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レールガン開発に本腰を入れ始めた防衛装備庁

安全保障
この記事は約6分で読めます。

過去、人気があった記事を眺めていて、少し気になったものがあったので、Google先生にお伺いを立ててみたら、新しい記事が!

レールガン開発で米軍に要員派遣 過去に研究、知見吸収―防衛装備庁

2024年05月21日15時12分配信

電磁力により弾丸を高速で発射する「レールガン」開発を巡り、防衛装備庁が米海軍に要員を派遣していることが21日、分かった。レールガンを研究していた米国のノウハウを吸収し、早期実用化につなげる狙いがある。複数の政府関係者が明らかにした。

時事通信より

……どういうこと?

アメリカから学ぶ?!

レールガン開発を進める防衛省

以前の記事はこちら。

アクセス数やPV数は他にもっと凄いのがあるのだけれど、コメント数は現在トップである。それだけ盛り上がったということでもあると理解しているんだけど、

それにしてもレールガンである。

構造は前回説明したので前の記事に任せるとして、アメリカが開発していたレールガンがこちら。

img

ゴッツいレールガンで、アメリカは155mm口径の榴弾を飛ばすことを想定していたようだ。

一方、日本の防衛省は40mm口径の弾体を飛ばすことを想定していて、大きさがまるで違う。だからこそ、何故、今のタイミングで視察に行くのかが良く分からない。

装備庁は23年11月から研究職の技官1人を米海軍の研究機関に派遣。レールガン研究に携わった関係者の話を聞いたり、設備を視察したりしているという。任期は今年6月までで、帰任した後に別の要員の派遣を検討する。

時事通信「レールガン開発で米軍に要員派遣」より

それも、任期は7ヶ月で、次の要員の派遣も検討しているのだとか。一体、何をやっているのだろうか、もの凄く気になる。

研究職の技官1人だけの派遣なので、本当に視察目的なんだろうけれど、半年以上もアメリカに行っていると言うことは、構造まで詳しく見学しているということになると思う。そして、後続要員も検討するという。

まさか研究開発を共同で?

おそらく、現時点において兵器の完成度はアメリカの方が高いように見える。

システム

開発の方向性はまるで違うのだから、単純な比較は意味がないとは思う。

が、それはそれとして40mm口径の弾体を飛ばすには防衛省の装置はデカイんだよね。

レールガンは火薬を用いる従来の火砲より低コストで、迎撃も難しい。戦略環境を一変させる「ゲームチェンジャー」として自衛隊が期待を寄せる新たな装備品の一つだ。車両や艦艇に搭載し、対地・対艦攻撃やミサイル迎撃などでの活用を想定しているが、命中精度の向上や装置の小型化などの面で依然として課題がある。

時事通信「レールガン開発で米軍に要員派遣」より

恐らくは、命中精度や装置の小型化は解決が必要な課題で、アメリカ軍開発品の外面を見る限りは完成度は高い。

極超音速のレールガン、実用化へ連射・電源小型化の壁

2024年4月22日 5:00

防衛装備庁が実用化を目指している「レールガン(電磁砲)」の開発が、いよいよフェーズ2に移行している。レールガンはSFの世界ではおなじみの存在だが、世界で実用例がない。同庁は「まだ装備化が見えている段階ではないが、注目の技術なので速やかに実用化したい」(技術戦略部技術計画官付総括班長防衛技官の松井弘樹氏)と意欲を示す。

日本経済新聞より

アメリカで開発されたレールガンの砲は、統合高速輸送艦 (JHSV) で試験が行われていて、必要とするエネルギーの大幅削減に成功したという記事も見かけたので、ある程度は電源の問題も解消していた可能性があるわけだ。

それにしたって、アメリカが終了したプロジェクトとはいえ、ホイホイと技術を見せてくれるわけでも無いだろうから、恐らくはバーターを持ちかけて共同研究開発的な側面はありそうだ。アメリカとしても10年以上も研究開発に取り組んでいた課題で、開発終了の翌年にも33億円程度の資金が出されていたらしい。

米議会、海軍のレールガン開発に資金供給を行うも開発継続は絶望的か
米海軍は開発資金を要求せずレールガン開発終了を議会に提案していたが、バイデン大統領が27日に署名したNDAAの最終バージョンにはレールガン・プログラムへの資金が盛り込まれていることが確認された。

開発は正式に終了されたけれども、技術交流する意味はあるのだろうね。これは推測だけれども。

予算増額

日本は2016年から研究開発を初めて、2022年まで約10億円を投じている。アメリカは単年度で33億円突っ込んでいたことを考えると、ちょっと目眩がするね。

だがしかし、2022年以降は防衛省も結構な額を突っ込んでいる。

防衛省は将来レールガンの研究費として2022年度に65億円、2023年度に160億円をそれぞれ計上した。今夏の2024年度概算要求では238億円を求めた。

Yahooニュースより

本気だわ。

だが、電源に関してはなかなかキビシイ。おそらく三菱重工が絡んでいるとはいえ、洋上で得られる電力というのはエンジン次第の部分がある。推進力にエネルギーを注ぎ込んでいる時にレールガンに電力を回せる余裕があるのか?という話も含めて、なかなか難しいのだろう。

もうさ、いっそのことSMR(小型原子炉)とか搭載しません?既に潜水艦に搭載する程度には小型化できているんだし、三菱のマイクロ炉構想もあるよね。え?前の記事では韓国のSMRに否定的だった?いやだって、日本は既に原子力船むつで実績あるんで、船に乗せるくらいは余裕っす。

コンデンサとかと組み合わせれば、大電力を得るのも難しくない気はするんだ。

続報求む!

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追記

ここへ来て防衛省の熱いレールガン推しは一体……。

防衛省、フランス国防省、ドイツ連邦国防省及び仏独サン=ルイ研究所による「レールガン技術の協力に係る実施要領」に関する署名について

2024年5月30日

5月30日、防衛省、フランス国防省、ドイツ連邦国防省及び仏独サン=ルイ研究所は、「レールガン技術の協力に係る実施要領」の署名を行いました。

防衛省のサイトより

どうしてフランスやドイツにまで粉をかけているのか。

えーと、Xでもポストしてたね。

「協業の可能性を検討」って、手伝ってもらう気満々なんだけれども、

本実施要領は、参加機関間のレールガン技術に関する情報・意見交換を円滑に進めることでレールガン技術に関する研究・開発・試験・評価の協業の可能性を検討することを目的とするものです。本実施要領を活用しつつ、防衛省としては、我が国の防衛力強化を加速させるため、レールガンの早期実用化に向けて着実に取り組んでいく考えです。

防衛省のサイトより

本格的に動き出している気はするんだけど、なぜ、レールガンなのか。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    こんにちわ。個人的にはレールガン好きなんですが。米国が開発諦めたので難しいとは想うんですね。そしてら予算がどんと増えてる。こりゃ本気かと。
    で、何をいまさら質問かもしれないんですが、レールガンて何をする大砲?
    超高速弾を撃ち出す……それは解る。
    弾体は軽量で超高速。M4とかのアサルトライフル弾みたいなもんですね。
    すると幾つかの疑問が浮かんでくる。
    ①超高速で飛ばすとしても、超高速のミサイルを撃ち落とせるとは限らない。
    →だって「照準」も超高速にしなければならないから。だがそんな照準技術あるのだろうか? AIを用いても難しい?

    ②装填して飛ばすまでのラグ。
    火縄銃みたく時間かかるなら、イージスシステムを改良する方がマシでは?
    電力が間に合ったとして、砲身は?
    装薬銃のように砲身が焼けるのか解らないですが、超高電圧をマシンガンみたくかけたら砲身に何らかのストレスは出るのでは?
     
    ③軽量弾による軌道への影響

    M4系アサルトライフルがそうですが、弾頭が軽いから、標的にヒットしてから結構に色んな方向へ弾道が変わるというか
    跳弾したりする。高速だからジュールは大きいのですが、軽いからどうしてもヒットした後の予測がつかない。
    これだと米国の開発していたような榴弾式でないとドローン大群や、ウンカのような編隊には難しいか?

    ④そもそも低速なドローン相手ならイージスシステムで良くない?
    あれも飽和攻撃にはアウトだけれど。

    ……と考えると「何に使うんだろう?」という疑問が出てきました。まさか現代に対艦砲撃戦する訳ではないですよね?
    てか、船を相手にするなら弾頭が重くないと。
    ううむ、解りません!

    • 木霊 木霊 より:

      えーと、レールガンの一番のメリットは加速器によって質量弾を打ち出せることなんですよ。
      アメリカの兵器開発も、最初は長距離砲撃用に開発を始めているんですよね。

      ミサイルを撃てば良いじゃないか!という話はご尤もなのですが、エンジンと燃料を詰むと炸薬が沢山積めない。燃焼を成業するためのコンピューターを積む必要がある。値段の割に破壊力が出ないなんてことになります。
      ところが、外部の電磁誘導による長距離砲撃が可能であればどうでしょうか?
      要は、投石機と大差ない話なんですよね。

      ご指摘のような問題はあるのでしょうが、弾丸を安く出来ることと炸薬を増やせることはメリットになると思いますよ。自衛隊は段幕張るために使うことを目論んでいる節がありますが。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >いっそのことSMR(小型原子炉)とか搭載しません?

    やっぱり、これですよね。
    何なら、エヴァみたく、一発撃つごとにSMRを排莢する陽電子ロングレンジライフル、なんてのも<をい

    コネクタだけ規格化しておいて、有事にはいつでも繋げるようにだけしておく、という手もあるかも。
    平時は普通の発電機とコンデンサに繋いでおけばOK。
    有事はヤシマ作戦でもヤシオリ作戦でもご随意に、って感じで。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      良いと思うんですよSMR搭載案は。
      ところで、エヴァのポジトロンライフルって、そんな兵器でしたっけ?
      調べて見たら、一発撃つのに1億8千万キロワットもの電力が必要とかで。そりゃSMR使い捨てにする位の電力が必要になりそうですが、残念ながら原子炉は瞬間的に莫大な電力を供給できるタイプのアイテムではありません。コンデンサ的なもので電圧を高めてあげないとダメだと思いますよ。

      • アバター 七面鳥 より:

        やあ、突っ込まれてしまいました。

        エヴァのポジトロンライフルで排莢してたのはヒューズでした。
        電気は日本中からかき集めて、コンデンサも利用して突入電力を確保……的な運用かと。
        波動エンジンの始動も同じでしたね。

        絵的な面白さで、カートリッジ的にマイクロ原子炉がポーンと排莢されると面白いだけだったんですが、だったらいっそ、マイクロ核弾頭の電磁波を指向性持たせて放出した方が役に立つかな?
        ※絶対にやっちゃダメなライフルになりますが。

        ※「航空宇宙軍」の同人誌ネタだったはずですが、宇宙空間に全長数キロのレールガンを置いて、核爆発でチャージして撃つ(使い捨て)というアイデアはありました。

  3. アバター 河太郎 より:

    おお! 弾幕を張る、装薬量の多い砲弾……これは戦艦大和ではワクワク
    佐藤大輔氏の「征途」に、イージスシステムを載せた改良戦艦大和が湾岸戦争に出場する話があって萌えたのですが(女より兵器に萌える)
    しかし……航行しながら連射したら停電しちゃいますよね?
    まさか戦闘中に足を止める訳にはゆかないだろうし。
    やはり原子炉を搭載しないとムリ……
    想うにいい加減に原子力エネルギーのアレルギーはヤメレ!
    「むつ」の事件は還暦の私が小学低学年の時ですぜ。当時とは原子炉の技術が違う。と、勝手に盛り上がりました。

    • 木霊 木霊 より:

      すみません、前回のコメントに関しては少し訂正を。
      自衛隊の目指している方向性で、「弾幕を張るために使うことを目論んでいる」というのはあくまで僕の感想であり、公式には運用メリットとしてこんなことを言っています。
      ・誘導弾に比べ弾丸サイズが小さいため、探知されにくい
      ・弾丸サイズが小さく、超音速飛しょうのため迎撃されにくい
      https://www.mod.go.jp/atla/research/ats2022/pdf/disp_04.pdf

      その為に、こんな期待を抱いているようですね。
      ・ 高速度弾丸による長い射距離での対抗手段となり得るもので、多層的な防空手段のひとつとして期待
      ・ 従来砲からの飛躍的な弾丸初速・射距離の向上が見込まれ、迎撃が困難な打撃力として期待
      参考までに。
      多層的防空手段
      迎撃困難な打撃力

      • アバター 河太郎 より:

        これは河太郎にも解る図面付説明で恐縮であります。忘れてたけれど、小口径高速弾は小銃でも貫通力が高いんですよね。
        昔みたいな装甲艦はないと思うので、長距離から敵艦を貫通できる可能性は高い
        甲板を突き破った弾は館内でどう跳ね回るか解りませんが、それは日本には関係ないですからね。
        ああなるほど!なのでした。
        木霊様お忙しい中時にありがとう。

        • 木霊 木霊 より:

          小口径で高速飛翔体、貫通力に関しては群を抜く性能なんでしょう。
          しかし、対艦兵器としては効果は疑問に思えるわけで。
          ピンポイントで狙えるくらいの性能なら、エンジンをぶち抜くこともあるやもしれませんが、流石に難しいですからね。

          • アバター 七面鳥 より:

            横合いから失礼します。

            ・火薬砲では初速に限界がある、レールガンはそこを越えられる
            ・超高速弾頭は炸薬が要らない、運動エネルギーそのものが武器になる
             ※超高速≒運動エネルギー大≒停止する際に熱としてエネルギーを放出≒熱いなんてもんじゃすまない
            ・戦車のAPFSDSでも、既に従来の避弾経始とか意味が無い世界になってる
             ※自分と相手の接触部分が圧力で溶けるので跳弾しない、理論上は弾頭の長さと同じ厚みを抜ける
            ・発射時の火薬由来の衝撃がない(弾頭加速する反動のみ)なので射撃精度が出し易い、初速も安定させられる
            メリットとしてはこんなところかと理解してます。
            デメリットとしては、砲身の焼損ですが、火薬砲でも焼損するし、何なら過熱で砲が曲がるから、その意味では(ある程度の弾数撃てれば)問題とされないかも。

            相手を沈めなくても、CICかレーダか、クリティカルなところを潰して無力化出来れば……

  4. アバター 河太郎 より:

    七面鳥様、
    なるほど弾の運動エネルギーから熱エネルギー転換(放出)は想定外でした。
    AR10での7.62㍉とM4の5.56をそれぞれ
    超音速弾と亜音速弾とで比べ撃ちした事があるんですが、亜音速弾を使う方がサプレッサーが静かだし(音速弾は高温でかなり響く)、ストッピングパワーが強い気がするんですね。表面的には標的の破壊力が勝るし。なので的の質量がデカい場合、軽量音速速弾より、重量亜音速弾の方が効くと考えてました。
    しかしマッハ20とか超超高速となると、弾着時の熱エネルギーへの転換はすごい事になるだろうと。
    M20とかになると、ほとんど隕石の落下スピードっすよね。10㌧トラックサイズが地表に衝突すれば関東平野が全滅とか言うし。メキシコ湾のクレーターとか見れば(恐竜を絶滅させたやつね)核兵器より凄いエネルギーなの解ります。
    するとっすね、ふっふっふっ、新戦艦大和いけるんでないすかね?
    原子炉を複数積んで、弾幕張れるほどの大小のレールガンつけて。そう米国のミズーリーとか大戦の戦艦に取り付ける。
    レールガンなら装薬式と違い巨砲にしたからって、反動で転覆したりさないし。
    惜しむらくは日本には、武蔵や大和などの重装甲戦艦が残ってない事ですが(T_T)
    レールガンとイージスシステムで原子動力で改造した戦艦ってロマンないすか?

    • アバター 七面鳥 より:

      >レールガンとイージスシステムで原子動力で改造した戦艦

      昭和の時代の架空戦記にありそうですね……あったかも……
      ※あの頃の架空戦記、物理的にも科学的にも軍事的にもバカな物が目白押しで頭クラクラしたものです。

      レールガンに限らず、最新兵器はおしなべて電気食いですから、その意味でも原子力は不可欠になっていくかも……

      そうそう、自衛隊というか技本がレールガンに夢中なのは「弾頭にも発射側にも火薬が要らない」のが以外に大きいのかも……と、先ほどふと思いました。
      ウクライナ戦争で、西側は弾薬送りたいけど量産が追っつかない、火薬がない、火薬は『中国から』調達してる、みたいな話もあったかと。
      なら、有事に調達出来ない可能性が出てきた火薬(ニトロセルロースとか)を使わない砲熕兵装は、それだけで価値があるかも、です。

      • アバター 河太郎 より:

        七面鳥様の視点は鋭い。砲弾は解らないけれど、銃弾は豊和工業とあと一社つまり二社しか生産してない。
        おそらく砲弾も似たような状況でせう。なので電気あれば戦闘できるのは有事に有利に働きますからね。

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