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40年以上前の建設当初の姿を留めるソウルの駅舎、ようやく補修工事へ

公共事業
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韓国の建築物シリーズに加えないといけない案件なのだが、これがまた結構きている感じである。

「天井板が落ちそう」「冷房施設なし」…ソウル地下鉄の老朽化2駅、ようやく補修

2024年6月2日 15:00

ソウル地下鉄2号線の阿峴駅と2・5号線の忠正路駅が竣工40年ぶりに補修工事に入る。ともに老朽化した駅舎で、天井板が垂れ下がり冷房施設もなかった。

AFPより

老朽化ねぇ。

40年以上前の姿を留める地下鉄

ソウル地下鉄は日本の技術で建設が開始され

ソウル地下鉄1号線は1969年に建設計画がスタートし、円借款によって建設されている。指揮をしたのは朝鮮戦争の英雄と言うべき白善燁。交通部長官に就任した白善燁は、日本をモデルにした地下鉄建設を考え、協力を要請した。

地下鉄建設に、日本から8,000万ドル供与しており、お金だけではなく技術も現地指導という形で提供した。

切手に描かれたソウル 第14回 「地下鉄ソウル駅」                                                 郵便学者 内藤 陽介 氏 | トピックス | ニュース | 東洋経済日報
1946年の創刊以来、韓国と日本の経済・文化・スポーツの交流拡大と在日社会の発展を目指しています

白善燁は、1971年の建設開始前に辞任してしまったので建設に関与することはなかったが、建設自体は順調に進み、1974年に開通記念式典が行われたとのこと。

円借款で建設したのだから、日本としてはお金を返して貰えれば別に問題ないわけだが、折角、キチンとしたモノを建設したのだから大切に使って欲しいものである。

そこから40年が経過した2014年にはこんなニュースが。

老朽化するソウル地下鉄 予算不足や手抜き検査で安全上の欠陥が急増

登録:2014-09-02 18:05 修正:2014-09-03 08:06

ソウルの地下鉄が老朽化して過去5年間に8万件に達する安全上の欠陥が指摘されたが、補修されたのは全体の11%にすぎないことがわかった。

~~略~~

ソウルメトロが運営する1~4号線区間では亀裂6万2638件と漏水710件、ソウル都市鉄道公社が運営する5~9号線区間では亀裂1万5931件と漏水355件が発生したと明らかにした。

しかし合計7万9569件の欠陥のうち、実際に補修された箇所は11%の1万550件に過ぎなかった。今年も事情は同じだ。欠陥補修に必要な金額はソウルメトロが148億ウォン(1ウォンは約0.1円)、ソウル都市鉄道公社は53億ウォンと見積もられたが、実際に反映された予算はそれぞれ22億ウォン、15億ウォンに過ぎなかった。

ハンギョレより

老朽化が深刻なんだとか。それにしても、亀裂や漏水が放置されて補修されていない箇所が89%というのは……。放置すると、劣化が加速するよ?

累積赤字が1.7兆円規模に

ちなみに去年にはこんなニュースが。

ソウル地下鉄が8年ぶりに料金引き上げ…累積赤字1.7兆円

2023年7月24日 16:00

ソウル地下鉄の基本料金が10月から150ウォン(1ウォン=約0.1円)、市内バスの基本料金が8月から300ウォン値上がりする。このほど開かれたソウル市物価対策委員会で、公共交通料金調整案が審議を通過した。ソウル市の公共交通料金引き上げは2015年6月以来。

~~略~~

ソウル交通公社の場合、負債が増加を続け、自助努力だけでは赤字解消が事実上難しくなっている。2022年時点で公社の累積赤字は17兆6808億ウォンに達する。

AFPより

どうしてこんなに赤字が……?

ソウル地下鉄はソウル市の一日交通量の4割を負担する重要な交通機関であり、1日平均550万人以上である。武漢ウイルス感染症の蔓延によって大幅に利用者が減少した時期もあって赤字が膨らんだこともあったが、基本的には利用者は十分にいる。

日本国内でも採算面で結構苦戦している地下鉄はあるのだが、赤字になる理由の多くは初期投資と利用者数のバランスが悪いケースが多いようだ。

では、ソウル地下鉄は?というと、地下鉄の運賃が安いことと高齢者は無料という制度をとっているからだと言われている。

ソウル公共交通料金、300ウォン引き上げ・・・通勤交通費24%↑

登録 : 2022-12-29 15:30:33 修正 : 2022-12-29 16:20:15

ソウルの地下鉄とバス料金が早ければ来年4月から300ウォンほど引き上げられる。料金が引き上げられれば、週5日会社に行く会社員は公共交通機関で通勤するだけでも交通費支出が24%増加する。

ソウル市は29日、来年4月末に地下鉄や市内バス、マウルバス(コミュニティーバス)など公共交通料金300ウォンの引き上げを推進すると発表した。

現在、ソウル公共交通料金はカード基準で地下鉄1250ウォン、市内バス1200ウォンだ。地下鉄を利用して週5日通勤する会社員は、1ヵ月(4週間)の通勤費用に5万ウォンがかかる。来年4月に料金が300ウォン引き上げられれば、地下鉄は1350ウォン、市内バスは1500ウォンになる。同じ条件で出退勤費用が6万2000ウォンとなり、24%増加する。

亜洲日報より

地下鉄の初乗りは1350ウォン(135円)程度と激安である。

実際、1人当たりの平均運賃で運送原価が占める料金現実化率は地下鉄が60%、バスが65%だ。収入が原価にも及ばず、運行するほど損害が出る構造だ。

亜洲日報「ソウル公共交通料金、300ウォン引き上げ」より

原価割れしている利用料金設定は、そもそもおかしいだろうと思うのだけれど、これでも韓国電力の赤字垂れ流しで電気料金は安く抑えられている。

そりゃ、赤字になるよね。さっさと運賃を倍にするんだ。

老朽化が進む

というわけで、冒頭のニュースに繋がるわけだ。

天井が落ちそうになっているのは、一体何が起きているのか。

ソウル交通公社によると、1984年に建てられた阿峴駅と忠正路駅を対象に老朽化した地下鉄駅の補修作業に取り掛かる。

阿峴駅と忠正路駅は公社が担当する40年以上の老朽化した駅舎(13カ所)の中で最も環境が悪いところだ。公社関係者は「2つの駅は初めて建てられた時から冷房施設がなく、金属材でできた天井板も古くなりすぎて垂れ下がった状態だ」と話した。

AFP「天井板が落ちそう」「冷房施設なし」より

金属材で出来た天井板……、金属材?天井板は木製に見えるんだが、これは金属製の板らしい。美観を追求した結果なんだろうか??

ともあれ、「40年以上の老朽化した駅舎」って、これ、建設当時からこのままという意味だよね?多分。

そして、老朽化して垂れ下がったという意味が良く分からないのだが、おそらくはつり下げ保持される天井材を支持している梁がダメになっているんだろう。まあいいや。とにかく、このまま放置されていたという意味だね。

この他にもエレベーターやエスカレーターなどの設備も老朽化が激しいらしい。

ソウル地下鉄エレベーター、老朽化深刻……半数が設置15年以上

2023年2月11日 9:00

ソウル地下鉄エレベーターの半分が設置されてから15年以上が過ぎた。設置から15年以上経ったエレベーターは事故が起きる確率が高く、交換を急ぐべきだという指摘されている。

ソウル交通公社によると、ソウル地下鉄1~8号線の駅舎に設置されたエレベーター827台のうち410台(49.6%)が設置されてから15年以上経っている。

~~略~~

同公社はこうした事故を防ぐため、エレベーターの交換周期を20年と勧告している。ただ、これは義務条項ではないため、公社がこの3年間、エレベーター交換工事を進めたのは1件もなかった。20年以上経ったエレベーターは2020年の7台から2022年には30台と急増している。

AFPより

韓国 ソウル近郊の地下鉄の駅でエスカレーターが逆走 14人けが

2023年6月10日 2時23分

韓国・首都ソウル近郊の地下鉄の駅で8日、上りエスカレーターが逆走して14人がけがをする事故があり、警察や行政当局が原因を調べています。

~~略~~

韓国メディアによりますと、このエスカレーターは2009年に設置され、5月の点検では異常はないとされていたものの、事故当時、逆走を防ぐ装置が正常に作動していなかったということです。

NHKニュースより

安全管理体制はどうなっているんだ!と怒る前に、運営体制に大きな問題があることを指摘せねばなるまい。

色々マズイ部分はあるんだろうけれども、一番マズイのは金がないことだ。

ストライキも定期的に

こうした運営体制のマズさは、労働者の賃金にも反映されているようで。

ソウル地下鉄労使の交渉妥結 22日からのスト回避=韓国

2023.11.21 22:11

韓国・ソウル地下鉄を運営するソウル交通公社の労使は21日夜、賃金・団体協約交渉の妥結で合意した。労働組合側は22日から2回目のストライキを予告していたが、最終交渉で妥結した。これにより同日からの無期限ストは回避された。

聯合ニュースより

「賃金を上げろ!」「リストラをするな!」というのが、主なストライキの理由のようで。

労使は公社側が打ち出した人員削減案を巡り対立。経営正常化のため2026年までに約2200人を削減しなければならないとする公社側に対し、労組は無理な人員削減は安全問題に直結するとして撤回を求めていた。

聯合ニュース「ソウル地下鉄労使の交渉妥結」より

安易に人員削減をするのはどうかと思うのだが、こういったストライキで度々地下鉄やバスなど交通手段が止まってしまうのもソウルの名物らしい。

ソウル市内バス労組、ゼネスト予告···28日午前4時から突入決議

登録 : 2024-03-25 15:58:55 修正 : 2024-03-25 15:58:55

ソウル市内バス労組が28日、全面ストライキを予告した中で交通大乱による市民不便が予想される。

25日、全国自動車労働組合連盟ソウル市バス労働組合は23日、ソウル地方労働会議で支部委員長総会を開き、28日午前4時からストライキに突入することを決議したと明らかにした。

亜洲日報より

こうしたストライキの発生によって、その時期の採算が悪化してしまうのだが、公共交通機関に対するイメージが悪化するのもマイナス材料といえるだろう。

いずれにせよ、人員削減もままならず、かといって利用料金の改定もままならず、赤字が膨らむしかない状態となる。

そうすると、建物の老朽化が補修されずに放置されるというような、悪循環になるという事になるんだろう。

トコジラミ対策も

なお、こんなニュースもあったね。

ソウル地下鉄 強化プラスチック製座席に変更へ=トコジラミに対応

2024.04.02 14:37

韓国・ソウル地下鉄1~8号線を運営するソウル交通公社は2日、害虫のトコジラミ(別名・南京虫)の発生を防ぎ車内を清潔に保つため、2029年までに座席の素材を布製から強化プラスチック製に切り替えると発表した。

公社によると、昨年10月から今年3月までにトコジラミに関する苦情が66件寄せられたが、確認したところ実際にトコジラミが発見された事例はなかった。

聯合ニュースより

鉄道の座席をプラスチックにする事例は、他国にもあるので韓国が珍しいと言うわけではないと思う。

それがトコジラミ対策になるかは良く分からないが、清掃しやすくなるのは間違いなかろうと思う。ただし、利用者にとってプラスチック製の座席が良いかどうかはまた別な話だ。ただ、トコジラミ対策は利用者の安全性に関わる問題なので、ある程度の不便は仕方がないのかも知れない。

冒頭の話についても、利用者の安全性に関わる話ではある。

工事関係者は「地下駅である阿峴駅-忠清路駅は、他の11ヵ所の老朽化した高架駅に比べても、天井仕上げ材の脱落、コンクリートの落下、水漏れなどが継続的に発生し、状態が最も深刻だった」とし「特に、駅周辺に高級新築住宅が大規模に建設され、古い駅に対する地域住民の改善要求も絶えなかった」と説明した。

NAVERより

お金をかけて改修する必要があるため、お金がなければ税金が投入される必要があるのだろう。

ただね、政府としても安易に地下鉄の利用料金を上げる訳にもいかないという経済状況なので、電気料金の件も含めて改善される見込みは当面ないだろうと思う。このブログの読者が韓国を訪れることは少ないと思うが、訪れるときは気をつけて欲しいと言い添えておきたい。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    ディスカバリーチャンネルでみた「人類が死滅して◯年後の地下街」にサムネが似ていて笑いました。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    つくづく、
    「ものを大事にする」
    「維持管理する」
    「整備点検する」
    って事が苦手な人達なんだなと思う次第。
    中抜きポッケナイナイがなくても、ダメなんでしょうね。
    そりゃ、橋は落ちるし船はひっくり返るわな……

    ※そして、不幸にもその現場に居合わせたものがバカを見る。
    ※船長は真っ先に逃げ、建設会社はとっくに倒産して逃げている。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      韓国だって、40年も駅舎をそのままの形で使っているわけですから、「ものを大切にする」という姿勢はありますよ!(謎
      何故、メンテナンスをしっかりしないんでしょうかね。意味が良く分かりませんよ。

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