スポンサーリンク

森林環境税が始まるが環境保全目的は嘘っぱち

政治
この記事は約10分で読めます。

年間1,000円程度の税金が課される話なんだけれども、これがまた酷い話らしい。

6月から「森林環境税」徴収 横浜市民は独自課税含め、環境関連で1人年約3000円徴収

2024/5/30 16:25

所得税と住民税が1人当たり計4万円減税される定額減税と同じタイミングで、森林整備の財源に充てる「森林環境税」の徴収も6月から始まり、1人当たり年間1000円が個人住民税に上乗せされる。

産経新聞より

昨今は「環境保全」とか「エコ」とかいえば免罪符になると思っているらしいし、このブログもどちらかというとエコには否定的なので非国民扱いである。が、めげずに記事は書いていこうと思う。

財務省の差し金か

看板の掛け替え

先ずはこちら。

ザックリとこんなことが書かれているが、最初の一文に注目して頂きたい。

現在、「復興特別税」として住民税に1000円が上乗せされている税目が、6月からは「森林環境税」に変更して徴収される。税負担が増えるわけではないが、横浜市民にとっては、すでに環境関連の税が市と県から徴収されており、「三重課税」にも映る。

産経新聞「6月から「森林環境税」徴収」より

実は、復興特別税が森林環境税に変更される、それだけなのである。ハッキリ言って、再エネ賦課金にも大反対の立場にいる僕にとっては、僅かであっても森林環境税には反対である。増税すんな。

復興特別税の話は、こちら。

個人の方に係る復興特別所得税のあらまし

平成23年12月2日に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布され、「復興特別所得税」及び「復興特別法人税」が創設されました。

国税庁のサイトより

平成23年から「復興のための施策を実施するために必要な財源の確保」の目的で、復興特別税というものが設置された。これ、日本学術会議から提言されている。

はい、皆さん、ムカついてきたー。

東日本大震災被災者救援・被災地域復興のために

平成 23 年4月5日

東北および関東地方を襲った大地震・大津波、さらにこれを誘因とする福島 第1原子力発電所の事故によって生じている被災地域住民の困難と窮乏は、日 本の近代史において未曾有のものである。

~~略~~

国は緊急対策の補正予算を組み、国家予算の組み替え、既定の財政支出の節 減を図るとともに、復興のための国債の発行や増税・新税(たとえば開発復興 税)について、制度の設計を進めるべきである。国債発行に関しては財政規律 の問題を考慮し、増税は、国民的な復興努力の一環として位置づけ、世代間に おける負担の公平性を図るべきである。緊急時、短期、中期および長期におい てそれぞれとるべき経済政策について早急に検討すべきである。

日本学術会議東日本大震災対策委員会より

そりゃ、あんな惨状になった東北地方の復興に、国民が少しずつお金を出すという意義はあると思う。そこは賛同するのだが、こんなの建設国債の発行で賄うべき話

日本学術会議のような反社集団の口車に乗せられて、さっさと増税を決めてしまったのは……、ああ、当時は民主党政権だったね。

実は最初から間違っていたのである。

復興特別税は2037年まで

さて、そうはいっても流石に「復興」を看板に使う以上は、期間を定める必要がある。そこで、当初予定されていたのは2013年から2037年までの25年間という期間である。四半世紀は続ける予定だったと。

復興特別所得税

今更ではあるが、今考えると25年も継続して搾り取る理由が良く分からない。復興はそこまで長引いても良いと考えていたということなのだろうか?そんなんだったら、短期集中で3倍くらいにして10年くらいで終了させるべきだった(注:直ぐには使えないにせよ、復興基金として積み立てれば良かったと思う)。

図を見ていただければ分かるように、復興特別法人税は2年だけで10%という税率に設定してあった。短期で終わらせることは可能だったのである。

が、25年に設定した理由は簡単で、出来るだけ長く搾り取りたかった。それだけなのだ。

まず、「1000円上乗せ」というと、復興特別税を思い浮かべた人もいるかもしれない。復興特別税は、2011年に起きた東日本大震災を受けて2014年から復興を目的に、個人住民税に年間で1000円上乗せされて徴収されていたが、2023年に終了した。このタイミングで森林環境税の徴収が始まるわけだが、佐藤教授は、国民への負担に配慮しているといえるとの見方を示している。

FNNプライムオンラインより

ただし、個人住民税に1000円上乗せされて徴収していた復興特別税に関しては2023年に終了し、今年7月に森林環境税として復活した。看板の掛け替えなんだよね、実質的に。

復興債は建設国債で良かったんじゃないの

なお、復興債と呼ばれる国債も発行していて、12.5兆円分の復興債が出ている。が、何故かこれ25年で償還する国債らしい。いや、建設国債で出そうよ……。

国債については、日本には何故か60年償還ルールという謎のルールが設定されている。例えば10年国債を6兆円発行すると、10年後の満期には1兆円を完全に償還した上で、残り5兆円分については、10年の借換債を発行して借り換えるのである。

国債毎に償還期限は設定されているのだが、ロールオーバー(借り換え)することで、実質的な償還期限を延ばすことができる。ただし、そうすると国債が雪だるま式に増える懸念があるので、このような償還ルールが定められているという建前である。

外国にも似たようなルールはあったようだが、現在は撤廃されているそうな。多くの人が「60年償還ルールを撤廃すると財政規律が毀損される」と騒いでいるが、撤廃された国はどうなったのだろう?そういう議論は見当たらないんだが。

さておき、60年償還ルールがあるから返済比率を考えて国債が発行しにくくなっているのは事実である。

更に、コレとは別の話だが復興債というのがキチンと使われたかは不明だ。

復興債、総額12.5兆円に 年金財源流用分を補てん

2011年8月5日3時0分

菅内閣は4日、東日本大震災からの復旧のための第1次補正予算に流用した年金向け財源2.5兆円について、今年度にも発行する復興債で補填(ほてん)する方針を固めた。復興債の発行総額は当初予定した約10兆円から約12.5兆円へ膨らみ、所得税の臨時増税などで償還される見通しだ。

先月29日に決めた復興基本方針の「事業規模と財源確保」の項目に2.5兆円を復興債で補填し、増加分を復興費用に加える趣旨を盛り込む。復興対策本部(本部長・菅直人首相)はこの復興基本方針の改定を近く持ち回りで決定する。財源は歳出見直しや臨時増税などで確保するとして内訳を示しておらず、歳出削減が進まなければ増加分はそのまま臨時増税で賄うことになる。

朝日新聞より

当時、菅直人はこんなアホなオペレーションをしていたのだが、呆れた発想である。日本の国政は一事が万事このような話なんだよねぇ。

2.5兆円を素早く出すために年金向け財源から引っ張ったことに文句を言っているのではなく、この財源に対する穴埋めを歳出見直しや臨時増税で確保するとかアホなことを言っていたことに腹を立てているのである。

そしてこの使用用途は、は公共施設や、年金、医療費など、幅広い用途で使われているそうな。えぇ、復興目的で集めたのに……。

税金無駄遣い5296億円 検査院、復興予算を重点検査へ - 日本経済新聞
会計検査院は2日、国の2011年度決算の検査報告をまとめ、野田佳彦首相に提出した。税金の無駄遣いなど経理処理が不適切と指摘したのは513件、計約5296億円。金額は前年度比1.2倍で、09年度(約1兆...

全てが全て適切に使われるケースばかりではないと思うけれども、余り適切ではない事例は何度も指摘されている。

NHKニュースより

概算で32兆円ほど注ぎ込んではいるが、その中身で復興とは関係ない予算執行も散見されたようだ。

|震災・原発事故アーカイブ|福島民報

財務省の仕事は、税金でお金を集めて各省庁に配分するというものなので、使い道は把握していない。その結果がコレなんだろうね。

しかし財務省の発言力は相当強力である。お金を持っているところは強いのだ。財務省としてはその額が多ければ多いほど嬉しい。一方で、国債のように返済額が膨らむモノに関しては忌避感を示す傾向が強い。「財政健全化」を呪文のように唱え、隙あらば増税しようとする背景には、そういう信念があるからなんだろう。

復興特別税というのは、そういう信念に基づいたものであったということである。

人口を元に決められる

さて、話を戻して森林環境税について。横浜市の使い道というのがちょっと面白かった。

横浜市は昨年12月の市議会で、平成21年度から導入している「みどり税」について、今年度から5年間継続する条例の改正案を可決した。個人は年間900円、法人は9%などを市民税に上乗せして引き続き徴収する。5年間で見込まれる計約142億円の税収を使い、市内の森林を買い取るなどして緑地保全を進めるという。

産経新聞「6月から「森林環境税」徴収」より

市内の森林を買い取り、緑地保全を進めるんだそうな。

ふーん。

それ自体悪いこととは思わないけれど、森林環境税で徴集した税金を充てるのが適切かどうかは不明である。何故ならば、この森林環境税の配分は人口に基づくという話になっているからだ。

一方、6月から徴収される森林環境税は国に納められた後、都道府県や市町村に配分される。配分額は森林面積や林業就業者数、人口をもとに決められ、配分金額上位の横浜市の場合、令和6年度に約4億4300万円が交付される見通しだ。

産経新聞「6月から「森林環境税」徴収」より

国庫に一旦集められた上で、森林面積や林業就業者数、人口をもとに決められる。相対的に人口が多いところが有利ではあるよね。

一方、2019年から既に始まっている森林環境譲与税が、これまで4年間で約1280億円配分されたうち39%の494億円が活用されていないという状況については、次のように説明した。

「活用されていないというと、やや誤解があります。例えば都市部で使う時には、学校や図書館などの公共施設を国産の木材を使って建て替えたり、改築したりしようと、そのために貯めているんですね。実は自治体は、日常的にインフラを整備するためのお金を貯めていて、未活用と言っていますが、将来のために貯めているという面があります。 森林環境譲与税が森林がない自治体にも交付されているのは、国内の木をうまく使ってほしいということなんです」

「今どれぐらい積み立てているのかというので、森林が多い自治体と少ない自治体があるんですが、現在のところ森林が多い自治体では1%ぐらいの自治体が積み立てていて、少ない自治体は20%ぐらいの自治体が積み立てているので、やはり少ない自治体の方がうまく使えていないという実情はあります。 ただし、森林の多い自治体でも林業担当の方がいないというパターンがあって、この場合うまく使えていないということがあります」

FNNプライムオンラインより

人口が多いところは森林が少なく、森林が多いところは人口が少ない。人口が少ない自治体では、役所の職員の数も少ないので、林業担当者のマンパワーが足りない。結果、「後から使うから積み立て」といって先送りしているのが実情なのである。

FNNプライムオンラインでは、「39%が活用されていないが、積み立てて使う計画である」と解説しているが、そもそも積み立てたところでマンパワーの解消が出来るわけではない。詭弁だよね。

税金の徴収に血道を上げる財務省

結局のところ、財務省は一度税金として設定された仕組みを、止めたくはない。だから看板の掛け替えをしたというのが、今回の森林環境税の正体なのである。

使い道に困った森林環境税が何に使われているのかといえば、メガソーラーの誘致などに使われているから驚きだ。

「税負担が重すぎる」 宮城県の再エネ新税、課税前からメガソーラー撤退の動き

2023/11/20 13:52

太陽光や風力発電など、森林を大規模開発する再生可能エネルギー事業者から税を徴収する全国初の宮城県の新条例について、鈴木淳司総務相が新設に同意し、来春施行へ向け動きだした。

産経新聞より

尤も、こんな事例もあるので、増税が全て環境のためにならない、などと言うつもりはない。結局は使う人の腕の見せ所なのである。

……ここまで記事を書いていて、検索結果に引っかかった讀賣新聞の社説を読んでがっくり。

森林環境税 実情踏まえ不断に配分見直せ

2024/05/31 05:00

森林資源を守ることは大切だが、そのための制度が実情に合っているのか、不断に見直していくことが不可欠だ。

~~略~~

森林環境税は、東日本大震災の復興増税の一部を衣替えして受け継いだ経緯がある。むだ遣いとの批判を招かぬよう、森林保全という新しい目的に即した有効なあり方を検討してもらいたい。

讀賣新聞より

怒りのポイントが同じだったよ……。

ただ、流石に新聞社が「増税を止めろ」とは書けないらしく、「森林保全という新しい目的に即した有効なあり方を検討してもらいたい」と結んでいる。いや、結論を逃げるのは止めようよ。

財務省の増税ありきなんだと、キッチリ批判していただきたい。

ガソリン税1も酒税2もたばこ税3も、何でもかんでも上げれば良いってモノじゃないんだよ。

  1. 1974年度から暫定措置として導入された税金。1973~1977年度の道路整備五ヵ年計画の財源不足に対応するために導入されたが、現在は道路特定財源でなくなって一般財源とされている。 ↩︎
  2. 酒に纏わる税金制度は江戸時代より存在するが、酒造税法として整備され直した明治から現在の酒税法に至るまで増税の一途を辿っている。特に、日露戦争を口実に増税されて以降、国税収入の実に42%になるまで増税された。そして、戦争が終わっても税率が下げられるようなことはなかった。 ↩︎
  3. 煙草専売制の廃止を契機に、昭和59年に公布された。制定当時は「たばこ消費税法」という名前だったが、消費税導入に伴い「たばこ税」に改名されている。 ↩︎

コメント

  1. アバター 河太郎 より:

    日本学術会議が……ムカムカムカムカきますねぇ。こそこそと陰で良からぬ事しかできんのかこいつらは?
    財務真理教の連中への媚なのか?
    また財務真理教の連中の良からぬ事。
    熊の獣害とか、大雨時の山津波とか、基本的に環境整備が必要なのは人口の少い地域だろうに。で、積み立て??
    積み立てるなら林業担当の職員を増やせ! 血圧あがるけれど、木霊様の記事を読まねばスルーしてしまうところだつた。だいたい太陽光パネルとか胡散臭い事ばかりなんですよね。中国の紐付き疑惑の都知事といい。(でも蓮舫は嫌!)
    はっきり言って予算の配分はAIにやらせた方が良いのでないですか??

    • アバター 河太郎 より:

      そもそも木霊様のような愛国者ブロガーが非国民あつかいされるのがおかしいのですよ。記事を読めばわかる事。
      内田樹みたいな日本叩き論者ではない!
      んで、そーなるのは要はポリコレと環境意識ですね。これを振りかざす連中は、
      自分等に不都合な論者に対して「レイシスト」とか「環境破壊」とかレッテル貼りをして黙らせようとする!
      その辺に対してお墨付きとか悪知恵を注いでいるのが日本学術会議の連中でしょ。そこに政治家が迎合するんだ。
      軍人は己のタマがかかってるからリアリスト、プログマチックにならざる得ないけど、政治家や官僚はタマかけて無いから(とられる心配ないから)、「事実に目を塞いで語る」のが得意!
      今のネタニヤフと軍の「警告した。警告されてない」言い合いを観ていても解る。(たぶん軍情報局の言い分が正しい)
      んで、小池百合子みたいのが出てくる。
      対抗馬が蓮舫てのが絶望的ですが。
      特異点が本当に近い未来に来るならば、
      政治的な決定は全てAIに任せた方が良いと想うのはそこですね。SFを観ると何故かターミネーターみたくAI知性は悪者で、コンピュータからの解放の話ばかりだが、それならAIを利用して「政治家と官僚からの解放」する方がマシではないかとか想うてしまいますね。

      • アバター 河太郎 より:

        太陽光パネルで、小池は中国から幾ら貰ってるんてんすかね?
        あげくに台湾と2重国籍だった蓮舫。こいつも実は大陸迎合派で、
        どっちも中国の手先なんじゃないのですかね??

        • 木霊 木霊 より:

          都知事選挙に関しては、余り書く気が出ませんでした。
          盛り上がりに欠けるというか……。
          ただまあ、少し触れてみたので、良ければご覧ください。太陽光パネルは……、小池氏、幾らか金貰ったんでしょうかね?あんな愚策を推進するとは。

      • 木霊 木霊 より:

        僕自身は愛国者という程のことではありませんよ。好き勝手に記事を書いていますしね。
        記事を書かせて頂いているのは、少なからず学びがあるからでして、コメント頂くことも大変感謝しております。

        政治にAIを使うことは悪いことではないと思いますが、AIも間違えることを理解してツールとして使える政治家がいないことには、ターミネーターの世界にまっしぐらということになりかねません。人の世は人の手で築かねばならず、手抜きをすることでしっぺ返しを喰らいかねません。技術は賢く利用したいですね。

    • 木霊 木霊 より:

      財務真理教と日本学術会議は繋がっていますから、予算を確保する意味でもどうしようもない提言が出てきていたとしても不思議はありません。
      日本の林業を活発化させることができるのであれば、森林環境税を出すのは吝かではないんですが……。
      里山保全のためにも、利用方法をしっかりと考えて使っていく事が大切なんですよね。
      どうしたものやら。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    財務官僚とか、どういう教育シラバス組んでるんでしょうねぇ……
    増税原理主義者を後教育でやってるのか、入省時点で選別しているのか。

    どっちにしても、ヤードポンド法と財務省は滅ぼさねばならない。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      財務官僚の正義というやつが、徴税実績に偏っていることが問題なのでしょう。
      徴税する部門とお金を配る部門が同じというのも、大きな権力を握らせる結果になって宜しくありませんしね。

      やはり、財務省は解体しないとダメですかね。ヤードポンド法も現場で混乱する原因となるので、本当に止めて欲しいと思いますよ。

タイトルとURLをコピーしました