そうか、韓国は国産化して大勝利だな!
高性能なブラックホークを差し置いて、数兆ウォン余計にかかるスリオンを配備
記事入力 : 2020/10/06 13:00
韓国国防部(省に相当。以下同じ)が、性能改良事業を通して運用を継続しようとしていたブラックホーク・ヘリ(UH60)103機を退役させ、その代わりとしてさらに数兆ウォン(1兆ウォン=現在のレートで約910億円。以下同じ)を追加投入して韓国航空宇宙産業(KAI)のスリオン・ヘリを配備しようとしていることが5日までに分かった。韓国軍がブラックホークを配備したのは25年前のことだ。しかし、韓国国内で最近開発したスリオン・ヘリより優れた性能を持っているという。
「朝鮮日報」より
さて、韓国が国産化したヘリコプターといえば、2010年3月初飛行のKUH-1スリオンなのだが、その開発コンセプトは抜群の機動性能を誇る多用途ヘリである。
当然、既に韓国軍で運用している1974年11月に初飛行のアメリカ製UH-60ブラックホークよりも後に作られたので、高性能になるハズだった。
待ち受けていた多数のトラブル
ユーロコプター社の技術支援を受けて国産化
スリオンのネタはこのブログでも散々扱っている。
が、改めて簡単に経緯をまとめておきたい。
- ヘリコプターの製造経験が無い段階で、自国のヘリコプターを!という気運が高まり、2005年にプロジェクト「韓国次期ヘリコプター計画」が開始
- 仏ユーロコプター社(現エアバス・ヘリコプターズ社)の技術支援を受けて国産化することを決定
- ユーロコプター社は、EC155ドーフィンと呼ばれる輸送ヘリコプターの設計を土台にして、新たに韓国用の設計を完成
- 2009年に試作機が完成
- 2013年に開発完了が報じられる
ただ、韓国はユーロコプター社から技術移転することを希望していたが、結果的に国産比率はそれ程高くはならなかった。
国産といっていたが…韓国型機動ヘリ「スリオン」、核心装置はまだ輸入
2014.12.13 08:56
完全国産化を掲げて開発された韓国型機動ヘリコプター「スリオン」の核心である動力伝達装置が、国産化されていなかったことが明らかになった。技術移転契約をしてから7年経過したが、依然として核心部品全量を海外企業に依存している。監査院は1兆3000億ウォンが(約1400億円)投入された国産化作業が事実上失敗したと見て、調査に着手した。
~~略~~
しかし監査院の調査によると、動力伝達装置を構成する部品約450個のうち国産化するとエアバスヘリコプター側と契約した部品は30%にすぎない134個だった。このうち技術を受け継いで量産可能なレベルで開発されたものはこれまで約80個にすぎない。また、2012年6月に「スリオン」開発が完了した後、これまでスリオンに搭載された動力伝達装置はすべてエアバスヘリコプターの製品であることが確認された。監査院は責任の所在によっては、技術移転未履行違約金1000万ユーロ(約15億円)などを含む制裁を検討している。
「中央日報」より
2014年時点で韓国内で大問題となって訴訟直前までいったが、結局この話がどうなったのかはよく分からない。
2016年に大きなトラブルに見舞われるが、この時の核心部品はフランスから輸入していたと報じられていたので、改善はしていないかも知れないね。
大きなトラブルに
さて、その2016年頃に発覚したトラブルなのだが、その第一報は機体に亀裂が入るというものであった。
- 韓国製スリオン、機体に亀裂(2016/5/11)
- またスリオンに不具合見つかる(2016/7/9)
- スリオン、またまた欠陥(2016/7/10)
- 冬が苦手な韓国型機動ヘリスリオン(2016/9/25)
これは当時書いていたブログのタイトルを並べただけだが、次々と亀裂が見つかり大問題となる。
韓国軍は早期にこれを修正させるのだが……、次々に問題が発覚。骨格やウインドシールドに亀裂が見つかった他、低温環境下でエアインテーク凍結、ギアボックスの亀裂、雨漏り、更には電線にぶつかったときに電線を切断して墜落を防ぐ役割を持つ「ワイヤカッター」と、ヘリのプロペラがぶつかり、エンジンが止まる等というちょっと信じられない事故もあったようだ。
しかし、更なる悲劇が韓国を襲った。
10メートル上空からの墜落で5人死亡…韓国産ヘリ改造「マリンオンの悲劇」
2018年07月18日07時20分
韓国海兵隊のヘリコプターが17日に墜落して5人が死亡し1人が重傷を負った。海兵隊によると、この日午後4時46分ごろ、慶尚北道浦項南区(キョンサンブクド・ポハン・ナムグ)の飛行場で海兵隊の上陸機動ヘリコプター「マリンオン」が地上約10メートル上空から滑走路に墜落した。 ヘリコプターは墜落すると同時に火に包まれて全焼したと現場目撃者が伝えた。
「中央日報」より
なんと、メインローターが吹き飛んで、離陸直後のマリンオン(スリオンの海兵隊版)が墜落してしまう。搭乗していた5人全員が死亡するという痛ましい事件となった。ヒヤリハットの法則からすれば、あれだけトラブルが起これば重大事故も起こるさ。
これを受けてスリオンの全面的な改修が行われると思っていたが……、そうはならなかったらしい。
詳しくは突っ込まないが、徹底的に直せよ!
量産効果狙い輸出を計画するも泣かず飛ばず
さて、こんなトラブル発生もあって、韓国がスリオンを海外に売り出そうという目論見は上手くいっていない。
韓国製ヘリのフィリピン輸出が白紙に=韓国ネットがっかり
2018年12月13日 15時10分
2018年12月12日、韓国・朝鮮日報は、韓国航空宇宙産業(KAI)が進めてきた韓国製機動ヘリ「スリオン」(KUH-1)のフィリピン輸出が「事実上、白紙化された」と報じた。
~~略~~
フィリピンのロレンザーナ国防相も最近、公に「ブラックホークの購入が最もよいオプションだとの結論を下した」「資金不足のためスリオンは10機しか購入できないが、ブラックホークは16機購入できる」などと述べていたという。
記事は「フィリピンへのスリオン輸出は、現政権が力を入れてきた事業」だと説明、こうした「価格競争力」が問題だと指摘している。さらに「海兵隊の韓国製上陸機動ヘリ『マリンオン』が墜落事故を起こしたことも影響を及ぼした」とも伝えている。
「レコードチャイナ」より
フィリピンに売りつけようとしたら、「ブラックホークの方が安いからそっち買うよ」と言われる始末。この手の兵器は作れば作るほどコストを下げることができる(量産効果と開発費の回収)のだけれど、これが頓挫している模様。
実績を積み上げたら、又売れる可能性はあるかもね。
ブラックホークの代替を進める
で、韓国国内ではスリオンの配備を進めているようだ。
国防部と防衛事業庁(防事庁)が保守系最大野党「国民の力」所属の韓起鎬(ハン・ギホ)議員に提出した資料によると、国防部と防事庁は、2013年から進めてきたブラックホーク性能改良事業を最近ひっくり返した。韓議員側は「19年5月に防事庁が突如として事業調整案を提示し、その後、スリオン配備を考慮するような方向で事業が進められた」と明かした。
「朝鮮日報”高性能なブラックホークを差し置いて、数兆ウォン余計にかかるスリオンを配備”」より
韓国は陸軍だけでもUH-60Pを91機保有している。導入時期はハッキリ分からなかったが、1980年代以降に導入したもののハズだがそれなりに老朽化している。
当然、このブラックホークの近代改修事業をやるはずだったのに、その予算を全てスリオン開発に突っ込んじゃったと言うことがここでバラされている。
この記事の信憑性は分からないが、韓国は老朽化したブラックホークを差し置いて、スリオン開発を進めている点は明らかである。
ところが、ブラックホークの性能を改良する方が、スリオンを新規配備するよりも性能面やコスト面で効率的だという指摘がなされた。
「朝鮮日報”高性能なブラックホークを差し置いて、数兆ウォン余計にかかるスリオンを配備”」より
反対の声もあがったようだが、結果的にはスリオンの方を優先することにしたらしい。
ブラックホーク改修に関しては、2013年から7年間進めてきたと書かれているのだが、この改修事業そのものも実は上手くいっていなかったのでは?具体的になにが進んだのかはさっぱり記載されていないが。
コストが必要なスリオン?
さて、よく分からない計算がここで登場して、スリオンを新規配備するとブラックホークを改修するよりも1兆ウォン以上コストが余計にかかるということに。
スリオンの飛行可能時間はブラックホークの84%、飛行距離は83%という水準だ。搭乗兵力もブラックホークは11人、スリオンは9人だ。このため、ブラックホークの性能を改良する代わりにスリオンを新規配備するとしたら、従来より31機多い134機が必要になる。韓国国防研究院は事業妥当性調査で、スリオンを新規配備する場合には事業費が1兆ウォンから3兆ウォン(約2700億円)増えると指摘した。
しかしその後、国防部は産業通商資源部を通して「国内産業波及効果」に関する項目を追加、新たに外部の機関への調査委託を行い、「産業波及効果はスリオン配備の方がブラックホーク性能改良よりも高い」という結論を出したという。
「朝鮮日報”高性能なブラックホークを差し置いて、数兆ウォン余計にかかるスリオンを配備”」より
流石にこの計算はどうかと思う。
ただまあ、直接的に性能比較をしても、まともに運用できないスリオンでは比較対象にならないわけで、プライスレス!といって推進するしかないよね。
コメント
「スリオン 欠陥」を韓国語で検索すると韓国内でもスリオン導入に対して否定的なサイトがありますね。
フランスが設計しアメリカのエンジンを載せ韓国がペンキを塗ったヘリ、こんなのを国産として優遇してまで導入するのは間違ってるみたいな辛辣な皮肉に笑ってしまいました。
この件に関しては、韓国民も結構怒っている人がいるみたいですね。
ホルホルが足りないのではないでしょうかね?
木霊さん、おはようございます。
開発着手から15年経ってもUH-60ブラックホークの性能に及ばないヘリなんですねェ~。
ブラックホークは1機が45億と高額なため日本の自衛隊でも更新するのが難しい兵器なんですよねェ~。
アメリカ陸軍でも1500機近く保有する多用途ヘリですが、今も最新型UH-60Qへの更新が進んでいるベストセラー機でもあります。
つまり、新型機を設計するよりリスクが少ないって事なんでしょうか。
それが世界の現実なのに南朝鮮ときたら国産に拘り大失敗(実際は海外の技術頼り)、をそろそろ辞めたほうがいいと思う、マジで!!(冷笑)
ブラックホークは、アメリカの執念が詰まった傑作機ですからねぇ。そう簡単には性能を上回ることはできませんよ。
イロコイ、チヌーク、ブラックホークと、この辺りは鉄板ですからねぇ。
オスプレイあたりがここに加わりそうですが、ヘリコプターはそう簡単に新機軸の機体が出てはこないかなと、そんな風に感じていますよ。
トランスミッションの件は、ユーロコプター側は韓国側の生産設備を見てから仕様書を渡しているはず、生産設備が異なっていても時間とコストを掛ければ仕様書どうりに作れる。
作れなかったのは、時間とコストが掛けられなかったのか、冶金技術が未熟なので仕様書が理解出来なかったのか。
生産設備の問題もあるのでしょうが、やっぱりご指摘の様に冶金技術の問題の方が大きいと思いますよ。
ギヤボックスの製造には、鍛造技術や冶金技術、鋳造技術など、習得に時間がかかる偽中tの習得が必須です。そう簡単には、コピーできないのだと思いますよ。
>流石にこの計算はどうかと思う。
数増やしても航続距離は解決しませんからねぇ……
#一機あたりのペイロードを低くすればその分飛行時間は増やせますが。
本邦もそうですが、有事を考える&購入交渉の道具として、国産開発は非常に重要ではありますが、お隣のこの手の話は必ず「基礎研究がない」「技術移管が前提」なんですよね。
この時期の風物詩であるノーベル症(笑)と、基本的な原因が同じですね。
計算方法については、どう突っ込めば良いのか分からないほどの話で。
単純比較できると信じているあたり、頭が痛いですね。
確かにノーベル症を発症しているうちは、韓国には無理なのでしょう。
木霊様、皆さま、今晩は
私ならば
・ブラックホーク:まともに飛ぶ
・韓国製:まともには飛ばない
を問題にしますけど。
韓国の論調だとブラックホーク改修よりン兆ウォン高い・・・が問題みたいですね、
まずは「まともに飛ぶ」のが重要でしょう。値段の問題ではないと思うんですけど。
えっ!?? 韓国に正論は通じないって・・・
それにしても不思議。
中共の友好国軍に、愉快な兵器が増えるのは、喜ばしいことです。