韓国軍の最新潜水艦はバブコックの技術が詰め込まれる?

海軍

コメントで紹介頂いた話は捕捉していなかったがかなり興味深い話だ。

Babcock wins South Korea Jangbogo III submarine weapons system contract

14 9月 2017

Further underlining its International defence credentials, Babcock has successfully secured a seven year contract to produce and deliver weapons handling and launch equipment for the South Korean Jangbogo III submarine programme.

「Babcockの公式サイト」より

取り敢えずは原文を紹介しておく。

スポンサーリンク

バブコックインターナショナルはイギリスに本社を置く多国籍企業

防衛産業も担う企業

BAEシステムス、といえば日本でもそれなりに有名になった企業だと思う。F-35Aを購入するにあたって、ユーロファイターを日本に打診してきた企業だからだ。

あとはロールスロイスといえば車が有名ではあるが、ジェット機や戦闘機のエンジンを作っていることでも有名である。

さて、そしてバブコックインターナショナルだが、このBAEシステムズ、ロールスロイスと並んでイギリスの3大軍事産業という立ち位置の会社ということらしい。僕は調べるまで知らなかったんだけど。

バブコックは造船業も原子炉も手掛ける

そして、バブコックインターナショナルは、造船業も手掛けるが、原子炉も作れる様々な分野の技術を手にしている複合産業である。

また、アップルドア造船業という会社を2007年6月に買収しており、バブコックは潜水艦を作る技術も手に入れているのである。ちなみにアップルドアはイギリスの空母建造にも関わっている技術集団らしい。2008年にはストラチャン&ヘンショーという原子力エンジニアリング会社を買収している。2009年にはUKAEAという原子力技術を保有する会社を買収している。

ここから分かる事は、金さえあれば原子力潜水艦の開発が出来る技術力を有しているという事になる。

なお、イギリス軍もアスチュート級原子力潜水艦を保有していて、BAEシステムズ造船所で1番艦が作られていて、この潜水艦にはバブコックは絡んでいない模様。

ただ2012年5月には次世代潜水艦の設計支援のための契約をバブコックがイギリス防衛省から獲得している。つまり、潜水艦技術に関しては相当な技術を有していると言って良いだろう。

そして韓国の潜水艦兵器システム契約を2017年に獲得

バブコックは韓国潜水艦で開発技術を試す?

色々な技術を押さえた上で、バブコックが欲したのは実際に潜水艦を作った実績だろうと、その様に考えられる。本当のところはどうか知らないが。

で、2017年に7年間の契約で韓国軍の潜水艦の兵装を設計・製造・納入する契約を結んでいる。

The contract, due to run until 2024, was awarded by DSME (Daewoo Shipbuilding and Marine Engineering), for the third boat-set. The announcement of the Jangbogo III work follows quickly on from Babcock’s recent contract with DSME for the design, production and delivery of the weapon handling and launch equipment for the first and second boat-sets.

「Babcockの公式サイト」より

記事によれば3番艦まで、つまり今作っている分はバブコックが手掛ける契約になっているワケで。これが多分、韓国軍が実績無しの3000t級潜水艦をいきなり3隻も同時に作る理由にもなっていると思われる。

しかし、冒頭に触れているように米海軍関係者らが関心を示しているのは、KSS-IIIが備えている戦闘能力についてである。KSS-III batch-1には魚雷発射管(全ての潜水艦が装備している)に加え、各種ミサイル発射用の垂直発射管(VLS)が装備されているからだ。

潜水艦が搭載する魚雷や対艦攻撃用巡航ミサイル、それに地上目標攻撃用巡航ミサイルなどは、基本的には魚雷発射管から発射される。ただし、弾道ミサイルや、より強力な巡航ミサイル攻撃能力を身につけるためにはVLSが装備される。アメリカやロシア、イギリス、フランス、中国、インドが運用している戦略原子力潜水艦(核弾道ミサイルを搭載する原潜)にはいずれもVLSが装備されている。このほか、強力な敵地攻撃能力を保有するためにアメリカや中国の攻撃原潜、中国のAIP潜水艦などには、巡航ミサイル発射用のVLSを装備しているものもある。

「Globe」より

そして、これは朝日新聞系の記事なのだが、アメリカがこれを警戒しているという話に繋がっていくワケだ。

韓国の技術は突然完成品が出来上がる

いつもの事ではあるが、韓国の技術はそれまでの技術の積み上げの形跡が無い状態で、唐突に完成品が登場してくる。

209型、214型のいずれもドイツの潜水艦技術であったように、唐突に次級の潜水艦から自国の技術で作り出す、それも大きさも変われば新機軸のVSLやらAIP(非大気依存推進)やらが搭載される予定だというから、もはや魔法のように技術が唐突に表れたといって良いだろう。

その謎がバブコックの技術だということだ。

しかし、逆に言えば外国の技術を取り入れながらも、自国の軍事増強をするという姿勢は褒めるべき所だとは思うのだ。だが、気になる事も幾つかある。

「張保皐KSS-Ⅲ」に詰め込まれた新技術

さて、そんな「凄い」潜水艦だが、幾つか違和感もある。

そして第三段階のKSS-III(張保皐-III)は、20年以上にわたってドイツ潜水艦を運用し保守整備することで培った技術やノウハウを基に、全てを国産で建造することになった。合わせて3隻建造されるKSS-III batch-1の1番艦である「島山安昌浩」AIP潜水艦(基準排水量3358トン、水中排水量3705トン)が2018年9月に進水した。ちなみに安昌浩(アン・チャンホ )は著名な日本からの独立運動家で、島山は安昌浩の号である。

~~略~~

KSS-III bach-1のVLSは発射管数が6本と比較的少ないが、そうはいっても弾道ミサイルや巡航ミサイルで敵を攻撃するためのものであることに変わりはない。

「Globe」より

6本のVLSを搭載ですか。

実は、VLS(垂直発射装置)というのはそれほど新しい技術ではない。Mk-41システムと呼ばれるVLSは、アメリカが開発して多くの戦闘艦に搭載されている。1970年代には実用化されているからね。そして、潜水艦用にMk45システムと呼ばれるVLSが開発される。もちろんロシアだってVLSを手に入れている。

しかし、潜水艦から弾道ミサイルを撃つ技術は、冷戦の中で相当な熱意を持って開発された経緯があるので、他国では追随できないレベルの技術が注ぎ込まれているのである。

一方の韓国軍であるが、国産のVLSを手に入れて搭載していると、公式には喧伝されている。実際に、いくつかの韓国軍の艦船には「国産VLS」というものが搭載されていることになっている。でも、韓国の国産VLSってどんなものかはハッキリしないんだよね。

では、イギリスは?というとシルヴァーVLSというイギリスで開発されたVLSを手に入れているようだが、アスチュート級原子力潜水艦にはVLSが搭載されていない。イギリスのヴァンガード級原子力潜水艦は戦略ミサイルを撃てる潜水艦だがやはりVLSを備えていないようだ。

こんな状況で、韓国の次期潜水艦にはVLSが搭載されるというのである。

排水量差が少ない

さて、その韓国の次期潜水艦なのだが、基準排水量が3358tで、水中排水量3705tである。その差は347tである。凄いな。

参考までに日本のそうりゅう型潜水艦は基準排水量2900t、水中排水量4200t。

イギリスのトラファルガー級原子力潜水艦は水上排水量4800t、水中排水量5200t。

アメリカのオハイオ級潜水艦は水上排水量16764t、水中排水量18750t。

韓国の保有する214型潜水艦の基準排水量1700t、水中排水量1860t。209型潜水艦の水上排水量1100t、水中排水量1285t。

水中と水上の排水量の差は「予備浮力」の差である。韓国以外の国の潜水艦の事例を少し紹介しているが、予備浮力はかなり設定してあることがわかる。

韓国の場合は、ドイツの設計とは言え予備浮力の設定が「伝統的」に少ないようで。何というか、無理な兵器の詰め込みをやっているんじゃ無いの?という気がしないでも無い。

イギリスが設計しても同じ様な状況を迎えてしまうと言うことは、艦国軍側からの要請で予備浮力を少なく設定していると見て良いだろう。

予備浮力は安全マージンに直結するので、ちょっと気になるポイントだよね。

国産潜水艦の意味

なお……、こんなニュースを引っ掛けた。

世界的防衛産業企業バブコック、釜山で潜水艦事業など推進

2018年02月13日13時02分

潜水艦などを作る世界的防衛産業企業が釜山(プサン)に進出する。

13日に韓国の経済紙毎日経済が伝えたところによると、11日にバブコックインターナショナルグループが釜山に韓国支社を設立することにした。このために今月末にバブコックと釜山市が投資に向けた了解覚書を締結し、釜山・鎮海経済自由区域に用地を確保する予定だ。

バブコックは年間売り上げ52億ポンドの英国系多国籍大企業で、

~~略~~

バブコックコリアは船舶製造とメンテナンスのほか、総合軍需支援など防衛産業分野の事業をする予定で、潜水艦製作にも積極的に乗り出す計画だという。すでにバブコックは韓国潜水艦事業の「張保皐(チャンボゴ)-3」に参加中だ。

「中央日報」より

ふむ、確かに「国内設計」には違いない。バブコックが韓国支社を作ったのが2018年2月で張保皐ーIIIの進水式が同年10月であるから、形式的には国内で設計されたことになるのかも知れない。

え?3000t級潜水艦は2016年頃には起工式が行われているので、設計はその前だ?うんまあ、普通はその辺りも気にするんだろうけれどさ。

過去の記事をちょっと振り返る

えーっと、そもそも3000t級潜水艦を設計し始めたのはいつだったのかな。

「動くミサイル基地」3千トン級潜水艦を2020年に導入=韓国

2013年08月05日09時00分

水の中で隠密に動く潜水艦は、だれも知らないうちに攻撃する威力的な武器だ。各国の海軍はそれで潜水艦を戦略兵器に分類する。新しい長距離ミサイルが次から次へと開発され潜水艦の大きさも日増しに大きくなっている。

「中央日報」より

3000トン級潜水艦「張保皐」、本格建造=韓国

2014年11月28日09時19分

海軍の次世代3000トン級潜水艦〔張保皐(チャン・ボゴ)Ⅲ〕が27日、潜水艦用鋼板を裁つ鋼材切断式(スチール・カット)を行い、本格建造に入った。大宇造船海洋が建造するこの潜水艦は垂直発射台を設置し、水中で北朝鮮全域を攻撃できる能力を備えることになる。韓国は潜水艦の国内設計と建造が可能な12番目の国家となった。

「中央日報」より

韓国海軍 次世代潜水艦の起工式開催=組み立て開始

2016/05/17 11:30

韓国防衛事業庁は17日、南部の慶尚南道巨済市の大宇造船海洋で次世代潜水艦「張保皐3」(3000トン)の起工式を開催したと明らかにした。

「総合ニュース」より

2013年頃から3000t級潜水艦に前のめりだった韓国軍だが、2012年にバブコックが次世代潜水艦の設計支援の契約を獲得していることを考えると、早い段階からイギリスの息がかかっていた可能性は……。

いやいや、この辺りは根拠は無いんだけどさ。

コメント

  1. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_3 より:

    弾道ミサイルまで含めると、VLSは、少なくとも1960年には実用化されているようです。

    米国では、ポラリスミサイルを搭載したジョージ・ワシントンが1960年に就役してます。
    ソ連では、1958年に(浮上発射ですが)ホテル型原子力潜水艦が就役してます。

    余談です。
    IT業界では、ポラリスミサイルは結構有名だと思います。
    今でもプロジェクト管理に使われる「PERT」という技法があり、その説明に出てくるので。

    • Rodney より:

      余談に
      プロジェクト全体を完了させるのに必要な最小時間を特定するはずのPERTですが実際のシステム開発では納期有りきで納期に合わせて工数を入れて帳尻を合わせたPERTを作成してガントチャートへ落とし込み進捗が進むに連れてどんどん遅延が発生なんて無茶なプロジェクトもありましたね。(自分の職場ではむしろ無茶なプロジェクトのほうが多かった気がする)

      • あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_3 より:

        自分は業務で「PERT」を使ったことがないのですが・・・

        形だけ「ガントチャート」形だけ「PERT」形だけ「WBS(テレ東のニュース番組ではないです)」というのは、よく聞きます。

        実際に体験した例です。
        ある作業について「ガントチャート」を書いて顧客に承認を依頼しました。
        承認を受けましたが、開始日は3日前でした。
        つまり、3日遅れからのスタートです。
        これは、某青いメガバンクでの業務でした。

    • 匿名 より:

      クリティカルパス懐かしい。。

    • 木霊 より:

      そうでしたか。
      VLSは浮上発射ならばハードルはまだ低くなりますよね。
      ただ、海中から撃てるヤツが、戦略上は必要になってくるでしょうから、そっちを頑張るんじゃ無いのかな?という風に思っていますよ。

  2. マスメディア反乱軍 より:

    バブコックですかァ~、日本ではプラント用ボイラーのバクコック日立なんて企業もありましたね。

    >色々な技術を押さえた上で、バブコックが欲したのは実際に潜水艦を作った実績だろうと、その様に考えられる。本当のところはどうか知らないが。

    これも潜水艦建造実績を積む目的の一つだと思いますよ。
    イギリス海軍の所有する潜水艦は戦略弾道ミサイル原子力潜水艦・ヴァンガード級が4隻、攻撃型原子力潜水艦・トラファルガー級が3隻+最新のアスチュート級が7隻(内3隻建造中)で、通常動力の哨戒型潜水艦はゼロです。(輸出専用を考えているのかも知れませんけどね)

    かつての海軍強国だった割には潜水艦の数は15隻程度...、本国を守備するだけで連邦国への派遣は難しいと思うんですよね。
    まあ、あくまで僕の考えなんで実情は判りませんけどね。

    しかし、南朝鮮らしいいつもの「自称国産」自慢が笑えます、いつものタチの悪さで技術パクったり・メンテ契約ケチったり・勝手な思い込み契約内容で揉めたりしないよう気を付けないとね。(冷笑)
    僕としてはVLSに玄武シリーズ(弾道タイプ・巡航タイプ)が搭載されるのか早く知りたいところです。
    イギリスの潜水艦の巡航ミサイルはトマホークのはずなんで、アメリカが売ってくれるか判りませんもんね。

    • 匿名 より:

      韓国には斗山バブコックという原発関連企業がありますね。

    • 木霊 より:

      バブコック日立やら斗山バブコックやら、色々手を広げている企業のようですね。
      流石、イギリス企業です。

      一方の韓国側が果たして本当にこれで利益が得られるような取引だったかは、少々気になりますね。
      209型潜水艦に関しては輸出できるところまで行けたので、メリットはあったかも知れません。ですが、214型は失敗だったような……。
      今度の新型はどうなんですかね。技術の蓄積があれば、未だ救いもあるんですけど。

  3. まり より:

    原潜まで、考えてるかな?

    • 木霊 より:

      韓国軍的には原子力潜水艦が欲しい様です。そういう報道も何度か出ています。
      しかし、……普通に考えれば使えない装備なんですよね、韓国軍には。
      でも、普通はちょっと考えられない選択肢を採るのが韓国軍なので、侮れませんよ。