早いな、オイ。
韓国製戦車・自走砲 ポーランドに初引き渡し
2022.12.07 09:25
ポーランドの国防省は6日(現地時間)、北部のグディニャにある海軍基地で韓国製の戦車K2と自走砲K9の初めての引き渡しを記念する式典を開いた。
聯合ニュースより
顧客の要求を満足したと言う意味では、実に好ましい話だな。大した話ではないのだが、記事にしておきたいと思う。短い記事で申し訳ないけれど。
武器輸出大国への道を
お得意様には最大限の努力を
ええと、韓国企業が頑張っちゃった、と言うことなんだろう。
ポーランドは韓国から計980台のK2、648門のK9、3編隊(計48機)の戦闘機FA50、288基の多連装ロケットシステム(MLRS)「天舞」を導入する計画だ。この日にポーランドに引き渡されたのは10台のK2と24門のK9。両国が第1次の実行契約を締結した8月からわずか約4カ月で引き渡しが行われたもので、ポーランドの緊急要請を受けて迅速に進められたようだ。
聯合ニュース「韓国製戦車・自走砲 ポーランドに初引き渡し」より
ええと、爆買いの記事はこちらに。
ところで、引き渡されたのが10両のK2戦車と書かれているが、これは本来、韓国陸軍に納入されるハズのものだった事は既に言及した通りだ。
[単独]ポーランドK2戦車輸出、18日初の本契約..500台国内生産
入力2022. 8. 3. 16:40修正2022. 8. 3. 17:29
ポーランドにK2戦車、K9自走砲、FA-50軽攻撃機など歴代最大の約20兆ウォン台の大韓民国防衛兵器輸出契約が成立した中で、来る18日初の本契約が締結される予定だ。
~~略~~
今回の契約過程では納期日程が一部修正される見込みだ。当初、現代ロテムは国軍3次量産物量5台をポーランドに送ることにしたが、ポーランド政府の要請により今年末までに10台を送る方針だ。
Daumより
いや、スゴイよ。

でも実は韓国軍、第1次量産分100両(ユーロパワーパック搭載仕様)、第2次量産分106両(韓国製エンジン+ドイツ製トランスミッション搭載仕様)を既に受領して、206両体制になっているのだが、第3次量産分は54両しかない。
第3次量産分は2022年~2023年の間に製造するもので、第1次、第2次の量産も1年間でやっている(事になっている)ので、余裕の生産体制のようにも思える。
だけれど、実際にはそうではないかも?
生産体制は整っているのか?
そう思う理由は、憶測混じりで申し訳ないが、こんな事があったからだ。
K2戦車の製造は、量産初号機が2011年に登場する予定だった。が、2011年までに当初調達数600両から200両にまで計画が縮小されている。
韓国が戦車国産化で挫折、生産ラインの半数がすでに停止
2011/03/08(火) 14:52
韓国政府は2009年から2018年にかけて、3兆922億ウォン(約23億円)を投資し、K2戦車(黒豹)を397台生産し、国産戦車の普及を推進する計画だったが、生産ラインの半分がすでに停止していたことが分かった。8日付で中国メディアの環球時報が報じた。
魚拓より
この時点で既に生産ラインが完成していた(完成していたのは、ボディの生産ラインだと思われる)ので、数年の間はボディだけ作ってストックされていた可能性が高い。
この戦車が完成するまでに、紆余曲折あったんだよね。記事が見当たらないんだけど、確か現在ロテムの倉庫にボディだけ並んでいる、みたいな記事を何処かで読んだぞ。実際、上の記事でも「397台生産し」と9年で400両弱を生産する予定でそのラインを作っていたことが示唆されている。年間45輌程度の生産力だとしても、2009年から2011年までの3年間で150両分弱のボディが作られていた可能性はある。つまり、第2次量産分までは既に作っていたボディを含めて何とかなっていた可能性が高いんだな。
で、問題は第3次量産分が問題なく生産が出来る分だったとすると、そこから10両をポーランドに回してしまって帳尻を合わせたにしても、国内調達分が減ってしまう懸念と、それ以上の台数の戦車を作れるんですか?という懸念が出てくる。
予定では第4次量産分180両から10両を第3次量産分に補填する形になっているらしいけど、これも大半がポーランド向けっぽいんだよね。詳細は分からないのだけれど、結構なしわ寄せは行っていそうだ。
以後、2023年には18台、2024年56台、2025年96台を送り、180台の物量を合わせることにした。今回のK2戦車輸出物量は国産エンジンにドイツ製変速機を使用する既存のパワーパックシステムが使用される。
Daum「[単独]ポーランドK2戦車輸出、18日初の本契約..500台国内生産」より
韓国陸軍の運用に不安は出ない?そして、製造ライン、大丈夫そう?まあ、根拠のない憶測なので、実際には何とかなるからこその契約かも知れない。余計な心配だろう。
K9自走砲は24門
同様な話はK9自走砲にもある。
国内防産業業界関係者は「K9自主砲1次契約対象の48門が多い物量ではないので大きな変化はないだろう」とし「今年中は本契約を行う予定」と話した。
聯合ニュース「韓国製戦車・自走砲 ポーランドに初引き渡し」より
取り敢えず24門渡して、第1次契約分として48門が契約される予定らしい。ただこの話、冒頭の記事では「4ヶ月で用意した、スゲー」みたいな記事になっているのだが、実際には2014年から数量が決まっていて、予め用意されていた可能性が高い。
サムスン テックウィン、120 基の K9 サンダー自走榴弾砲をポーランドに納入する契約を締結
2014年12月17日(水) 10:55
「Samsung Techwin は 2018 年までにここで最初の 24 ユニットを生産し、その後、HSW は残りの 96 ユニットを製造する予定です」と関係者は述べています。残りは技術移転を経て、ポーランドで製造されます。
armyrecognition.comより
過去の記事と数量が違うので、その時の24両だと断定できないんだけど、過去の計画を見てもK9自走砲を沢山作る事の出来る生産体制ではなさそうなんだよな。
もちろん、予定通り物事が進んだ事は素晴らしい事なので、その点について何か言う必要はないのだけれど、納入分を製造するためには、しばらく動いていないハズのラインを動かさねばならないだろう。
製造予測は適切に
というわけで、恐らく韓国国内にある製造ラインの増強などが必要になって、韓国の軍事産業は賑わうだろうと言うことが予想され、これによってK9自走砲やK2戦車の製造コストが下がることは好ましい事なのだと思う。
ただ、安易な製造拡大は、次なる顧客を見つけないと大変なことになってしまう。大切な顧客のポーランドの要求を満足出来ないと、ハシゴを外されかねない、諸刃の剣である事も懸念せねばならないだろうね。
尤も、K2戦車もK9自走砲も、そこそこの性能を持っていて、これでトラブル無く運用できれば新たな需要も生まれる可能性は高い。上手くやれば結構な商売に繋がるのではないか?とは思う。
正直、日本としてはこれを「羨ましい」「真似すべきだ」という視点で考える必要がある。
コメント
個人的な希望ですが、ポーランドから少しだけK2戦車とK9自走砲をウクライナにレンタルしてもらって、是非ともウクライナ軍にK2とK9の初陣を飾ってもらいたいですね。
本音は、韓国製重火器がどの程度実戦で戦えるのか知りたいだけですw
前評判は高いですが、果たして本物の虎なのか、張り子の虎なのか。(←ここ重要!)
ウクライナ軍はよく錬兵されているので、新型でも上手く使いこなすでしょう。
韓国にとっても、テストケースとして申し分ないかと。
K2もK9も実戦と呼べるものを経験していません。
……延坪島砲撃事件はK9自走砲の実戦データが得られましたが、結果から見ると散々でしたね。
しかし、訓練にせよ実戦に投入していかないと、実力がハッキリしないですよね。
こんにちは。
>正直、日本としてはこれを「羨ましい」「真似すべきだ」という視点で考える必要がある。
ほんこれ。
よく「本邦の装備品は国内事情に特化した云々」を売れない理由にする右翼がいますが、だったらそもそも売るなと。
売れないのは、販路の開拓に熱心ではない、買い手の需要をまるで汲み上げてない、等々、販売側としての「べからず」集をことごとくやらかしているからなのですから。
法的な話も含め、やる気になりさえすれば、どうにでもなるのですから。
日本の兵器はガラパゴス化して世界に売れないなどと言われますが、
ご指摘のようにそれは事実なんでしょうけれど、世界に輸出する技術を前提に開発して、国内用にカスタマイズするくらいにした方が良いと思うんですよ。
最新兵器の納入は遅延が当たり前なのでたいしたものだと思います。
紆余曲折有った戦車ですが途中で投げ出さないで良かったですね。
ええまあ、大したものだ、と言いたいところではあるんですが、作りかけていたヤツを横流ししたというのは、ちょっといただけません。
それでも変なものを作るよりはマシなんでしょうけれど、PL仕様にして納入するヤツがどうなるか?というところからが本番ではないでしょうか。
ただ、先に納入しているK9自走砲は使える感じだからこそ、K2戦車も購入したのでしょうから、ポーランドではそこそこ評価されているのかもしれません。
……Twitterで、NHKニュースの関連記事に突っ込みを入れたら、結構燃えてしまいました。大笑いですね。140文字に収めるにはよくよく考えて書かないと、不用意に燃やしてしまうようで。反省です。