スポンサーリンク

インドネシアと、苦戦するポスコ・クラカタウ製鉄

アジア
この記事は約9分で読めます。

インドネシアの鉄道のニュースを見かけた。今は特定技能制度関連でもかなり多数の実習生がインドネシアから訪れるのだが、鉄道関連の話であれば、実かかなり古くからの付き合いのある国家なのだ。

国産化狙うインドネシアで消えゆく日本の中古電車 東急8000系など…劣化した部品調達が困難〝二度目の引退〟に

2024.6/10 11:00

ヤシの木が茂るビル街を走り、常夏のインドネシア・ジャカルタ首都圏の通勤を20年以上支えてきた日本の中古電車。その光景は現地の人も引きつけてきたが、劣化した部品の調達が困難となり、車両は姿を消し始めている。

ZakZakより

それでも、ああのインドネシアによる「騙し討ち入札」は今も恨みを忘れていない。が、そこは日本の外交や交渉が未熟だった部分もある。高い勉強代ではあったが、今後付き合う上では要注意な国だよね。

虎の子の「鉄」で苦戦

高速鉄道と通勤鉄道

一応、高速鉄道の関連記事はリンクを貼っておこう。

支那が手掛けた高速鉄道は、2023年10月にようやく開通。これでインドネシア経済に大きくプラスになった!……と思いきや、そうでもなかったようだ。この「ウーシュ」は都市間交通手段としては致命的なまでにアクセスが宜しくないようなんだ。

まあ、それでも改善の余地があるだけマシかな。都心中央部から離れた場所にある駅への連絡手段を作れば、使えなくはないだろう。

で、鉄道関連の話で言うのなら、冒頭に紹介した通りインドネシアは日本の鉄道車両を中古で購入して運用するようなスタイルで、これまでやってきた。

首都圏を走る「インドネシア通勤鉄道(KCI)」の管理担当者らによると、電気系統や台車の部品調達が難しくなり、4月21日が最終走行となった。

ZakZakより

ただ、鉄道車両の老朽化に伴って、再び引退させざるを得なくなっている。鉄道車両の更新は定期的に必要なので、まあ、それは仕方があるまい。

問題はこの更新にあたって、支那製の車両が採用されるとのことなんだな。

ただ今年1月、KCIは中国企業と新型車両の購入契約を結んだ。KCIによると、日本や韓国からも打診があったが「中国側の納期と費用」などが決め手だった。国産製造までの代替となる。

ZakZakより

新型車両が支那からお安く買えるらしいね。結果、高速鉄道も通勤鉄道も支那製の鉄道車両に入れ替わっていく。インドネシアは再び高い勉強代を支払わされることにならなければ良いけれど、どうなんだろうか。

【世界ミニナビ】米国でも失敗、中国「高速鉄道計画」…政治色強すぎ中国版ガラパゴスが足枷に(1/3ページ)
米西部ネバダ州ラスベガスとカリフォルニア州ロサンゼルスを結ぶ高速鉄道計画で、米企業が中国企業との合弁解消を発表した。ベネズエラなど中南米各地で中国の鉄道計画…
「不当廉売」の結果は?アメリカ・ボストンで〝訳あり商品〟の地下鉄に乗車 脱線やバッテリー爆発も、中国メーカー製の乗り心地は…「鉄道なにコレ!?」【第63回】(47NEWS) - Yahoo!ニュース
中国の国有企業で世界最大の鉄道車両メーカーの中国中車が、アメリカ向けで初めてとなる東部マサチューセッツ州ボストン都市圏の地下鉄車両の納入を始めてから約5年が経過した。運行開始当初から脱線したり、バ

アメリカはやらかしちゃったよね。

鉄道が整備されるのに

さて、車両の売り上げの関係で嘆くのはさておき、日本が全く関われないということではないようだ。

双日、ジャカルタ地下鉄の延伸工事を受注 450億円

2024年4月18日 12:43

双日は18日、インドネシアの首都ジャカルタを走る都市高速鉄道(MRT)の延伸工事を約450億円で受注したと発表した。信号やホームドアなどの鉄道システム全般に加え、軌道も整備する。5月にも着工し、2030年ごろの完工を見込む。現地では深刻な交通渋滞やそれにともなう大気汚染が課題で、公共交通機関の整備を急いでいる。

日本経済新聞より

インドネシアの地下鉄事業には、日本の会社が関わってきていたので、この地下鉄の延伸工事に関しては日本が受注できたというニュースが4月にあった。

といった感じで、インドネシアの鉄道需要は盛り上がっている。更に言うと、建設業界もかなり盛り上がっているようだ。多分、インドネシアに渡航することがあれば、その活気に驚くだろう。それくらい勢いのある国なのだ。

そんなわけで、こういった需要がある以上は、インドネシア国内でも鉄製品の需要が増えるのでは?と思ったのだが、鉄鋼関連の商売にはどうにも苦戦している模様。

ポスコ・クラカタウ製鉄所といえば

そう、このブログで過去に紹介している国策企業ポスコ・クラカタウ製鉄所の業績がかんばしくないらしいのだ。過去のこの記事は、かなり人気のあった。

「ポスコ」の名前から気付いた方も多いと思うが、このポスコ・クラカタウ製鉄所は韓国資本が入って建設されている。ポスコといえば、日本製鉄が出資して作った韓国の企業なのだが、今や韓国では並ぶもののない製鉄企業で、海外への売上も大きい。

これが酷い話ではあるのだが、まあここで言及はやめておこう。

ともかく、ポスコがインドネシアに作ったクラカタウ製鉄所から出火してしまい、随分と施設が燃えてしまったようなのである。2014年1月の話なんだけどね。なお、製鉄所において高炉からの出火というのはそれほど珍しくないらしく日本国内の事例や韓国での事例など、まあまあ見つかる。ただ、消火が遅れてしまって、ポスコ・クラカタウ製鉄所はかなりのダメージを負い、それなりの損害も出た模様。

しかしそれでも、生産はそれなりに順調で、第2高炉建設の話もあった。

韓国ポスコ、インドネシアに第2高炉 4700億円投資

2022年7月28日 16:52

韓国鉄鋼大手のポスコは28日、インドネシア国営のクラカタウ・スチールと合弁で運営する製鉄所に2基目の高炉を建設すると発表した。今後5年間で両社が計35億ドル(約4700億円)を投じる。粗鋼生産量を倍増させてインドネシアをはじめ東南アジアでの建設用鋼材や車両鋼板の需要増に対応する。

~~略~~

さらにポスコグループで都市開発を担うポスコ建設がインドネシアの新首都建設事業に参加することも明らかにした。インフラ整備などに参画して施設建設の受注獲得につなげる。

日本経済新聞より

これが真っ当な経営判断であったのかどうかは不明だが、経済発展著しいインドネシアにとって、真っ当な製鉄所を確保することは不可欠。国策で推進しているにせよ、安定的な供給が可能であるに越したことはない。

そして、気になるのは鉄道建設事業などで用いる大量の建材(鉄材)が必要であるハズなのに、営業利益が大幅に低下したことである。うーん、なんで?

「産業のこめ」

2023/09/26 (2023/09/26 02:32:26更新)

「鉄は産業のこめ」という表現をご存じの方も多いのではないか。鉄は身近な自動車や家電から、建物や道路、土木工事などあらゆる分野で使われる基礎資材である。日本の高度成長期には産業の発展に欠かせない素材として鉄が「産業のこめ」と呼ばれていた。

インドネシアではさらなる製造業の発展やインフラ拡充が見込まれ、鉄鋼の需要は長期的に増加することが期待されている。鉄需要の将来性は人口1人当たりの鉄鋼消費量で判断される。2022年の1人当たり鉄鋼消費量は日本が450㌔、タイやベトナムが225㌔であるのに対し、インドネシアは60㌔にすぎず長期にわたり需要増が見込める有望市場である。

インドネシア鉄鋼協会によると22年の鉄鋼消費総量は1660万トンと前年比7%増加。今年も5%の伸びを予想している。このような成長市場にインドネシア資本のみならず韓国、中国資本の製鉄会社が能力増強を発表している。

じゃかるた新聞より

おっと、やぱり支那資本が関係しているようだ。

ダンピング祭り

実は、支那が安値で鉄鋼製品を輸出しまくっているせいで、世界各国に被害にあっているメーカーがある。なんと迷惑な。

韓国のポスコも随分苦戦しているらしい。

POSCO海外鉄鋼 1―3月 中国ステンレス赤字縮小 インドネシア89%減益

2024年5月1日

韓国のPOSCOホールディングスが25日発表した1―3月決算によると、海外鉄鋼事業の赤字幅は10―12月比縮小したが、事業会社によって業績は改善と悪化が分かれた。インドネシアの一貫製鉄、クラカタウPOSCOの営業利益は300万ドル(4億5000万円)と89%減った。中国のステンレス業、張家港浦項不銹鋼の営業損失は1800万ドルだが、10―12月の4200万ドルから縮小した。

産業新聞より

営業利益89%減って、かなりの大ダメージなんだが大丈夫なんだろうか??このポスコ・クラカタウ製鉄所は、インドネシアが国策で作った一貫製鉄所であり、国内の製鉄事業を一手に担う……ハズじゃなかったか?

利益が出ていない理由は、インドネシアの貿易統計を見ると何となく分かる。

8 貿易品目(総額、非石油・ガス)

  • (1)輸出鉱物性燃料(328.3)、動物・植物性油脂等(328.3)、鉄鋼(209.4)
  • (2)輸入機械・機械設備(258.4)、鉄鋼(119.5)、医療用品(43.5)

(単位:億ドル)(2021年、インドネシア政府統計)

外務省より

自国で生産できるはずの鉄鋼だが、随分輸入している。この統計は2021年のものだが、2023年になると更に増えているのである。

これが支那の安値攻勢による影響であることは明らかだ。

変調中国からあふれる鉄鋼 市況の波乱、貿易摩擦再燃も

2023年12月7日 5:00

中国の鉄鋼輸出が急増している。今年は年間で9000万トン前後まで増え、反ダンピング(不当廉売)関税などの対抗措置が広がった2015年(1億1000万トン強)に迫る勢いだ。生産能力を急速に増強した中国の余剰品が国際市場に向かう構図は石油製品や電気自動車(EV)素材でも目立つ。

中国製鋼材は主に東南アジアへ

「反ダンピング関税をかけてもメッキ加工などですり抜け、中国製鋼材の流入が止まらないようだ」。

日本経済新聞より

インドネシアは2019年に反ダンピング税をかけて、支那からの鉄の流入を抑えようと試みていたのだが、これが上手くないらしい。

中国による日本製ステンレス製品に対するアンチ・ダンピング措置がWTO協定違反と判断されました (METI/経済産業省)
日本の申立てに基づき、世界貿易機関(WTO)で審理されてきた中国による日本製ステンレス製品に対するアンチ・ダンピング措置について、紛争処理小委員会(以下、「パネル」という。)最終報告書が公表されました...

それどころか、インドネシアこそダンピングをしているとして、課税しようとしたらしい。

インドネシア/中国の合金鋼ホット/AD「クロ」仮決定 | 日刊鉄鋼新聞 Japan Metal Daily
インドネシア・アンチダンピング委員会(KADI)は、中国から輸入される合金鋼の熱延コイルに対しアンチダンピング(反不当廉売=AD)調査の結果、被害を認定し「クロ」を仮決定したと公示した。 官報...

なかなか苦戦しているみたいだね。

ポスコ本体も苦戦

なお、このブログでも言及したのだが、こういった事情とは別にポスコ本体も苦戦しているらしい。

台風被害や火事によって、随分と苦労した模様。

韓国『ポスコ』純利益が48.5%も減る。「二次電池の素材を手掛ける子会社」は96%純利益が減少!
韓国鉄鋼業の最大手『POSCO(ポスコ)』の業績が大変に悪くなりました。以下の『DART』に公示されたデータをご覧ください。↑黄色のマーカーを引いてあるのが対前年同期比の増減。2023年総売上:77兆...

更に、新たに手掛けている二次電池の素材を作る会社でも苦戦している模様。相手は支那なので、太刀打ちは難しいと思う。

中国鋼材市況が続落 昨年6月以来の安値

2024年3月19日

中国の鋼材市況は全国人民代表大会後(全人代)も下落を続け、先週に昨年6月上旬以来の安値となった。鋼材需要が低調な状況が続く中でも鉄鋼メーカーは高い水準の生産を続けており、需給は大きく緩んでいる。不動産市場のさらなる悪化への懸念が広がっていることから、市況はしばらく軟調に推移する見込みだ。

産業新聞より

過剰生産に加えて、国内消費減退で在庫がアホほど積み上がっている状況なのだ。安値だろうが全世界にバラ撒く姿勢は崩していない。

中国鋼材輸出23年36%増 9026万トン

2024年1月16日

中国の2023年の鋼材輸出量は前年比36・2%増の9026万4000トンと3年連続増え、7年ぶりの高水準となった。1億トンを超えた15―16年に迫る過去3番目。

産業新聞より

こういった話はインドネシアに限った話ではないのだが、自国産業を守るための方策をしっかりやらないと本当に滅ぼされかねない。

折角、火災から立ち直っても、ポスコ・クラカタウ製鉄所の苦戦は続きそうである。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    「中国側の納期と費用が決めてだった」
    って、あの国に「納期」なんかあるす?
    高速鉄道どうなった?です(笑)
     ポスコの不審…さんざん国策で安売りを実行して、米国の製鉄を潰した南朝鮮が苦戦だって。(米国製鉄潰しは、アパラチア山脈沿いの炭鉱を、オバマが環境を騒いで潰した事にも原因がある)ざまあみろと言いたいところですが、そこに中国が割り込んで来るのはなぁ。まだポスコの方がマシかと。う〜ん。
    連中に「米倉」を持たせるのもなぁ……。
    日本の地下鉄については「良い買物」ですな。父が実は戦後の日本で最初にシールドマシンでの推進工事を行ったエンジニアの一人で、地下鉄の技術の歴史はアジアで一番に長いと聞いてます。蓄積されたものが違う。
    まぁ、でも木霊様の仰る通り、騙し討ちを忘れてはならない!
    ネシアってのは世界最大のイスラム教徒人口を持ったイスラム圏で、彼らは騙し騙されに関する道徳観とか、信用に関する考え方がまるで違う。そこ複雑で。
    親族に独立戦争に参加した人がいるので、そういう事に対する義理堅さとか、
    庶民のこそ狡くも人情のある部分は認めるのですが、途上国ビジネスでは、そのいい加減さと、いいわけには辟易しましたので。まぁあまり信を起きすぎない事ですよね。

    • 木霊 木霊 より:

      納期というか、恐らくは作って余っていたのを、在庫処分として押しつけられたのかと。

      ポスコも散々やらかしましたが、支那の製鉄業界は更に輪をかけて酷いので、インドネシアももうちょっと良く相手を見ろと。
      高い勉強代にならなければ良いんですけどね。
      インドネシアも狡猾な外交をやっているつもりなんでしょうけれど。

  2. アバター 砂漠の男 より:

    弱り目(高炉爆発)に祟り目(支那ダンピング輸出)で、業績悪化だそうですが、
    鉄鋼の国内市場を護るためには、ダンピング製品に関税をかけるしかないよね。
    どこを生贄に天秤の釣り合いを取るかの話にすぎませんが。
    アメリカが、支那の製鉄製品に関税をかけろ!と言ってくるのを待っているのかもw

    • 木霊 木霊 より:

      インドネシアとしては弱り目に祟り目なのですが、支那との付き合い方を考えると余り強硬なことも出来ないというのが、インドネシア的に困ったところなのでしょう。
      こればっかりは「頑張ってね」と言うより他にありませんね。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >アメリカはやらかしちゃったよね。
    不思議なほど、他国のやらかしの知見って共有されないですよね。
    どこの国も「自分は大丈夫」って思ってるのかな?
    ※ハニトラその他の腐敗で知見が有効になってない、という一番大きな理由はさておく。

    鉄は、今の時代、
    ・安くて大量
    ・高くて高性能
    このどっちか、ですよね、売れるのは。
    日本は、有り難い事に高性能鋼材ではトップクラスのはずです(日本車の性能の一因)。
    対するに、ポスコは……言わぬが花か。
    冶金はパクリでは身につかない分野ですからねぇ……とはいえ、それなりに知見がたまっても良いはずの時間はポスコその他も過ごしているはずなのですが……(って、この先も言わぬが花)

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      他国の失敗はしっかり勉強すべきなんですけどね。
      自分は失敗しないというバイアスが働くのでしょうかね。

      鉄の問題は、トランプ氏はかなりの危機感を感じていたようですけど、バイデン氏はそうではなかったようですね。

      ポスコは新日鉄から技術をとられて、電磁鋼板に関して裁判をやっていましたが、何とか勝つことが出来ました。
      それ以降は気をつけてはいるようですが、それでも情報漏洩は起きているようで。日本としても枕を高くして寝ている場合ではないと思います。

      • アバター 七面鳥 より:

        >枕を高くして寝ている場合ではない

        「麹菌を鼻くそに付けて盗み出す」アイデアを高らかに喧伝するメンタルの人達ですからねぇ……

タイトルとURLをコピーしました