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【韓国空軍】早期警戒管制機を導入したんだけど

韓国空軍
この記事は約13分で読めます。

さて、韓国空軍も流石に警備に力を割いた方が良いという事に気がつき始めたらしく、2013年に早期警戒管制機を導入して、航空戦を優位に進めようという考えに至ったらしい。

早期警戒管制機を導入しても運用できない理由

ボーイング737 AEW&C「ピース・アイ」 を買う

空中には目標物が無いため、航空機が飛行する場合にはGPS等を頼りに飛ぶことになる。しかし、特に戦闘機は相手ありきの行動を要求されるため、有視界に敵機が見えてからの行動では遅い。だからこそ、強力なレーダーを備えた航空機を飛ばしておいて、複数の空中目標物を探知し、情報共有することでより優位に戦闘を行おうという発想に至るのは真っ当な話。

早期警戒管制機(AWACS: airborne warning and control systemまたはAEW&C: airborne early warning and control)はそういった目的で使われる航空機である。

ボーイング737 AEW&C「ポース・アイ」

で、韓国空軍が買ったのはボーイング737 AEW&C「ピース・アイ」だ。

2012年導入の最新鋭機で、長時間滞空しながら敵性航空機の監視・追跡と味方航空機の指揮・管制を行う事が出来る。

もちろん、飛べればね。

部品不足?!

4機セット買ったピース・アイは、なんと、そのうち1機しか飛べない状況になっているという報道がなされた。あれ?どういうこと?

2兆ウォンの早期警戒機、部品不足で地上で遊んでいる状態

入力2013-10-15 21:33

空軍が領空の監視のために2兆ウォンを投じ、昨年、早期警報機”ピースアイ”を4機を実戦配備しました。しかし、部品がなく3台が実質的に地上待機となっています。

リンク切れ

他の3機は共食い整備の犠牲になったのだ!って、部品くらいしっかり確保しておけよ!

別の記事でも言及しているけれど、共食い整備そのものはある程度は仕方のない面はあるのだ。だが、そもそも早期警戒管制機の導入をしたのは遊ばせておくことが目的である訳では無い。であれば、万全に運用できる体制を整える必要があるだろう。そうでなければ、2兆ウォンも使って導入した兵器が勿体ないだろうに。

ところがわずか1年で3機が事実上の運用中断状態に陥りました。理由は部品がないため。500億ウォンを投じて3年分の部品を買い入れましたが、エンジン用核心部品などが欠けている上、追加注文に長くて何カ月かかかるためです。

リンク切れ

で、どんな部品が足りないのかなーと思って読んでいったら、なんと、エンジン用の部品が足りないのだとか。

……えーと、ピースアイのエンジンにはCFMI CFM56-7B27Aジェットエンジンが2基採用されている。ボーイング737に採用されるエンジンと同じなので、部品は潤沢にあるハズだが、どうして足りないなどということになるのやら。

導入時に不当に値切るからこういう結果になるんだぜ?(多分)

一方、米ボーイング社の無償サポートが終了する来年1月から早期警戒管制機(ピースアイ)の技術支援費で3年間で2千900億ウォンを要求したことが分かった。
これは国防部が策定した早期警報統制機技術支援費予算の2倍に達する金額だ。

「韓国メディア」より

ついにはアメリカに足下を見られる始末である。救えない話だな。

しかし、もともと早期警戒管制機は電子機器満載で価格が高騰し易い上、生産数が増えにくい性格の兵器である。ボーイング社にしてみたら、オーダーメイドで作らねばならないのに、発注数が安定しなければラインを維持することも難しい。

値上がりは避けられない宿命にあったと、その様に理解するしか無かろう。

あ、この報道について軍は「虚報だ!」とお怒りのようである。

「地面で遊ぶ早期警戒」事実は虚偽の報道… 空軍「怒り」

2013.10.16 03:51:27

空軍はJTBCが10.15(火)「ニュース9」で報道した「地で遊ぶ早期警報」除下ニュースに関して明らかに誤った内容を報道したと空軍の立場を明らかにした。

空軍は該当ニュースで「ピースアイの導入からわずか1年で3台が事実上運用中断状態に陥って」とピースアイが運用中断状態であるかのように虚偽報道したが、空軍航空統制機ピースアイは今年2月に正常作戦を開始して以来9月までに平均80%の稼働率を維持したと解明した。また、周期検査により稼働率が最も低かった月さえも69%の稼働率を維持したと明らかにした。

「HONEST NEWS」より

韓国軍曰く、「平均稼働率は80%ニダ!」だそうである。

デスヨネー。

空軍側によると、ピースアイの瑕疵保証(Warrant)期間は2年で、2013年9月まで空軍が予算をかけて購入した修理付属はない。空軍は2013年から2015年までの修理付属購入のために272億を確保しており、必要に応じて執行する計画だと説明した。

また、ピースアイのプラットフォームであるB-737は全世界で6千台以上売れたベストセラー航空機であるため、戦闘機に比べて修理部品の確保が非常に容易であり、「部品の需給が数ヶ月ずつかかって地面で遊ぶ」という指摘は常識以下の問題提起と空軍は指摘した。

「HONEST NEWS」より

まあまあ理論的な反論のように思うけれど、「修理付属品購入のために272億ウォンを確保」って、いや資金を確保しておくのではなくて、保守部品を用意しておけよって話なんだが。

新たに早期警戒管制機の導入を進めるニダ!

で、こんな状態なので流石にもう少し体制を強化すると思いきや、どうやら新しいものを買う計画が浮上している模様。

韓国軍、早期警戒管制機と白頭偵察機を追加導入

Posted June. 27, 2020 08:16, Updated June. 27, 2020 08:16

北朝鮮全域の核とミサイル挑発に関する信号情報(SIGINT)を探知・分析する「白頭(ペクトゥ)偵察機」が追加導入される。

~~略~~

また、防推委は21~27年に約1兆5900億ウォンを投入して空中早期警戒管制機2機を海外から追加購入する内容の「航空統制機2次事業」も議決した。「空の指揮所」と呼ばれる早期警戒管制機は、敵のミサイルや航空機など目標物を探知して軍を指揮統制する役割を遂行する。

「東亜日報」より

えーと、ピースアイを2機増やすという予定らしい。4機体制から6機体制にするワケだね。

ところで、同様にピースアイを運用しているオーストラリアがアップグレード計画を発表していたのだけれど、どうなの?韓国軍はやらないのだろうか。

Australia To Upgrade Wedgetail AEW&C Aircraft

July 11, 2017, 3:18 AM

The Royal Australian Air Force (RAAF) will upgrade its fleet of six E-7A Wedgetail AEW&C aircraft, to include new advanced combat identification sensors; tactical datalinks; communications hardware and encryption system; and mission computing hardware and software upgrades. The fleet was delivered by Boeing from 2009 to 2012, following a troubled development. Australian defense minister Marise Payne announced the upgrade the day before she presided over delivery of the last two of 12 Boeing EA-18G Growler electronic attack aircraft to the RAAF.

「AIN Online」より

スケジュール的にはまだこのプログラムは完了していないっぽいのだけれど、既存機の機能を充実させる方がメリットが大きいんじゃないだろうか。

白頭偵察機

RC-800電子偵察機を運用中

さて、僕は寡聞にして知らなかったのだが、実は韓国空軍は早期警戒管制機としてボーイング737 AEW&C「ピースアイ」を運用するほかにも、米レイセオン社のホーカーを偵察機として運用しているようだ。

レイセオン ホーカー800SIG 「白頭」

ビジネスジェット機を電子情報偵察機に改造して1998年から運用している模様。

  • RC-800「白頭」電子情報偵察機(レイセオン ホーカー800SIG)
  • RC-800「金剛」画像情報偵察機(レイセオン ホーカー800RA)

米レイセオン・エアクラフト社が生産したビジネスジェット機ホーカー800XPを改修したSIGINT(SIGnal INTelligence:電波情報収集)機と画像情報偵察機。「白頭」電子情報偵察機/「金剛」画像情報偵察機をそれぞれ4機ずつ導入している。

使えない偵察機

ところがこの偵察機を導入するにあたってとんでもない事件が!

「リンダ・キム事件」が米法廷に

2001.11.02 11:31

韓国政府が発注した軍事装備の納品過程で起きたロビイスト、リンダ・キム(47)氏のわいろ事件の飛び火が米法廷に及んだ。

カリフォルニア州最高裁判所は、コリア・サプライ社(代表、ジョン・アン)がリンダ・キム氏と軍需装備生産メーカーのロッキードマーティン社を相手取って起こした損害賠償の訴訟を審理することを、先月24日決定した。

アン氏は、1996年に韓国が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する映像情報を収集するための装備導入を進めた事業(金剛事業)と関連し、キム氏と受注競争を繰り広げた末に脱落した後、キム氏のロビー活動が問題化されたことから、これを根拠に1999年9月、ロサンゼルスの民事地方裁判所に3000万ドルに上る損害賠償の訴訟を提起したが、棄却された。

~~略~~

一方、キム氏は、金剛事業とは別に進められていた白頭(ペクドゥ)事業(対北朝鮮音声情報の獲得事業)の納品業者の選定過程において賄賂を与えて、軍事機密を取り出した疑いで、第1審で懲役1年を言い渡され、法廷拘束されたが昨年9月の控訴審で執行猶予で釈放され、現在ロサンゼルスで生活している。

「中央日報」より

このリンダ・キム被告、白頭事業でも納品業者の選定過程において、軍事機密を漏らしていた疑いがあると言及されているが、その内容の一部がどうやらRC-800のスペックなどの漏洩に関わっていたという話のようで。

他にも、次期戦闘機の選定にあたってF-15SEからF-35Aに切り替えたという話があったのだけれども、これに関与していた疑いがあるというから驚きである。あくまで疑いだけではあるが、F-35A導入にリンダ・キム被告が関与していたという。どれだけ影響力があるというのか。

それが事実かどうかはともかく、RC-800に搭載されているE-SYSTEMS社のRCSS(遠隔操作式画像偵察・電子情報収集システム)は、RC-800に搭載するには重すぎるらしく、所定の高度を保てない疑いもあるようだ。また、搭載する機器の電波発信源の方向測定精度が低く、得られる画像の解像度は極めて低いので情報の価値がないという噂も出回っている。

修理が出来ないニダ!

そしてまたしても運用問題が囁かれる。

韓国軍の北朝鮮情報収集「見えず、聞こえず」

Posted March. 26, 2007 07:13,  

韓国軍の北朝鮮情報収集活動の中心にある金剛・白頭(クムガン・ペクトゥ)事業の探知装備が事実上、情報価値をあまり持たない「迷惑情報」だけを見つけ出すなど十分な機能を果たしていないことが、複数の軍筋によって明らかになった。

~~略~~

また、2002年から情報収集活動を始めた白頭事業は、初期から現在まで4台の偵察機のうち一部が任務遂行が困難な状態にあるとされる。そのため、当初は24時間偵察が目標だったが、現在は1日4時間ずつ1台だけが情報収集活動を行っているという。

軍筋によると、事業開始の初年度である2002年の1年間、附属修理費で6800万ドルを支払ったのに続き、2003年からは整備倉庫の設置費でさらに7000万ドルが投じられたという。

これまで知られていない維持保守費用を全部合わせると、白頭事業の導入費用(2200億ウォン)に接近するだろうと、同筋は主張した。

「東亜日報」より

この記事にはセンサーの問題や画像解像度の問題にも言及されているのだが、驚きなのは修理が続いてなかなか飛べないという事実である。

いや、1日4時間ずつ1機だけって、修理が追いつかない事も大きく影響しているようだ。それで良いのか?

まあ、この偵察機のベースとなったホーカー800は巡航速度745 km/hで航続距離4,890 kmというスペックである。単純に計算して6時間程度しか連続航行できないことになり、離陸と着陸を考えると概ね5時間以下の作戦時間である。

1日4時間ずつ1機だけって、そりゃ2機+2機の構成なのだから当然だろう。むしろ、24時間体制での監視の方が無理である。ちょーっと東亜日報の記事もどうかしているとは思うが、何れにしても十分な監視体制が維持できているとは言い難いのが実情らしい。

そもそも偵察できなくなる

それどころか、ムン君が余計な事をやったお陰でこうした監視活動の維持すら怪しくなっている。

韓国空軍RC-800電子偵察機は北朝鮮監視活動を維持できるのか

2018年9月26日 水曜 午前6:30

9月24日、米国のトランプ大統領は、先週南北首脳会談を行った韓国の文在寅大統領との会談の冒頭、「金正恩委員長との2回目の会談を近く開催する」と述べたうえで、開催地について、トランプ大統領は、前回のシンガポール以外だと述べた。

先週、3度目の南北首脳会談を行った文大統領とは、核施設への査察受け入れをめぐる北朝鮮の認識を確認したり、北朝鮮が核施設廃棄の条件として求めた「アメリカによる相応の措置」についても協議したとされる。

~~略~~

また、「付属合意書」と位置づけられた「板門店宣言軍事分野履行合意書」では、南北は地上と海上、空中をはじめとする全ての空間で軍事的緊張と衝突の根源となる、相手方に対する一切の敵対行為を全面中止することにした」としている。

~~略~~

南北首脳会談でDMZに幅10-40kmずつの飛行禁止区域を設定するという合意で、影響を受けるかもしれないのは、韓国空軍のソウル、ソンナム基地のRC-800ではないか。

4機しかないと言われる「RC-800」だが、韓国軍にとっては、38度線近辺と以北の情報をとる、いわば“虎の子”の存在。いわゆる低空から通信を傍受したり、細かな部隊の動きを見張る偵察機で、際どい情報もとっていたかもしれない。だが、今回の飛行禁止区域設定で、RC-800の動きが制限されれば、北朝鮮軍の情報を収集する活動に影響は出ないのか、というわけだ。

「FNNプライムオンライン」より

簡単に要約すると南北首脳会談でお互いに監視活動を抑制するための飛行禁止区域の設定を行うという事を決めてしまったので、RC-800を飛ばせなくなっちゃうね、という話になった。

良いのかオイ。

後継機の導入決定!

それでも、やっぱり監視活動は必要だよねということで、後継機を探すことにしたらしい。

軍は26日、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官を中心に開かれた防衛事業推進委員会(防推委)で、2021~26年「白頭体系能力補強2次事業」を国内の研究開発で推進することを審議し、決定したことを明らかにした。約8700億ウォンの予算を投入し、現在の白頭偵察機より探知の性能が向上し、作戦時間も長くなった新機種を導入する。導入の台数は2機以上になるという。

「東亜日報」より

いやだから、なんで2機なのよ。

今回、作戦時間を長くするとか、探知性能を向上させた新機種選定とか、その辺りは評価出来る項目なのだけれども、そもそも偵察任務のために必要な飛行エリアに入れない様になっちゃったという問題を解決する必要があるので、新機種を選ぶ話になったはずだ。

ところが、何故か「2機以上」を選ぶという。いやー、RC-800ではそもそも役に立たないのよ?大丈夫?せめて3倍は買わないと。4時間ずつの監視任務で6機をメンテナンスしながら回すくらいの計画じゃないとダメなんじゃ?

まあ、運用するのが韓国空軍なんだから良いのだけれど。

何故、韓国空軍は早期警戒管制機といい、白頭偵察機といい、偵察任務を軽んじるんだろうねぇ。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    韓国空軍のAWACS・ISR機問題の本質は、同海軍のフリゲート問題のそれと一緒だね。

    曰く『うまくいかない…』『じゃあ、別ので。』
    ”新しい”装備が導入される。その一方で問題は置き去りにされる…
    曰く『これもダメだ…』『じゃあ、別ので。。』
    果たして悪党は、運用・管理する軍か、ケチる装備庁か、カネを出さない政府か。

    面白そうなサスペンス映画が撮れそう。『アウトレイジ(激怒) 全員悪党』とか。

    • 木霊 木霊 より:

      何というか、早期警戒管制機を導入したなら、運用実績を蓄積することこそが重要だと思うんですよね。
      どうやって上手く使うか、という話です。

      そして、ソレ、面白そうなサスペンス映画ではありますが、本質がとても下らないという残念な映画になりそうですねぇ。