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トランプ発言に反発するNATO各国

欧米
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うん、まあ、トランプ氏の発言はなぁ。

トランプ氏「NATO守らない」発言に欧州批判噴出 事務総長「米欧兵士を危険にさらす」

2024/2/13 00:54

大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は11日、トランプ前米大統領が軍事費を十分に支出しないNATO加盟国を米国は守らないとする発言をしたことに関し、「全ての加盟国の安全保障を弱体化させ、米国と欧州の兵士を危険にさらす」と非難する声明を出した。

産経新聞より

「NATOを守らない」の部分だけを見ると、非常に感じる発言だし、そもそもNATOの存在意義を損なう様にも思える。

メッセージと実態

軍事費はGDP2%

でも、この話の要点は「軍事費を十分に支出しない」という部分なんだよね。

トランプ前大統領 在任中“NATO加盟国攻撃 ロシアに促す”発言

2024年2月12日 5時57分

アメリカのトランプ前大統領が在任中、NATO=北大西洋条約機構の加盟国が十分な軍事費を負担しなければロシアに攻撃を促すという発言していたことが明らかになり、ホワイトハウスやNATOが強く非難する声明を発表しました。

~~略~~

またトランプ氏は在任中、NATOの加盟国の多くがアメリカに防衛を依存していると不満を示していましたが、演説の中で、当時NATOの加盟国の首脳から「十分な軍事費を負担していない加盟国がロシアからの攻撃を受けたとしてもアメリカは防衛しないのか」という趣旨の質問をされ、その際「防衛しない。むしろロシアに対して望むようにするよう促すと答えた」と述べました。

NHKニュースより

そして、このニュースのおかしな点は「もしトラ」が「ほぼトラ」に流れが変わりつつある中で、トランプ氏が在任中に繰り返し発言していた「軍事費はGDP2%水準にしろ」「応分負担しろ」という話をしていて、それを蒸し返す事なんだよね。

【解説】危険な時に危険な発言……NATO加盟国への攻撃を「促す」とトランプ前米大統領

2024年2月13日

始まってしまった。次のアメリカ大統領選までまだ9カ月だが、共和党の候補者になる見通しとされるドナルド・トランプ前大統領の挑発的な発言に、早くも大勢が唖然とし、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の首都では大勢の血圧が上昇した。

~~略~~

前大統領はサウスカロライナ州での支持者集会で10日、軍事費負担が不十分なNATOに対して、(たとえばロシアなどの)侵略国が「好き勝手にする」のを「促す」と述べた。

BBCより

今回、NATOが騒いだ原因は、選挙戦でトランプ氏が「軍事費出さないなら、ロシアを嗾けるぞ!」と発言し、これをメディアが大々的に取り上げて欧州に御注進したからなんだね。

まあ、NATOの反応は分かるけれど、「じゃあ、金はきっちり払え」と、それだけの話でもある。

ドイツなども渋々軍事費の引き上げ

さて、文句は言いつつもドイツなどは「お金も出さないとダメかな」とは思っているらしい。

ドイツ初の国家安保戦略を策定 国防費GDP比2%へ引き上げを明記

2023年6月14日 21時36分

ドイツ政府は、包括的な安全保障戦略を初めてまとめ、14日に発表した。昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて連邦軍の装備強化を進めており、国内総生産(GDP)比1%台だった国防費を2%に引き上げる方針が、政府の戦略として正式に盛り込まれた。中国についても触れ、既存のルールに基づく国際秩序を変えようとしていると警戒感を示した。

朝日新聞より

フランスも国防費に関しては積み増しているが、漸く2%である。

フランス国防費、3割以上増額へ…中国念頭に南太平洋の海軍力も強化

2023/01/22 00:12

フランスのマクロン大統領は20日、仏南西部モン・ド・マルサンの空軍基地で演説し、2024~30年の7年間で計4000億ユーロ(約55兆5000億円)を国防費に充てる方針を示した。19~25年の2950億ユーロ(約41兆円)と比べて、3割以上の増額となる。

~~略~~

マクロン政権は現行計画で、25年までに、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める国内総生産(GDP)比2%の水準に国防費を引き上げる方針を示していた。

讀賣新聞より

偉そうなことを言っても、NATOに所属する大国としての軍事費負担は少ないのが実情であるドイツとフランス。アメリカがGDP比3.45%も軍事費を突っ込んでいることを考えると、アメリカが「もうちょっと負担しろよ」と文句を言うのは仕方のない面があると思う。

ドイツもフランスも軍隊はかなりヒドイ状態にあると伝えられているので、建て直しが急務。それなのにウクライナ問題やイスラエル問題が持ち上がって頭が痛い。

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メッセージ性の問題

一方で、NATO側の言い分もちょっとは分かる面はある。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も強い調子で反発し、「同盟諸国が互いを守らないなどという発言は、アメリカを含めて全員の安全保障を損なう。アメリカと欧州各国の兵士に対する危険を、いっそう拡大する」ものだと述べた。

BBC「【解説】危険な時に危険な発言」より

アメリカがNATOのトップとして機能しない事態、NATOを見捨てるようなメッセージを出せば、防衛機能が瓦解しかねないという懸念があって、それは分かる。

ロシアにせよ支那にせよ、隙があれば影響力工作を拡大したがる国である。NATO各国にしてみれば、今の防衛力が低下することは避けたいので、不用意な発言をしないで頂きたいという願いは分かる。

そうなんだけど、しかしNATOの機能の健全性を考えると、それもどうかと思うんだよね。アメリカが不調なら他の国がその穴を埋めるくらいの気概がなくてどうするんだという話。組織としての健全性を自ら否定している気がしてならない。

その発言も、NATOを危険に晒す発言なんじゃないだろうか。

支那との付き合い方

こうした話の根底には欧州と支那との付き合い方に不健全なモノがあるという部分がある。去年の7月頃にはこんなニュースもあった。

ドイツ政府 初めて中国政策を公表 依存解消を急ぐ方針

2023年7月14日 8時05分

中国との経済関係の強化を重視してきたヨーロッパ最大の経済大国ドイツは、政府として初めての中国政策を公表し、ロシアへのエネルギー依存の教訓などを踏まえて、中国依存の解消を急ぐ方針を打ち出し経済界にも対応を促しました。

NHKニュースより

ドイツとしても薄々は分かっているのだ。ただ、この辺は日本も同じなのだけれど、産業界からの要請で支那との付き合いは簡単には止められない。

ドイツはメルケル前政権が中国との経済関係の強化を進め最大の貿易相手国となりましたが、近年は人権問題や海洋進出などから警戒感が高まり、いまのショルツ政権はロシアへのエネルギー依存の教訓も踏まえ、これまでの対中国戦略を見直す方針を明らかにしています。

公表された文書では、中国をパートナーだとしながらも中国がロシアと関係をいっそう強化し、インド太平洋地域では覇権を目指しているとした上で「対立と競争の要素を増大させている」として、対応の見直しが必要だと強調しています。

NHKニュース「ドイツ政府 初めて中国政策を公表 依存解消を急ぐ方針」より

それでも未だ「パートナー」扱いなんだよね。どこまでズブズブなのかと。

イタリア 「一帯一路」からの離脱 中国側へ正式に伝える

2023年12月7日 19時40分

G7=主要7か国の中で唯一、中国の巨大経済圏構想、一帯一路に参加していたイタリアが、離脱することを中国側に正式に伝えました。中国としては、グローバル・サウスと呼ばれる途上国や新興国との連携をさらに強めていくとみられます。

NHKニュースより

イタリアなどはもうちょっと頑張って支那の影響下から抜け出そうとしているが、姿勢としては頑張っているけれど影響としてはドイツよりも深刻なんだよね。

それでもまあ、「金の切れ目は縁の切れ目」なので、世界は一斉に支那との関係の見直しを図っている最中である。そういう意味でも、状況は変わりつつある。

アメリカにとって支那との付き合い方の見直しが死活問題であったが、それは支那の脅威というものを本気で理解したからこそなのである。ロシアなどは目じゃないんだよね。

欧州の温度感とアメリカの温度感は随分と差がある。そして、アメリカ以外のNATO関係者は、随分とヌルいことを言っているんだなという構図でもあるんだ。

支那が支那製造2025とかで、製造業にもの凄く力を入れる!と発表していたのを横目に、アメリカはのほほんとしていたのだけれど、実際に国内の製造力が極めて疲弊していたことに漸く気がついたトランプ氏、支那とのデカップリング方針を決定した。その危機感を共有できていないのが欧州なんだな。

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追記

コメントを頂いたのだが、こんな記事があったようだ。

NATO事務総長「18カ国、防衛費目標達成」 トランプ氏発言受け

2024年2月14日 21時17分

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は14日の記者会見で、最新の試算では加盟国31カ国のうち18カ国が防衛費目標を達成する見通しだと明らかにした。2023年7月時点では、防衛費が国内総生産(GDP)比2%の目標に達した加盟国は11カ国にとどまっており、大幅に増えることになる。

朝日新聞より

GDP比2%の防衛費を予算だてする国が、11カ国から18カ国に増える見込みらしい。トランプ氏にケツを蹴り飛ばされたのと、ロシアの凶行、更にはイスラエルの惨状が後押ししたのだろう。

平和な時代は終わったんだ。

トランプ前米大統領が、防衛費を相応に負担しないNATO加盟国に対し「米国は守らない」と語ったことを踏まえ、言及した。ストルテンベルグ氏はさらに「加盟国が十分に拠出していないことについての指摘には、正当なものもある」とも述べた。

朝日新聞より

そもそもNATOの理念は相互安全保障である。にもかかわらず「台所事情が厳しいから、うちは防衛費上げない」というのは通らない。有事になれば加盟国全てが参戦する必要があるのだ。そういう約束なのだから、防衛費の水準を一定以上に維持するのは当然である。

その約束を守っていなかったのだから、「正当なものもある」と言わざるを得ないんだよね。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    NATO加盟31か国のうち18か国が、2024年度中に2%目標に届くらしいです。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/1e675920bd441314ba8eb117f9300a132bb6b142
    国防費は2%に上げ、インフレは2%に下げる。大変なご時世です。
    ドイツもフランスも経済とポリコレにかまけてきましたから、
    ウ戦争が始まって、それ見たことかとトランプにケツを蹴飛ばされた。
    だから、でもないでしょうが、結局のところ2%まで引き上げるようです。
    トランプはロシアを上手く利用していますね。
    ドイツはメルケル時代に郷愁を感じているようです。面白いですね。

  2. アバター who より:

    こんにちは。

    軍備といえば台湾の軍備も酷いみたいですね。
    小銃も5種類ぐらいあって銃弾も統一されていなくて現場も訓練不足で取り扱いが危ういみたいです。

    本当かデマかは分かりませんがソース
    https://youtu.be/ijzP9OrXlRU?si=DhYR_O5GbxkMInh4

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      なるほどー、おもしろい動画でしたが、若干大げさな話も入っているような印象でした。
      「そういう一面はある」という感じでしょうが、とても参考になりました。実際に取材した結果だとしていますしね。
      台湾に関しては1つ記事を書かせて頂きましたが、不安定さが気になりますよね。

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