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【韓国陸軍】K2戦車の変速機とうとう完成か

韓国陸軍
この記事は約14分で読めます。

このブログ的には触れておかねばならないネタである。

S&T重工業、K2戦車の変速機性能論争を一蹴

入力2020.07.27 16:25 修正2020.07.27 16:25

K2戦車の国産変速機製作会社であるS&T重工業が最近、国防事業庁が国産変速機の国防規格改正を通過させた後、一部で提起される変速機の性能論争と関連し、積極的に解明に乗り出した。

hankyungより

韓国が長い年月を掛けて開発したK2戦車だが、悲願だったパワーパックの国産化をついに成し遂げたのである。めでたい!めでたい?

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とうとうパワーパック問題に決着?!

試験に合格できない

この話、分かりにくい経緯はあれど、簡単に纏めると長らく韓国軍側が要求する仕様を、S&T重工業が作る変速機がクリアできなかったというのがコレまでの経緯である。

具体的な試験内容が適切かどうかという議論はあるのだけれど、韓国陸軍側が要求した仕様を韓国企業が満足できなかったので、国産化を実現できていなかった。

img

戦車にとってはパワーパックは心臓部に当たる部品で、エンジンと変速機を組み合わせたユニットなのだ。エンジンの方は何とか国産化したらしいのだけれど、変速機の方はどう頑張っても実現できない。

ところが、変速機を作っているS&T重工は、「要求仕様がおかしいのだ」と訴訟まで起こす始末である。仕様が発表されてから入札したんじゃ無いの??

耐久試験の評価がおかしい

で、S&T重工業が具体的に何を言っているかというと、こちら。

S&T重工業の関係者は「最近、国防事業庁が決定した国防規格の改正は決して論争の対象ではなく、国防事業庁も認めたように、耐久度試験評価過程で生じた曖昧な規定を合理的に改善する趣旨」とし、「S&T重工業は輸出用耐久度試験過程で不合理な国防規格で192時間目に中断された国産変速機を最近修正及び整備して残りの128時間の試験をすべて実施し、これにより合計320時間の国防規格を満たしたので、すぐにK2戦車に実戦配備しても問題がない」という立場を明らかにした。

hankyungより

「不合理な国防規格」というのが彼らの主張なんだけど、本当なのかなぁ。

過去の報道を見てみると、K2戦車にはユーロパワーパック搭載版と韓国製パワーパック搭載版があって、アイドリングスタートの加速性能テストでは停止状態から時速32㎞までの加速時間は7.47秒というのが、ユーロパワーパック版の性能であった。一方、韓国製パワーパック版の加速時間は約8.77秒と、1秒以上違う。軍当局が要求した作戦要求性能(ROC)は8秒だったため、「要求未達」というレッテルを貼られてしまった。

ストールスタート(ブレーキを踏んだままアクセル全開で、エンジン回転数を高めた状態でブレーキを離して発進する手法)の場合は、前者で5.3秒、後者6.18秒となって、こちらも1秒近く違う。

結局、加速性能の方は合格値を下げて対応(ROCを10秒にしたとのこと)したと報じられていて、確かに「評価はおかしい」よね(違う)。尤もこの話は、韓国軍側も了承した上での話なので、問題はないとは思うんだが。

問題となった耐久試験

で、問題となっていた耐久試験の評価に関しては、300時間テストした結果を評価したらしい。これは今年に入ってからの話である。

NATO基準と同じかと思ったけど、NATOは400時間テストをやるらしいので、ちょっと違うようだ。

mtu MT883 engine completes 400-hour NATO endurance test
High-power version for AAAV amphibian produces 2016 kW

また噂では、韓国ではパワーパック開発実績がないため、ドイツ基準でテストをやっているらしい。S&T重工はこの条件がおかしいという主張のようだ。

韓国、主力戦車「K-2」への国産パワーパック採用を事実上断念か
主力戦車K-2の3次量産を控える韓国では変速機を製造するドイツ企業の横槍によって国産変速機の採用を事実上断念、国産エンジンとドイツ製変速機を組み合わせたパワーパックを採用する可能性が高いと報じられている。

航空万能論さまのところでは、「ドイツを真似したのにドイツより過酷な条件になった」との分析をされているが、コレもちょっと不思議な話ではある。もっと早く気がつけば、対処できたんじゃないの?

が、K2戦車のトルコ輸出版であるアルタイ戦車は、韓国製のパワーパックを採用したようなので、全く使えないシロモノという訳ではなさそうだ。

ALTAY戦車の輸送に関する契約が韓国と締結されました

2023 年 1 月 30 日

ALTAY主力戦車は、ドイツによるエンジンとトランスミッションからなるパワーグループの禁輸措置により、2018年以来量産を開始できていないが、韓国で生産されたパワーグループで実地試験を開始する準備を進めている。韓国はALTAYで使用する送信契約を締結したと発表した。

savunmasanayist.com

アルタイ戦車としても、性能テストはまだ継続中らしいので、完全に結論が出たという感じでは無いのだが、おそらく部品としてのテストには合格しているのだろう。

ただし、この話は一体何が正しいのか不明なので、話としては冒頭のニュース通りに「テストに合格した」ということで良いと思う。

20年の歳月を経て

実際に冒頭の報道では、こうした苦労を乗り越えて「国産化を実現した」という話になっている。

[単独] K2戦車20年ぶりに「国産心臓」装備【ヤンナクギュの Defence Club】

入力2024.09.20.午前8時38分 修正2024.09.20.午前8時39分

国産の名品武器に数えられるK2戦車に「国産パワーパック」が装備される。パワーパック開発に乗り出してから20年ぶりだ。パワーパックはエンジンと変速機を合わせて呼ぶ用語で、「戦車の心臓」とも呼ぶ。

Neverより

開発を始めて20年の歳月を経ているから、感動もひとしおだろう。

K2戦車が開発され、韓国軍はパワーパックまで国産化して完全な国産戦車を作ろうという計画を立てた。2005年に964億ウォン(エンジン488億ウォン+変速機476億ウォン)を投じて国産パワーパックを作ることにした。その後、2014年10月にK2戦車の国産パワーパックが開発された。しかし、K2戦車の2次量産と3次量産当時、国産パワーパックを装着できなかった。国産変速機が耐久度テストに合格できなかったからだ。

Neverより

1次量産と2次量産のテストでは合格できなかったからねぇ。確か、3次量産の時は「合格出来なさそうだから」と、テストをパスしていたように思う。

今回は4次量産分の話だね。

テストはやり直さないのか

ただ、どうにも良く分からないのは、「成功扱い」になったのは良いのだけれど、基準がおかしかったのならテストをやり直すべきだ。

S&T重工業の主張通りであれば、ドイツの基準より厳しく(ドイツ基準の場合、パワーパックの耐久走行テスト中にエンジンの整備を行うことは認められないが変速機については一般的な整備を行うことが認められており、9,600kmを走破する間に設備の整った施設で修理を必要とするような問題が発生しなければ合格と判定される)、9,600kmをノーメンテナンスで走破できなければならないおかしな基準だったという話であり、途中で修理して耐久テストを続けられたのだから合格であるという話になる。

もし、変速機の初生産品1台ではなく、複数台を試験する場合、統合参謀部の「武器体系試験評価実務ガイドブック」では、耐久度性能を試験する時制の数量が増えれば、時制ごとの耐久度を満足する目標寿命も変わるという方式を適用しており、S&T重工業の変速機の耐久度性能は現在の水準でも直ちに戦力化が可能だという立場だ。これは改正国防規格だけでなく、既存の国防規格基準を適用して評価しても耐久度性能は合格したという意味だ。

特に、耐久度試験装備の誤動作により中断された3次試験を除けば、残りの5回の耐久度試験は中断するほどの欠格事由がない単純故障で、当時の国防規格に基づき「修正及び整備」後、継続試験が可能だったと会社側は付け加えた。

hankyungより

であれば、再度、耐久テストをやり直せば良いのだが、それは韓国軍側もS&T重工業側も嫌らしい。

S&T重工業側は、自社開発費約270億ウォン、在庫資産約400億ウォン、機会損失費用約200億ウォンなど870億ウォンの損失をはじめ、現代ロテムから遅延損害金と連動した前払金、契約履行と関連した228億ウォンの訴訟を提起された状態であり、過去4年間180人の職員が有給休暇に入るなど、困難を抱えていると付け加えた。

hankyungより

S&T重工業としては、既におかしな基準でテストをしていて損害が発生しているのだから、その分を補償しろという勢いなんだよね。まあ、一時期は国産化を断念したという話も出ていた位なので、ね。

尤も、9,600kmノーメンテで走破という試験内容が本当だとすれば、これはなかなか狂気の沙汰であり、S&T重工業が主張するように9,200kmノーメンテで走破可能だったのだから問題ないという主張は、それなりに説得力はあるのだ。

この基準は、恐らくはドイツ製のパワーパックでも実現が難しいとされているので、韓国の技術レベルがそこまで上がったのだとも解釈できる。

耐久性が上がったわけではない?

ところで、冒頭に紹介した記事ではS&T重工業が、あたかも変速機の耐久性能には問題がなかったかのような主張をしていて、S&T重工業側の主張を鵜呑みにすれば確かに問題はないのだろう。

だが、途中引用した記事ではちょっと違う解説がなされている。

耐久度検査は今年4月から7月まで再び行われた。K2戦車に使用される1500馬力国産変速機の耐久性検査基準は306時間、9200kmの連続稼働だ。100%は満たせなかった。基準に対して14時間、400kmが足りない時点で、ブレーキ装置ブレード関連の問題で試験は中止された。メーカー側は未充足分を補う品質保証対策を打ち出した。パワーパックが故障したらすぐに交換できるように、整備代替装備(M/F)用変速機5台無償提供、専門人材が常駐する整備支援センターの運営、品質保証期間1~2年の延長、欠陥部品の全期間無償保証などだ。

韓国国防総省は悩んだ末、国産パワーパックの使用を承認した。K2戦車の輸出を念頭に置いた。現在、K2戦車はドイツ製の変速機を使用しているが、ドイツが中東輸出を控えて輸出許可(E/L)を拒否する可能性が高い。また、承認してもドイツのパワーパックの価格が高く、K2戦車の原価は高くなるしかない。価格競争力で後れを取るしかないという意味だ。ここに韓国軍に配備されるK2戦車の物量が残っており、国内防衛企業の売上にも影響を与える可能性がある。軍はK2戦車の4次量産に向けて2028年まで総事業費約1兆9400億ウォンを投入し、150台余りを追加配備する予定だ。

Neverより

耐久性は問題があるんだけど、メーカー側が打ち出した未充足分を補う品質保証対策を受けて、国防総省が承認したという話になっている。

S&T重工業側の主張と矛盾する話ではないのだけれど、「そもそも合格していた」という程の品質が確保されたかどうかは少々怪しい。

そして、ドイツ製のユーロパワーパックの価格が高いことも後押ししたようだという分析には、少々不安を感じる。K2戦車第4次量産に国産パワーパックが間に合ったことは喜ばしいのだけれど、さてはて、価格競争力だけを気にしていて良いのか?という気はしてしまう。

過去の報道では、ドイツ製のユーロパワーパックの方にもかなり問題があって、故障を頻繁にしていたので国産化したかったという話もあった。ただ、この情報の出所はどうやらS&T重工業かそれに近いところからのようなので、信用に値する情報かどうかは不明である。

とにかく、「国産化に成功」ということで良いのでは。

海外でのセールスは順調だが

ポーランドでもアルメニアでも

さて、K2戦車の世界でのセールスはそこそこ順調のようだ。

韓国防衛企業、ポーランドK2の2次輸出間近…アルメニアも「K-兵器」に関心

2024年10月21日 11:30

韓国・現代ロテムとポーランド軍備庁による「K2戦車輸出のための第2次実行契約」が迫っているという。今回の実行契約は先の1次実行契約規模を超えるという観測が出ている。最近、欧州のアルメニアがK2戦車の導入に関心を持っていることがわかり、K2戦車の追加輸出も期待される。

現代ロテムは「年内」、早ければ「来月初め」に、ポーランド軍備庁とK2戦車輸出のための2次実行契約を締結するという。2次契約は2022年8月のK2戦車1000台輸出契約の後続措置だ。当時、契約後、現代ロテムはポーランドにK2戦車180台を納品する4兆5000億ウォン(約4900億円)規模の1次実行契約を締結し、今月までに46台を納品した。現代ロテムは来年までに1次契約分をすべて納品する計画だ。

AFPより

なかなか売れてるね!と思ってよく読んだら、最初の契約分1000両の納入を継続するという話っぽいな。そして、アルメニアの方はあくまで「興味がありそうだ」ということらしい。

似たような話は以前もあったので、期待できる話かどうかはちょっと微妙だろう。

2次契約は1000台のうち、1次契約分180台を除いた820台が対象だ。このうち、1次契約と同様の180台を納品する契約が締結されると見られる。ただし、契約規模は性能改良、現地生産などにより1次契約より大きくなりそうだ。業界では6兆ウォン(約6540億円)以上になるという観測が出ている。

2次契約からはポーランド軍の意見を反映した改良型モデルであるK2PL(K2 Poland)が納品される。敵軍の対戦車兵器を探知・破壊するハードキル能動防護装置、上部に装着された砲塔を無力化できる遠隔射撃統制体系などが搭載されるという。

AFPより

そもそも、1次契約分の180両は国内で実績のあるタイプなので、普通に作れば問題ないはずなのだが、若干トラブルの噂は聞く。

一緒にセールスしたFA-50は販売した13機中13機が飛べない(12機だという記事もある)なんてニュースも見かけたが、K2戦車も整備面でトラブルがあるようだという噂はある。Xで見かけただけなので、単なる噂の段階なんだけれども、まあ、その可能性はあるよね。

2次契約分で信頼を落とさないとイイヨね

そして、2次契約分って現地生産を含む上に改良モデル(K2PL)の納品の予定なんだよね。

2次契約は1000台のうち、1次契約分180台を除いた820台が対象だ。このうち、1次契約と同様の180台を納品する契約が締結されると見られる。ただし、契約規模は性能改良、現地生産などにより1次契約より大きくなりそうだ。業界では6兆ウォン(約6540億円)以上になるという観測が出ている。

2次契約からはポーランド軍の意見を反映した改良型モデルであるK2PL(K2 Poland)が納品される。敵軍の対戦車兵器を探知・破壊するハードキル能動防護装置、上部に装着された砲塔を無力化できる遠隔射撃統制体系などが搭載されるという。

生産もポーランド現地で進められる。現代ロテムは7月、ポーランド現地の国営防衛産業グループPGZとK2PL生産・納品事業のための新規コンソーシアム合意書を締結し、最近は維持・補修(MRO)と技術移転契約を進めている。現地生産はK2戦車を活用した救難戦車(K2PL ARV)、架橋戦車(K2PL AVLB)、工兵戦車(K2PL CEV)などに拡大する可能性も高い。

大丈夫なのかね?その改修は実現可能なのだろうか。トラブルのタネになりそうな臭いはする。

トラブルといえば、こんな話もちょっと前にあったんだよね。

ポーランドに輸出のK2戦車の主要技術を流出させた関係者が摘発される

2024-08-07 17:59:57

ポーランドなどに輸出し、防衛産業にプラスの役割を果たしているK2戦車の主要技術を流出させた会社の関係者らが摘発された。

7日、捜査当局によると、京畿南部警察庁安保捜査課は、不正競争防止および営業秘密保護に関する法律違反などの疑いで装備会社A社所属のB氏など2人と会社法人を最近検察に送致した。

毎日経済より

主要技術といっても大した内容ではなかったようではあるが、不穏な話だよね。

B氏らは2017年、自分たちが勤めていた防衛産業会社のC社で開発したK2戦車の総合式保護装置関連図面と教範、開発報告書などを盗み出してA社に転職した疑惑を受けている。

総合式保護装置は、化生放電の状況で電車の室内に浄化された空気を提供し、陽圧機能を通じて汚染された外部空気の流入を遮断する役割をする重要装置だ。

彼らは2019年末、海外防衛産業業者と総合式保護装置技術輸出と関連した契約を結ぶなど、この技術を海外に流出を試みた疑惑も受けている。

毎日経済より

情報流出は、転職の時に発生したようなので、日本だと不正競争防止法の範疇になる話なんだけど、韓国だとスパイ防止法的な法律で取り締まりが可能だ。

輸出するといって頑張ってセールスしているのだから、こういう技術の漏洩は宜しくは無い。頑張って対処して欲しいものだよね。

とまあ、不安要因は多少あるんだけど、輸出する上ではやっぱりパワーパック技術の獲得は非常に重要である。輸出にあたってドイツなどから横槍を入れられる心配がなくなるからだ。尤も、韓国製のパワーパックを開けてみたらドイツの特許に抵触していたなんてオチも考えられる(実際に原発輸出で問題になっている)ので、心配を払拭できたとまでは言えないのだけれど、そこを今心配しても仕方がないよね。若干性能に不安があっても、使えるパワーパックを手に入れられたというのは、韓国にとっても輸出先の国家にとっても大きな意味がある。

コメント

  1. 匿名 より:

    韓国の冶金技術で作れないのなら海外発注?ケース以外日本製だったりして、まさかポルシェのPDKじゃあるまいし。

    • 木霊 より:

      いやー、ちょっと小耳に挟んだ程度の話なんですが、数年前から韓国企業が日本の鋳造業界から結構人材を引っ張ったみたいな話がありまして。
      日本の技術者も随分とレベルを落としているみたいなんですが、あちらはそこそこ増強されたとかなんとか。ある程度の品質のものが出来る程度には強化されているのではないでしょうか。

  2. 七面鳥 より:

    こんにちは。

    復帰一発目のコメントがK最高品質戦車とは。

    >輸出先の国家にとっても

    最初のロットは仕様どおりでも、次々にダマテンで仕様変更して挙げ句品質落としてくるのが中韓しぐさですからね……