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【韓国軍】国産MLRS「天舞」の輸出は順調らしいが

韓国陸軍
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ポーランドの勇気を褒め称えるべきか、韓国のセールスの巧さを褒め称えるべきか。

米の高機動ロケット砲より強力…韓国製多連装ロケット砲、ポーランドに300門輸出

記事入力 : 2022/10/17 10:34

米国の高機動ロケット砲システム(HIMARS)がウクライナ戦争でロシア軍に正確な攻撃を加えているが、これよりも強力とされる韓国製多連装ロケット砲「天舞」約300門がポーランドに輸出される。輸出額は発射車両とロケット弾やミサイルなどを合わせて50億ドル(約7400億円)に達するとみられる。ポーランドとは先日戦車「K2」、自走砲「K9」、軽攻撃機「FA50」など総額25兆ウォン(約2兆5700億円)の輸出契約を結んだばかりで、軍需物資などを含めると輸出額は40兆ウォン(約4兆1000億円)以上となる。ポーランドは韓国の防衛産業にとって最大の輸出市場になりつつある。

「朝鮮日報」より

アメリカ製HIMARSより強力という煽り言葉が本当に適切かどうかは知らないが、韓国製のK-239多連装ロケット砲「天舞」の購入にメリットがあると、ポーランドが判断したのは事実だろう。

ポーランドは300輌を購入予定

「天舞」なのか「天武」なのか

さて、韓国が開発したという多連装ロケット砲だが、自称「アメリカ製のM270MLRSより高性能」という事らしい。が、イマイチ表記の揺れがあって、「天舞」なのか「天武」なのか「天橆」なのかよく分からなかった。読みは「チョンム」らしい。

このブログでは、「天舞」ということにしておきたい。

注:「橆」という漢字は、常用漢字ではないので「舞」が当て字として使われているという理解で良いのかな。「橆」の読みは音が「ぶ」「む」で訓が「しげ・る」。木々が茂る様を表すようだ。ミサイルをばらまくという意味では適当な当て字かもしれない。

車体はハンファの8×8トラックのシャシーをベースにした装甲キャブを採用し、GPS誘導の239mmロケット弾(射程80km)と、KTSSM-I(400mm弾道ミサイル/射程180km)と、KTSSM-II(600mm弾道ミサイル/射程290km)が発射出来る2種類のポットが用意されているとのこと。

この3種類のミサイルだね、発射可能なのは。

この他にも新型誘導弾の開発を続けているようなので、HIMARS同様に多様な攻撃が可能であるというシステムになっている。

あと、K136多連装ロケット砲に搭載されていたK33無誘導ロケットも発射可能らしい。

コストメリットと導入スピードが決め手

ポーランドとしては、HIMARSが欲しかったようなのだが、アメリカ側が対応出来ない状況になっていて、韓国製の多連装ロケット砲をチョイスすることになったとのこと。

ポーランドは2019年、米国にHIMARSを20門(戦闘用18門、訓練用2門)発注し、来年度から導入する予定だ。しかしHIMARSの追加導入は早期には難しいため、来年中に確保できる天舞の導入を決めたという。

「朝鮮日報”米の高機動ロケット砲より強力…韓国製多連装ロケット砲、ポーランドに300門輸出”」より

価格は1輌あたり30億ウォン(約2.6億円)程度だとされているため、アメリカ製のM270MLRS(1輌約19億円程度:自衛隊調達価格)やHIMARS(380万ドル:5.6億円相当)よりは安いようだ。

まあ、MLRSやHIMARSの価格は正確には分からなかったので、あくまで参考値ではあるが。何れにしても半額程度で高性能(カタログスペック)の製品が入手出来るのであれば、文句はないのかも知れない。

239ミリ誘導ロケットは最大で80キロ離れた標的を正確に攻撃できる。分散弾を使用すれば300個の子弾が空中から投下され、最大でサッカー場の約3倍の広さを掃討できるという。ウクライナ戦争で活躍している米国製のHIMARSは6発の227ミリロケットを搭載しているが、天舞は12発でHIMARSの約2倍の火力を誇る。

「朝鮮日報”米の高機動ロケット砲より強力…韓国製多連装ロケット砲、ポーランドに300門輸出”」より

優秀なんじゃないかな?韓国政府のセールストークを信用するのであれば、だが。

ある韓国政府筋は16日「ポーランドと約300門の『天舞』を輸出する基本契約を今週中に締結する予定」「今年中に細かい契約を締結し、来年からポーランドに天舞を段階的に引き渡す計画だ」と明らかにした。ポーランドのマリウス・ブワシチャク副首相兼国防相は今月14日に現地メディアとのインタビューで「ハンファ・ディフェンス製多連装ロケット砲の天舞を約300門導入するための基本契約を締結する」と伝えた。ブワシチャク国防相は天舞を選択した理由について「天舞は最高の品質と効率性を兼ね備えた兵器だ」「天舞は米国の高機動ロケット砲HIMARSと同じレベルの機能を持つだけでなく、最大で300キロ離れた目標を攻撃でき、国防力の強化にプラスになるだろう」と期待を示した。

「朝鮮日報”米の高機動ロケット砲より強力…韓国製多連装ロケット砲、ポーランドに300門輸出”」より

ょっとエジプト向けK9自走砲の話もあった後なので、若干本契約に至るまでは不安要素は大きいのだが、スピード対応出来るところは評価できる。

性能に関しては、評価段階で紆余曲折はあったようだが……、まあ、おそらく解決しているだろうと思われる。ロシアに対抗する為にはポーランドにとって大切な装備となるからね。

K-136九龍

さて、韓国陸軍はこの他に、多連装ロケットシステムK-136九龍というシステムも運用していた。

何というか、設計的には結構古そうで、そこはかとなくロシアの香りのする兵器なのだけれども、1970年代に開発されて1980年代に配備され総生産数は158両であった。驚くことに、エジプトにも36両が輸出された実績があるようだ。牽引する車両自身はアメリカ製のものを使っているという紹介もあったから、ロシア製ではなくアメリカ製なんだろうけれど。

ところが、これも設計が古くなったこともあって、多連装ロケット砲K-239「天舞」が開発されるにいたる。

開発するまでの紆余曲折

開発期間は2009年から2013年となっているが、実は「使える」様になるまでには少し時間を要したようだ。K136自走多連装ロケット砲の老朽化に伴って開発されたのだが、K136が人力で次弾を装填する仕様だったことなどもあって、M270MRLSを真似てモジュラーコンテナを交換することで素早く次弾装填が出来る様にしたかったのが本音のようだ。1,314億ウォン(約1億1240万ドル)を投じて開発が行われた。

で、「開発完了した!」という段になったが、国内で試射を行う事が難しかったので、2013年に開発が終わった段階で何故かイスラエルに持ち込んでテストを行う。どういう経緯でそうなったのかは不明だ。イスラエルの地上試験場で発射テストを行い、ADDの海上発射テストを行い、合格基準を獲得したらしい。

そして、このテスト結果を以て2014 年 10 月に韓国陸軍は58輌のK-239「天舞」を購入する事を決定し、量産が始まった。2015 年 8 月には韓国軍に配備されている。

ただし、イスラエルに持ち込めたのはモジュラーコンテナを含むロケット弾部分だけだったようで。2015年3月以降に、車両ごとアメリカに持ち込んでテストをし、見事に失格。どうやらアメリカ軍にも採用を持ちかけたっぽい。失格の理由は弾頭の不発率がアメリカの基準を満たさなかったからということらしい。

更に2020年になって問題が発覚する。

[単独]天武新型ロケット弾実射撃で「発射障害」を確認

記事入力2020.08.30 午後8:35 、最終修正2020.08.30 午後9:10

北朝鮮の長射程砲に対抗する韓国軍の天舞です。

一度に複数の足を撃つことができる多連装ロケットだと我々の技術で開発し、実戦配備ました。

ところが、2ヶ月前、発射だけ新型弾を実際に撮影してみたところ発射中に障害が起きたことが確認された。

なんと3兆ウォンだ武器に問題がある場合、正確に明らかにすべきでしょう。

「NEVER」より

機械翻訳なので内容が少々怪しいが、テストが不十分で230mm新型弾の発射が行えなかったらしいことを伝えている。

記事によると、韓国内には80km以上の長距離射撃試験を行う事のできる場所がなく、海外に持ち出す場合には誘導武器システム技術の流出が懸念されるので行えなかったということらしい。いやいや、アメリカでテストしてますよね?

韓国の次世代多連装ロケットシステム、米国でのテストで不合格に―中国メディア

2015年07月07日
6日付の韓国メディアによると、韓国の次世代多連装ロケットシステム(MLRS)「天舞」が米国で実施されたテストで不合格の判定が下された。中国新聞網が伝えた。

リンク切れ

似た記事は他にも。

[単独]「次期多連装ロケット(天武)の不発率の高い」とアメリカは承認を拒否

 2015.07.03 04:40

北朝鮮の主要な電力を打撃するために前方と西北島嶼に配置する次期多連装ロケット弾(天武)が半分武器に転落する立場だ。米国の技術を持ち込み、天武で発射する「無誘導ロケット」を開発中だが、不発率が基準を超過して米側が承認を拒否したからである。これにより、2兆8,000億ウォンを投入した大型事業が漂流するという懸念が出ている。

https://www.hankookilbo.com/」より

困難を乗り越えて、使えるようにしたってことだね!

韓国経済にプラスになるか

というわけで、不安要素があるにはあるんだけれど、ポーランド向けに巨額の輸出が実現できる運びになっているので、素直に「機を掴んだセールスを実現した」という点では評価してイイと思う。

ただ、これが韓国経済にプラスになるのかと言われると、不安要素は残る。

世界的に韓国製の兵器が売れることは、おそらく韓国政府にとっても韓国軍にとってもメリットがある。問題は、外国でこれらの兵器が活躍できるのか?という点と、技術的トラブルが発生して韓国企業が振り回されるような事態を招くリスクがあるという点はある。

何しろ、韓国製の兵器は自国開発と発表しながら、他国からの部品輸入に頼む部分が多く、ウォン安傾向にある韓国にとっては利の薄い商品になる可能性が高くなってきている。

そして、政治的にもロシアに敵対する国に兵器を売ると言うことは、ロシアに兵器を供給する支那に敵対する可能性が高く、ロシアがウクライナとの戦いに疲れて没落すれば、必然的に支那政府のヘイトは韓国に向かう。支那との貿易に依存している韓国にとって、それが良いことなのかは悩ましいところだ。

上手いこと乗りきっていく可能性はもちろんあるのだが、楽観視は出来ないのかなぁと。この辺は今後も注視して行くべきだと思う。武器輸出に関しては日本の先輩になるからね、韓国は。

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