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支那製EVの脅威にアメリカは関税をかけて立ち向かう

北米ニュース
この記事は約11分で読めます。

本日はちょっと目を疑うニュースを見かけたので、紹介させて欲しい。

実は支那製EVを買いたがっているアメリカ人」という驚きの記事を見つけたのだ。

中国製EVが「アメリカに襲いかかる!」は、壮大な「茶番劇」だった…!米中分断のトリガーを引いたのは、アメリカの「EV政策大失敗」というヤバすぎる事情

5/20(月) 6:33配信

日本では、一部で「中国製EV」への批判が高まっているが、もしかしたらそれはアメリカのプロパガンダのせいかもしれない。

現代ビジネスより

どこの平行世界の話かと思ったが、記事をよく読むと「そういう理解の仕方もあるのか」とは納得した。この記事は正しくは、「実は安いEVを買いたがっているアメリカ人」という内容である。

EVはまだまだ高い

アメリカでのEV売り上げは低下している

基本的に与太話なので、中身を読む価値はない。

全世界の9000人を対象に行ったアンケートでは、米国人回答者のうち73%が「中国産EVの価格が(米国・欧州・韓国・日本など)中国以外で生産されたEVより20%安ければ、購入を考える」と答えている。  

アメリカの消費者は、中国製EVを買っても良いと考えているのだ。

現代ビジネスより

この記事は、この部分が全ての論拠のようだ。「他より2割安ければ、支那製でも買うよ」ということらしい。

しかし、「購入を考える」ことと「実際売れる」ことは違う。

アメリカでEV販売失速、トヨタのHVがテスラのEVを逆転…値段手頃で燃費いいHVが見直される

2024/03/04 06:50

米市場で電気自動車(EV)の販売が失速している。インフレ(物価上昇)や金利上昇で高額なEVを購入する負担が増す中、値段が手頃で燃費のいいハイブリッド車(HV)が見直されており、メーカーの戦略にも影響を及ぼしている。

~~略~~

英調査会社JATOによると、米国では2023年4~6月期以降、3四半期連続でHVの販売台数がEVを上回った。23年10~12月には、トヨタ自動車の米国でのHVの販売台数が前年同期比49%増の約18万台と過去最多となり、20%増の約17万台だった米テスラのEVを逆転している。ホンダのHVも約4倍の約8万台と急伸した。

讀賣新聞より

実際に、新車販売台数はEV全体で失速。その理由は「インフラ不安である」と記事にも説明されている。

ただ、失速しているとは言え、EVよりもHVの人気が高まっているという話であって、売れなくなったということもまた違うことは注意したいところである。

実際に、EV価格は同じクラスのエンジン車に比べて未だ1割程度高い。そして、そのコストを決めているのは充電池である。ここを安くする努力は為されているが、劇的に安くなるところまでは行っていない。

そして、EVを買うと結構使い勝手が悪い面があるところもあって、そこが全体的な傾向にブレーキをかける要因となっている。

支那製EVはアメリカで売られていない?

ところで、アメリカ製EVの売れ行きが鈍ったからといって、アメリカでは支那製EVが大々的に売られているわけではない。

そもそもの話だが、アメリカで中国製EVはほとんど売られていない。世界で販売が急伸しているが、中国製EVは年間1500万台以上のクルマが売れる世界第2位の米市場に参入できなくなっているのだ。

Yahooニュースより

実際に、4月の新車販売台数ランキングを見てみよう。ランキングではGMがトップで、以下、トヨタ、フォードなどと続いていて、ステランティスという見慣れないメーカーもあるが、9位までに支那の企業は見当たらない。

ステランティスはヨーロッパの多国籍企業で、アフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)、PSAプジョー・シトロエンなどが経営統合したメーカーである。このリストには載っていないが、テスラは10位。

売れている車種はこちら。

実のところ、よく売れているモデルはテスラのModel Y以外はハイブリッドモデルが多いようだ。実際、BEV登録台数の6割がテスラ製でシェア7割を超えていた2022年よりは勢いが落ちているものの、まだまだアメリカではテスラが優勢だと言える。

で、支那製EVはアメリカには入っていないのか?というと、入ってはいる。ただ、現状で27.5%の関税が支那製EVにかけられているため、アメリカでの販売価格は高めになってしまうので、需要がないのだ。

この網を抜けているのが韓国製EVで、実は韓国製EVはアメリカ国内でジワジワと販売台数を伸ばしている。結局、価格なのである。

価格が低いのには理由がある

ただ、この現代ビジネスの記事を書いた岩田氏は、支那の不公正な生産実態には言及していない。

確かに、テスラなどのEVメーカーを保護したいという意向があるのは事実だし、ある程度、支那製EVを貶めるプロパガンダ的な風説が出ているのは事実である。

一方で、支那製EVの価格が安い理由は過剰生産にあり、そこに支那の補助金が注ぎ込まれている実態があるので、欧米が自国の産業を守ろうという動きになってもおかしくない。

中国EVの過剰生産問題とテスラの中国戦略

2024/5/8

中国では自動車の生産過剰状態が続く一方、中国政府が巨額の補助金を通じて安い価格で自動車を海外にダンピング輸出をしている、との批判を欧米諸国は急速に強めている。

上海のコンサルティング会社オートモビリティと中国乗用車協会(CPCA)によると、中国には現在、年間4,000万台を生産する能力があるが、国内での販売台数はその半分の2,200万台前後にとどまっているという。そして、中国の自動車輸出はわずか3年の間に5倍近くに増え、2023年には約500万台に達している。

NRIより

電気自動車はデカイスマホみたいなもので、製造におけるノウハウというのはエンジン車よりも圧倒的に少なくて済む。部品点数が1/10と言われていることも、コストダウンに寄与している。

更に動力部分を専門に作るメーカーも存在し、支那では1車種以上を販売するメーカーは100社以上になって、熾烈な価格競争に発展している。補助金目当てで作っているらしいのだけれどね。

ただ、この価格競争の副産物として過剰生産が行われ(量産効果が出ないと価格が安くならない)、コレが海外に輸出される流れである。

中国 去年の自動車輸出台数 日本を抜いて世界1位の見通し

2024年1月11日 18時28分

中国が去年1年間に輸出した自動車の台数は、491万台となり、年間の自動車輸出台数で、日本を抜いて世界1位となる見通しになりました。EV=電気自動車の輸出が大幅に増えたことなどが主な要因です。

NHKニュースより

そのお陰で、支那製EVは欧州市場を席巻しているのだ。カナダは先に動いたけれども、欧州でもようやく支那製EVの締め出しの動きが出始めた。

カナダ、中国製EVの関税引き上げ検討=BBG
カナダのエング貿易相は17日、ブルームバーグ・ニュースとの電話インタビューで、米ホワイトハウスが中国製電気自動車(EV)に対する大幅な関税引き上げを発表したことを受け、自国も関税を引き上げる必要がある...
中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は8日、中国の補助金を受けた電気自動車(EV)がEU市場に氾濫するのを防ぐ措置が必要だと表明した。

遅いよ。

100%関税を

そして、アメリカでは更に高関税をかける方向で動いている。27.5%の関税を100%まで引き上げるんだとか。

米 “中国製EVの関税100%” 中国からの輸入品関税引き上げへ

2024年5月14日 18時02分

アメリカのバイデン政権は中国製のEV=電気自動車への関税を現在の4倍の100%にするなどアメリカが投資を強化する戦略的な分野を対象に、中国からの輸入品に対する関税を引き上げると発表しました。

NHKニュースより

このバイデン政権の思惑が果たして上手く行くのかは不明ではあるが、今後、アメリカはこの方向で動いていくことは先ず間違いない。

アメリカのバイデン大統領は14日、中国政府の補助を受けて過剰生産された製品が、アメリカの企業や労働者を脅かしているなどとして、不公正な貿易に一方的に制裁措置を発動できる通商法301条にもとづき、中国からの輸入品に対する関税を引き上げるよう通商代表部に指示すると発表しました。

具体的には「アメリカが歴史的な投資を行っている戦略的な分野を対象にする」として、中国製の電気自動車への関税をことし中に現在の25%から4倍の100%に引き上げます。

また、 ▽電気自動車用のリチウムイオン電池への関税を7.5%から25%に、 ▽太陽光発電設備への関税を25%から50%にことし中に引き上げるほか、 ▽半導体への関税を来年までに25%から50%にするとしています。

NHKニュースより

関税を引き上げると言うことは、すなわち支那製EVをアメリカ政府が脅威に感じているということは間違いなく、実際に販売価格が下がれば買いたいユーザーがいるのは当たり前である。

中国政府による巨額のEV補助金

米政府は、中国のEVを米国市場から事実上締め出す措置を今まで講じてきた。トランプ前大統領は、中国の自動車に25%の輸入関税を課した。さらにバイデン大統領はこの政策を支持したうえで、EV購入時の最大7,500ドルの税控除を中国車が受けられないようにする、などの追加策を講じた。

しかし、この2つの障壁のもとでも、中国製EVが米国市場に浸透していくことを回避するのは難しい、と米政府は警戒している。中国政府による巨額のEV補助金があるためだ。

NRIより

巨額の補助金で保護された支那製EVと戦うためには、自国も似たような補助金を出す方法もあるけれど、同じ土俵では戦えないので関税をかけて止めるという話になっているのだ。

ただ、そもそもBEV需要は減退しつつあるので、バイデン氏が環境保護を掲げてEV普及推進をしたことそのものが問題であるという指摘はそれなりの説得力はある。

中国製EV「大バッシング」が、なぜか売られていないアメリカで起こるヤバすぎる真相…トランプとバイデンの「壮大な茶番劇」が世界を分断させてゆく…!(岩田 太郎) @moneygendai
日本では、一部で「中国製EV」への批判が高まっているが、もしかしたらそれはアメリカのプロパガンダのせいかもしれない。実は「中国製EV」への反発は、バイデン大統領の失政が原因である可能性が高いのだ。

この政策失敗を認めるわけにはいかないタイミングなので、関税の話をしているバイデン氏なのだが。

BEV推進にブレーキ

なお、実質的にバイデン氏は政策の誤りを認めて、目標台数を下方修正している。

米政権が2032年までのEV比率目標大幅に引き下げ、大統領選が影響か

2024年3月21日午前 7:27

バイデン政権は20日、新車販売のうち普通乗用車に占める電気自動車(EV)の比率を2032年までに67%とするとしていた従来の目標を35%に引き下げた。11月の大統領選の鍵を握るミシガン州などで、厳格な温室効果ガス排出量基準とそれに基づく早急なEV普及の促進に対する反対の声が強いことが影響したとみられている。

ロイターより

流石に、意欲的な目標設定をし過ぎて達成が難しいと思ったことと、各地で反対の声が挙がっていることが原因のようだ。環境を声高に叫んでいるのがバイデン政権の特徴だったんだけど、BEV推進は余りに性急過ぎたんだろうね。

他にも不安要素はあるんだ。

BYDディーラーで大規模火災、自動車はほぼ全焼―中国

2024年5月16日、香港メディア・香港01は、福建省福州市にある中国の電気自動車(EV)大手BYDのディーラーで大規模な火災が発生したと報じた。

記事によると、同市閩侯県にあるBYDディーラー店舗で現地時間16日午前0時半ごろに火災が発生。消防車7台、消防隊員29人が出動して消火活動が行われた結果、火は約50分後の同1時18分に鎮火した。

MSNより

BEVが問題なのか、支那製が問題なのかは不明だが、良く燃えるニュースを見かけるんだよね。

国内だけでなく海外でもEVの車両火災はガソリン車やHEV(ハイブリッド車)より発生件数が少ないとのデータがあります。

米国の自動車保険比較サイト「AutoinsuranceEZ.com」が米国家運輸安全委員会(NTSB)や米運輸統計局(BTS)などから車両火災に関するデータを集計して調べたところ、販売台数10万台あたりの火災の発生件数は、件数が多い順にHEVが約3475件、ガソリン車が約1530件、EVが約25件となっています3)。これを火災発生率に変換してみるとHEVが約3.5%、ガソリン車が約1.5%、EVが約0.025%という数字になります。

EV DAYSより

尤も、数字で見る限りはEVが良く燃えるという話ではない。ただ、燃えてしまうと消火するまでに時間がかかるということと、MSNニュースで紹介したように、エンジンが停止している状態でも燃えてしまうことが問題のようだね。

今後の動向は

というわけで、好調だったEV販売台数の増加は、実のところ、各国の補助金ブーストのお陰であって、BEVが社会的にうけているという事ではないようだ。

アメリカに限って言えば、トランプ氏が大統領になってしまえば更に支那製EVの締め出しに拍車がかかるだろう。では、バイデン氏がそのまま大統領を続ける場合はどうか?というと、やはりブレーキがかかることは避けられない。少なくともそういう方向である。

そして、冒頭の記事が指摘するように安いEVがアメリカで販売されれば、おそらく売れるんだと思う。

ただ、そのことは支那製EVの優秀性を示すことにはならず、そもそものBEVの課題の解決にはほど遠い状況にあるので、早晩、販売数は頭打ちになるのではないかと思っている。それは、支那製EVのリスク云々以前に、充電インフラの問題が足を引っ張っているからである。

バイデン米政権、EV充電器拡充に向け、複数の資金提供発表(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース

充電インフラは年間8000基を増やし続けている体制で、今後も増やす予定のようだ。だから、現状は不足気味であっても、そのうち需要バランスに追いつくのかも知れない。

EVの販売が好調な米国で「充電スタンド不足」が課題になりつつある(1/3ページ)
気候変動対策としても期待される電気自動車(EV)。米国では順調に販売台数を増やしているが、さらなる普及の足かせになりそうなのが充電インフラの整備だ。

今のところは不足気味ではあるんだけど。

そして、充電インフラが増えることで電力需要が増えてしまうので、充電インフラを増やしたら問題解決ということにもならない。

中国EVやまぬ価格競争、BYDが先導 テスラは追う側に - 日本経済新聞
【広州=田辺静、上海=若杉朋子】中国で電気自動車(EV)の価格競争が一段と激しくなっている。EVなど新エネルギー車大手の比亜迪(BYD)は5月から、当初予告した価格を1万元(約22万円)以上引き下げて...

安値で世界にバラ撒かれる支那製EVが増えれば、各国の自動車産業は潰れてしまう。「安く買えればハッピー」という訳にはいかなず、政治成分がかなり多目なのは事実だ。よって、支那製EVが「アメリカに襲いかかる!」というのは、結構は事実を含んだ話なのである。

コメント

  1. アバター 山童 より:

    トヨタ叩きの為にイーブイ、イーブイと騒ぎまくるた欧米。とくにEU。
    そしたら当然のごとく「技術より国策の助成金で低価格」の中国がドバドバ放出して目論見外れて焦る焦る。
    ハイブリッドで日本車に勝てないから騒いでたんでしょ。ザマーミロでございますよ。しかし連中が安売り大出荷で攻めてくるとは思わなかったか?
    思わんのでしょうね。昔、種子島から日本に来た火縄銃を「非キリスト教の野蛮人に真似なんかできない」とガンガン輸出した。そしたら秀吉が刀狩りする頃にはヨーロッパ全土の火縄銃総数よりおおい銃が日本で生産されてた。しかも日本製の銃の方が性能が良くて、アジアの植民地勢力には日本製が好まれた😁
    いつも無駄な自信で身を滅ぼすんですよ。白人は。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >現代ビジネスより
    はい解散(笑)

    それはともかく。
    このあたりの変わり身の早さはさすがブリカスの血を曳くヤンキーですな。
    しかも関税100%とは、恐れ入谷のイリヤ・クリヤキン。
    まあ、そうでもしないと、メキシコ経由とかでとんでもないのがバンバン入って来ちゃいますから……

    理由は違えど日米が中華EVの魔手から逃れているのに、欧州は自ら虎口に飛び込んだようなもんですからね、今からどうやって逃げるのかお手並み拝見、特にジャガイモ。
    ※なんか、逃げる気なさそうで、むしろ「倍プッシュだ!」にも見えますが、気のせいですよね?

    ※現代ビジネス、記事は玉石混合で、前まではそこそこ読めたけど、だんだん玉が産出されなくなりましたね……十二国記における、末期の泰国を連想しました、玉繋がりだけですが。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。

      安定の現代ビジネスでしたが、まあそこは素材ですから。
      さておき、自国の産業を守るための関税ですから、こういうのもアリだと思いますよ。何でもかんでも貿易自由化というのは、誰も幸せにならないです。
      そういう意味では手足を縛られているEU加盟国はかなりキビシイのではないでしょうか。

      • アバター 七面鳥 より:

        余談ですが。

        ずっと前、会社の昼休み、新聞のラテ欄を「クローズアップ現代(くろーずあっぷ・ひゅんだい)」って読んだら先輩が腹筋切れるほど笑ってくれました。

        それだけです、すみません。

        • 木霊 木霊 より:

          良いですね!クローズアップヒュンダイ。
          EVの宣伝をやっているくらいですから、妥当な評価ではないでしょうか。

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