スポンサーリンク

夢の移動手段ハイパーチューブ、2025年開発に本格着手

公共事業
この記事は約9分で読めます。

夢のような話だな。

「韓国型ハイパーループ」磁力で浮上、時速1200km走行…2040年導入目標

2023年9月23日 14:00

韓国政府が「夢の移動手段」と呼ばれるハイパーチューブ(韓国型ハイパーループ)の開発を進めている。2025年には開発事業に本格着手し、2040年の導入を目指している。

AFPより

ちょっとネタの臭いの強めな話なのだが、まあ、偶には息抜き的に扱って良いんじゃないかなと。

高速鉄道を超える!

理論的には実現可能なハイパーループ

「ハイパーループ」というのは、イーロン・マスク氏が開発を進めたことで有名になった移動手段である。

「第5の輸送方式」のコンセプトとして、「天候に左右されない」「衝突しない」「飛行機の2倍の速度」「低消費電力」「24時間稼働可能なエネルギー貯蔵」の5つの特徴を有している夢のような技術であると発表した。

この「ハイパーループ」の概念自体は、アメリカのロケット研究家(マッドサイエンティスト)ロバート・ハッチングズ・ゴダードが学生時代(1904年)に考えた真空列車の試案や、イギリスの鉄道技術者であるイザムバード・キングダム・ブルネルの試験(1847年)などに見られるように、古くからあるようだ。

なお、日本でも昭和24年頃に「音速滑走体」と名付けられた構想が発表されていて、これが真空チューブ内でロケットを飛ばす(走らせる)という話で、昭和45年にはミドリガメとカエルを載せた実験車体を使って、1,600mを3秒で滑走させ、計算上の時速は2,500kmということになっている。

このような歴史を踏まえて、前提条件付きではあるが実現可能であるという話にはなっている。

実際に、有人走行のテストは行われている。

高速輸送システム「ハイパーループ」、初の有人試験を実施

2020.11.10 Tue posted at 12:44 JST

ワシントンDC(CNN Business) ヴァージン・ハイパーループが開発を進める高速輸送システム「ハイパーループ」が米ネバダ州ラスベガスで初の有人による試験運用を実施した。商用化に向けた大きな節目となった。

ハイパーループはまだ実証されていない輸送システムで、乗り物に乗った利用者は真空のチューブの中を最高時速600マイル(約965キロ)で移動する。このシステムには磁気浮上などの技術が使われている。

今回の試験運用では時速100マイルまでの到達となった。軌道が500メートルの長さしかなかったためで、速度が制限された。

CNNより

時速100マイルってことは約161km/hってことか。軌道が500mで161km/hという結果だったんだけど……。

ヴァージン・ハイパーループは有人を諦める

諦めちゃいました。

Virgin Hyperloop、旅客輸送の計画断念との報道–レイオフも

2022年02月24日 11時15分

将来、ロサンゼルスからラスベガスまで、わずか40分で移動したいと考えていただろうか。そうであれば、そのプランを諦めなければならないかもしれない。Virgin Hyperloopは、革新的な旅客用の超高速ポッドを開発する計画を断念し、今後は貨物輸送のみに注力するという。

~~略~~

「ハイパーループ」の背景にある構想は、シンプルでありながら驚くべきものだ。ハイテクポッドを真空チューブ内で時速最大670マイル(約1000キロ)で走らせることを想定している。実業家のRichard Branson氏が2017年にこの構想に出資していた。Elon Musk氏による、持続可能な高速輸送のためのオープンソースの構想に基づいている。

cnetより

何があったのかは発表されていないが、貨物輸送のみに注力する計画に切り替えたらしい。

そういえば、イーロン・マスク氏もあっさり諦めたね、ハイパーループの計画を。

課題は色々ある

とまあ、そんなわけで、韓国以外の国は計画の凍結か断念をした感じである。

どんな課題があるのかと言えば、こんな記事が参考になる。

ハイパーループの実現は困難? 科学者たちが語る、これだけの危険性

2018.11.16

ハイパーループといえば、おおいに喧伝されている未来の超高速真空チューブ交通システムである。このハイパーループが少し、ほんの少しだけ実現に近づいたかもしれない。少なくともイーロン・マスクによれば、ハイパーループほど高速ではなく真空でもない姉妹プロジェクト「ループ(Loop)」は現実に近づいているようだ。

WIREDより

長い記事なので、問題点をピックアップしておこう。

  • チューブの膨張が避けられない
  • チューブ内の気圧維持が困難
  • 事故時にポッドの内部の気圧の維持が困難
  • 高架でチューブの維持をした場合に自然災害や破壊工作に対応しきれない
  • 事故発生時の避難が困難
  • チューブがカーブに対応する場合に乗り心地を極めて悪化させる
  • 速度が既存の高速鉄道よりも遅いと採算がとれない

とまあこんな感じで説明されていた。

この中で、工学的な見地から深刻だと思うのは、速度とチューブ内圧力の東レ度オフな関係と、チューブの強度に関する問題解決である。

それと、チューブの膨張という工学的に避けられない問題への対処もかなりの難題だ。たとえば、コンクリート製の橋梁であっても1km以上の長さになるとメートル単位でのズレが生じる。膨張だって数十cm単位で出てくるので、必ず膨張を吸収する部分が設けられている。ところが、この継ぎ目はチューブ内圧の維持には致命的な問題になる。

それと、最大の問題は摩擦と温度の関係だろう。ポッドを宙に浮かせれば摩擦の問題は空気抵抗の問題に変わってくるが、どこかに接触している場合だと摩擦によって発生する熱が、チューブ外に放出しにくい低気圧状態を維持しなければならず、廃熱の問題は気圧を低くすればするほど大きくなる。

韓国は1,200km/hを目指す

さて、こういった工学的な問題があるのだが、韓国は頑張ってハイパーチューブ(韓国型ハイパーループ)を作るらしい。

ハイパーチューブは0.001~0.01気圧とほとんど空気抵抗のないチューブ内で、磁力で浮上させた列車を時速1200kmで走らせる新交通手段だ。2013年に米実業家のイーロン・マスク氏が公開した「ハイパーループ」と同じような概念で、世界各地で技術開発が進められている。

AFPより

0.001~0.01気圧というのがもはや狂気の沙汰だと思うのだけれど(食品の真空パック商品が0.01気圧程度)、人の乗り降りと気圧のコントロールをどうやってやるのか、非常に気になるな。

恐らく、直線のチューブを数十km程度の距離にわたって建設し、その中を猛スピードで走らせる場合、チューブ内の空気を瞬時に気圧を抜く必要がある。所定の感覚で排気装置を設けるのはかなりのコスト増になるが、排気装置のスパンを長くすると空気を抜くのに時間が掛かるというジレンマがある。

そして、空気を抜いた状態で乗客の乗車、降車ができないことから、おそらくは駅に気圧コントロール区画を作って、発着する度に区画を遮蔽して吸気・排気を行う構造になるに違いない。

かなりのコストがかかりそうだね。

1,019kmを既に実現!

しかし、安心して欲しい。実は韓国は既に17分の1モデルで1019km/hを実現していたのである!

韓国もまた、韓国鉄道技術研究院が2020年にハイパーループを17分の1に縮小した模型試験で時速1019kmを記録した。

AFPより

凄いな!

韓国のハイパーループ実験は時速1000キロ超を達成、ヴァージンは有人走行に世界初成功

2020年11月17日(火)17時55分

~~略~~

2016年1月から「真空チューブ鉄道構想」の研究開発をすすめている韓国鉄道技術研究院(KRRI)は、2020年11月11日、「実際の車両の17分の1の実証実験用デバイスを用いた走行実験において、時速1019キロを記録した」と発表した。

Newsweekより

凄いじゃないか。ん?17分の1モデル?

こんなのだった!いや、流石にこれはイメージモデルだろう。ショボい造詣だが、そもそもテストが出来るような設備には見えない。それにこの大きさだと17分の1という大きさにマッチしないような……。

時速1000キロ、ソウル~釜山20分で走破する「夢の列車」生まれるか

2020.11.12 08:38

2032年11月。ソウルに住むイ・ジヨンさんは午前9時に釜山(プサン)で開かれるフォーラムに参加するため1時間前に家を出た。先ごろ開通した時速1200キロメートルの超高速真空列車に乗れば釜山まで20分以内に到着できるためだ。ソウル地下鉄2号線市庁駅から江辺(カンビョン)駅まで行く時間で釜山まで行けるようになったのだ。

このような想像が十数年以内に現実になるものとみられる。韓国鉄道技術研究院は11日、超高速列車「ハイパーチューブ」を17分の1サイズに縮小して作った空力試験装置で時速1000キロメートル以上の速度を確認したと明らかにした。縮小型走行試験だが高いスピードを出す可能性があることを確認したという意味がある。

中央日報より

……まさかこれが17分の1モデル?!

いや、まさかね。ただ、実際の車両の導体の直径が3m程度だと仮定すると、直径18cm程度ってなことになる。なんとなく大きさ的に符合するね。

1,019kmをどうやって実現したのかは知らないが、実験気圧はなんと0.001気圧である。高真空にしてあれば射出速度を高めることは可能だろうか。何か、ワイヤーで巻き取るような構造にも見えるんだけど、本当に大丈夫なのか?こんな実験モデルで。

前のめりの研究

ちょっと意味が分からない感じになってきているけど、韓国はどうやら本気らしい。

政府は予備妥当性調査を通過すれば、第1段階として全羅北道で短い区間試験などを実施する計画だ。続く第2段階では12kmの本試験線路を建設する1兆ウォン(約1100億円)規模の事業を進め、関連技術を確保する。

AFPより

2025年には区間試験を実現できる予算を獲得する気らしい。

探しているうちに、今回の記事と実に似たような記事を4月にも出していたことに気がついた。

韓国型ハイパーループに青写真…政府が研究に関する公告

2023年4月19日 11:00

韓国で空気抵抗のないほぼ真空のチューブ内で磁気の力で浮いた列車が時速1200キロで運行する「ハイパーチューブ」(韓国型ハイパーループ)の青写真が見えてきた。韓国政府がこのほど、ハイパーチューブ開発や運営ロードマップ樹立のための研究について公告した。

AFPより

まあ、事故が起きないようにしっかりとテストすれば良いと思うよ。

なお、上述したように日本では昭和45年時点で2,500km/hを達成するも、「やっぱ無理」って結論がでている。だって、これだけの速度が出るところまで瞬時に加速すると、生身の人間では耐えられないもの。1200km/hだったらOKということにはならないと思うんだよね。

コメント

  1. アバター 匿名 より:

    なんか昔あった気送管のちょいデカバージョンみたいですね。
    それをもって、、、、。

    昔初めて見たときは驚いたもんです。
    今で言うデジタルデータでもなく原本が運ばれたのでしたから。

    これなら人を運んでも、ハエ男になりません。
    安心です。

    おとなりさんは夢があっていいですね(苦笑)。

    • 木霊 木霊 より:

      みんな大好き気送管。
      実物を見たのは1回きりですが、あれはなかなか画期的なシステムだなと思いました。

      同じ事をやれば良いんですが、摩擦は問題になりそうですね。

  2. アバター もでら より:

    速度も1/17の模型だから実スケールだったら1,019kmということらしいですね。(模型だとほぼ60km)
    課題としては減圧のための真空ポンプも問題です、真空ポンプの排気能力は気圧が下がるほど低下しますが真空ポンプの資料だと標準大気圧から0.1気圧まで下がると排気能力は1/10に下がるとのことだから0.01気圧だと更に低下するので小さい模型ならともかく実物の管内を減圧するのにかかる時間と気圧を維持するために稼働させる真空ポンプで消費され続ける莫大な電力という問題を解決する必要があります。(缶の直径と長さに正比例するわけでなく3乗とかで効いてきますから実サイズだと17倍でOKとはなりませんから)

    • 木霊 木霊 より:

      模型を60km/hで走らせて17倍したという話のソースが見当たらなかったので、その噂はスルーしました。
      駆動システム組み込まずに速度出しても意味はないんですけどね。

  3. アバター 匿名 より:

    おはようございます。

     イーロン・マスクのこの手って、むかし諦めたモノを今の技術で見直したら?(ex.100年以上前からあったEVの電池を最新スマホ用のもので作ったら)って感じが多い気がします。

     ハイパーループも元は気送管、エア・シューター列車を現代技術で見直したら、意外と現実的&安くできね?って発想の気がするのは

     初期構想が 約1/10気圧、マッハ1弱。すなわち上空20000mを飛ぶジェット旅客機の条件。

     だけど、そこから始まって現代技術で見直しても、、、
    ・やっぱり磁気浮上が要る
    ・気圧も1/10→1/100必要
    ・となると空力の自動調芯にならずパイプにぶつからないための精密制御まで要って、、、、

     →リニア列車よりハードル高いじゃん、やーめた! 

    って感じなのでないかな(笑)

    これくらい韓国でもわかってて、この計画はポッケナイナイ・ドロン案件のような気が。。。

    • 木霊 木霊 より:

      イーロン・マスク氏、ロケットでは成功していますからね。
      昔のアイデアをブラッシュアップするというのは案外良いことかも知れません。

      ただ、ご指摘のように高真空環境を維持する方法が難しいんですよね、現代技術でも。

      • アバター 匿名 より:

        こんばんは!

        >昔のアイデアをブラッシュアップするというのは案外良いことかも知れません。
        そうなんですよ。昔からのSFファン爺のノスタルジック心が擽られる。
        投資誘致には良い方法かも(笑)

        >高真空環境を維持する方法が難しい
        ですよね。
        1/10気圧程度なら水封ポンプ(水流アスピレーター)が使えるから激安なんですが、1/100気圧になるとポンプコストが!

         また1/100気圧になると「空力が効かない」のでエア・シューター列車みたいに空気圧で動かせないし、勝手にチューブの真ん中もいかない。

         このあたりを現代戦闘機のCCV設計FBW制御みたいなので何とかならんか考えたんでしょうけど、結局リニアと一緒か、それ以上の制御が必要、てのが中間回答で、ヤメたんじゃないかな?(笑)

  4. アバター みみこ より:

    そもそも韓国国内で「リニア(どころか新幹線?)を上回る高速移動」は、(完成すると仮定して)莫大な投資に見合うメリットが発生するほどの需要があるんでしょうかねぇ。
    「株価操作」とか「投資詐欺」なのかも、と思ってしまいます。

    で、これで思い出したんですが、月に行く話はどうなったんでしょうか。

    • 木霊 木霊 より:

      このハイパーループ技術は、実は高速鉄道やリニア鉄道よりも安いとされているんですよ。
      速度が出せれば、経済的合理性があると。韓国はそれを無邪気に信じているらしいんでしょう。

      月に行く話は、未だ生きていると思いますよ。出てこないだけで。

  5. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >アメリカのロケット研究家(マッドサイエンティスト)ロバート・ハッチングズ・ゴダード

    酷い言われよう……
    ※学研「まんがサイエンス」の2巻「ロケットの作り方教えます」は傑作です。

    >17分の1の(略)時速1019キロを記録した

    ミニ四駆における「スケールスピード」ですね、わかります。

    逆の発想で、チューブ内の空気を押したり引いたりして、カプセルを移動させれば良いのではないですかね?
    小はラブホの通信筒から、大は「都市博会場のゴミ処理」まで、ある意味枯れた技術ですし、韓国とは親和性良さそうに思います<これも酷い

    • 木霊 木霊 より:

      いやいや、マッドサイエンティストは褒め言葉ですよ。
      そして、まんがサイエンスも愛読書でした。

      さておき、気送管をデカくするという発想は、それはそれでアリだと思います。