近況は「お知らせ」に紹介するようにしました。
スポンサーリンク

トイレを巡る混乱に拍車がかかるLGBT理解増進国・日本

報道
この記事は約12分で読めます。

もちろん「LGBT理解増進国」というのは皮肉である。

トランスジェンダー “女性用トイレの使用制限”違法 最高裁

2023年7月11日 20時35分

経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が、職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だとして国を訴えた裁判で、最高裁判所は、トイレの使用制限を認めた国の対応は違法だとする判決を言い渡しました。

NHKニュースより

最高裁がおかしな判決を出してしまったので、今後は更に混乱に拍車がかかりそうだが、どうするんだよ、これ。

スポンサーリンク

裁判所の思惑とは

最高裁判所の判決について

判決文を読むと、判断自体がおかしいという話とはちょっと違うのだが、その辺りは取りあえず情報共有しておきたい。

えーと、本当は判決文を全文引用すべきなのだが、全文掲載しているサイトのリンクを貼って、要点を抜き出すスタイルで説明したい。

【判決全文】最高裁はなぜ、性同一性障害職員の女性用トイレ使用制限を違法としたのか
今崎幸彦裁判長は、トイレの使用制限を「適法」とした東京高裁判決を破棄し、制限は「違法」とする判決を言い渡した。

判決文の読み方は、先ずは、主文を読み、結論を読む。全体を読むと混乱することになるので、要点を押さえながら読むべきだね。

主文

1 原判決中、 人事院がした判定のうちトイレの使用に係る部分の取消請求に関する部分を破棄し、同部分につき被上告人の控訴を棄却する。

2 上告人のその余の上告を棄却する。

3 訴訟の総費用は、これを10分し、その1を被上告人の負担とし、その余を上告人の負担とする。

東京高裁の判決のうち、「人事院がした判定のうちトイレの使用に係る部分」を破棄、被上告人の控訴を棄却、とある。

要は、上告人(トランスジェンダーを自認する男性:ここでは生物学上の性別について示している)の「女性トイレを使わせろ」の部分だけ認めるよと言う話だね。

結論の読むべき部分

で、判決の結論なのだけれど、このように結論づけている。

5 以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違 反がある。論旨は理由があり、原判決中、本件判定部分の取消請求に関する部分は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、上記請求は理由があり、これを認容した第1審判決は正当であるから、上記部分につき被上告人の控訴を棄却すべきである。

なお、上告人のその余の上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。

一審、つまり東京地裁の判断を支持し、東京高裁の判断を棄却するよ、ということが書かれて、その理由は上に書かれているよ、ということになっている。

で、その理由は、読んでいただければ分かるのだが、敢えて抜き出すと、このようになる。

(事実認定部分)

  • 上告人の執務室がある階には、男女別のトイレが各階に3か所ずつ設置されている。
  • 男女共用の多目的トイレは、別の階にある。
  • 上告人は、平成11年頃に性同一障害だという医師の診断を受けている。ただし、健康上の理由から性別適合手術を受けていない。
  • 上告人の求めを受けて経済産業省は、平成21年に女性トイレを使いたい旨の説明会をした結果、本件執務階とその上下の階の女性トイレの使用を認めず、それ以外の階の女性トイレの使用を認める旨の処遇(本件処遇)が決定
  • 本件執務階から2 階離れた階の女性トイレを使用するようになり、他の職員とのトラブルはない
  • 平成23年には家庭裁判所の許可を得て女性名を使うようになった
  • 平成25年に、女性職員の待遇を求める行政措置の要求をしたが、人事院は「認められない」との判断をした

(原審:高裁の判断が認められない理由)

  • 性同一障害の医師の診断を受けたのに、「日常的に相応の不利益」が続いている点
  • 健康上の理由から性別適合手術を受けていないものの、女性ホルモンの投与などを受けている
  • 本件執務階から2階以上離れた階の女性トイレを使用してトラブルは無い
  • 最初の説明会以降、改めて調査が行われ、処遇見直しが検討されていない
  • だから、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となる

とまあ、論理構築としてはそれなりに美しい。事実の積み上げがあって、処遇改善の機会が与えられるべきだ、という話だね。

ただ、「使用が認められている女子トイレが別の階にある」ことと、「男女共用の多目的トイレが別の階にある」ことは、忘れてはならない。この男性、近くの女子トイレを使いたいというところを争点としているのだ。

本判決の位置づけ

とはいえ、この手の「世論の流れを変えよう」という意図が見え隠れする判決の内容について、裁判官からの「意見」が付けられることが多い。

はい、次の選挙の時にはこの裁判官の名前に注意してね!

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 今崎 幸彦

裁判官 宇賀 克也

裁判官 林 道晴

裁判官 長嶺 安政

裁判官 渡邉 惠理子

で、この裁判官達の意見を紹介する前に、注意事項が一番最後に書かれていたので、そちらをまず紹介しておこう。

なお、本判決は、トイレを含め、不特定又は多数の人々の使用が想定されている公共施設の使用の在り方について触れるものではない。この問題は、機会を改めて議論されるべきである。

個別具体的に判断しろと言うことらしいが、判決による社会的影響を避ける為の逃げがうたれている。

ただ、個別事案との調整も裁判所に求められる機能なので、ある程度は仕方がないかな。

まあ、そういった点を踏まえて、各意見を見ていきたい。

(裁判官宇賀克也の補足意見)

  • 上告人は、性別適合手術こそ行っていないが、医師による性同一障害の診断を受け、女性ホルモン投与などの努力をしている
  • 戸籍上は男性であるが、「可能な限り、本人の性自認を尊重すべき」だ
  • 上告人とその同僚(女性)の利益調整が必要だが、別階の女性トイレ使ってトラブルは起きていない
  • 本件説明会以降の職場の努力が足りていない

(裁判官長嶺安政の補足意見)

  • 本件説明会で、不利益を被ったのは上告人だけだったので、処遇が不適当
  • しかし、上告人もその時点では異を唱えていなかったため、激変緩和措置としてはやむを得ない措置だと認められる。
  • それ以降、相当期間女性として過ごしトラブルも無かったのだから、再度要求した時に利益調整を行わなかったことが不当である。

(裁判官渡邉惠理子の補足意見)

  • 個人がその真に自認する性別に即した社会生活を送ることができることは重要
  • 上告人と本件庁舎内のトイレを利用する女性職員らの利益が相反する場合には両者間の利益衡量・利害調整が必要
  • その利益調整を行わずに女性トイレが使えない状態を維持したことは、上告人に対してのみ一方的な制約を課すものとして公平性を欠く
  • 以上のとおり、トイレの利用に関する利益衡量・利害調整については、確かに社会においてこれまで長年にわたって生物学的な性別に基づき男女の区別がなされてきたことやそのような区別を前提としたトイレを利用してきた職員に対する配慮は不可欠
  • 性的マイノリティである職員に係る個々の事情や、例えば、職場のトイレであっても外部の者による利用も考えられる場合には不審者の排除などのトイレの安全な利用等も考慮する必要が生じるといった施設の状況等に応じて変わり得るもの
  • 取扱いを一律に決定することは困難
  • 個々の事例に応じて判断していくことが必要

(裁判官林道晴は、裁判官渡邉恵理子の補足意見に同調)

(裁判官今崎幸彦の補足意見)

  • 本件は今や社会全体で議論されるべき課題
  • 本事案に関する法廷意見は妥当
  • その上で、例えば本件のような事例で、同じトイレを使用する他の職員への説明(情報提供) やその理解(納得)のないまま自由にトイレの使用を許容すべきかというと、現状でそれを無条件に受け入れるというコンセンサスが社会にあるとはいえない
  • 本件のような説明会を開いても、事態打開の結果が得られるとは限らない
  • こうした種々の課題について、よるべき指針や基準といったものが求められるが、職場の組織、規模、施設の構造その他職場を取りまく環境、職種、関係する職員の人数や人間関係、当該トランスジェンダーの職場での執務状況など事情は様々であり、一律の解決策になじむものではない
  • 現時点では、トランスジェンダー本人の要望・意向と他の職員の意見・反応の双方をよく聴取した上で、職場の環境維持、安全管理の観点等から最適な解決策を探っていくという以外にない

何れも、本件の特殊性を踏まえて、一般化するような愚は避けるべきだという意見が出ているね。

それはそれで正しいと思うのだけれど、ちょっと特殊状況下での空論であるということは、踏まえた上での判例と言うことを認識すべきだろう。

だって、経済産業省側だって頑張って説明会をやって、聞き取り調査やって、妥協案を出したんだぜ。それを4年経ってから調整が不十分ってことになっている。じゃあなに?毎年聞き取り調査やって、ソレ毎に対応を変えろって?冗談じゃ無いよ。

判決と乖離した報道が一人歩きする危険性がある

ロクデモナイNHK

にもかかわらず、NHKニュースは上告人のこんなコメントを紹介している。

判決後に記者会見した原告の50代の職員は「それぞれの事案を具体的に考えて対応すべきだと述べた点は評価できます。今回はトランスジェンダーに関する判決ですが、裁判官の個別意見はまだまだ差別が残っているほかの人権上の問題にも応用できると思います。自認する性別に即して社会生活を送ることが法的な利益であり、トイレやお風呂だけにわい小化する話ではないと考えています」と話していました。

NHKニュースより

ひろゆき風に言うと、「それってあなたの感想ですよね」というレベルの話で、何というか「一般化するな」とそれぞれの裁判官が釘を刺しているにも関わらず、「応用できる」とかふざけた事を言う辺り、如何にも活動家っぽい印象である。

ああ、この方のものと思われる下らないTweetも随分と晒されているけれども、アレが本人のものによるものだとすれば、実に下劣な人間なんだろうと思う。

裁判の証拠に採用したら、判決は変わったかも知れないね。

あと、専門家のご意見もなかなかのものだ。

判決について性的マイノリティーの人権問題に詳しい、青山学院大学の谷口洋幸教授は「トランスジェンダーのトイレ使用をめぐっては、抽象的な違和感や不安感を前面に出して議論が進んでしまう部分もあるので、最高裁判所が具体的な事情をもとに調整することが必要だと明確に示したことはとても重要だ。行政だけでなく民間企業にも波及する判決だと思う」と述べました。

NHKニュースより

専門家が出てきて、「民間企業にも波及する」とか抜かしているが、裁判官は「一般化するな」って言ってるだろう?読んでないのか?判決文。

LGBT理解増進法絡みで更に混乱するトイレ事情

さて、先般、LGBT理解増進法が可決されて施行されるに至ったのだけれども、その話に纏わる騒動に関しても記事にしている。

一応お断りしておくが、上述の判決とは別件である。

ただ、無関係として扱っていないのがマスメディアで、そうした報道の影響を鑑みるに、一番困るのは行政なんだろうと思う。例えば、浴場に関しては、通達が出ているので、施設管理者に委ねられる部分があって、裁量に任されても困るのだろうが判断はできる。だが、公衆トイレなど、不特定多数の人が使う場所では更に困ると思う。

性的少数者、学校現場では 増える共用トイレ

2023/7/11 19:07

性同一性障害の経済産業省職員に対するトイレ使用制限を巡り、国の対応を「違法」とした最高裁の判断。学校現場では、トランスジェンダーなど性的少数者の子供に対する配慮として、文部科学省が職員トイレの利用を認めるなど、きめ細かな対応を求めてきた。大人のように声を上げにくい年頃とあって、今回の最高裁判決を踏まえ、同省の担当者は「継続して配慮を呼びかけていく」と述べた。

~~略~~

例えば、愛知県豊川市立長沢小には従来の男女別トイレに加え、女子用、男子用、男女共用、男女共用で車いすでも利用可、男子用小便器の5つの個室があるトイレが設けられている。入り口は共通で、どの個室に入ったかを分かりにくくするように設計。36ある市立小中のうち26校にこうしたトイレを設置している。

産経新聞より

それ以上に関連づけられると困るのが小学校や中学校だろう。

多様化が求められるトイレとは一体……

最高裁判決のあったケースは、職場環境において特定の人が使うトイレという限定があって、その中で利益調整が行われるべきだという判断であった。

しかし、学校ともなるとそうはいかない。

なぜ学校に「男女共用トイレ」という選択肢が必要なのか|CHANTO WEB
女子トイレ、男子トイレと 性別で二分されるのが当たり前だった学校のトイレに近年変化が起きています。 性の多様性が語られる時代に、男女2種類のトイレだけではたりない?自分の性別に違和感がある子でも、安心して使えるトイレのあり方とは?

なかなかふざけた記事ではあるが、トイレの使い方について疑問を投げかけている内容となっている。ここに出てくるのが、産経新聞にも出てくる豊川市立長沢小の話なのだが……。

こんな感じのトイレを何処の学校にも導入しろという。

いやこれ、最初の段階から設計されていればアリかも知れないけれど、既設校舎の改築でこんな無駄なスペースの取り方をするというのは、凡そ現実的ではない。

そして、男子と同じトイレを使うことを心配する女子も少なからずいるのだ。どうして、そういったことには配慮が及ばないのかよく分からない。

むしろ、女子専用のトイレを求める小学生や中学生が困るんじゃ無いかな。ただでさえトイレの数が減るのだから、行列が出来やすい女性トイレの利用者は困るのだろう。そして、特殊な方はそういった女性専用のトイレを使いたいということになったら、ソレこそどうするんだ?という話になる。

利益調整

裁判所の判断もそうなのだが、マイノリティ対マジョリティという構図にして、1対1の利益調整を誘導するような話にしているのがそもそもおかしいのである。

特に、児童や生徒は小中学校に一時期暮らすだけである。一時のことで、設備改修をするという話になるのもまた問題がある。それだけ潤沢な予算があれば良いが、そうではないのだから。

そうなってくると、「どういう観点で利益を調整するのか」ということは考えていくべきだる。

「ひとりはみんなのために」「みんなはひとりのために」という言葉が結構都合よく使われるのだが、one for all, all for oneはセットで使うもので、何故か、サヨクの方々は後者のことばしか重視しない。

自分の利益のためだけに都合良く言葉を使うというのは、如何なモノか。

難しい課題ではあるが、この話が進むと別の側面の問題が出てくることは確実で、事件が起きてから対策を考えるのはちょっと困るのではないか。多目的トイレを増やすことを反対するものではないが、ジェンダーレスを進めることは不幸な事件を生みかねないので、慎むべきだろう。

そもそも、多目的トイレが遠いから文句を言う、冒頭の裁判はそんな下らないことなんだよね。

追記

色々反応している人がいるが……。個人的には一番これがしっくりきた。

判決文よりも補足意見の方が多いケースだったんだけど、判決にかこつけて自分の意見表明をしたような感じだったよ。日本の最高裁がアレではねぇ。

コメント

  1. 七面鳥 より:

    ・トランスジェンダー:別の性になりたい
    ・性同一障害:今の性でいたくない

    どこかで見ましたが、上記は簡単なようで、ものすごく深い指摘だと思います。
    ※日韓における「人の嫌がる事を進んでやります」よりはるかに深い。

    本件と、連中のお祭り騒ぎと、混同しようという勢力は、唾棄すべきだと感じます。

  2. みみこ より:

    これ、結局「トイレ使用」の話だけでは済まなくなりそうですよね。
    今回の件、唯一いい点があるとすれば、
    「最高裁の判決を尊重して、自称女性を浴室でも女性と扱え」と言い出す人たちがいたら、
    「最高裁の判決を尊重して、外国人への生活保護はなくせ」と言い返せることでしょうか。
    根拠のデータがあるわけではない個人的感想ですが、
    「LGBT推進」の人達と「日本国籍でなくても生活保護の権利がある」と主張する人達は同心円な気がするので。

    • 木霊 より:

      最高裁判例は、判例として扱われるんですが……、これを曲解して行政がおかしな方向にかじを切っちゃうと、なかなか止められないんですよね。
      政府ですら、内部におかしな人が居て、「なんとかしないと」と大騒ぎしていますから。誰とは言いませんが。

      最高裁判例で、外国人への生活保護はおかしいという判断が出ていますが、こちらは騒がれないんですよね。
      やっている方々はご指摘どおり同じレイヤーにいる人々なんですが。