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高市氏が喜んだ小型レーダー衛星打ち上げの成功

科学技術
この記事は約5分で読めます。

偶には、少し上がる記事も書いておこう。あ、トヨタの全固体電池のスケジュールが出たのも、個人的には注目しているが。

高市宇宙担当相「大変誇らしい」 小型レーダー衛星打ち上げ成功

2023/6/13 12:28

高市早苗宇宙政策担当相は13日の閣議後会見で、宇宙ベンチャー企業「QPS研究所」(福岡市)が開発した小型レーダー衛星の打ち上げ成功について、「大変誇らしく、うれしく思う。世界的に多くの民間企業がしのぎを削るなか、一歩前進されたことはとても心強い」と歓迎した。

産経新聞より

で、何の記事かと言えば、衛星打ち上げの成功である。まあ、スペースX社のファルコン9に打ち上げてもらったんだけどさ。

小型衛星の分野ではトップレベル

小型SAR衛星

打ち上げられたのは、こんな感じのSAR衛星である。

小型SAR衛星QPS-SAR 6号機「アマテル-Ⅲ」の打上げが2023年6月13日(火)になりましたことをお知らせいたします。SpaceX社のロケットFalcon9によって米国カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打上げ予定です。

QPS研究所のサイトより

SAR(合成開口レーダー:Synthetic Aperture Radar)衛星とは、発射した電磁波の反射を受信・解析することで、地表の状態を映像化する技術を採用した衛星のことである。

天候に関係なく観測が出来る点で優れているのだが、近年は随分と小型化・高性能化が進むと共に、以前よりはコストダウンが出来るようになってきている。

とはいえ、デメリットもある。電磁波の反射を正確にデータとして読み取る能力を求められるため、詳細な地図と見比べながら知識と経験を元に解析する必要があるのだ。尤も、この辺りは近年発達したAI技術を用いてサポートできる様になってきていることから、利用シーンは増えているとは聞くが。

6号機打ち上げ

ちなみに、今回打ち上げられたのは6号機である。

QPS研究所は収納性が高く、10kgと軽量でありながら大型の展開式アンテナ(特許取得)を開発。そのアンテナによって強い電波を出すことが可能になり、従来のSAR衛星の20分の1の質量、100分の1のコストとなる100kg台高精細小型SAR衛星「QPS-SAR」の開発に成功しました。現在はQPS-SAR1号機「イザナギ」、2号機「イザナミ」の2機を打上げ、運用しています。2021年5月には「イザナミ」による70cm分解能という民間の小型SAR衛星として日本で最高精細の画像取得に成功しました。

3号機以降はさらに高精度・高画質の画像を取得できるよう様々な改良を加えました。展開型太陽電池パネルとバッテリーを追加し、使用できる電力量を増やしました。アンテナの鏡面精度も向上させることで、さらに強い電波を出せるように。そして、JAXAとアルウェットテクノロジー株式会社が共同開発した「軌道上画像化装置」を搭載することで、SAR観測データを軌道上の衛星内で処理し、衛星からのダウンリンク量の大幅な圧縮が可能となり、即応性の高い観測ニーズに応えられるようになることが期待されます。また、衛星コンステレーションを構築するため、軌道制御用のスラスターを搭載しています。

QPS研究所より

日本らしく、変態技術の詰め込まれた衛星に仕上がっていて、色々と興味深い試みが組み込まれている。

例えば、アンテナ。

超軽量の大型アンテナ(折りたたみ機能付き)で、バネの力を使って打ち上げた後に開くのだとか。

畳まれた状態だと、こんな感じらしい。

なんとも日本らしい技術ではあるな。

その他にも、1m以下の高分解能でありながら、従来の20分の1の質量の100kg台へと軽量化、コストも従来の約100分の1と、随分と欲張って開発したらしい。確かに大変素晴らしい、誇らしい技術である。

今のところ、QPS-SAR1号機「イザナギ」、2号機「イザナミ」の2基と、アマテラル3の6号機の3基の打ち上げに成功しており、残念ながら、4号と5号は打ち上げ失敗により失われてしまい、欠番なんだそうな。そう、イプシロンロケット6号機の失敗の影響である。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2022年10月12日9時50分43秒(日本標準時)に、内之浦宇宙空間観測所から革新的衛星技術実証3号機、QPS-SAR-3、QPS-SAR-4を搭載したイプシロンロケット6号機を打ち上げましたが、2/3段分離可否判断の時点で目標姿勢からずれ、地球を周回する軌道に投入できないと判断し、9時57分11秒にロケットに指令破壊信号を送出し、打上げに失敗しました。

JAXAより

この悔しさをバネに、次のイプシロンロケットの打ち上げ成功には期待したい。

衛星コンステレーション技術

で、この小型SAR衛星だが、将来的には36基でコンステレーションを構築する目標があるようだ。

QPS-SARは、夜間や天候不良時でも、必要時に必要な観測地点を観測することができます。 そのため、1つの軌道に9機の衛星を入れて4つの軌道で地球を取り囲み、36機の衛星でコンステレーションを構築することで、世界中のほぼどんな場所でも平均10分以内に撮影し、特定の地域を平均10分に1回定点観測することが可能になります。 また、QPS-SARに搭載された軌道上画像化装置、および衛星間通信と行った最新の技術を導入し、観測後に高速配信することが可能です。

QPS研究所より

もちろん、すべての小型SAR衛星を自前で打ち上げる必要はないのだが、必要なデータを蓄積するためには、自国での打ち上げは必須となりそうだ。

高市氏は災害時の活用を例として挙げ、「より短時間で被災状況を把握し、対応できる体制につながることを期待している」と指摘した。

産経新聞より

そういう意味では、高市氏の要求するレベルに至るには、まだまだ先は長そうだが、先に進めたという意味で、その意義は大きい。

是非とも今後も頑張って欲しい。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >今のところ、QPS-SAR1号機「イザナギ」、2号機「イザナミ」の2基と、アマテラル3の6号機の3基の打ち上げに成功しており、

    会社のサイト
    https://i-qps.net/project
    によると、3号機アマテル1と4号機アマテル2がイプシロンと共に失われ、6号機アマテル3が成功という事で、そしたら5号機は?記載が見当たらないのですよね……

    ……と思ったら、5号機はヴァージンのロケットで打ち上げ予定だったけど、諸事情で順延という事のようで……
    https://i-qps.net/news/771
    https://i-qps.net/news/946
    問題解決して、キチンと打ち上がる事を祈ります。

    • 木霊 木霊 より:

      しまった、5号に触れるのを忘れていました。
      補足していただき感謝。

      打ち上げを担うはずのヴァージン・オービット社は、経営破綻しちゃいましたから、債権回収騒ぎに巻き込まれているのかも知れませんね。

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