本日は軽めの話題に触れていきたい。コレ、日本でも有罪だね。
大統領ポスターに落書き、少年拘束 ヒトラー風口ひげ加え矯正施設送り―トルコ
2023年06月07日08時25分
トルコで6日、エルドアン大統領の選挙ポスターに落書きをした16歳の少年が当局に拘束され、矯正施設に送られた。反体制派に近い複数のメディアが報じた。トルコでは5月28日に大統領選の決選投票が行われ、20年にわたり権力の座を占めるエルドアン氏が再選を果たした。
時事通信より
何か、エルドアン政権の独裁を恐怖するかのような報道になっているけど、日本でも有罪だから。
独裁政権だからと言うわけではない
選挙ポスターの破損は有罪
そもそも、民主主義において選挙というものは非常に大切な行事である。その広報手段としてポスターが使われるわけだが、これを破損することは日本では犯罪である。
懲りない方々がまあまあ逮捕されている。
器物損壊(刑法261条)なら、法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料。公職選挙法225条1項違反なら、法定刑は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金である。
何れも割と重い。
外国ではどうかというと、各国で選挙のやり方が随分違う為に類似の法律があるかは調べられなかったが、アメリカでも選挙用のポスターを破損すれば、財物損壊の罪に問われるし、イギリスでも選挙ポスターは日本のような使い方ではないが、公共の場所で掲示されたものを破損すれば罪には問われるようだ。軽犯罪法の適用があるような記述を見かけたが、どのような適用のされ方なのかはハッキリしない。
外国ではナチス関連の揶揄はタブー
ただ、今回のケースは、明らかにドイツのヒトラーをモチーフにした悪戯だけに、おそらくは名誉毀損や侮辱にあたる。
拘束されたのは南部メルシン在住の少年。自宅近くのポスターの顔写真に、ペンでナチス・ドイツのヒトラー風の口ひげを加え、侮辱的な言葉を添えたという。当局は防犯カメラ映像を基に少年を特定。「大統領への侮辱」容疑で拘束した。少年はひげは認めたが、侮辱的文言については否定している。
時事通信より
日本においては、選挙ポスターの破損というカテゴリーから外れて、例えば自前で候補者の写真を用意して口ひげを加えたところで、深刻な侮辱にあたると捉えられづらい。が、特に欧州でコレをやると、かなり重い罪になる。単なる悪戯では済まないのである。
トルコでは「大統領への侮辱」という罪があるようで、これに該当して捕らえられたようだが、社会的背景を考えれば欧州ではかなりの重罪に当たるのだと理解する必要がありそうだ。
日本では、「アベシネ」とか著名人が平気でネットなどに書き込んでしまう事案が散見されるが、現実問題として本来であれば侮辱罪(刑法232条:法定刑は1年以下の懲役もしくは禁固もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)に相当するようなケースも結構見逃されている。
「表現の自由」を声高に叫ぶ層によく見られるのだが、表現の自由は万能ではないのだ。
何かネットの書き込みなど眺めると、「やり過ぎ」「流石独裁者」といった書き込みが見られるが、法律で定められた範囲を踏み越えれば罪に問われるのは法治社会としては当然のことなのである。
大統領侮辱罪
さて、最後にトルコの大統領侮辱罪について少し触れておこう。
トルコ大統領をゴラムと比較して侮辱罪で裁判に…ピーター・ジャクソンが援護射撃「あれはスメアゴルだ」
2015年12月4日 12時33分
トルコのエルドアン大統領の写真を映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズに登場するゴラムの画像と並べてツイートし、トルコ人医師ビルギン・チフチが侮辱罪に問われている裁判について、シリーズの監督を務めてきたピーター・ジャクソンが援護射撃を行った。TheWrapなどが報じた。
チフチが、エルドアン大統領とゴラムの「驚いた顔」「笑った顔」「物を食べている顔」が似ていると並べてツイートしたことで始まったこの裁判。しかし、裁判官が『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを観たことがなかったため、(見た目はちょっと不気味だが)果たしてゴラムは悪者なのか、そしてこれが大統領を侮辱する罪にあたるのかを判断するべく、シリーズに詳しい専門家を招くことになったと地元メディア Today’s Zaman が伝えていた。チフチは今回の件で10月にトルコ公衆衛生局の職を解かれ、有罪となれば2年の禁錮刑となる。
シネマトゥデイより
侮辱罪で2年の禁固刑というのは、日本と比べて量刑が重い。
諸外国でも侮辱罪や名誉毀損罪は適用のされ方や量刑についての議論はあるようだが、資料を読む限りは各国でその取り扱いは様々だ。
表現の自由を重んじる先進国では比較的微罪にする傾向にはあるようだが、賠償額は日本のソレと比較にならない程大きかったりする。
ともあれ、法律で定められている以上は適用される可能性があるのは事実で、嫌ならそれを変えるように働きかけるのが正しい道筋というものである。「悪法も法なり」という言葉が適切かどうかは分からないが、「法律の方が間違っているから、俺は無罪だ」は通らないのが一般的な法治国家のあり方である。知らないでは済まされないのも、どこも同じなのだ。
なお、件の少年の送られた「矯正施設」だが、どうやら日本の少年院にあたるような施設であるらしい。支那の某施設を連想してはいけないのである。
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