さーて、皆さんお待ちかねのお笑い韓国軍ネタである。ここのところ乱発している感じだけれども、時期的には仕方が無いよね。12月位までは、散発的にネタが出てくる可能性は高い。
無人砲塔を備えたK9サンダーの新バージョン
2020年11月24日11:04
K9の最新バージョンには、完全自動の弾薬装填および取り扱いシステムを備えた完全無人砲塔システムが装備されます。これは、火災の発生率を大幅に高め、乗組員の数を減らすためです。このバージョンのK9の初期の研究開発は、今後数年以内に完了する予定です。計画によると、K9A2は、英国陸軍用の新しい自走式ハウィッツァーを購入するプログラムに参加する予定です。このプログラムは、現在運用されているAS90を最終的に交換し、航空会社から撤退させる予定です。
「defence24」より
そんな中で出てきたのが、K9A2自走砲の話である。
色々な不安を抱えるK9自走砲
そもそも自走砲って何?
さて、それ程久しぶりでもないのだが、K9自走砲の話が出てきたところで、最初にどのような兵器なのかを紹介しておこう。

コンセプトとしては、自走砲というのはロングレンジから目標に向けて砲弾をぶっ放す車両で、戦車に似た構造になっている。
箇条書きにして比較しておこうか。ザックリな説明で申し訳無いのだけれど。
- 前線にて直接照準射撃をする戦車、後方から間接照準射撃をする自走砲
- ショートレンジで砲撃する戦車、ロングレンジで砲撃する自走砲
- 装甲を分厚くし走破性を高めた戦車、装甲を犠牲にしても長距離射撃を優先した自走砲
- 旋回砲塔を備える戦車、ある程度の角度までしか砲塔を振ることのできない自走砲
とまあ、こんな感じだろうか。役割が違うんだよね、戦車と自走砲は。
なお、自走砲は直接照準射撃をするケースも想定はされていると言われているけれど、基本は間接照準射撃、つまり的を直接見ないで攻撃する曲射を行うので、射弾観測部隊と射撃指揮所、及び通信システムを必要とする。このことは砲撃によるエリア制圧を可能とし、従って連射性能などが重視されることになる。
こんな感じで、自走砲に求められている性能は概ね理解できるかなと思う。
K9自走砲が抱える課題
ところで、おさらいがてら少しK9自走砲の抱える課題についてもおさらいしておこう。
先ずは、駆動系が外国製という点である。
これはコチラの記事にも言及している。
が、引用しておこう。
- エンジン ドイツMTU社製 MT881KA-500ディーゼルを韓国STX社がライセンス生産
- トランスミッション アメリカゼネラルモータズ社製 ATDX1100-5A3を統一重工社がライセンス生産
- サスペンション イギリスHDS社製サスペンション・サブシステムをハンファディフェンス社がライセンス生産(注:三星テックウィン社という表記もあるが、この会社は後にハンファグループに売却されている)
とまあ、こんな感じで外国製の良さそうな部品を組み合わせて作られている。ここが外国に受けている理由でもあるのだけれど、逆に特定の国にK9戦車を輸出しようとすると、時々、外国からストップがかかることがある。
韓国がUAEにK9自走砲を輸出しようとしたときに、ドイツからストップがかかってしまった。故に韓国は国産化を画策しているわけなのだけれど、K2戦車で失敗したようにハイパワーエンジンとトランスミッションの組み合わせをコンパクトに作り上げるのはなかなかハードルは高いのだ。
頑張ってくれ。
コチラにも書いたのだけれど、パワーパックの納入にあたって、サムスンテックウイン(現ハンファテックウィン社)が規格外(品質の劣る製品)の部品を使って中古品を汲み上げて納入しちゃったというニュースもあって、寄せ集めで作っちゃう(外国製の優秀な部品を組み合わせる)のはお手の物という強みと、不正な納品をしてしまう弱味が共存するような話だね。
砲塔は52口径155mm榴弾砲にも不安が残る
さて、駆動系の問題もあるのだけれど、砲塔の方は完璧かというとそんなことは無い。
K9自走砲が備えている砲塔は、52口径155mm榴弾砲で、韓国WIAとADDが開発したということになっている。ただ、そのノウハウは在韓米軍から払い下げられたM109155mm自走榴弾砲と、そのライセンス生産品であるK-55、K-55A1、K-56などの改造実績に基づいて作られていると考えられるため、基本的な部分はアメリカのユナイテッドディフェンス社(現BAE Systems Land and Armaments社)が設計した砲塔の技術に準拠しているものと考えられる。
もちろんADDによる改造部分は多岐に渡ると思うので、韓国の技術力がないという話ではないのだけれども、イロイロ不具合があるのは事実だと思う。
例えば……、これは砲塔だけの問題では無いとは思うのだけれど、こんな事故があった。
K-9自走砲爆発事故で7人死傷…死亡2人に=韓国
2017.08.19 11:24
中部戦線最前方でのK-9自走砲射撃訓練中に発生した18日の爆発事故の死亡者が2人に増えた。軍当局は爆発事故で負傷して国軍首都病院で治療中だったチョン一等兵(22)が19日午前3時8分ごろ死亡したと伝えた。死亡したのはイ中士(27)に続いて2人目で、5人は国軍首都病院で治療を受けている。
「中央日報」より
これの原因だが、薬室と呼ばれる自走砲の砲弾を装填する場所に、装薬(砲弾を飛ばす推進火薬)のカスが残っていて、これに火が付いて新しい弾の装薬に引火したというのである。
無くなった兵士には哀悼の意を示したいが、この問題がしっかり解決されたかは気になるところだ。
爆発事故が発生した国産K-9自走砲、2009年から故障続発=韓国
2017.08.21 10:14
韓国軍の「名品」武器と見なされてきたK-9自走砲の18日の射撃訓練事故について、軍当局が20日、自走砲内で火炎が発生したと明らかにした。
軍当局によると、事故が発生した自走砲には訓練当時5人の乗務員と安全統制官2人の計7人が搭乗していた。軍当局が負傷者の陳述をまとめたところ、2発を撃って3発目の発射待機状態で自走砲内部の閉鎖機から突然煙が発生したという。このため安全統制官のイ中士が「待機、待機」と叫んだ瞬間、装薬が爆発して砲弾が発射され、火炎が発生したという。閉鎖機とは砲射撃をする前に砲身を密閉する装置。これのため発射後に火炎と煙は自走砲の内部には漏れない。閉鎖機が作動しなければ砲弾を発射できないのが正常だ。
軍関係者は「暫定的に運用の未熟など人災ではないという結論を出した」と述べた。軍の内部では今回の事故がK-9を開発中だった1997年12月当時の事故と似ているという分析が出ている。当時の状況も2発目を撃った後、3発目が発射されず、突然、自走砲の内部に火災が発生した。
~~略~~
しかし2009年以降は問題が相次いで発生し、納品過程で不正が摘発されるなど雑音が多い。2010年11月の北朝鮮の延坪島(ヨンピョンド)砲撃の際、海兵隊が延坪島に配備した6門のK-9を使用したところ2門が作動しなかった。昨年の国政監査当時、過去5年間に1708回の故障が発生したという指摘もあった。
「中央日報」より
何しろ、1997年の開発時の事故とおなじ状況であったという分析が示されており、本来であれば閉鎖機によって閉鎖され、自走砲の内部に火炎や煙が入り込まない構造になっているハズなのだが、事故当時の状況は出火して死者まで出てしまったという。
これが開発時からの問題だとすると、設計自身に欠陥がある可能性が高いのだ。
5カ月ぶり再開の韓国産K-9自走砲…試射でまた中止
2018.01.19 09:03
韓国陸軍は18日、K-9自走砲射撃の再開のために試射を行った際に、事故を懸念し射撃を中止したと明らかにした。
陸軍によると、同日のK-9自走砲の試射は3門各6発を計画しており、その中2門は計画通り射撃した。
「中央日報」より
5ヶ月後にも似たような状況が確認されてしまい、試射は中止になっている。この記事では軍側は問題が解消されたことを確認されたとしているが……。
方向音痴な砲弾
ちなみに、こんな事件もあった。
射撃訓練で、江原道鉄原民家の近くに着弾
2016-09-29 16:55
隣人とお茶を飲んでいた鉄原郡の許里長が、突然鳴った轟音に外に飛び出してみると村の近くの山に煙が上がって一抱えもある木が折れていた。
事故が起きた時刻は29日午前9時35分。京畿道漣川郡郡射撃場で訓練中発射されたK9自走砲155㎜砲弾1足着弾地点から1.5㎞離れた民家の近くに落ちたのだ。
~~略~~
許里長は、「27日にも射撃場で飛んできた破片が村の建物の屋上に落ちる事故もあった」とし「たびに起こる着弾事故住民の不安感が大きい」と述べた。
「nocutnews」より

これはK9自走砲の射撃訓練の際に、砲弾が的から外れて射撃場近くの村に飛んで行ってしまったという事件であり、この射撃場付近では割とこういった問題が発生するというのである。
「破片が飛んできた」というのもどうかと思うのだが……。
この写真も砲弾が炸裂したというにはちょっと不自然である。まあ、訓練なので模擬弾頭が使われたのかも知れないが、それにしてもこの程度の被害で済むのか?という疑問はある。
まあ、記事の信憑性には疑いがあるのだが、ともあれ困った性能というのは、この話だけでもない。有名な延坪島砲撃事件(2010年11月23日)でも、やっちゃっている。
韓国軍“名品武器”K-9、80発中わずか3発命中
2010.12.03 09:52
先月23日の北朝鮮による延坪島(ヨンピョンド)攻撃に対応して、韓国軍が発射したK-9自走砲80発の砲弾の相当数が、北朝鮮の軍事施設でないところに落ちたことが明らかになり、論議を呼んでいる。
韓国軍は北朝鮮の攻撃後、K-9自走砲3門で1次対応射撃(午後2時27分-3時15分)として50発を北朝鮮茂島(ムド)海岸砲部隊陣地に発射した。2次対応射撃(午後3時25-41分)当時は、K-9自走砲4門でケモリ海岸砲部隊陣地に向けて30発を発射した。
「中央日報」より
イロイロ問題のある話で、80発撃って3発しか命中しなかったという。本当かよ!
更にこの時は、砲撃がカタログスペック通り1分間に6発という射撃間隔を実現できなかったとかで、結構問題視されていたと記憶している。砲塔が過熱してしまって、連射できなくなったとかなんとか。
……まあ、頑張ってくれ。
ポーランド陸軍は既にK9(車体だけ)を買っている
K9A2のスペックは?
で、このK9自走砲の改良をするという話についてポーランドのメディアが扱っているのだが、これはどうやらポーランドがK9自走砲の購入を検討しているから、ということらしい。
実は、去年にもK9自走砲はK9A1にアップグレードをするという報道があって、韓国陸軍では全てのK9自走砲が2030年までにK9A1に更新される予定であると報じられた。
- 自動消防システムの改善
- INS + GPS(位置確認装置)
- ドライバーサーマルペリスコープ(操縦手夜間潜望鏡)
- 補助電源ユニット(補助動力装置)
- 自動射撃統制装置のOS交換(Windowsに交換)
- リアカメラ
この辺りがK9A1化計画で予定されているらしいね。この時にK9A2の計画の噂も引っ掛けてはいたのだが……。
冒頭に紹介したように、K9A2では完全自動の弾薬装填および取り扱いシステムを備えた完全無人砲塔システムが装備される模様。これによって乗員定数を5名から3名に減らす事ができるのだとしている。
本当かね?
ポーランド陸軍の事情
現在ポーランドが採用している自走砲はイギリス製のAS-90自走砲であると、記事には記されている。
ただし、Wikipedhiaを見ると、そもそもAS-90Mの砲塔だけを購入して、国内で生産した車両に乗せるという計画だったらしい。

これがASHクラブという自走砲のようだ。計画によると120門まで製造する予定となっているのだとか。
AS-90ブレイブハートは、AS-90の砲塔を52口径155mm榴弾砲に換装した改良バーションで、ASHクラブもAS-90ブレイブハートの砲塔を採用している。
この砲塔を載せる車体はポーランドの主力戦車PT-91と共通の部品を用いて開発したものを使用する予定であったが、8輌程度作られただけであった。
しかし、財政上の事情もあったようで、2014年には韓国からK9の車体だけ買って砲塔を載せるという方針に切り替えたらしい。
その選択が誤っていなければイイと思うのだけれど、K9自走砲の車体を使ったバージョンで既に48輌ほど納入されているとのこと。
注:ASHクラブの仕様は、イロイロ変遷しているようで。
プロトタイプ: 車体はSPG-1M(波)+BAEシステムズ社製砲塔システム(英)
2011年版: 車体はUPG-NG(波)+ネクスター・システムズ製の砲身(仏)+AS-90M砲塔(英)
2016年版: 車体はK9(韓) + ラインメタル社の砲身(独) + AS-90M砲塔(英)
現在は2016年版のまま製造されていると推測される。
砲塔も売りたいニダ!
そういった計画で製造中のASHクラブ(この「クラブ」はカニの事を指すようだ)だが、韓国側はこの様な商売の仕方が気に入らないらしく、砲塔までセールスしたということのようだ。記事には「提案した」とは書かれていないんだけど、文脈からセールスされたのは確実だと思う。
しかし、単に「ウチの砲塔も買ってくれ」というのでは説得力がないので、K9A2計画を見せて、ポーランド用にカスタマイズするよ、というセールスをしたんじゃないかな。で、ポーランドはちょっと乗り気になっていると。
K9 Thunderは、Samsung Techwinが韓国軍のニーズに合わせて設計し、現在Hanwha LandSystemsが製造している韓国の自走式ガンハウィッツァーです。これらのシステムは、エストニア、フィンランド、インド、ノルウェーなどの輸出ユーザーによっても使用されており、さらにいくつかの国がそれらの取得に関心を持っています。
「defence24”無人砲塔を備えたK9サンダーの新バージョン”」より
そんな上手いこと行くかどうかは分からないが、K9A2バージョンが完成すれば、確かにポーランドとしても「買いたい」ということになる可能性はある。実際に複数の国でセールスが成功しているだけに、車体だけでなく砲塔も欲しいという気になる可能性はあるだろう。特に、現在納入されたASHクラブが上手いこといっていなければね。
であるが……、イロイロ不安の残るK9自走砲が果たして韓国にそんなに上手いこと改造できるかは謎であるし、K9A1の立場はどうなっちゃうの?という気もする。
韓国の「今後数年以内に研究が終了する予定」というのは、実に信用ならない情報だね。韓国の「できる」は信用してはいけない。
コメント
ポーランド語から日本語への自動翻訳は変な訳(火災の発生率とか)が混じりますね。
ポーランド語ー>英語ー>日本語と英語を中継させると
K9の最新バージョンには、完全自動の弾薬装填および処理システムを備えた完全無人砲塔システムが装備されます。これは、発射速度を大幅に上げ、乗組員の数を減らすためです。このバージョンのK9の初期の研究開発は、今後数年以内に完了する予定です。計画によれば、K9A2は、英国陸軍用の新しい自走榴弾砲を購入するプログラムに参加する予定であり、最終的には現在運用されているAS90を交換してラインサービスから撤退させる予定です。
かなりいい感じで翻訳されました。
おー、ポーランド語の翻訳がイマイチだったので、どう引用しようか悩んでいましたが、そんなワザがあったとは。
確かにイイカンジの翻訳ですね。
日本の99式は装薬まで自動装填を実現していますが、それでも無人化とはいかず乗員も4名です。それもこうした機構のためかなり高価になってしまったのですが、K9がA2で自動化を進めちゃったりすると、今までのような価格を維持できるか、かなり疑問です。
ついでにAS-90の改修型のブレイブハートは英国の財政難と装薬の開発に失敗してキャンセルされており、英国が装備しているAS-90は愛称が付かない前の型のままです。
ポーランドのASHの方はブレイブハートの砲塔、となっていますが、砲身は最初はフランス製、今はドイツ製のようで、K9に負けず劣らず多国籍な自走砲のようです。
確かにASHクラブのWikipedhiaを確認したら、こんな風に書かれていますね。
・韓国製K9の車体に、52口径砲のイギリス製AS-90M砲塔とWBエレクトロニクスの「トパーズ」火器管制システムを組み合わせたものである。
・2011年版はUPGの車体とネクスター・システムズ製の砲身を採用
・2016年生産分はK9の車体とラインメタルの砲身を使用
ちょっと修正しておきます。