韓国の対潜哨戒能力はP8A導入で向上するか

海軍

「韓国の海軍が日本に敵わない」という記事があって何気なく読んでいたのだが、P8Aの事が書かれていたので、「そう言えば」と気になった。どうなったんだっけ?そうそう、冒頭の機体は韓国の対潜哨戒能力を維持する為の要であるP-3CKである。

「わが国海軍は日本にかなわない。なぜなら…」韓国専門家が指摘した理由

2021.2.15

韓国紙・世界日報は7日、「わが国海軍は依然として日本にかなわない」と題した記事を掲載した。執筆したのは同紙の軍事専門記者であるパク・スチャン氏だ。

~~略~~

韓国軍はP3CK哨戒機16機を運用中であり、2023年からは最新の米国製P8Aが6機加わるが、約100機ものP3Cを運用してきた海上自衛隊は、後継のP1を2023年までに65機調達する方針だとして、「P3CKとP8A20機余りで日本の海上自衛隊をけん制できるかは未知数だ」と述べている。

「ZakZak」より

で、この記事自体は、そもそも日本の自衛隊と韓国海軍が戦う前提で考えている事が問題である。

そもそも、それは論理的におかしい。何故ならば、韓国軍にとって日本の自衛隊は仮にもアメリカを介した間接的な同盟国の保有する軍であり(注:日本と韓国とが軍事同盟を結ぶメリットは何もないが)、敵対するメリットは無い。

韓国政府にとってはそうでは無いかも知れないが。(主にプロパガンダ的な意味で)

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選択肢がP8A「ポセイドン」しかない。

P8Aを言い値で買う韓国

イイネ!

韓国軍が米P8哨戒機導入へ 「言い値」購入で議論呼ぶ可能性

2018/06/25 20:15

韓国防衛事業庁は25日、防衛事業推進委員会を開催し、次期海上哨戒機について、米ボーイングのP8Aを「対外有償軍事援助(FMS)」方式で購入することを決めたと明らかにした。

「聯合ニュース」より

さて、韓国軍が購入することを決定したのは、アメリカで開発された哨戒機p-8A「ポセイドン」である。

韓国軍が何のために買うかと言えば、対潜哨戒の目的である事は明らか。

なのだけれど、現在、韓国軍が運用しているのはP-3CKで、失われていなければ16機のP-3Cオライオンを運用していたはず。実のところ随分と共食い整備の犠牲になっているという噂もあり、実働可能な機体は少ないという風にも言われている。韓国軍はこれを否定していたけれど、整備に苦労しているのは事実のようだ。

最初にP-3Cを8機を1995年までに導入し、中古のP-3Bを購入した上で改造して2010年までにP-3CKを8機導入している。現状の体制になったのは最近なんだよね。

ただ、P-3Cは既に製造していないので、これ以上増やす事は難しい。だから、仕方が無くP-8Aを購入するという方向に舵を切ったようだ。何しろ、他に買う事のできる対潜哨戒機は事実上存在しないからだ。

P8Aは無人機との連携が前提

ところで、アメリカ海軍が運用しているP-8A「ポセイドン」は、ボーイングの737-800MMR(Multimission Maritime Aircraft-多用途海上航空機:37-800ERX旅客機の改造版)がベースになっている。

しかし、P-8Aは単体で任務遂行するような設計になっていないようで。

Boeing unveils new 737 signals intelligence concept

27 January 2006

A week after the cancellation of the Lockheed Martin-led Aerial Common Sensor (ACS) programme, Boeing has unveiled a new signals intelligence (SIGINT) concept based on the P-8A maritime patrol version of the 737 narrowbody airliner (Boeing’s artist’s impression pictured below).

「FlightGlobal」より

signals intelligence (SIGINT) とあるのだけれど、これ、想定されているのがMQ-4Cであるとされている。そう、無人航空機RQ-4の海軍向け仕様である。

アメリカ海軍は無人航空機MQ-4Cを索敵に利用しなが運用する計画なので、それに対応するために様々な電子機器がモリモリになっていて少々お高くつくんだよね。単独運用のためには探知機能を追加する必要があるのでさらにコストが嵩むしね。

ただ、韓国外軍が使うには、4発機じゃなく2発機であるのはちょっと不安は残る。低速で長時間哨戒を行うときに4発機だとエンジン2発を停止して飛行するのだが、P8Aにはそれができないために空中給油に対応した仕様になっている。

(注:コメントで指摘戴いたが、P3Cの運用においては1~2基のエンジンを停止させて燃料を節約するような事がなされているようだ。ただし自衛隊のP1哨戒機は4発機ながらも同様の運用は行ってはいない模様。その理由として、哨戒中の電力の確保及び停止したエンジンの再始動失敗のリスクがあるため、という事が指摘されている。このことはP1哨戒機のエンジンにIHI製のF7ターボファンエンジンが採用され、燃費が向上したことも影響している可能性はある)

でも、空中給油ってそれなりに訓練が必要な技術なので、飛行時間を確保しないとなのだが……、韓国では訓練飛行をケチる傾向にあるんだよね。その辺り改善されると良いんだけど。

一緒に発注?

そんなわけで、「ああ、韓国、P8A選ぶんだ」と認識していたのだが、続報を追いかけるのをすっかり忘れていて、去年4月にこんな記事があったのを見逃していた。

米海軍、P-8を18機契約 米軍向け8機、10機は他国へ

2020年4月1日 13:51 JST

ボーイングは、米海軍がP-8A哨戒機を18機契約したと現地時間3月30日に発表した。総額15億ドル(約1616億円)で、このうち米海軍は8機導入。残りの10機のうち4機はニュージーランド空軍が、6機は韓国海軍が導入する。

ニュージーランドと韓国の両国には、米政府が窓口となる対外有償軍事援助(FMS、Foreign Military Sales)を通じ引き渡す。納入開始はニュージーランドが2022年、韓国が2023年を計画する。

「AviationWire」より

アメリカ海軍が8機のP8Aを調達する序に、ニュージーランド空軍と韓国海軍の分も発注したということらしい。

韓国では当初の予定通りFMSで購入する流れになっていて、韓国国内でFMSは高すぎると批判が持ち上がったけれども無視された格好だな。まあ、FMS使わずに失敗した事例があるので、妥当と言えば妥当な判断だ。

寧ろ購入出来ることになって良かっじゃない。

韓国海軍にとって対潜哨戒能力を向上させる意味は何か

ところで、韓国はしきりに対潜哨戒能力を高めようと様々なアプローチを試している。これは建前的には北朝鮮の潜水艦を警戒する

金委員長の視察写真から分析、北朝鮮「新型」潜水艦の危険度

Aug. 09, 2019, 10:30 AM

北朝鮮は7月23日(現地時間)、金正恩委員長が潜水艦を視察した際の写真を公開した。

核兵器の搭載も可能とみられる潜水艦の視察は、トランプ大統領が発した「炎と怒り(fire and fury)」という言葉に象徴される、約2年前の米朝関係が緊張していた時期を思わせる行動だ。

公開された写真の詳細な分析からは、ひとたびアメリカが北朝鮮と戦火を交えれば、多くの死者が出る事態となりかねず、また北朝鮮の現政権にとって自滅行為になることが改めて浮き彫りになった。

米朝関係が雪解けに向かい始めて以来、核弾頭の搭載が可能な兵器を金委員長が視察する姿が公開されたことはなかった。だが23日に公開された写真は、北朝鮮が今や暗礁に乗り上げた和平交渉に関して忍耐心を失いつつあることを示している。

「Business Insider」より

北朝鮮人民軍海軍が保有する潜水艦は、特殊部隊が運用する小型艇も含めると、90隻にもなるとされている。潜水艦保有量では世界トップレベルである。

仕上がりはこんな感じの残念な感じであるので、「脅威度は低い」と評価する人もいるようだが、旧型とはいえ運行可能な潜水艦を多数保有する事で、可能となる戦略の幅も増える。

そういう意味で、対潜哨戒能力を向上させることそのものは本来好ましい話なのだが……、どういうわけかこれまで韓国の対潜哨戒関連のニュースを見ると、ショボイものがかなり多い。

今回だって、P8Aを購入するのであれば、是非ともMQ-4Cを購入すべきだった。というか、むしろ、MQ-4Cを是非とも購入すべきだ。

え?金が無い?

だって、6機のP8Aを購入するのであれば、3機に減らしてMQ-4Cを6機くらい買えば良かったんじゃないですかね。その方が便利だった気はするんだ。

ZakZakでは、日韓関係を改善して、対潜哨戒能力を高めたらいい、といった事が書かれているが……、そもそも同盟を組む相手ではないので、対潜哨戒能力のサポートをする義理は無いんだよね。

そして、対潜哨戒能力は専用の航空機を保有していることも重要ではあるが、それを扱う兵士達の技術やデータそのものが資産なのである。真面目にP-3Cでのデータ蓄積がやられていれば、利用可能なのかも知れないが、韓国軍はそこのところはどうなんだろう。

追記

そうそう、P8Aそのものはそれなりに信頼性がある良い機体だとは思う。

ボーイング、100機目のP-8A米海軍へ納入

2020年5月16日 08:53 JST

ボーイングは、米海軍に通算100機目となる哨戒機P-8Aを引き渡した。P-8の飛行時間は豪空軍なども含めて世界で約30万時間を数え、対潜哨戒や偵察任務に広く活用されている。

「AviationWire」より

何しろ、100機もアメリカ海軍が採用している実績のある機体である。

エンジンが2基しかない事について本文中で問題提起をしたが、数を揃えられるのであればそれ程大きな問題にはならないだろう。

量産体制に入ったと言うことで、価格も下げられるしね。

「ポセイドン」とも呼ばれるP-8A機売却の総額は推定で21億米ドル(約2352億円)で、PACは約5億ドル相当。同哨戒機は韓国が25年以上使用している類型機「P−3」の代替機となる。

「CNN」より

6機で2352億円程度っすか。他に比べられる機体もないので、これを買うしか無いという状況ではある。そういう意味では悪くない選択だったのでは?と思う。

ただ、アメリカ海軍でもP8Aに「色々な任務をやらせすぎ」という批判が出ているらしく、韓国軍では更に便利に使われる可能性はあるね。

コメント

  1. 重箱の隅をつつくようですが……P3Cの時代は「四発のうち二発を止める」をしていたようですが(実際テレビ取材で見たことあります)、P1になってからは、少なくとも本邦ではやっていないと聞きます。
    #ペラがフルフェザーにならず、抵抗だけ増えるわ停めたエンジンにも負担かかるわ(ファンが結構な勢いで回りっぱなしになり、潤滑してやらないと怖いことになりそう)で良い事無しなんだと推定します。

    というか、韓国は、対潜水艦というか対北のドクトリンそのものを大きく間違ってる気がして仕方ないですが……特に海軍が。
    どうせ浅海しかないんだから、哨戒機より哨戒艇を山盛り配備するとか、水中聴音機を(SOSUSみたいに)国境沿いに張り巡らすとか、そっちの方が実効性高い気がするんですがねぇ……P8は元々低空低速飛行が苦手なので、P3Cとは運用方法がまるで違うでしょうし。
    まあ、五年後に何機生き残ってるか、ご覧じろですね。

    • なるほど、ありがとうございます。
      P1哨戒機に関して特にチェックを入れていなかったので調べたところ、確かにP1哨戒機でのエンジン停止運用は行っていないようですね。
      「P-3Cなどのターボプロップ4発の哨戒機では、哨戒飛行中にエンジンを1〜2発停止させるロイター飛行により燃費向上を図っていたが、P-1では哨戒中の電源確保やターボファンエンジンは停止してもファンが風力で回転し抵抗が増えることおよび、空中での再始動失敗のリスクからエンジンを停止しながらの飛行は考えられていない。」wikipediaより
      P1哨戒機に採用したIHI製F7ターボファンエンジンが省燃費・低騒音を特徴とすることもあって、リスクとメリットを比べた結果の決定なのでしょう。

      そして、ご指摘頂いたように韓国軍がP8Aを採用した点に関しては、僕も「仕方が無かった」とはいえ、正解なのかといわれると疑問です。
      韓国の周辺海域の特性の問題もあるので簡単にSOSUSを張り巡らせることができない可能性はありますが、せめてP8A導入するのであればMQ-4Cを増やすべきだと思います。
      そもそも対潜哨戒のノウハウが無いんでしょうねぇ……。