あれ?
第5世代戦闘機KF-21の水平急旋回・背面飛行に観覧客が歓声=ソウルADEX
2023.10.21 13:42
18日、城南市ソウル空港では超音速戦闘機「KF-21ボラメ(鷹)」が青空を飛行した。エンジンの轟音が「ソウル国際航空宇宙および防衛産業展示会2023」(以下、ソウルADEX)現場を訪れた観覧客の歓声を一瞬にしてかき消した。ボラメは5分間のデモ飛行で水平急旋回、背面飛行を見せ、国産戦闘機の技術力と威容を誇った。ボラメは最先端装備を搭載した第4.5世代戦闘機で、複座(2人乗り)形態が特徴だ。飛行する姿が一般に公開されるのは今回が初めてとなる。ボラメは最大速度マッハ1.81(時速2200キロ)で航続距離は2900キロ。
中央日報より
いつの間に「第5世代戦闘機」に?
実戦配備間近?!
順調に開発は進んでいるように見える
兎にも角にも順調そうで何よりではある。
今回は特に過去最多となる34カ国・550社が参加した。イ・ジョンホ・ソウルADEX共同運営本部長は「ソウルADEXは10年前に比べて倍以上に成長するなど世界で最も速いペースで発展している総合防衛産業展示会」と明らかにした。
中央日報より
ここのところ順調なセールスを見せている韓国の兵器業界は、今回も好調さをアピールする格好になっているようだ。
そんな中で目玉になったのは、もちろんKF-21のデモ飛行である。
飛行している姿を見て、善し悪しを判断できるほど精通していないので、「普通に飛行している」という以外の感想は出てこない。
が、「第5世代戦闘機」は盛りすぎでは?
第5世代ジェット戦闘機の要件
実は、第4世代とか、第5世代とか明確な定義が決まっているわけでは無い。が、大まかには決定されていて、以下のような仕様が求められると言われる。
- 敵よりも先に発見し、先に(複数の敵機を)撃墜する
- スーパークルーズ性能(アフターバナー無しでの超音速巡航)
- 高いステルス製
- 推進変更ノズルによる高機動性能
尤も、この要件に限定すると、第5世代ジェット戦闘機はF-22だけということになってしまうし、あくまでもそういう噂だけではある。
だから、仕様の全貌を明かさない状態で、「第5世代戦闘機です」と胸を張るのは勝手である。
ただ、買い手側はどう判断するか?という話にはなるだろう。
一応、世間一般ではどんなのが第5世代ジェット戦闘機ということになっているのか、ということは紹介しておこう。なお、比較として用意した第4.5世代、第4世代機はアメリカとソ連の機体しか紹介していない。
第5世代ジェット戦闘機 | |
F-22 | アメリカ:ロッキード・マーティン社製 |
F-35 | アメリカ:ロッキード・マーティン社製 |
J-20 | 支那:支那航空工業集団公司製 |
Su-57 | ソ連:スホーイ設計局製 |
第4.5世代ジェット戦闘機 | |
F-15E | アメリカ:マクドネル・ダグラス社製(現ボーイング社) |
F-16V | アメリカ:ロッキード・マーティン社製 |
F/A-18E/F | アメリカ:グラマン社製(現ノースロップ・グラマン社) |
Su-30SM | ソ連:スホーイ設計局製 |
Su-34 | ソ連:スホーイ設計局製 |
第4世代ジェット戦闘機 | |
F-14 | アメリカ:グラマン社製(現ノースロップ・グラマン社) |
F-15A-D | アメリカ:マクドネル・ダグラス社製(現ボーイング社) |
F-16 | アメリカ:ロッキード・マーティン社製 |
F/A-18 | アメリカ:グラマン社製(現ノースロップ・グラマン社) |
Mig-29 | ソ連:ミコヤーン・グレーヴィチ設計局製 |
Mig-31 | ソ連:ミコヤーン・グレーヴィチ設計局製 |
Su-27 | ソ連:スホーイ設計局製 |
とまあ、こんな感じである。
KF-21が第5世代戦闘機ね。一般的な第5世代ジェット戦闘機とは違うと認識した方が良さそうである。が、見事に飛んでいるのだから、ヨカッタネ、と。日本のF-3戦闘機はまだ構想段階だからねぇ。
開発費絡みのトラブル
インドネシアが共同開発から降りる?!
そうそう、KF-21の開発は順調だけれども、開発費の方がちょっと怪しくなってきた。
防衛事業庁、「インドネシア、今月中にKF-21分担金計画提出できなければ撤退再検討」
入力2023.10.16 2:38
ウム・ドンファン防衛事業庁長官が16日、10月末までに実際の実行可能な計画を提出しなければ、韓国型超音速戦闘機KF-21「ボラメ」(インドネシア名IF-X)開発のためのインドネシアとの協力中断の可能性を示唆した。
NAVERより
あらー、インドネシアが未だ支払っていないという話は漏れ聞いていたが、本格的に支払う気はないみたいだね。
ウム長官は同日、国会で開かれた国防委員会の国防庁に対する国政監査に出席し、インドネシア側のKF-21事業分担金未納問題と関連し、「根本的な対策を立てなければならない」というキム・ギョンミン(公明党)議員の指摘に「今月初めにインドネシアを訪問し、国防長官、大統領秘書室長など主要人物に会って協議した」と答えた。
~~略~~
しかし、その後、インドネシア側は自国の経済事情の悪化などを理由に今年2月までに合計1兆2694億ウォン相当の事業分担金のうち、2783億ウォンだけを納付し、合計9911億ウォンを未納している。
NAVERより
インドネシアはとうとう大統領が替わるという時期に来ているのだけれど、時期大領両候補のうち最有力なのは現防衛大臣だという。つまり、大統領が替わったところで大きな方針変更は無く、現防衛大臣は韓国のKF-21に積極的にお金を出すが無い。
この話は以前こちらでも紹介しているね。
今年の8月の時点で、価格調整の話は出ていただけに、本格的にこの方向で決まりそうだね。
インドネシアは既に複数の候補を視野に
前回も指摘したが、インドネシア空軍は出来るかどうか分からないKF-21よりも、仏ラファールや米F-15SEにご執心だからだ。
インドネシア、仏製戦闘機ラファール6機購入
2022年2月10日 16:32
インドネシアのプラボウォ・スビアント国防相は10日、仏製戦闘機ラファール42機を購入することでフランスと合意し、最初の6機の購入契約に署名したと発表した。
AFPより
更に、中継ぎとしてミラージュ2000-5を採用している。
「高ぇ!」戦闘機更新までの“中継ぎ”で購入決定した中古のミラージュに批判 一体いくら? インドネシア
2023.06.20
インドネシア国防省は2023年6月15日、カタール空軍が所有していた「ミラージュ2000-5」戦闘機を12機中古購入すると発表しました。しかし、この件に関して同国の議員から「機体が古い割には価格が高い」と批判を受けています。
~~略~~
中古機の購入を決定するに至った経緯について、同国のプラボウォ・スビアント国防相は「(ラファールが届くまでの)5年間を乗り切るためには、暫定的な抑止力が必要である。その抑止力がミラージュ2000-5であることはわかるはず」と6月15日の防衛産業系のイベントでスピーチしたといいます。プラボウォ氏はほかにも、「ミラージュ2000-5」には「ラファール」にも使われている技術があるため、同機で訓練した方が「ラファール」への移行がスムーズにいくとも説明しているようです。
今回の中継ぎともいえる戦闘機の中古購入に至った経緯には、国際情勢も影響しています。
乗り物ニュースより
この決定をしたのは、次期大統領候補である国防大臣のプラボウォ氏である。記事にもあるように、元々はロシアからSu-35を購入する運びだったのだけれど、この計画は国際情勢の変化によって頓挫。で、その穴埋めが急遽必要になったので、現行機であるミラージュ2000-5(中継ぎ)とラファール(本命)を導入したのである。
この2点だけであればまだKF-21の購入に与える影響は小さかった(実際には、ラファールよりも性能が落ちるKF-21を買うかは微妙で、初期バージョンではラファールよりも性能が落ちることは確実)が、その後の戦闘機も既に話が進んでいる。
ラファール戦闘機を購入した後、インドネシアは米国のF-15EX戦闘機を購入する承認を得る
11/2/2022
インドネシアがフランスから 42 機のダッソー ラファール戦闘機の購入を発表した数時間後、米国務省は 36 機の F-15EX 戦闘機を 13,9 億米ドルで同国に売却することを承認しました。
国防安全保障協力庁 (DSCA) によると、インドネシアは 36 機のボーイング F-15ID 航空機の取得に関心を示しています。 この派生型は、マクドネル・ダグラスが 15 年代に最初に開発した戦闘機の最新バージョンである F-1970EX イーグル II と同等です。
aeroflapより
更にF-15EXの購入を決め、アメリカ国務省もOKを出している。上で紹介したように、F-15EXはE-15E系の戦闘機で、アメリカが旧型F-15の近代化改修をしてF-15EX(イーグルII)とする計画を進めている。
これはアメリカ自身がF-35Aの調達が遅れている為に打った手なのだが、F-35と製造会社が違うF-15EXには、ステルス製こそ低いがマルチロール機としては十分な能力を有しているために、並行して作業が行われることになる。
インドネシアがコレを購入できるとすると、未だ性能が明らかで無いKF-21を買う必要があるのか?という疑問が生まれるのは寧ろ当然の話。それでも、現段階ではKF-21を買わないとは言っていないんだけど、韓国側がそろそろ「勘弁してくれ」と。
しかし、インドネシアがKF-21を買わないとすると、最大48機ほど製造数が少なくなってしまう。そうすると、開発費がドーンと跳ね上がってしまうね。どうするんだろうなぁ。
追記
面白い記事があったので、新しく記事にするか追記にするか悩んだんだけど、追記にしておこう。
韓国が“悲願”の国産戦闘機KF-21を初披露。「アメリカ頼み」だった日本は航空技術でも韓国に追い越されてしまったのか?
10/25(水) 8:02配信
0月22日まで、韓国・ソウルのソウル空軍基地で開催されたエアショーにて、韓国の悲願ともいえる国産超音速戦闘機KF-21ポラメが初の公開飛行を行った。防衛産業関連の輸出額が前年の2倍以上と韓国の兵器産業が好調だ。
Yahooニュースより
要約すると、こんな感じだ。
- 韓国防衛産業が好調!
- 今年の国際航空宇宙&防衛産業展示会「ソウルADEX 2023」が盛況!
- KF-21は開発順調で、大いに外国からの注目があつまっているぅ~。
- KF-21開発がうらやましぃぃ。
若干、フィルターに濁りがあったかも知れないけれど、要は韓国の防衛産業が進んでいて、日本が遅れているよと言う趣旨の記事である。概ね同意ではあるが、KF-21ってそんなに上手くいってるのか?
記事では第4.5世代+αという評価なんだけど、完成すればの話である。更に、改良すれば第5世代に匹敵するということのようだ。頑張れば可能かもね。
ただ、その為の開発資金というのはかなり必要になるんだけど、インドネシアは手を引きそうなんだよね。未だ開発に時間がかかるのに、資金に不安があるという話になっているのが不安材料である。出来上がるとイイねー。
コメント
F-15Eが第4.5世代?
カタール向けのF-15QAでフライバイワイヤ初導入、F-15SA以上のオールグラスデジタルコクピット化と以前のF-15E系とは別物に成っているけど。
あー、あくまで便宜上のカテゴリ設定ですから、その辺りを突っ込まれましても何とも。
何しろ、定義自体が曖昧ですし、「自称」の部分が大きいですからね。
ただ、一応第5世代はステルス製を有しているということになっていますので、どうしてもF-15E系には不利ですよ。F-15SEは前面のFCSだけは随分改善したようですけども。
民間事業である高速鉄道すら金を出さないインドネシアが上手くいくかもわからない戦闘機開発にホイホイ金を出すとは思えませんね
国家戦略として、外国企業には出来るだけタダに近い形でやらせる方針なのが垣間見えます
インドネシアは結構金持っている国なんで、将来性があると思えば資金を入れるのでは、と思います。
ただ、ご指摘通り、国家戦略として「タダに近い形でやらせたい」という思惑はあると思いますよ。日本も高速鉄道でしてやられましたから。
なお、高速鉄道のウーシュは事実上の国家事業になっている模様。随分と公金を突っ込みましたから。
ステルス戦闘機ってのは、形状+ステルス塗料(電波吸収塗装)で出来てるらしいですが、
「ニワカ」の私には、F-22,35、J-20、Su-57 の「正面から見たお顔」は同じに見え、
更にKF-21,TFX(カーン)も同じに見えます。
ならKF-21もステルス塗料でお化粧すればそこそこステルスになるんじゃね?(笑)
民生電波吸収塗料なら日本製が安くて高性能だよ(笑)
しかし、第5世代戦闘機、って区分。空対空の模擬戦闘すると4.5世代に圧勝らしいけど、実際の戦場で本当に有効なのだろうか?
今やそんなことより、地対空ミサイルがワラワラと地面に転がってる「ウクライナvsロシア戦の戦場」みたいな所で制空権取れるかどうかが重要な気がするけど、
F-22,35のレーダー反射断面積(FCS)はテントウ虫~コガネ虫 程度でレーダー発見は難しいと言うけど、本当に地対空ミサイルがワラワラの戦場に行けるのかなあ?
KF-21やTFXも形はステルス機を随分意識して作っています。
ただ、細かいディテイルを見ると、ステルス機と言えるほどではないようで。現状の反埋め込み式のミサイル取り付け部分が改善されれば、ワンチャンあり?
尤も、F22やF35の実践投入は未だありませんから、どのていど地対空ミサイルに対して有効なのかは良く分かりません。
そもそもステルス機の形状って、遠方より探知されにくいことを意識して作られているので、下からレーダーあてられてしまうと容易に発見出来るんですよね。そこを亜音速または超音速で飛ぶので狙われにくいのでしょう。
今時のステルス機はフェライトだけでなく炭化ケイ素繊維も使用しています、日本でしか作れなかったが、NGSアドバンストファイバー – 日本カーボン(50%出資)、GE(25%出資)とサフラン・グループ(25%出資)による合弁会社が出来ました。
勉強になりました。
確かに、炭化ケイ素繊維ニカロンの製造はNGSアドバンストファイバー株式会社が請け負っているようですね。
確か、F-2戦闘機作る際に三菱重工が炭素繊維複合強化プラスチックを採用していましたね。この手の素材は矢島聖使氏の功績が大きいのだとか。