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似非科学とエゴマインド満載の「ひやっしー」

経済
この記事は約9分で読めます。

こんなの誰が信じるんだ?レベルの話は世の中に時々出てくる。水素水の話もそうだったし、空間除菌の話もそうだった。科学のようで科学でない話は、世の中に結構あるのだ。EM菌の話もそうだね。

ジャンボタニシ食害拡大 コメ農家「対策に限界」 茨城・鹿行地域の水田

2024年6月26日(水)

茨城県鹿行地域の水田で、稲の苗を食べるスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の被害が続いている。今年は昨年より被害が多いとみられ、田植えをやり直した農家も。

茨城新聞より

引用記事を見て、「え?ひやっしーの話ではないの?」と思った人もいると思うが、これも同じ話だと思う。

ああ、この記事は軽い読み物として肩の力を抜いて読んで頂きたい。

蔓延する似非科学

ジャンボタニシの話

ジャンボタニシの話は、僕もこのブログで1回扱っている。

そして、3月のこの記事で扱った後に田植えが行われ、そして被害が大きくなっている状態だというのが冒頭の話である。

ジャンボタニシによる被害は年々拡大しているとみられ、JAなめがたしおさいによると、ジャンボタニシ駆除剤の注文は昨年より増加。昨年まで被害がなかった人からも問い合わせがあるという。

同様の被害は、近隣の同県鹿嶋市や同県行方市でも確認されている。

茨城新聞「ジャンボタニシ食害拡大」より

前回の記事を書く切っ掛けは、某党の議員が騒いだことでSNSで「ジャンボタニシで除草しよう」というアホが大量に湧いたことに関係している。農林水産省も流石に「止めてくれ」とコメントを出した程だ。

その結果がコレなのだから、嘆かわしい。

一見、ジャンボタニシが雑草だけ食べてくれる凄い農業技術だ、みたいな雰囲気があるし、農薬とか使わなくても除草が出来る雰囲気もある。でも、こんなのに頼るくらいだったら、デッキブラシ片手に田んぼに出かけた方が余程マシ(デッキブラシを使って田んぼの中を擦ると除草が出来るというやり方がある。実際に草は取れるのだが、かなり重労働だ)である。

つまり、この記事は何か「エコ」なんじゃないか?という雰囲気に流されてジャンボタニシを放流する人が増えたというお話なのだが。……むしろ、ホタル増やしたら良いのに。

ひやっしーとはなんぞや

さておき、タイトルに出した「ひやっしー」の話である。

「ヤバい温暖化」に本気で挑む23歳化学者の生き方

2024/01/03 8:30

人類に残されたタイムリミットはあと6年。2030年までに世界の平均気温上昇を1.5度以下に抑えなければ、いよいよ地球環境が危機的状況に陥る。

~~略~~

この状況を回避すべく、10歳から二酸化炭素の研究に挑んできた若き化学者がいる。国連第27回気候変動枠組条約締結国会議(COP27)にもパネリスト登壇した村木風海さんだ。

東洋経済より

ハッキリ言っておくが、この話に関わってはダメだ。遠巻きに眺めている程度が丁度よいのである。何故なら、「ひやっしー」ではなく「詐欺っしー」被害に巻き込まれる可能性が高いからだ。これは開発者本人がそうであるという意味ではなく、この手のビジネスとして関わる人々は「水商売(水素水など、水に特殊な効果があるとして売り出す商売全判を指す)」に親和性の高いところが見え隠れするからである。

特に環境テロリスト達は、様々な状況を利用してくるので要注意だ。

警告をしたところで、具体的な内容に踏み込んでいく。ハッキリ言って、中学生くらいの理解の知識があれば、こんな話には乗らないと思う程度の質の悪い話だ。

世界で研究がはじまったばかりの、空気中の二酸化炭素を直接回収する『CO₂除去(CDR)』という技術で、10年くらい前から海外のベンチャー企業などが装置開発を進めています。

東洋経済より

この話の中心になるのは、二酸化炭素除去技術の話。今、大企業も必死になって研究している話で、僕も最近少しだけ関わった。

結論から言うと、二酸化炭素の除去は可能だ。しかし、効率が問題である。莫大なコストがかかるいのだ。

吸い込んだ二酸化炭素の60〜84%を回収できるので、一日中稼働すると部屋中に森や草原が広がっているのと同じくらい二酸化炭素吸収効果があるんです」

東洋経済より

……そして、この機能の説明の中身、記者は「おかしい」と思わなかったのだろうか。

なにかすごいぎじゅつ

見た目が空気清浄機のようなシロモノに、中身は多分ファンが入っていて、カートリッジ式の筒の中に空気を通す構造なのだろう。筒の中には触媒が入っていて、化学反応で二酸化炭素を吸着する仕組みだ。

調べて見ると、「ひやっしー」は水酸化ナトリウムの溶けたアルカリ水溶液に二酸化炭素を溶かして吸着させる装置だと説明されている。

水酸化ナトリウム水溶液、或いは苛性ソーダには工業的にも頻繁に使われる物質なので、特に珍しいものではない。

{\displaystyle {\ce {2 NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O}}}

二酸化炭素を吸着するという性質があることも、公知である。実際にプラントとして建設される場合に、二酸化炭素の吸収剤として水酸化ナトリウム水溶液を用いるケースもあるようなので、使えば二酸化炭素の吸収が出来ることくらいは分かる。

だが、装置構成を見ても、単に吸着させるだけの話に留まる。

そもそも装置が二酸化炭素を選択的に取り込むことができないのに、「吸い込んだ二酸化炭素の60〜84%を回収できる」はおかしな表現である。

大気中の二酸化炭素含有量は0.04%だ。だから、「吸い込んだ大気に含まれる二酸化炭素の6~8割」というのならば未だしも、何故、「二酸化炭素を吸い込む」のか。そして、そもそもこの化学反応を起こすためにはそれなりの時間を要する。

また、一瞬なら6~8割の効率は出る可能性はあるが、反応が終わってしまえば二酸化炭素を吸着しなくなる。どう考えても「回収出来る」ことにはならない。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1955/62/7/62_7_807/_pdf

出来上がった炭酸ナトリウムはどう処理するつもりなのかも不明(どうやら工業的に再生するつもりらしい)だが、その方法だと、二酸化炭素を取り出すのに大きなエネルギーを必要とする。つまり、効率的に室内の二酸化炭素を回収出来ても、カートリッジ式の中に閉じ込めるだけ。これを工業的に再生(二酸化炭素が吸着できる状態にすること)するためには、大きなエネルギーを使う必要がある。

だから、機構的に化学反応を促進する何か特別な技術があったにしても、室内全ての二酸化炭素が6割から8割減るような書き方をしてはならない。あくまで、気液接触している部分で二酸化炭素の吸収が可能というだけの話である。

「特許」は技術の証明にはならない

更に、記事の中にはこんな下りがある。

「結果的に、二酸化炭素吸収装置の実験は大成功しました。北杜市立甲陵高校2年生のときには、ぼくを化学者として成長させてくれた先生方のおかげで、この発明が総務省『異能vation』プログラムの破壊的な挑戦部門に採択され、高校3年生の夏休みに祖父と21台手作りして特許も取得しました」

東洋経済より

詐欺師が使う手口の1つに「特許取得」がある。特許は、日本政府(経済産業省)が独占のお墨付きを与える制度ではあるが、それは内容の正しさを担保しない。審査官は、科学的実験をして特許技術の実証可能性を確認するわけではなく、「なんとなくそうなんだろうな」という理解をする程度の話なのだから。

そして、今回の場合、水酸化ナトリウムが二酸化炭素を吸着できることは既に知られた話で、どのように効率的に回収出来るかという「アイデアの部分」が特許されたと考えられる。文章を読む限りはそうなのだ。で、そうであるならば、「効率の良い二酸化炭素改修が実現できます」というのは、「効率の善し悪し」は主観に基づくものなので、アイデア部分は特許される可能性はあるのだろう。

実際に、特許第7004881号の審査経過を見ていくと、審査官は「そんなの一般常識だろう」と拒絶理由通知を出し、最終的に「家庭やオフィスで使うシステム」に限定して特許査定を受けている。つまり、水酸化ナトリウムで二酸化炭素を吸着することは一般常識ではあるけれど、家庭やオフィスで使える装置としたところが新しい技術だよね、と言う認定なんだ。

ほんの僅かでも二酸化炭素をこの装置によって回収出来るのであれば、それは技術として認定すべき話なので、特許庁としては「実現可能性を否定」することはない。

サバティエ反応は宇宙での利用可能性

更に酷い部分がこちら。

村木さんの発明はこれだけではない。むしろ、ひやっしーは地球を守るための突破口にすぎないとも言える。というのも、村木さんは高校2年生のとき、100年間誰も見つけられなかった「新触媒を使ったサバティエ反応」を発見したのだ。

100年前にフランスの化学者ポール・サバティエが二酸化炭素と水素を混ぜてメタンを作る発見をしたが、費用が高すぎる、空気中で燃えてしまうなどの問題で実用化が難しかった。この100年前の発見をヒントに広島大学と一緒に実験をした村木さんは、見事、二酸化炭素からガソリンの代替燃料となるエネルギーを作り出す発明をしたのである。

東洋経済より

何、こんな話信じてるの?

そりゃ、ポール・サバティエは科学者としてはノーベル化学賞を受賞する程の人物だったよ。工業的にメタンを作る技術は実際にサバティエ反応と呼ばれて、化学式も明らかになっている。

{\displaystyle {\ce {CO2{}+4H2->[{} \atop 400\ ^{\circ }{\ce {C}}][{\ce {pressure}}]CH4{}+2H2O}}}

400℃環境で反応エンタルピーは−165.0 kJ/molと、効率が宜しくない。実際、この手法は宇宙空間にて使われる可能性を検討されているが、地球上で利用されることは無いだろうと思われる。何故ならば、地球上では別の方法でメタンを調達した方が安いからだ。

記事ではアルミホイルを触媒に使ったっみたいなことが書かれているけれども、エネルギー的にあり得ない話。事実だとすれば、化学式に書かれたモノとは違う反応が起きたとしか考えられない。

この話も何やら「そらりん」として大きなプロジェクトとして動き出しているらしいが、極めて怪しい。本人は東京大学に入学出来る程度の学力はあったらしい(推薦入学らしいが卒業したわけではない)ので賢いのだろうが、だからといって彼の主張の正しさが、科学技術としての完成を意味しているわけではないのだ。

「そりゃ、出来る」「出来るけど、誰もやらないよ、コストがかかりすぎて」というお話なのである。

ホリプロの設定

なお、このひやっしー開発者はホリプロに所属するタレントであって、実際、科学者とも化学者とも言い難い。まあ、自称するのは止められないんだけれども。

東大4年・22歳異端の化学者が卒業目前で満期退学 教授らを呆然とさせた決断の背景
化学者で発明家の村木風海さん(22)が3月31日、東京大を満期退学すると発表した。村木さんは地球温暖化を止めるための発明や、人類の火星移住を実現するための研究などを行っている。大学4年生の村木さんはな...

発明家という「設定」も、やや怪しい様に思うのだが、まあそれでもアリだとしよう。

温暖化対策の「二酸化炭素回収マシン」を発明した東大生が描く未来図 | マネーポストWEB
化石燃料を大量消費した結果、地球上の二酸化炭素濃度は高まり温暖化が進んだ。そうした危機に立ち向かう研究者の一人が、高校時代に二酸化炭素回収マシン「ひやっしー」を発明した、村木風海(かずみ)氏だ。 自....

過去、現役東大生という「設定」が使えたウチは良かったが、今やタレントとしてもちょっと困った感じになりつつある。

村木風海(ムラキ カズミ) | ホリプロオフィシャルサイト
ホリプロは、昭和35年(1960年)の創業以降、「文化をプロモートする人間産業」という企業理念のもと、タレントの発掘・育成を強みとするマネージメント事業を中心として、番組やCMを制作する映像事業、ミュ...

サイトを見る限りはコツコツと後援会などもやっているようだし、メディアへの露出もやっている様だ(しかも増えている)が、これだけメディアに露出していて、一体、何時研究しているんだ状態である。

そういうタレントが世の中にいても良いとは思うけれど、これが「科学」だと勘違いされては困るなと言うのが、素直な感想である。

きっと、イーロン・マスク氏ではなく世界のグレタ・トゥーンベリ先輩を見習った行動を目指しているのだろうね。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    うさんくさ!
    いや、そんな発明ならば、せこせこタレント活動せんでも、石油メジャーあたりかイーロン・マスクがスカウトしてるって!です。
    co2ねぇ……たしかにコレが増えると地球が高温になるのは事実。恐竜時代のジュラだか白亜だかには地球大気の二酸化炭素濃度は数倍以上でした。でも恐竜時代って何億年(何千万年?)ありました?
    んで、哺乳類の時代に入って地球が寒冷化するのですが、それは二酸化炭素が減ったからだとされます。
    南極の氷河調べると解る。南極の氷のオンザロックを飲んだ事がありますが、ハイボールでないのにバチバチいう。実は南極の氷の層には、雪として積もった時の空気が閉じ込められていて、それが弾けるらしいすね。なのでボーリングした氷河サンプルを調べると、南極が寒冷化した以後の時代の大気中の二酸化炭素濃度が解るとか。
    んで、そこから解る事は「二酸化炭素が減ると氷河期になる」って話で。
    てか、そもそも「今」は氷河期なんですけど。氷河期の途中で温暖な時があって、間氷河期でしたっけ?
     それなだけ。
    人類の意識できるスパンが短いから、目先の暑さに惑わされる。co2が原因かとうかなど、実は解明されてない。
    過去に地球は全地球凍結した事もあるそうで、そうなる直前は灼熱だったとされてます。それぐらい大きな波で地球は気候変動していて、暑くなってるとしても、
    それが人為的な理由によるものかどうか根拠がない!
    五輪を観ていれば解るけど、自分の都合よい方へルール変更するのは西洋が近代いらいすっとやってきた事!
    現在の環境問題は、問題があるのは事実ですが、それを政治利用しているのは間違いなく欧米でしょう?
    日本のハイブリッドに敵わないからEVだと大合唱したり(あげくに中国に付け込まれて大騒ぎ😁)、そういう方向性かと。
    そもそも温暖化のデーターの多くが大都市圏で観測されていて、ヒートイランド現象と区別がつかない。
    で、そこを指摘したりすると、「地球の敵」「大企業の走狗」とレッテル貼りする。まんまそういう方向性で来ていて、
    虹色運動やらと変わらないと想うすね。
    つまらはポリコレと変わらない。
    きちんと基礎研究して、主張してるのではないもの。人類を救えではなく、単に19世紀いらいの西欧優位を保とうと、必死に難癖つけてるとしか思えない。
    環境問題は、今のカルトやオカルトじみた主張をチャラにして、本当に科学的に立証してこないと、co2排出量の多い途上国はどこも協力しませんよ。
    それと何故か「中国の排出量に目を瞑る」という欺瞞をやめませんとね。誰も知らない従わないですよ。

  2. アバター 匿名 より:

    大気中の二酸化炭素から炭素を取り出す技術をサッポロビールが開発していた。

  3. アバター 河太郎 より:

    しかし人をバカにしたネーミングだなぁ。ヒヤカッシーにすればよいアル。

  4. アバター 匿名 より:

    二酸化炭素吸着剤に「ひやっしー」(冷やっしー?)という名称を付ける所も
    「温暖化、猛暑の原因は人が排出した二酸化炭素のせいだ!」
    という環境団体の言い分丸呑みですね。

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