが狙い。今年5月に新潟市で開かれたG7会合で、年内に設立することで合意した。具体的な仕組みや資金規模が焦点となる。
Bloombergより
年内に急いで発足する積もりのようだが、積極的にアフリカ大陸の事業を取り込む方向性になっていて、こうした話には人権的な話も複雑に絡んでいると思われる。
こうした枠組みを発足させた背景には、世界的に需要の急増が見込まれる太陽光パネル、風力発電設備、蓄電池などは、上流工程(鉱物の採掘)は比較的分散しているものの、中流(鉱物の加工・精錬)、そして下流(製造・組み立て)に関しては、特定地域に過度に集中する脆弱性を抱えている、という問題意識がある。
日経BPより
日経BPが濁して書いているが、「特定地域に過度に集中」というのは、支那に牛耳られているという意味である。
G7の声明や日本政府の見解には、サプライチェーンが集中する「特定の地域」について具体的な国名は挙げられていないものの、太陽光発電設備(太陽電池セル、太陽光パネル、パワーコンディショナー)で独占的なシェアを持つ中国への安全保障上の警戒感に加え、中国の新疆ウイグル自治区における強制労働がESGの視点から問題視され、太陽光パネルの調達現場での混乱を招いている実態を指していることは明らかだ。
日経BPより
いや、書いてあった。
これ、日本が主導して立ち上げた格好になっているが、中身はアメリカ中心のブロック経済構築ということになる。半導体関連のサプライチェーンの構築を拡大した格好だね。
支那を外した動きを加速させようと言うことなんだけれど、これまた横槍が入ってくる可能性は高いだろう。何処までスピード感を持って迅速に動けるかという事にかかっている。
追記
コメントを頂いて、なるほどカウンター一帯一路という視点もあるのかと思い、すこし触れておく。
李強総理が「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに出席する各国首相と会談
2023年10月17日14:24
李強総理は16日午前、第3回「一帯一路」(the Belt and Road)国際協力サミットフォーラムへの出席と公式訪問のため来中したハンガリーのオルバーン首相、エチオピアのアビィ首相と北京の人民大会堂で会談した。新華社が伝えた。
人民網より
……と思ったのだが、あまり積極的に報じている日本語メディアはない模様。何故だ!
そんなわけで、紹介いただいた記事をば。
Leaders gather in China for smaller, greener Belt and Road summit
October 16, 20239:32 PM
BEIJING, Oct 16 (Reuters) – When China launched its Belt and Road Initiative 10 years ago, it touted huge infrastructure spending linking it with Western Europe, which as recently as 2019, Britain’s then-finance minister said had “tremendous potential to spread prosperity and sustainable development”.
Ten years on, the most senior EU leader expected to attend the third Belt and Road (BRI) Summit this week is Hungary’s populist Viktor Orban, who will join guests including Russia’s Vladimir Putin and a minister of the Afghan Taliban.
ロイターより
タイトルからして支那をバカにしたタイトルなんだが、それはまあ良いことにしよう。
“Go back to 2013 – China was absolutely ascendant – Xi Jinping was forecasting a windfall from Chinese firms expanding throughout the world, but a number of serious shocks really affected the reach and breadth of the BRI,” said Matthew Erie of the University of Oxford.
The shocks include a trade war with the United States, Russia’s invasion of Ukraine, and the pandemic, said Erie. Other analysts say economic slowdown both in China and globally, and rising commodity prices, have also cast a pall over the initiative.
~~対訳~~
「習近平は、中国企業が世界中に進出することで大儲けできると予測していましたが、多くの深刻なショックがBRIの範囲と広がりに大きな影響を与えました」とオックスフォード大学のマシュー・エリーは言う。
そのショックとは、米国との貿易戦争、ロシアのウクライナ侵攻、パンデミック(世界的大流行)などである。他のアナリストによれば、中国および世界的な景気減速や商品価格の高騰も、BRI構想に暗雲を投げかけているという。
ロイターより
約意「立ち上げ当初は勢いあったけど、残念だったね」
Facing such headwinds, Xi is pushing to make the BRI smaller and greener, and to move from big-ticket projects like dams to high-tech ones such as digital finance and e-commerce platforms. The aim is to aid a broader push for a world order that is multipolar and gives the global south more agency, rather than one dominated by Washington and its allies, analysts say.
~~対訳~~
このような逆風に直面し、習近平はBRIをより小規模で環境に優しいものにし、ダムのような大口のプロジェクトからデジタル金融や電子商取引プラットフォームのようなハイテクプロジェクトに移行するよう推進している。その狙いは、ワシントンとその同盟国が支配する世界秩序ではなく、多極化し、グローバル・サウスに主導権を与える世界秩序をより広範に推進する手助けをすることにある、とアナリストは言う。
ロイターより
約意「だから、習近平はプロジェクトを縮小して、ハイテク製品を売る方向に転換したみたい」
China says more than 130 countries will attend this week, notably from Latin America and Africa, although, unlike in previous years, many more are sending ministers rather than heads of state.
~~対訳~~
中国によれば、今週はラテンアメリカやアフリカを中心に130カ国以上が参加するが、例年とは異なり、首脳ではなく閣僚を派遣する国が多い。
ロイターより
約意「各国も閣僚クラスを派遣することでお茶を濁すみたいだね」
うーん辛辣ぅ。
僕の一帯一路構想に対する評価は、ここまで酷くはない。だが、支那が国内の建築資材のダブつきを解消したいがあまりに、需要を読み間違えた部分は否定できないだろう。たしかに巨大インフラに投資して、それを有効活用してお互いに発展しようという目標は悪くない。
だが、それは所詮絵に描いた餅で、インフラの運用ノウハウすらないところに巨大なインフラを整備したところで、使えずに腐らせるだけである。かつて、日本もODAでかなり失敗した部分でもある。
相手が欲しがるものが、真に相手国に必要なものとは限らないというのが、現実なのである。
そこで、支那は軌道修正をして、ある程度規模縮小をして、テクノロジーを使った商品やサービスを売る方向に方向転換したということのようだが……。
コメント
日本がRISEを本気で主導しているのかはさておき、この新しい政策が静かなる対支那経済戦争の始まりとなりそうな雰囲気が伝わってくる。反面、それだけ支那による第三諸国や途上国の囲い込みが進んでいることが伺える話でもある。
米欧は自分たちが始めた金儲けプログラムなのに、支那にお株を奪われてしまい、余程頭にきているのだろう。
80年代に、わが国の経済力が世界を席巻したとき、プラザ合意以降の米欧によって、わが国の経済ファンダメンタルズが破壊されてきた苦い過去が思い出される。米欧は不都合になるとしれっとゴールポストを動かす連中だからね。
外交において真の友人無し。
国益を前提とするのであれば、何処の国を相手にするにあたっても、ゆだんなく立ち回るべきなのでしょう。
支那の経済的な影響力の大きさには、欧米も相当懸念を示しているようですが、いままでは「上手く利用してやろう」という感じだったんですよね。それを封じ込める方向に舵を切って、RISEはそこに渡りに船と言った感じの話になりそうです。
ただ、機能するのか?に関してはかなり怪しい気がします。
こんばんわ、
そのRISEが相対する支那の一帯一路サミットが今週北京で行われます。130か国が参加。
https://www.reuters.com/world/china/leaders-gather-china-smaller-greener-belt-road-summit-2023-10-16/
支那は路線変更して、再生可能エネルギーやEVなどのグリーン技術を主力商品にするとのことですが、それはもはや当初の一帯一路とは関係ありませんね。自国商品を売り込みたい意図が透けています。
サミット、盛況だったようですね。
路線変更の話は少し掘り下げたいですが、紹介いただいたロイターの記事ではかなり辛辣に批判していますね。