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フィリピンへの大型多目的船供与はシーレーン防衛目的

アジア
この記事は約6分で読めます。

あまり大きなニュースとしては取り上げられなかったが、重要ニュースなので軽く触れておく。

日本、フィリピンに大型多目的船5隻供与 中国の威圧に対応

2024/6/10 18:45

フィリピン政府は10日、日本の国際協力機構(JICA)と97メートル級多目的船5隻の導入に関する円借款契約に調印した。南シナ海で中国による威圧が強まる中、多目的船を追加配備し、海上安保や海難救助を巡る能力を高める狙いがある。

産経新聞より

このニュースを見て、「岸田のヤロウ、またバラ撒きやがって」と、感じた人も少なからずいたらしい。わざわざポストで指摘はしなかったけれど、脊髄反射でポストするのは宜しくない傾向だよ。

シーレーンを防衛せよ

フィリピン沿岸警備隊向けMRRV

この日本政府の方針は以前から続いていて、過去にも似たような事をやっている。

フィリピン沿岸警備隊向けMRRVの引渡と現地トレーニングについて

2022年3月,6月に引渡しを終えたフィリピン沿岸警備隊 (Philippine Coast Guard、以下PCG) 向けMulti-Role Response Vessel (多目的対応船、以下MRRV) についてご紹介します。

日本船舶海洋工学会より

この船だが、全長約96.6m、幅約11.5m、総トン数約2260トンクラスで、フィリピン沿岸警備隊においては最大規模の船である。

当社で建造した2隻目が6月に現地まで回航されPCGへ引渡されましたが、引渡し後もPCG乗員に対して、本船の仕様や操船要領、装備機器の取り扱い方法を熟知してもらうことを目的として当社から技術者をマニラへ派遣し、現地での海上運転、及び、乗員向けのトレーニングを約2か月間に渡って実施しました。

日本船舶海洋工学会より

記事で「当社」とあるのは三菱造船のことで、海上保安庁向けの巡視船を製造できる会社である。

これをフィリピン向けに新造し、引き渡しをして、技術者をマニラに派遣して現地で指導をするという徹底ぶりである。

予定通りであれば、10隻ほどの巡視船をフィリピンが受け取るはずだ。

調べたのだけれど、フェーズ1が見当たらなかったので、リンクはフェーズ2からである。申し訳ない。

Japanese firm starts assembly of MRRV
Japan Marine United Corp. (JMU), the company which bagged the P8.8-billion contract to supply 10 mul...

こちらのリンクも参考までに。

合同海洋演習

なお、こうした巡視船の供与の他に、合同訓練も積極的に行っている。

日米比海上保安機関の連携による初の合同訓練等を行いました~三機関合同訓練、能力向上支援等を実施~

海上保安庁は、令和5年6月3日(土)から7日(水)の間、米国沿岸警備隊(USCG)及びフィリピン沿岸警備隊(PCG)と、初めての三機関合同訓練等を行うとともに、米国沿岸警備隊と連携してフィリピン沿岸警備隊職員への能力向上支援を実施しました。

海上保安庁のサイトより

これより4ヶ月後にはこんな訓練も。

フィリピンと米の海軍 日本含む過去最多9か国で合同演習開始

2023年10月2日 21時47分

フィリピンとアメリカの海軍は、日本の海上自衛隊を含む過去最多の9か国で合同演習を2日からフィリピンで開始し、海洋進出を活発化させる中国を念頭に、インド太平洋地域で多国間の連携を深めるねらいがあるとみられます

NHKニュースより

完全にブートキャンプ状態で、フィリピンの沿岸警備隊の強化と共に、フィリピン海軍の強化もやると。

ポイントはアメリカ軍も巻き込んでいることだね。まあ、アメリカにしても他人事ではないのだけれども。

緊迫の高まるフィリピン

このような状況になっている背景には、傍若無人に振る舞う支那の脅威がある。

フィリピン軍 “南シナ海駐留部隊の食料 中国側に奪われた”

2024年6月4日 19時06分

フィリピン軍は、中国と領有権を争う南シナ海のセカンド・トーマス礁の拠点に駐留する部隊に届けるため、航空機から食料を投下したところ、中国側に奪われたと発表し、「挑発行為であり違法だ」と非難しました。

フィリピン軍のトップ、ブラウナー参謀総長は4日、首都マニラで記者会見を開き、先月19日に南シナ海の岩礁、セカンド・トーマス礁にあるフィリピン軍の拠点に向けて航空機から駐留部隊のための食料を投下したところ、一部を中国側のボートに奪われたと発表しました。

NHKニュースより

こんなことをやっておいて、支那はフィリピンに対して、「信義に背いてもめごとを起こさないよう求める」などと寝言をぬかしおる。

南シナ海における中国海警とフィリピン沿岸警備隊の衝突事件 ――フィリピンの対応と国際連携の重要性

南シナ海における中国とフィリピンの緊張が高まっている。中国は南シナ海のほぼ全域を「九断線」で囲み、内側の島嶼の領有権と海底資源の権利と管轄権を主張する。周辺国は、このような主張が国際法、とりわけ国連海洋法条約と合致しないとして争いが起きている[1]。このような中、以前より中国の海警局の所属船(海警船)や海上民兵の船がフィリピン沿岸警備隊(PCG)の巡視船や補給船に接近し、かろうじて衝突を回避するケースが多く報じられてきた。そのような中で、2023年の2月に海警船がPCGの巡視船にレーザー光線を照射し、一時的に乗組員の視界が遮られたと報じられた[2]。その後8月には中国海警がPCGの巡視船に対して放水銃を使用する事件が発生した[3]。さらに9月には中国が南シナ海のスカボロー礁に全長300メートルにも及ぶ網状の障害物を設置し、フィリピン漁民の漁業や船舶交通の安全に支障をきたす事件が発生した。この障害物は、のちにPCGのダイバーによって撤去された[4]。

そして10月には、ついにフィリピン海軍がチャーターした補給船と中国海警船が衝突し、続けて中国民兵船がPCGの巡視船に衝突する事件が発生した。これまで海警船や海上民兵船がフィリピンの船舶と衝突しかねない距離まで接近することはあったが、衝突そのものは発生していなかった。12月にも中国海警が放水によりPCG巡視船の機器に損傷を与え、長距離音響発生措置(LRAD)を使用しPCG乗組員の耳に不快感を与えたと報じられ、さらに船舶同士が衝突しPCG巡視船に損傷を与える事件が発生している[5]。これらの中国海警船による新たな機材の使用や衝突により南シナ海における中国とフィリピンの緊張が一気に高まったのである。

笹川平和財団より

フィリピン海軍や沿岸警備隊は装備も人員も不十分であるために、随分と支那に舐められている。

コレに対抗すべく、日本が巨額の資金を投じて支援することで、フィリピンがストッパーの役割を果たしてくれることを期待しているのである。当事者であれば、当然に抵抗するだろうからね。

そんな感じの情勢で、フィリピン周辺海域では緊張が高まっているのである。

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    実のところコレは良策ですね。日中の対立は置いておいて、マラッカなどのチョークポイントは、実は中国にとっても荒れては困る場所です。彼らも中東からの石油などの資源輸送が混乱すると困るのは日本と同じ。もともとインド洋に出没したソマリア海賊以前からマラッカは海賊が多発した海域です。
    いまの中国は海賊などが多発すると、それを口実に軍事拠点を作りかねないですが、基本的にはシーレーンを乱されると困る実情があり、沿岸海域のコーストガード強化については、表立って文句はつけ難い部分もある。つまり正面からいちゃもんつけ難い理由になるんですね。
    インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピンあたりの海域については。
    もちろん彼らは米国の傘の下で周辺海域の防御力が高まる事は嫌なのですが。
    さすがに海賊の出る島嶼をシナ海軍で殲滅するのは侵略認定を受けてシナ包囲網を固められますから。
    海上治安を名目にフィリピンのコーストガードを強化するのは自衛の為だけでなく、習中国に圧力かけるには良い策と思います。まぁでも、安倍さんの努力が無かったら岸田もできなかったと思いますけれど。評価はしてます。

    • 木霊 木霊 より:

      そもそも、日本の大型巡視船が増えた背景にあるのがマラッカ海峡の海賊退治ですから、フィリピン周辺海域での活動も海上保安庁にとっては未経験どころか、経験豊富なんですよね。その業務の一部をフィリピン沿岸警備隊に押しつける格好ではあるんですが、整備から運用までばっちり、手取り足取りということのようです。
      フィリピンには正当なる理由がありますから、装備強化や共同訓練にしても、やりやすいという側面はありますね。
      確か、シンガポールにも協力を取り付けていますし、インドネシア・マレーシアに対しても能力向上支援をやっていますね。
      地道な努力には頭が下がります。

  2. アバター 河太郎 より:

    えっとメモ忘れて正式名称が解らんですが、核弾頭巡航ミサイルを積んでいたと言われた戦艦ニュージャージー。博物館になってたけれどドック入りしました。
    ドック入りすると言うから未だ使えるのでせう? 博物館にされる前は、いつでも実戦投入できる保存をしていたそう。
    前述のようにメモ無くしたので、巡航ミサイルの正式名称は解らんのですが。
    ニュージャージーはレバノン内戦とか、
    ベトナム戦争以後も艦砲射撃には実戦投入されていたそうで。で、日本に寄港する戦艦ですから、この核弾頭疑惑が国会で質問され、中曽根首相が答えてるんてすけれど、「ニュージャージーには核弾頭は載せてないです……たぶん」みたいな答弁をしてるんですね。
    んで、そこについての論文みたいのを眺めてたんですが、どうも当時のハプーンだったかな? その巡航ミサイルがニュージャージーに積まれてるのは事実なんですが、何故か通常弾頭だとカサが増して、主砲を載せたままだと配置でけんと。だとすると「核弾頭ハプーンしかねーじゃんか!」って話になってる!
    んで、一度積んだならまた積めるでしょ? 何より搭載しないでも「核弾頭巡航ミサイルを積んでるかも?」という中国に対する「ブラフ」にはなると想うんですよ。中国も確実に国会答弁で中曽根首相がしどろもどろになった事は知ってるはずだから。積んでるだろ?と必ず疑いの眼で観るかと!
    でも戦艦だから、武装勢力を監視する為のもんですよ、いやだなぁ核弾頭なんか積んでる訳ないでないすか。二次大戦の
    大砲積んだ戦艦なんですぜ!と言い逃れできる。搭載してようがしてまいが、習中国はセンシティブにならざる得ないと想うんてすよ。とーせドック入れて直すのならば、この海域を巡航させて脅しに使えば良いと想うんですが。
    いかがなもんでしょう?

    • 木霊 木霊 より:

      戦艦ニュージャージーですか。1991年2月8日には退役していますが、かなりデカイ戦艦だったみたいですね。
      確かにトマホークやハープーンを装備できたみたいですが、トマホークならば核弾頭搭載可能ですね。実際、その時代に核兵器搭載可能だったかは不明(対地攻撃型BGM-109A TLAM-Nは1983年3月に実戦投入可能だと宣言されている)ですが。
      ハープーンは調べてみた限り、搭載は難しそうです。技術的にはなんとかなりそうですが、本体重量が軽いため重い弾頭が積めなさそうなんですよね。飛翔距離が短いのもネックです。

      さて、戦艦の運用の話ですが、難しいかもしれません。博物館から出てきた戦艦が支那を威圧する展開はなかなか燃える展開ですが、現実的に運用出来るのかどうかは怪しい気がしています。今は戦闘機もセットで移動しないとですから、空母と一緒に必要になりそうですが、そうすると、小回りの効かない戦艦が置いてきぼりなんていう展開になりそうで。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    今やっと気付きましたが、
    >「岸田のヤロウ、またバラ撒きやがって」
    これ、「円借款で」やるわけですから、国内で建造するんですよね。
    という事は、長い目で見れば、国内造船業へのお手当をフィリピン政府から引き出したことになりますよね。
    案外、上手いことやりよる<キッシー

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      この話は「円借款で」というだけでは無くて、もうちょっと紐付きの酷い話なのであります。
      国内造船業へのサポートの意味も勿論ありますが、フィリピン沿岸警備隊は「ワシが育てた」状態なので、船舶が故障した場合でも訓練するにも日本を頼ることになります。更に、日本のシーレーン防衛にフィリピン沿岸警備隊を駆り出す意味もある上に、そもそも日本で幹部教育された警備隊の方々が組織するのでありますから、日本的な価値判断がフィリピンに入り込むことになるんですよね。
      長期的に日本の防衛力に資する話になるという意味でも、かなりGJなんですよ。

      もちろん、裏切りリスクはあるし、情報漏洩にも気を配る必要はあるんですが。

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