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経済音痴の岸田政権が掲げる「骨太の方針」

政治
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鶏が先か卵が先かという議論なんだけど、岸田政権はダメだなぁ。岸田氏の経済音痴っぷりにはため息が出る。岸田政権が経済音痴なのは、財務省の影響が強く表れているからなんだが。

終身雇用など日本の〝常識〟見直しへ 骨太方針閣議決定

2023/6/16 21:10

政府が16日に閣議決定した「骨太の方針」では、低成長が続く日本経済の再生に向けた改革の方向性が打ち出された。改革が進めば一つの会社で長く働き続けるといった、これまでの日本の〝常識〟も大きく変わり、国民の暮らしにも影響が及ぶことになりそうだ。

産経新聞より

何が「骨太の方針」なんだか。

あ、一応お断りしておくが、経済畑の人間ではないので詳しい経済理論とかは知らない。だから、間違った主張をしている可能性もあるんだけど、どうにも岸田政権の方針はその程度の知識でも、色々とつじつまが合わないように思うという話である。

終身雇用は経済成長の阻害をしていない

終身雇用の不都合な話

骨太の方針の1つに、労働市場改革がある。ザックリいうと、「日本経済が低迷するのは、日本型雇用形態が悪い!」「だから、終身雇用なんて止めてやる!」という話らしいのだが、ちょっと意味が分からない。

そもそも、この「終身雇用」というのは制度化されたものではないし、既に終身雇用のシステムが破綻している企業も少なくない。

この終身雇用の商慣行だが、実のところ歴史はそんなに古くはない。大正末期から昭和初期にかけて、会社が熟練工の定着を狙って「定期昇給制度」や「退職金制度」を導入したものだとされている。大企業しか導入できなかったらしいけど。

ところがこのシステムは戦争によって1度崩壊してしまう。

で、次に復活したのは高度経済成長時代であり、昭和29年以降に神武景気、岩戸景気と呼ばれる好景気、つまりインフレに突中した時代にあって、労働力不足を補うために再び終身雇用の仕組みが取り入れられた。

「昔からの仕組み」みたいな誤解があるけれど、実のところ敗戦後から導入されたものなのだ。そして、最初はそれなりに上手く機能したようだ。

ところが、昭和55年以降、株価・地価の下落が始まり、それ以降はデフレ状態になっていった。

そうなってくると、終身雇用制度は成り立たなくなる。何故なら、終身雇用はインフレが前提で機能するシステムだからである。僕が経済に疎くても、それくらいは理解出来る。

インフレ下の終身雇用

そもそも、終身雇用のシステムデザインは、有能な社員が会社で仕事をするに当たって、会社に貢献するモチベーションを維持するように、「定期昇給」があって、勤め上げると「退職金」が支給されるという形にしてあった。

ところが、今や「定期昇給」はほぼ機能していないし、「退職金」も自分で運用しろ、というところが増えている。つまり前提が崩れてしまったわけだ。

そりゃ無理もない話で、定期昇給というのはつまりインフレで物価が上がっていかなければ成り立たない。企業の儲けが出なければ給料を上げられないということだが、それはインフレ下では多くの企業で実現できても、デフレ下では殆どの企業が給与を上げられないということになる。

退職金に関しても、基本は個人の給与の一部を企業が積み立てておいて、これを一時期に支払うという仕組みなのだけれど、積み立てた以上にお金が貰える仕組みになっている関係で、インフレでないと企業としても困ってしまう。

そもそも、デフレ経済の場合には経済が下向きなため、多くの企業の業績が悪い。よって、労働者の流動性が低下することになるので、企業にとっては特別な手当てをしなくても労働者が他企業に移るリスクは減る。

つまり、デフレ下において終身雇用というのは、かなり企業においてデメリットの多いシステムと言うことになる。逆に言うと、インフレ下では終身雇用の方向性は有用に機能する可能性がある。

何を言っているのか分からない岸田政権

さて、そういった単純な構図を理解していただいた上で、冒頭の記事を読んでいこう。

最も力点が置かれたのが、労働市場改革だ。終身雇用や年功序列など日本型雇用は、成長分野への労働移動を妨げるといった弊害が顕在化。その結果、世界をリードする新たな企業は誕生せず、賃金も伸び悩むといった現状を生み出している。

産経新聞より

ああ、うん。

労働市場改革ねぇ。

確かに、終身雇用や年功序列という「形」に拘ることは労働市場を硬直化させるという意味では宜しくない。ただ、成長分野への労働移動を妨げるというのはちょっとおかしい。成長分野で商いをして給料を沢山出せる企業であれば、自然と労働者はそちらの方向に集まっていく。

これを「日本型雇用が悪いんだ」と、悪役にしたところで「賃金が伸び悩む」実態は変わらない。行きすぎた成果主義は労働者の多くのやる気を削いだ。

デフレ経済が続いたことと、システムの硬直化を招いたことが、日本経済の低迷に関わる大きな問題なのだろうと思う。賃金が伸び悩んでいる理由は、企業がデフレに備えて内部留保をため込むという悪循環となっている事にも要因の一端がある。

内部留保というと、現金のイメージが強いが、実際には土地建物や機械設備のような固定資産の形態をとっているものも多い。これを解消するためにも、インフレ率はそれなりの水準になければならない。

インフレ率が高まれば、内部留保している資産の価値が減ってしまうことから、投資に回すインセンティブがより強く働くようになる。

つまり、真っ先に目指すべきは労働市場改革ではなく、日本経済への刺激なのである。規制緩和などによって、投資すべき対象を増やすのが効率的だろう。

経済学者の理論

インフレ環境にあれば、企業は賃金を上げざるを得ない。しかし、「そうじゃない」とする経済学者も少なからずいる。

こうした動きは2社だけの特有のものではありません。「デフレからの脱却と人への投資促進による構造的な賃金引き上げを目指した企業行動への転換を実現する、正念場かつ絶好の機会」――。1月23日、春季労使交渉が始まる会合で、経団連の十倉雅和会長はこう語りました。経団連トップのこうした発言からも、経済界を挙げて賃金上昇に取り組もうという強い姿勢が見えます。

日本は長らく、賃金が上がらない国といわれてきました。下の図は、物価上昇の影響を考慮した「実質賃金」の推移です。これを見ると、長期にわたって低落傾向にあることが見て取れます。賃金が上がってこなかった要因として、年功色の強い給与体系や、成長産業への労働力移転が十分に進まないこと、生産性が高まっていないことなどが挙げられます。

BIZREACHより

経団連や財務省の影響を強く受ける経済学者の多くは、実質賃金の下落傾向は、日本型雇用が悪者だということを言っている。

career-news-09-2

しかし、賃金が上がらない理由は、本当に日本型雇用が問題なのだろうか?主客転倒しているのではないか?という点は考えなければならない。

僕は学者ではないし、経済学に明るいわけでもないので、彼らのロジックが正しいかどうかを判断できるわけではないが、彼らの説明による日本型雇用悪玉論には、どうにも納得が出来ない。

そもそも日本型雇用と言われるシステムが出来上がった順序や、仕組みから考えても、理論的な説明が付かないからだ。賃金の値上がりは残念ながらインフレ傾向から遅れてやってくる。その次に来るのが実質賃金の上昇と言うことなので、現在インフレ傾向になって実質賃金は減っていても、それは一過性の話の可能性が高い。

経済構造の改革は今必要なのか

で、岸田政権が提言しているのは一体何なのか、というと、リスキリングらしい。

そこで骨太方針では、「人への投資」の抜本強化を掲げ、労働者のリスキリング(学び直し)を後押しする。従来のリスキリングは主に企業が学びの機会を提供してきたが、労働者が主体的に取り組めるよう「個人への直接支援を拡充する」とした。労働者にとっては自分の意思で新たな能力を身に付け、仕事も選ぶことができるようになる。

産経新聞より

「バカも休み休み言えよ」と、労働者は言うと思うんだ。「だから働いたことのない政治家は国民の心が分からない」という評価になってしまう。

だって、労働者が主体的に勉強する時間を確保できるのか?という事を考えると、「やるヤツはやるし、やらないヤツはやらない」のだ。「勉強しろ」といって、学生時代に勉強できたヤツと出来なかったヤツ。まあ、勉強の出来る政治家先生には分かるまい。

おっと、愚痴になってしまったが、政府が「労働者が主体的に取り組めるように」という働きかけは、正直上手いこといくとは思えない。理由は色々あるが、企業がリスキリングに積極的で、それが給与に結びついていた時期は未だ良かった。しかし、企業に頼らずリスキリングを支援するとは一体どんな形なのか。どうにも資本主義から外れて行っている気がして仕方がない。

更に酷いのがこちら。

男性中心の働き方も見直しが進む。女性活躍の促進へ、12年までに女性役員比率を30%以上とする目標を明記。性別を理由に、不当に昇進が阻まれてきた女性にとっては朗報だ。男性育休の取得を促進し、夫婦が協力して子育てを行える環境整備も進む見通しだ。

産経新聞より

女性活躍……、いや、数字で女性役員比率3割以上って、どう考えても失敗フラグにしか思えない。どうして数字で決めてしまうのか。

とまあ、ちょっと脱線気味なのだけれど、リスキリングや女性活躍の促進って、本当に「骨太の方針」として適切なのだろうか?どう考えても経済発展にはマイナス要因になっている気がする。詰め込んだら良いって事じゃないと思うぞ。

方向性が間違っている

さて、気になるのはコレより先に打ち出した方針と、どうしても矛盾してしまう点だ。

児童手当や育児休業給付拡充など「こども未来戦略方針」決定

2023年6月13日 18時40分

少子化対策の強化に向けて、政府は、児童手当や育児休業給付の拡充などの具体策を盛り込んだ「こども未来戦略方針」を閣議決定しました。

今後3年かけて年間3兆円台半ばの予算を確保し、集中的に取り組む一方、財源は歳出改革などで確保するとしています。

NHKニュースより

いやー、女性活躍の促進をすると少子化バイアスが進んでしまうんだけれども。その辺りをどうやって解決するのか、自己矛盾する方針を掲げるのはちょっと問題が。

そして、「財源を歳出改革でー」とか言っているんだが、これ、必要な部分を減らしたらとんでもないことになる。子供を育てる為の予算を確保するのに教育国債などを出しても良いのでは?という気がするんだけど。

なお、労働者に「リスキリングに時間を割いてね」という話も、育児などに時間を割けなくなってしまうというジレンマを抱えることにもなりかねない。

人に対して投資するという根本的な部分には賛成できるのだが、それを「経済対策」としてしまうという発想が理解出来ない。「新しい資本主義」というのは未だに誰にも理解ができないという、意味不明なことになっている。

岸田氏は、結局、色々な政策を掲げて「やっている感」を出したいだけで、その効果は推して知るべし。リスキリングの場所を提供して、そこに関わる企業に補助金を配って天下り先を作るくらいの積もりなんだろう。本当に、何も考えていないように見える。

……まあ、僕自身は経済に疎い部分もあるので、この理解は間違っているかも知れない。経済に強い人!誰か説明して!

コメント

  1. アバター who より:

    こんにちは。

    岸田さんはいつもブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようにしか見えないですね。
    何かの政策で行き過ぎたときにブレーキを踏むトリガーが必要なのは理解しますけど。

    個人的には解雇規制撤廃は必要かなと思いますね。

    • 木霊 木霊 より:

      ドライバーとしては失格ですよね。
      ブレーキとアクセルを同時に踏み込む走法もありますが、車体の安定性は失います。
      岸田政権、ちゃんとコントロールできていれば良いですよね。

      解雇規制法に関しては確かに現状はかなり宜しくない。ただ、左派は抵抗するでしょうねぇ。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    あのヘラヘラした顔で今、目の前に岸田が居たら、ぶん殴るかも知れません。
    止めないでください。

    ※それはともかく、傘連判状作って直訴くらいやっても、おとがめはないか?

  3. アバター 砂漠の男 より:

    チョロ岸田が間違え続ける理由は、自ら政策を打ち出す能力がなく、他人任せ(※主に財務省の連中)で、だから政策の整合性が取れない=自分で何をやっているのか分らない、からだろう。

    今回の労働改革の中身を見ると、”自由化”というより、むしろ政府主導の”締め付け”であり、いま政府が言っていることは、いままでリベラル左翼が言っていたそれと全く一緒だ。

    もはや政府・自民党には付き合いきれないな。

    • 木霊 木霊 より:

      政策判断が他人任せというのは納得ですね。
      それだと整合性がとれなくても仕方がない。
      ですが、その根本的な問題として、国家観がないというところがネックなんじゃないかと。政治家としてやりたいことがないから、こんなことになる。
      それを止めることが出来ない自民党にもガッカリですが。

  4. アバター みみこ より:

    少子化はますます進みそうです。
    非正規雇用者が正規雇用になると結婚して子供を持つ、というのが数字に表れていたような。
    正規雇用者に雇用不安を与えれば、その流れは逆行しそうです。

    「異次元の少子化対策」なるものが、「正規雇用者中心」みたいなのにねぇ。

    • 木霊 木霊 より:

      余計なところに手を入れずに景気の改善に邁進してくれれば良いんですが。
      ただ、そうは言っても労働者の権利を強くしすぎた側面はあるので、融通が利くような制度設計にし直さないとダメですね。
      そう簡単な話ではないんでしょうけれど。

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