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日本のGDP、ドイツに抜かれて4位に転落のニュースを嬉しそうに語るメディア

報道
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なんだか、コレに関して結構騒いでいるんだが、GDPに一喜一憂しても仕方なかろう。

日本の23年GDP、4位に転落 ドイツが逆転か IMF見通し

2023/10/23 18:01(最終更新 10/23 18:01)

国際通貨基金(IMF)は23日までに、2023年の日本の名目国内総生産(GDP)がドルベースで世界3位から4位に転落し、ドイツに逆転されるとの見通しを示した。円安によりドル換算で目減りしたほか、物価変動が影響する名目GDPのため、日本よりも高いドイツの物価上昇率が反映されたとみられる。

毎日新聞より

流石、毎日新聞だな。

ランキングで比べる意味

そもそもGDPとは

GDPとは、「Gross Domestic Product」の略で、「国内総生産」のことを指す。一定期間内に国内で産出された付加価値の総額で、国の経済活動状況を示す指標として持ちいられる。

ただし、今回の話は「ドルベース」の話で、それも名目GDPの話なんだよね。

名目GDPとは、対象の期間の付加価値を単純に合計して求める数値。これに対して、実質GDPとは、貨幣価値の変動を考慮に入れて計算する数値を指す。

GDPは為替の影響が大きく、実際の順位は年末までの為替動向に左右される。

毎日新聞より

毎日新聞も一応解説はしているんだけど、その続きでこんなことを。

ただ日本は低成長が長期化している。経済規模は国際的な発言力につながっており、逆転されると日本の存在感が一段と低下しそうだ。

毎日新聞より

ええぇ、そんなの今更じゃないの?

国際的な発言力

そもそも、国際的な発言力の強さは、GDPに比例しない。

世界的な課題に対する日本の発信力はなぜ弱いのか

2015年9月30日

冒頭、司会を務めた言論NPO代表の工藤が、世界的な課題に日本としても役割を果たしていくために、世界の課題解決に向けた「言論」の舞台を日本国内にも活発化するほか、東京発の議論を世界に伝えていく必要がある、と言論NPOが地球規模的課題に対する取り組みを行う趣旨を説明しました。その後、「世界的な課題に関する日本の発信力はむしろ弱まっているが、これをどのように考えているのか」と疑問を投げかけ、議論はスタートしました。

言論NPOより

これは2015年の記事で、既にGDPランキングで言えば、2011年には3位に転落していた日本の現状を憂えている内容となっている。

ただ、日本の国際的発言力は総じて弱く、存在感を発揮していた時代は安倍外交が通用していた時のみ。その時だって「発言力が強い」とは言えなかった。

国際的な発言力というのは、人、モノ、金で如何に国際的に貢献できているか、ということに尽きる。そういう意味ではこの記事で言及する、「国際機関の要職に就く日本人が減っていること」などの影響は大きいだろう。つまり、国連機関にどれだけ人員を送り込んでいるか?という事だ。

そして、その最たるモノが「日本が国連安保理の常任理事国となること」であって、別にGDPランキングは余り関係が無い。

そういう意味で毎日新聞の論はかなり的外れだといえる。

この人も随分とね。

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アメリカは堅調

GDPの話に戻すと、トップを独走しているアメリカは結構順調のようだ。

7-9月米GDP速報値、2年ぶり高い伸びへ-経済大国の座揺るがず

2023年10月23日 10:52 JST

7-9月(第3四半期)の米経済成長率は、堅調な消費を背景に約2年ぶりの高水準となった公算が大きい。追加引き締めの必要性を議論する米金融当局者には難題となる。

ブルームバーグが実施したエコノミスト調査の予測中央値では、7ー9月期の米実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率4.3%増の見込み。欧州が停滞し、アジアが中国の不振に見舞われる中、米国が依然として世界の経済大国として揺るぎないことを浮き彫りにしそうだ。

Bloombergより

アメリカ経済が好調であることは良いことではあるが、これはしかしアメリカの個人消費に支えられるところが大きい。

ところが、ここのところ個人で破産する人も増加しているのだとか。

米企業の2023年1~9月の破産件数、前年同期比で17%増加、個人の破産件数も上昇

2023年10月11日

米国の破産申請データを提供するエピック・バンクラプシーが10月3日に公表したプレスリリースによると、2023年1~9月の米国企業による破産申請件数は1万8,680件で、2022年同期の1万5,955件から17%増加した。このうち、米国連邦破産法第11章(Chapter 11、日本の民事再生法に相当)の申請件数は前年同期比61%増の4,553件となり、景気の先行き不透明感を背景に、多くの企業が苦境に立たされている状況だ。

~~略~~

また、2023年1~9月の個人による自己破産の申請件数は31万3,458件となり、2022年同期の26万8,884件から17%増加した。個人の破産を対象とする連邦破産法第13章(注1)の申請件数は19%増の13万1,236件に達し、連邦破産法第7章(注2)の申請件数は15%増の18万1,719件となった。

JETROより

なかなかの数字である。

日本は令和3年で自己破産申請件数が7万3,111件(前年比5.9%減)であるから、人口比を考えてもアメリカの方が自己破産率は高いと言える。

ただ、内需が好調なアメリカ経済にとって、破産率が高くとも仕事をして復活する目がある分、日本よりはマシなのかも知れない。

あと、こちらも気になる話。

全米に押し寄せる「万引の波」 凶悪化で閉業相次ぐ
全米の都市部でスーパーやアップルストアといった小売り大手のチェーン店が集団略奪に見舞われている。凶悪化した窃盗犯に「顧客と従業員の安全が脅かされ、営業を続けら…

なかなかに悲惨な話だ。こんなことを放置していると、アメリカは内側から崩れそうだね。

内需主導型経済

ただ、アメリカもそうだが日本はもともと内需主導型経済なので、国際的発言力にリンクさせて「GDPガー」と騒ぐ時にドルベースの名目GDPを持ち出すと経済の実態を「分かっていないんじゃないか」という疑いを持たれる。

それよりも内需を拡大するべきだという話をすべきなんじゃないかな。

例えばこちらのサイトなどの説明されているのだが、日本は内需依存型経済となっている。

【グラフ編】現実:日本の外需依存度は低い / 理由:外国と比べても低いため
外需依存度と輸出依存度を国際比較したグラフ

先ずは、世界的に見て輸出にどの程度依存しているかだが、こんな感じ。

輸出依存度を示すグラブ

このグラフが輸出依存度を示すグラフだが、アメリカやブラジルに次いで低い事が分かる。まあ、ブラジルとアルゼンチンに挟まれている時点で、このグラフが経済の健全性を示すものでないことは明白ではあるが、輸出に依存しているわけでは無いということが分かる。これ、現状で円安が進行して輸出に対するアドバンテージが得られるという面を加味しても、依然低いままである。

外需依存度を示すグラフ

これは、外需依存度を示すグラフで、割合が増えているもののせいぜい28.6%である。アメリカに次いで低いことが分かる。

一方のドイツは輸出依存度も外需依存度も高い水準にあることが分かる。ユーロは相対的に上がっているので、

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GDPを上げるためには

GDPの計算式は、民需(日本人の消費金額+国内企業の投資額の合計)+政府支出(政府が使った金額)+貿易収支(輸出額-輸入額)「Y=C+I+G+(X-M)」となる。

単純に、貿易収支の比率が低いのだから、GDPの順位を上げるためには民需や政府支出を上げることが求められることは式より明らかだ。なお、名目GDPを上げるのであれば円高誘導すれば単純に増やすことが可能だが、そんな為替操作をする国だとレッテルを貼られれば国際的なヘイトを稼ぐだけだし、国内企業からも突き上げを喰らいかねない(輸出品の国際的な価格競争力の低下を招くから)。

確かに貿易収支が赤字になっていることはGDPにそれなりに影響を与えているのだが、これは日本の豊かさをは余り関係の無い話である。輸入超過になっている原因は、エネルギー価格の高騰が大きく影響しているからだ。

エネルギー価格のコントロールは日本には出来ないのだから、やるとしたら電力発電に化石燃料を使わないようにする、つまり原発の再稼働しかない。再生可能エネルギー発電はエネルギーの安定供給の観点からはクソなので、ここでは議論の余地が無い。

いまこそ内需主導型経済への転換を - 日本経済新聞
世界の景気循環が変調をきたしている。年初に予想された米国の景気後退は、通常これに先行するイールドカーブ(利回り曲線)の逆転現象が長期にわたり続き、景気後退確率が上昇しているにもかかわらず、実際にはその...

日本経済新聞がこんなポンコツ記事を書いているが、どうしようもないな(なお、会員制の記事なので中身は読めないのだが、読む価値は無かった)。

円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ
長引く円安の理由を理解するうえでは、日米金利差拡大という論点に終始するだけではなく、「円の需給構造があらゆる面で変化を強いられている」という論点も理解する姿勢が重要になっていると筆者は考えている。円…

東洋経済も似たような内容だが、こちらはそれなりに読める内容だった。

内需拡大のために

で、岸田氏の所信表明演説があったわけだが、随分と内需に関して気にした発言をしていた。

岸田首相、「変化の流れ」連呼 経済移行の大チャンス―所信表明演説

2023年10月23日13時54分

岸田文雄)首相が23日に行った所信表明演説は「変化の流れを絶対に逃さない、つかみ取る」とのフレーズで始まる。「変化の流れ」の文言は経済情勢やデジタル化、外交・安全保障などさまざまな文脈で用いられ、登場回数は項目名を含め14回に上った。

時事通信より

しかし、国内経済は岸田政権になる前まではそれなりに堅調に回復していた。

ところが、2020年(令和2年)以降、日本国民の可処分所得が総じて減少している。この可処分所得の減少は、主に消費税を10%に引き上げ(2019年10月)たことと、給付金が配られた(令和2年に1人あたり10万円、令和3年に18歳未満のみ1人あたり10万円給付)ことが影響していると大和総研は分析している。実際に特別給付金を除いたトレンドはこんな感じだ。

30代4人世帯の伸びが顕著だが、それ以外の部分は低調な印象を受ける。

特別給付金を使ってブーストしてやるのも1つの手ではあるが、実体経済は可処分所得の増減という観点で見ると低調である。

とはいえ、平均年収の推移を見ると、武漢ウイルス感染症の影響が見られたものの全体的に向上する傾向にあるので、経済全体がダメと言うことではない。

つまり、簡単に内需を拡大するためには、政府支出を増やすことと、全体的に税負担を軽くすることが考えられる。民需を政府がコントロールすることは難しい。

簡単なのは公共事業投資を増やすことだが、かつては土建屋さんがそれなりにいたので効果が出たのだけれど、いまは人手不足で受注残が渋滞している為に効果が薄い。したがって、公共事業投資は広く薄くやり続けていくべきだが、GDPを上げる観点からはあまり意味が無いだろう。そうすると、減税するのが景気刺激策としてはアリだ。更にガソリン代を減らして輸送費を削減する方向が良いんじゃないかな。

何がやられるべきなのか

岸田氏は、「税収増分の還元」などと言っているが、具体的なことは結局、所信表明演説では触れられなかった。

とはいえ、容易に消費税減税などをやることが良い結果に繋がるのか?ということコレが難しい。一番大きいのは比率の大きな社会保障費を削ることなんだけど、そこで大きな割合を占めている医療費負担を相応に求める代わりに、社会保障費減税をするのが良いんじゃないだろうか。年金も平均年齢が延びているのに対応した形に変えていくべきだろう。

岸田政権はかなり安全保障の分野で頑張っている印象ではあるが、経済に関してはかなりポンコツなんだよね。

特に、内需を冷やすようなアドバルーンをぽんぽん上げるのは止めて欲しい。「減税する」といったら、すぱっとやる。検討を済ませてから発言するようにして欲しいね。

と、話が逸れたが、GDPの話はドルベースの名目GDPランキングなので、一喜一憂するような話じゃない。内需を拡大することこそが肝要なのであって、ユーロ高、円安で相対的に順位が入れ替わった程度の話に突っ込みを入れたところで詮無き話だ。

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追記

そうそう、新宿会計士さんのところのを掲載しておこう。イメージ的にはかなり分かり易い。

アレだよ、「輸出代替効果」として紹介されている国内産業に対して有利という事の意味、つまり、生産業の国内回帰を進めていくと、日本人の仕事を確保する上でも結構良いことなんじゃ無いかな。とはいえ、国内工場が増えることは人件費が抑えられている現状ではメリットがあるんだけど、人件費が上がるとデメリットとなってしまう。

国内製品の「付加価値」を高める努力が必要になるんだろうね。

コメント

  1. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    あいかわらず、マスゴミは日本下げ、日本ダメダメ論説がお好きなようで。

    それはともかく。

    面白い記事がありましたので、本記事とは外れますが、ご一読されましたら幸甚です。

    https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02407/102000022/
    崩壊した韓国のマンション、使っていたのは「穴だらけの未認証循環骨材」

    ※個人的には、そこまでしてどれくらい利ざやが浮いたのか、それがどこに消えたのかが興味あります。

    • 木霊 木霊 より:

      このGDPの順位の話は、本当に一時的な瞬間最大風速を捉えただけの意味のない記事だと思います。
      有効な経済対策を打つことはもちろん必要なのですが、こんな数字で一喜一憂して「日本はもうダメだ」と呟く人のなんと多いことか。ボーッと生きてるんじゃねー(怒)と言いたくなりますな。

      ご紹介頂いた記事は、後ほど料理してみたいと思います。

  2. アバター 匿名 より:

    「外交力がある」というのは難しい言葉ですな。
    例えば、日本と中東諸国は話し合える関係と言います。良好な関係を築いているのは双方に宗教、民族的な対立がないうえに日本は石油天然ガスの大口顧客だからですが、それはあくまで利害が一致するからであってじゃあ中東は日本の言う事を聞くと言うかと言ったらそこは全く関係ないわけです。つまり発言力は無い。
    やはり中国がラオスにやっているように政権中枢に多数の工作派を忍び込ませ、政治的、経済的に屈伏させるような状況を作らないとその国に対して発言力が高くなるという状況は作れないですね。かつてロシアが旧ソ連諸国に行ったのもそうですね。
    日本もどこかに子分みたいな衛星国が欲しいです笑

    • 木霊 木霊 より:

      「何をもって外交力というのか」というのは案外難しく、単に声が大きければ良いのか?という点も含めて、政治家の皆さんにはしっかりしたビジョンを持って頂きたい。
      そして、やはり諜報活動を合法化して勢力を拡大すべきです。
      何をやるにしても諜報は重要であります。これは違法前提としたスパイ活動をしろという話ではなく、現地の情報、生の声を政治家に伝えろと言うことでありまして、おそらくは現在は外交官がその任をおっていると思うのですが、なにか官僚の腰掛け的な位置づけになってしまっているのがおかしいのですよね。
      そういった部分にもしっかりメスを入れて行き、現地の生の声を把握した上で、何処に働きかけると効果的なのかという作戦立案が出来て、その上での「外交力」と言うことになると思います。
      そりゃ、お金をばらまくこともある意味外交なのですが、それが効果を発揮していないことは、ここ数十年の政治を見ていれば明らかなんですよね。

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