新大鷲型哨戒艇(PKMR)の修理は順調か?

海軍

過去の記事を整理していて、少し気になっていたことがあったので見直したのだが、どうやら情報が間違っていた様で。

改めて情報を整理し直していたのだが、その過程で続報を発見した。一応言及しておきたい。

「エンジンの故障」新型海軍高速艇、修理後の再起動、600時間後にまた「ストップ」

入力2020.10.11 06:00

相次ぐエンジン故障で問題になった海軍の次世代「イヌワシ」新型高速艇が修理後実戦に戻って投入されたが、駆動600時間ぶりに再び欠陥が明らかになった。

「ChosunBiz」より

これ、コチラの記事の続報である。

盛大に赤を入れているが、記事を書いた当時も誤解をしていたようなので修正した跡なのだ。

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この記事は「惣郷木霊の四方山話」でお送りしております。

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イヌワシかオオワシか

大鷲型哨戒艇改に至るまで

これは韓国メディアの記事も問題のような気はするのだが、間違ってしまった経緯も含めて少し整理しておきたい。

先ずは登場人物(艦艇)を紹介しておこう。

  • 大鷲(チャムスリ)型哨戒艇(PKM) 140t級哨戒艇 :1978年就役→現在
  • 犬鷲(コムドクスリ)型ミサイル艇(PKG) 450t級ミサイル艇 :2008年就役→現在
  • 新大鷲(チャムスリ)型哨戒艇(PKMR) 250t級哨戒艇 :2017年就役→現在

この3種類だ。

大鷲(チャムスリ)型哨戒艇(PKM)

最初に開発された大鷲型哨戒艇は、160t級の小型艦である。

開発当初、フランス製エクソゼMM38艦対艦ミサイルの搭載が検討されており、ミサイル艇になる可能性があった。だが、アメリカがフランス製の兵器の搭載に難色を示したことで、砲熕兵器のみを搭載する設計となったようだ。

命名も当初は大鷲(チャムスリ)ではなく雁(キロギ)となる予定だったようだが、もっと格好いいのが良かったらしく大鷲に落ち着いたらしい。

ともあれ、大鷲型哨戒艇は取り回しが良く使い勝手が良かったらしく、105隻も建造されている。採用されたエンジンはドイツ製MTU16V53B-TB90ディーゼルエンジン2基だ。割とハイパワーなエンジンを採用したお陰か最大速力は34ノットとなっている。

艦対艦ミサイル開発

しかし、韓国海軍はミサイル艇が欲しかったらしく、艦対艦ミサイル(SSM-700K)「海星」を開発して、これを載せる艦艇を開発するに至る。

海星ミサイルの残念っぷりは別途記載したのでリンクを張っておくが、目標にあたらないことで有名である。

で、アメリカから怒られたフランス製エクソゼMM38艦対艦ミサイルだが、実は浦項級コルベットに搭載している。しかし、浦項級コルベットの後期型ではハープーンを搭載するようになった。

韓国軍はこの経緯が気に入らなかったらしく、ベンチマークの得意な国防研究所(ADD)で艦対艦ミサイルの国産化を行い、2003年に試射に成功。それがこの海星ミサイルだ。

技術力の差よりハープーンミサイルよりも一回り大きな海星ミサイルだが、現在はSS-760Kミサイルにバージョンアップし、欠陥が改良されていると言われている。この執念は立派だと思う。まあ、技術はベンチマーク(パクリ)したのだろうが。

犬鷲(コムドクスリ)型ミサイル艇(PKG)

さておき、この海星ミサイルを搭載した大鷲型哨戒艇の後継機が犬鷲型ミサイル艇である。

大鷲型哨戒艇が採用していたMUT製ディーゼルエンジン2基に加えて、LM500ガスタービンエンジン2基を搭載して、更に3軸のウォータージェット推進器を備える意欲作で、最大船速は44ノットとされている。

が、哀しいかな、この犬鷲型ミサイル艇は様々なトラブル塗れで、推進システムに問題があり、磁気羅針盤は誤差が出て、艦内通信システムも使い物にならず、レーダーにも欠陥が見つかる、76mm速射砲の欠陥が指摘されるなど、未だに全ての問題点を解決出来ていないようだ。

そして、本末転倒な話ではあるが、大鷲型哨戒艇(140t級)に対して、犬鷲型ミサイル艇(440t級)と大型化してしまったことが問題となって、大鷲型哨戒艇の後継機として使う個鳶は問題があると判断されたようである。

GE LM500 Turbine Selected For ROK Navy’s PKX-B 13 To 16

GE Marine announced on March 9 that its 4.6 MW LM500 marine gas turbines will power ships 13 through 16 of the Republic of Korea Navy’s PKX-B patrol boat program.

~~略~~

The PKX-B complements the larger, 500-ton PKX-A Gumdoksuri class patrol boats to provide maritime protection and defense in and along the ROK’s seaways. Both the PKX-A and PKX-B ships are powered by GE LM500 marine gas turbines; the first PKX-A Gumdoksuri in the 18-ship program entered service in 2008.

「NAVAL NEWS」より

この記事ではPKX-AとPKX-Bについて言及が為されているのだけれど、PKX-Aとされているのが犬鷲型ミサイル艇(PKG)のことを指していて、500t級の大きさになってしまったことから、もうちょっと小型のPKX-Bが計画されたと言及されている。

新大鷲(チャムスリ)型哨戒艇(PKMR)

とまあ、そんな経緯でPKMRは、未だにメディアでコムドクスリIIとかPKX-BだとかPKG-Bだとか書かれる始末。だが、韓国軍としては、大鷲(チャムスリ)型哨戒艇の真の後継機として開発したという意味を込めて、新大鷲(チャムスリ)型哨戒艇(PKMR)と命名したらしい。

真相の程はハッキリしないが、このブログでは新大鷲(チャムスリ)型哨戒艇(PKMR)という名前で統一していきたい。

コムドクスリさんは要らない子というわけですね。

まあ、そんなこんなで、新大鷲(チャムスリ)型哨戒艇(PKMR)は250t級の小型艇として、艦対艦ミサイル搭載は諦めたのだが……。どうしてMUT製ディーゼルエンジンを止めて、これもウォータージェット推進器を採用してしまったのかが分からない。

推進機関は、CODAG方式(ディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを組み合わせた推進方式)を採用し、アメリカGM製LM500ガスタービンエンジン2基とアメリカCAT製CAT-C32ディーゼルエンジン2基を切り替えて推進する方式とし、3軸のウォータージェット推進器も備えている。

……犬鷲型ミサイル艇で失敗したウォータージェット推進器をまた採用しちゃったのは何故なんですかね?問題解消したと言うことなら、犬鷲型ミサイル艇を増産すれば良いのに。

そしてエンジン不調

というわけで、満を持して投入された新大鷲(チャムスリ)型哨戒艇(PKMR)なのだが、コチラの記事で紹介したように4隻同時にエンジントラブルが発生。

んで、調べたらシリンダブロックにヒビが入っていたという辺りまで判明したのが2020年5月頃の記事の内容であった。

経緯はともかく、大鷲型哨戒艇はそこそこ成功していたのに、犬鷲型ミサイル艇は不具合が連発。新大鷲型哨戒艇が、犬鷲型ミサイル艇の交換事業と報道されるのも仕方が無い側面はある。

ともかく、コイツのシリンダヘッドが割れる事態に。

img

そして、前の記事で「航海時の海水の流入の可能性」の意味が分からないと指摘していたのだが、その原因が判明したというのが冒頭の記事なのである。

ふむふむ、原因は一体?

8日、軍関係者によると、海軍は先月18日、新型イヌワシ高速艇のエンジンシリンダーで再び亀裂が発生したことを確認した。問題が発生した艦艇は、海軍第2艦隊所属のイヌワシ新型高速艇1番艦であることが分かった。去る2月、同じ問題で整備を受けて海上任務に投入されたか、6カ月ぶりだ。

「ChosunBiz”「エンジンの故障」新型海軍高速艇、修理後の再起動、600時間後にまた「ストップ」”」より

ちょっと分かりにくくて申し訳無いが、引用した記事では犬鷲型ミサイル艇の後継機という立場から、「新型イヌワシ高速艇」などと書かれている。が、ここは新大鷲型哨戒艇(PKMR)と読み替えて理解して欲しい。

実際に、問題となったのはPKMR-211だと書かれているからね。

6ヶ月ぶりに任務に復帰したPKMR-211は、2020年9月18日に任務に復帰し、同年10月8日、600時間運転の後にまたシリンダヘッドが割れちゃったと。

国防技術品質院は、過去2017年11月納品された1番艦から昨年12月に就役した2〜4番艦までの4隻で共通してエンジンに亀裂が発生すると、故障の原因を調査した。国防技術品質院は調査の末、7月設計上の欠陥に起因する海水の流入などが原因であることができると暫定結論を下した。

「ChosunBiz”「エンジンの故障」新型海軍高速艇、修理後の再起動、600時間後にまた「ストップ」”」より

で、ここに記載される内容は以前までに分かっていた話を確認した形だ。

海水流入の疑いが、海水流入が確定したという、それだけの内容である。問題はその原因なんだけど……。

当時メーカーである韓進重工業は海水流入を遮断することができる「ダクト(DUCT⋅水やガスなどを抜き出す配管)」などを設置して欠陥を補修することにした。しかし、エンジン亀裂が再発した新型高速艇1番艦を含む、問題となった4隻すべて海水防止ダクトを設置していないまま実戦に再投入されたことが分かった。

「ChosunBiz”「エンジンの故障」新型海軍高速艇、修理後の再起動、600時間後にまた「ストップ」”」より

?!

は?

修理したはずが修理しないまま実戦投入されただ?

では一体何を修理したというのか……。

そして、そもそもエンジンルームに海水が流入するというのもイマイチ理解が追いつかないのだが、入って来るのであれば水抜き用のダクトを設けるということは何とか理解できる。

しかし、そもそもマリンエンジンは海水間接冷却方式を採用しているものが殆どのハズ。エンジンの冷却に海水は用いるけれども、清水冷却器を使って間接的にエンジンを冷やしている。つまり、エンジンブロックに直接海水が触れるはずがないのだが……。

エンジンルームの密閉度を上げるか、海水流入経路を特定すべきでは?案外、スクリューの貫通部分のシールが不十分だったとか、そんなバカバカしい根本的な理由かも知れない。

耐久性能試験を免除

そしてもう1つ気になる記事が。

不良エンジン停止「海軍次期高速艇」

最終修正 2020.10.20 10:05 記事入力 2020.10.20 10:05

防衛事業庁が検証もされていないトラップエンジンを導入しながら、海軍の次期高速艇が次々停止したことが分かった。

20日、国会国防委所属のホン・ヨンピョ氏を加えた民主党議員が防衛事業庁から提出された「高速艦ビジネス機器獲得技術審議結果報告」によると、海軍は、2002年の第2延坪海戦以降の新型高速艇イヌワシ-B(Batch-Ⅰ)を導入することにしたが、防衛事業庁は、そのエンジンの検証を経ずに耐久性能試験を免除させたことが確認された。

「asiae」より

性能テストせずにCAT製エンジンを導入したよという内容が紹介されている。

エンジンの耐久度の性能試験をするには10億ウォン以上の予算が必要だが、アメリカで既に1800時間の運用実績のあるエンジンだから耐久性能試験は不要だと判断して、検証は行わなかったというのである。

……エンジンの実績はあっても、負荷がどのようにかかるのかは船体に積まれてからの話。確かにテストをしなかったことには問題がある気はする。ただ、それは海水流入とは無関係のように思えるんだが。

残念ながら冒頭の記事の続報に関しては見つけられなかったので、現在どうなったかは不明だ。でも、どうにもなっていない気がするんだよね。

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