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韓国軍の防弾チョッキ問題が再燃

韓国陸軍
この記事は約6分で読めます。

過去にもこのネタに触れて、「問題があるね」という話をしていたんだけど、またぞろ出てきたな。

「穴があいた防弾服」5万着100億以上与えて契約した防衛事業庁

入力2023.05.18 午後3時52分 修正2023.05.18 午後3時53分

防衛事業庁が107億ウォンを超えるお金を与えて性能未達防弾服5万余を購入契約したという監査院の指摘が出た。

監査院が18日に公開した「将兵服務条件改善推進実態」監査報告書によると、防衛事業庁は2021年12月、軍需業者A社から防弾服の合計5万6280着購入契約を締結した。総107億7千800万ウォン規模の契約だった。

NAVERより

流れが前回と同じなんだが……。

本当に防弾チョッキが問題なのか

穴があいた防弾服?

記事をざっと読んで、おそらくはちょっと騒ぎ過ぎなんだろうという気はするのだが。

前回の記事では、2014年10月の話で、納入された防弾チョッキでは「北朝鮮軍の銃弾が貫通してしまう」という風に指摘された。

この時は、北朝鮮軍が保有している自動小銃AK-74の銃弾が貫通すると騒いでいたのだが、AK-74は5.45×39mmを採用していて、5.56×45mm NATO弾もこの構造をまねて作られたとまで言われ、登場時点ではかなりの脅威であるとされている。

5.45×39mmは5mm厚の鋼板が撃ち抜ける貫通力が付与されている一方で、小口径の弾であることからストッピングパワーが足りないともされている。

そのため、防弾チョッキの中にはプレートを入れて対応するというような形になるんだけど、前回は「貫通するとは何事だ」と大騒ぎになったんだよね。

A社は射撃試験時に弾丸が突き抜ける特定部位にのみ防弾素材を追加で重ねる方式で防弾性能を操作した。

A社は該当防弾服を計50枚の防弾素材で製作した。しかし、背面変形を測定する上端と下端左・右側にのみ防弾素材を5~6重に打ち込んだ。

防弾性能が均等に適用されない、試験通過のための防弾服を製作したのだ。

NAVERより

で、今回は?というと、どうも類似の話っぽい。軍用ボディアーマーなら小銃弾の阻止は可能らしいんだが。

要求仕様を満たしたのか

じゃあ、何が問題になっているのか?というと、どうやら試験用のスペシャルメイドを使った事が問題らしい。

国技准はさらに製作承認3ヶ月後にA社が性能を操作したという苦情を受けても防弾性能を満たすと再判定した。中央部位を除いて重ね部位の境界などで射撃位置を調整したためだ。

監査院は、監査期間の余計な部分まで別途試験を行った。その結果、一部防弾服が軍が要求する性能を満たしていないと明らかにした。

NAVERより

監査員が「別途試験をした」ら、一部の防弾服が軍の要求仕様を満たしていなかったよと言うことが分かったらしい。

その原因が「射撃位置を調整したため」という事のようだ。

ちょっと困った話ではあるが、問題があるかどうかは判断が出来ない。

これが問題の証拠として開示されている写真なのだが、確かに、防弾チョッキの表面に穴が見受けられる。おそらく、内側に横に並べて写っているのがチョッキの内部に入れるためのプレートだろう。

これで、穴が開いちゃったから問題だよ、というのが今回の話のようだ。

国技研からは反論が

ただ、このやり方について、国技研から反論が。

国技研は「監査員の防弾性能試験は購買要求書の試験方法および基準と異なって行ったもの」とし、「国技研は契約書上に定められた基準と試験手続により国内公認試験機関および米軍が使用する米国公認試験機関に依頼して合格した製品だけが軍に納品した」と明らかにした。

一方、「防弾性能測定は背面変形量測定部位と貫通可否測定部位の2箇所に分けられる」とし「監査員は貫通可否測定部位で背面変形量を測定してその基準を超えたとしたが、これは試験条件に一致するとは見えない」と反論した。

NAVERより

「契約に定められた仕様に従ってテストしたし、米軍が使用する後任試験期間に依頼してテストし、合格したものを納品している」という主張をし、使っている基準が違うという反論をしている。

まあ、規格にあうように作ったのに、規格以外の方法で検査されてNGが出たからと言って、「そんなこと言われても」と、そのように文句を言いたくなるのは無理もない。

そして、過去の事例を見ると、これ防衛産業内の企業同士の争いっぽく、防弾チョッキの納入から外れてしまった企業が圧力をかけて試験方法にも入れ知恵もしたっぽい。今回も、それに類する話なんだろうと思う。

韓国の軍事産業は、軍人の天下り先になっているので、そこでパワーバランスが決まってしまう部分があるそうな。韓国軍の給与が安いので、軍事産業に天下ってお金を稼ぐみたいな流れらしい。

そうすると、今回の問題は果たして問題があったのか、なかったのか。その内分かると思うんだけど、監査院がわざわざ別の試験をしたというのはちょっと怪しいかなと思っている。

追記

日本語版の記事も出ていたので追記しておく。

韓国防衛事業庁、死亡リスクの高い「形だけ防弾服」を不良と知りながら5万着購入

2023.05.18 16:03

軍兵士が使用している防弾服4万9000着余りのうち、ほとんどが性能が基準に満たず、兵士を危険にさらしているという韓国監査院の監査結果が出た。

18日、監査院が公開した監査報告書「兵士の服務環境改善推進実態」によると、防衛事業庁は2021年12月、軍需業者A社から防弾服5万6280着・107億7800万ウォン(約11億円)分を購入する契約を締結した。

監査院によると、国防技術振興研究所は防弾服の納品契約を結んだA社が性能試験を行う特定部位に防弾素材を追加で重ねていた事実を知りつつも、昨年2月にこの防弾服を製作するよう承認した。また、この事実を試験機関に知らせず、重ねた部位で射撃試験を行い、性能基準を満たしていたことが分かった。

中央日報より

韓国語の記事の内容と随分と印象が違うな。

研究所は昨年5月、A社が防弾素材を重ねて防弾服の性能を操作したという通報を受け、脆弱な中央部分は除外し、重ねた部分の境界などで射撃位置を調整して防弾服を試験した後、防弾性能をクリアしていたことが分かった。

しかし、監査院がA社が納品した防弾服を対象に追加していない部分まで試験してみると、一部の防弾服が中央部分から後方変形量の許容基準(44ミリ)を超えるなど、被弾時の死亡確率が高まることが分かった。

中央日報より

国防技術振興研究所のテスト結果はOKで、監査院のテスト結果はNGだという話は、韓国語版にも書いてあったが、印象としては監査院のテスト方法にも問題があった可能性が示唆されていたんだが。

国防部は防弾服前面の30%を占める細幅織物に対する赤外線反射率に関する性能基準なく国防規格を制定し、赤外線反射機能がない細幅織物で構成された防弾服を普及したため、夜間の迷彩能力が低下することが明らかになった。

中央日報より

あと、この情報は無かった気がする。

何れにしても、必要な性能が出ていなければ作り直す必要がありそうだ。

コメント

  1. アバター 匿名 より:

    一般の韓国人は焼きなまし・焼き入れ等の熱処理冶金技術を理解しているのだろうか?
    成分が同じなら鋳造・鍛造の関係なく同じ硬度だと思っているのか?
    戦車やヘリ、艦艇のトランスミッションがまともに作れないのは専門家が居ないのか?

    韓国ウオッチャーの楽しみは尽きない。

    • 木霊 木霊 より:

      一般の日本人でも焼き鈍し・焼き入れ、焼きもどし、焼きならしなどの熱処理概念は理解していないと思いますよ。敢えて言えば、焼き入れくらいは知っているかも知れませんが……。
      さておき、一般の韓国人の方々が熱処理に関する話を知らなくとも、専門家がいれば問題はなさそうなのですが、そこがちょっと怪しいのですよね。
      冶金分野の研究はあまりやられていないのではないでしょうか。疲労亀裂なんかもあちこちで頻繁に発生しているようですが、専門家はいるんですかね。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    >内側に横に並べて写っているのがチョッキの内部に入れるためのプレート

    トラウマプレート、ってヤツですね。
    正直、需要箇所のみ増加装甲、ってのはアリだとは思います。
    人体で、重要じゃない臓器なんてほぼ無いですが。
    あと、小銃弾は体内侵入すると周辺へのダメージが……横弾にでもなった日には……なので、やはり均一の方が良いに越したことは無い、けど、重くなる、のジレンマはありますね。

    仕様としてアップリケアーマーが指定されてるならともかく、検査合格のためだけにやっちゃったら……

    駐車場陥没の話とか、橋落ちた話とか、根っこが全部同じなんですよね、あの国の場合。

    • 木霊 木霊 より:

      この話は、何が正しかったのか?という点がハッキリしません。
      そもそも、小銃の直撃・貫通を想定して防弾チョッキが作られている訳ではないので、追加のプレートを入れるか、ボディアーマーのような重装備にすれば良いと思います。重くなれば行動に制限が出てしまいますしね。

      そして、今回のニュースでは、検査のごまかしが問題だったのか、追加検査が想定外の仕様だったのか、さっぱりですね。その内あきらかになるかも知れません。