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パレスチナの国家承認に動く国際社会

イスラエルニュース
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良いことなのか悪いことなのか判断は難しいけれど、「動いたな」という印象は強い。

欧州3か国がパレスチナを国家として承認表明 緊張高まる懸念

2024年5月23日 8時49分

イスラエル軍がパレスチナのガザ地区への攻撃を続ける中、アイルランド、スペイン、ノルウェーの3か国は22日、パレスチナを国家として承認すると表明しました。イスラエル側は強く反発していて閣僚がイスラム教の聖地を訪問し緊張が一段と高まることも懸念されています。

NHKニュースより

イスラエルのやっていることは、当初は理解できたのだけれど。今となっては、イスラエル国内でも不満が高まっているし、国際社会の不信感も相当高まってきている。

国際世論の信頼を裏切ったイスラエルの決断

イスラエルの失敗

パレスチナ問題は根深い。

この記事がこのブログで扱った最初の記事だが、この時は未だイスラエルの行動について理解を示していた。

テロリストの排除に動き出したという意味で、イスラエル軍の行動に正当性があると感じたのだ。当時は、だが。

ところが、国際社会は直ぐにこのことを後悔する。僕も後悔したさ。

僅か4日後の記事なのだが、イスラエル軍はテロリストの排除ではなくて、ガザ地区に住んでいるパレスチナ人全員をハマス認定して、すり潰す作戦をやり始めた。

一ヶ月で国際社会にはそっぽを向かれることになる。ただ、アメリカは今の段階においてもイスラエル支持の姿勢を崩してはいないのだが。

イスラエルの国内でデモ

しかし、イスラエルでは国内でも戦争継続について反対する意見が強くなっている。

イスラエルで数千人が抗議デモ、総選挙の早期実施要求

2024年4月22日午前 10:32

イスラエルで20日、総選挙の早期実施を求めて数千人が抗議デモを行った。パレスチナ自治区ガザで拘束されている人質解放に向けた一段の措置も政府に求めている。

ガザでの戦争開始から7カ月近くが経過する中、イスラエルでは政府に対する抗議デモが続いている。

ロイターより

イスラエル国内でデモをやるのは結構勇気がいることだと思うんだけどね。

元々、イスラエル軍のガザ地区侵攻は、イスラエル首相のネタニヤフ氏の支持率向上の側面があった。ネタニヤフ氏の在任期間は2009年3月より15年ほどになる。直近の選挙は2022年11月で、極右・宗教政党と連立政権樹立で合意し組閣している。

ネタニヤフ氏にとって、強硬な姿勢を続けることは首相を続けるための絶対条件なのである。そして、第6次ネタニヤフ政権が2022年12月29日より始まったのだが、国民の反対を押し切って「裁判所が政府決定を覆すことを禁止するなど司法の権限を弱める改革」などを推し進めので、ネタニヤフ氏の求心力は低下する結果となる。

だから戦争開始は、ネタニヤフ氏の国内支持率向上に必要だった。

ネタニヤフ首相は戦時中の選挙実施はイスラム組織ハマスに資するだけだとして繰り返し拒否している。

ロイターより

もはや、ネタニヤフ氏は引き返せないところに来ているのだ。

国際刑事裁判所(ICC)による逮捕状請求

そして、先日、こんなニュースが。

イスラエルとハマスの指導者の逮捕状、ICCが請求 ネタニヤフ氏は「虚偽」と強く非難

2024年5月21日

国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検察官は20日、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐる戦争犯罪容疑で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相らとイスラム組織ハマスの複数指導者らの逮捕状を請求したと発表した。ネタニヤフ氏はこの動きを激しく非難している。

BBCより

これに関して、ICCが絶対に正しいとかそういうことを言うつもりはない。ただ、興味深いのはネタニヤフ氏への逮捕請求の他に、テロ組織ハマスに対しても逮捕状が出された点である。

逮捕状が請求されたのは、イスラエルのネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相、ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤ氏と軍事部門トップのモハメド・デイフ氏、ガザ地区における指導者ヤヒヤ・シンワル氏。

ネタニヤフ首相は、自身が「大量殺人者」と呼ぶハマスと「民主的なイスラエル」が比較されることを、嫌悪感をもって拒否すると述べた。

BBC「イスラエルとハマスの指導者の逮捕状」より

民主的なイスラエル……。

それは笑うところか?

アメリカのジョー・バイデン大統領もこれに同調し、イスラエルとハマスとの間に等価性はないと述べた。

BBC「イスラエルとハマスの指導者の逮捕状」より

バイデン氏もこんなことを言っちゃっているが、説得力には乏しいな。アメリカは未だイスラエルに同調していくつもりのようだが、アメリカの国内事情を考えると選挙戦を控えた今、イスラエル票を失うのは痛いという判断なんだろう。なんと浅ましいことか。

パレスチナを国家承認

と、こんな状況で、冒頭のニュースに戻っていくわけだが、アイルランド、スペイン、ノルウェーの3か国が「パレスチナを国家として承認する」とか言い出した。

パレスチナ暫定自治政府によりますと、140か国以上がパレスチナを国家として承認していますが、ヨーロッパの国々は加盟国は少ないということで、パレスチナ暫定自治政府やガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは歓迎しています。

NHKニュース「欧州3か国がパレスチナを国家として承認表明」より

もちろん、イスラエルとしてはそんな話は認められるはずもなく、この3カ国の駐在大使に即時帰国を指示したようだ。

これ、ICCの決定にも関わっている話で、ICC内部における政治的駆け引きの結果ということが言えると思う。

つまり、国際的にも「イスラエルもいい加減にしろ」という流れになっているのである。このことが直ちにイスラエルの現状を変える訳ではないが、ネタニヤフ氏に対する国内批判は更に高まる可能性は高そうである。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    あと何手かミスすれば詰むな。そう感じます。ICCの逮捕状にしても、ハマスの首謀者と一緒に(同列に)出されちゃいました。そう来てEU域の二等国といえ、西欧であるスペインにアイルランドにノルウェーでせう。英仏独じゃなくても、ハンガリーとかよりは発言権が強いすからねぇ。
    私しゃ「とことん自民族を護り戦い抜く」というイスラエルの姿勢はきらいでないし、タルムードとか異教徒に関わらず評価してます。たださ、ユダヤとかイスラエルと、そもそもネタニヤフ政権は別なのでの?というか、そういう方向に収めたい風は感じますねぇ。
    ネタニヤフとシオニストが悪いんだ!
    (いやハマスもひどすぎだけど)で事を収めようというか。仮に停戦して、国家承認とかするでないすか。(ハマスは全滅きないから熾火は残るけど)
    その時にネタニヤフを「戦争犯罪者」として扱い、どこぞに亡命なりしてもうとか「自殺」してもらうとかすればさ、まぁハマスもアレだから「ユダヤ人には罪はないよね」で済ませられないかな?という論法で来るのでは?
    トランプは福音派を票田としてるからイスラエルを無視はできないけど、もともと反ユダヤな放言していた人だし、ウォール街の金融資本に紐付きでないから、バイデンほどには超党派なユダヤ有力者には縛られない。
    バイデンはどーにもならないでしょう。
    この話は、大統領選に大きく影響してくるでしょうね。

    • アバター 山童 より:

      そうそう……個人的にはお笑い芸人で大統領を演じたから指導者の座についたゼレンスキーなんかより、特殊部隊の隊員として血を流し兄を失ったネタニヤフの方が男として好きですね。 
      ただネタニヤフはシオニスト勢力を利用するあまり、そこに縛られ過ぎましたね。リベラル勢力に頼りすぎて身動きできなくなったバイデンと一緒。
      どちらも晩節を汚しましたなぁ。軍の指揮官や司令官ていどならともかく、なかなか国家指導者にして戦争犯罪人指定は珍しい。

    • 木霊 木霊 より:

      イスラエルは下手をうったと思いますよ。
      初動でガザ地区をすり潰してやるという動きはやはり間違いでした。
      イスラエルの政治家は世界が狭いのでしょうね、イスラムの社会はイスラムの教えが第一でありますから、ある程度は仕方のない面はあるわけですが……。あ、イスラエルはユダヤ教でしたか。ユダヤの民は彼らにとっては神より特に選ばれた民ですから、更に質が悪いですね。

      問題を着地させるためには、もはやイスラエルはパレスチナという国家を認め、二カ国での手打ちをするという方向に向かうしかないでしょう。
      パレスチナはハマスを差し出し、イスラエルはネタニヤフ氏を差し出すことで、手打ちですかね。

      • アバター 山童 より:

        これは前に木霊様の御指摘されていた事が、今後に問題化しますね?
        ほら、今のパレスチナ自治政府じたいが腐敗しているというお話。
        ハマスとネタニヤフの交換で手打ちは現実的と思います。
        ただ木霊様の御指摘とおり、その後にパレスチナ政府となる人々が腐ってるとなると……話はさらにややこしくなる気配がちらちら……。

        • 木霊 木霊 より:

          パレスチナ自治政府は、求心力のある人物不在ですから。
          ハマスが力を持った時点で、後戻りできないところに踏み入れたと言うことなのでしょう。

  2. アバター 山童 より:

    ユダヤについては「義理堅い」イメージあります。樋口季一郎中将をユダヤ人協会が米国政府に圧力をかけて、戦犯指定や、スターリンの求める身柄引き渡しから護った事で解ります。
    樋口季一郎中将は終戦時、北方領土からの日本人民間人の避難と、ソ連の北海道侵攻を防ぐ為に、独自判断でソ連軍と交戦した司令官です。
    彼は実はナチスの迫害から逃れシベリア鉄道で満州に到達したユダヤ難民数千人を庇い、医療、宿舎、食料、移動列車を手配し、南万種鉄道総裁に直談判して、
    上海のユダヤ人地区に無事に送りました。その為にドイツは東條英機にチクリましたが、最後まで凛とした中将の態度に東條英機も「わかった人道上の措置だ」と認めたんですね。
    この事をユダヤ人は忘れなかった。
    そういうねぇ義理堅さは日本人の美学に合い通じるところがあるし、神道とユダヤ系の類似点を見ても(日ユ同祖論は偽史に過ぎませんが、それが成立するとけの共通要素があるのは事実です)、共感させられるものは多い。半島かんかよりもすうっとずうっとね。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >僕も後悔したさ。

    七面鳥は、イスラエル支持で、後悔はしてませんです。
    こうなる(パレスチナ更地化計画)だろうと思ってましたから。
    慙愧に堪えないですが。

    パレスチナは、早期にハマスと手を切って、その首を差し出せば良かったのに、とは思ってます。

    宗教がらみの民族浄化は、どっちかが消えるまで終わらんですよね。哀しいけど。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      今となっては、パレスチナがハマスの首を差し出すシナリオは無理です。
      そもそも、誰がハマスを捕まえるのか?というところがどうにもならない所でして、そこまでハマスがテロ組織として力を持ってしまったところがそもそもの失敗だったのだと思います。

      宗教戦争の恐ろしいとこですね。

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