ポーランドの巨額の軍事費投資、韓国製FA-50の購入決定

空軍

よりによってソレを選ぶかね、というのが正直な感想だが、しかし色々な事情を鑑みるとポーランドにとっては悪く無い選択であったようだ。

ポーランド、韓国製FA50戦闘機48機の購入契約を締結…総額30億ドル

記事入力 : 2022/09/17 09:22

ポーランド政府は16日(現地時間)、韓国製のFA50戦闘機48機をおよそ30億ドル(約4300億円)で購入する契約を締結した。韓国航空宇宙産業(KAI)はこの日、ポーランドのマゾビエツキでポーランド軍備庁とFA50戦闘機48機の輸出契約を締結したと発表した。

「朝鮮日報」より

記事にもあるが、ポーランドと言えば、最近になってK-2戦車やK-9自走砲を韓国から大人買いしたことでも有名になった。今度はFA50軽戦闘機を買うらしい。購入方針については既に8月頃には出ていて、今回のニュースは「正式に決まった」程度の話なんだけどね。

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戦車はともかくなぜ軽戦闘機まで……

防衛費の増額

ロシア軍のウクライナ侵攻が始まって、ポーランドに激震が走った。ポーランドは過去にドイツ軍やソ連軍に国土を幾度も蹂躙された苦い経験を持つ国だからである。

ポーランド政府、国防費を引き上げへ

2022/03/07(月)

ポーランド政府は、国防費を2023年から対国内総生産(GDP)比で3%に引き上げる計画だ。ロシアのウクライナ侵攻を受けた動き。 与党・法と正義(PiS)のカチンスキ党首は3日、下院での新たな国土防衛法案の審議で、「国防計画に修正が加えられるだろう」と発言。

「NNA EUROPE」より

これが今年の3月のニュースである。ポーランドの軍事費はこれまでGDP比2%程度であったが、2023年度から3%に引き上げることに決めたのである。一気に1.5倍だ。

ポーランドの人口は徐々に少なくなっていっており、経済規模から考えれば軍事費を引き上げることに関しては色々と批判もあるだろう。だが、そんな批判を吹き飛ばすだけのインパクトが、ロシア軍の暴挙にはあったのだ。

そして、ポーランドには100万人にも上る移民を受け入れるような状態となった。ウクライナの現状はポーランドにとって「無関係」などと切り捨てることが出来る状況では無いのである。

よって、総額1兆円以上の予算を投入しても新しい兵器を導入しなければならなくなった。

旧兵器はウクライナへ融通

新しい兵器を購入せねばならなくなった背景には、ウクライナへ武器を融通したということも関係している。

【総額1兆円以上】ポーランドが韓国製兵器を爆買いするワケと日本の防衛産業がヤバすぎる

8/29(月) 6:02配信

ポーランド国防省は7月27日、韓国との間でFA50軽攻撃機やK9自走砲、K2戦車を大量購入する契約を結んだと発表した。

~~略~~

韓国政府関係者によれば、ポーランド陸軍は最近、手持ちの戦車と自走砲のほとんどをウクライナに提供してしまった。おかげで、ポーランド軍の戦車兵らは演習ができない状態に陥っているという。ポーランド陸軍は歴史的にも、東西からドイツ軍やソ連軍に国土を蹂躙された記憶が強く、戦車や自走砲へのこだわりが強いという。

ポーランドのマリウシュ・ブワシュチャク副首相兼国防相は韓国との契約締結に際し、「私たちはウクライナで起きていることから学んだ。ロシアがどのように攻撃してきたか。装甲部隊と砲兵が重要だ」と語った。

「yahooニュース」より

この記事だけでは、ポーランド陸軍の状況を巧く理解できないと思うが、ウクライナに対してポーランド陸軍から戦車を提供したという話は事実である。

ロシアのウクライナ侵攻をうけて、ポーランドはウクライナにT-72戦車を200両以上、供与していると報じられています。ウクライナ軍は扱いに慣れたT-72を手に入れ、ポーランドは不用品を有効活用できて両方良かったね、という単純な話ではありません。リプレース予定の戦車とはいえ、保有全数の約4分の1とは尋常ではありません。

「乗り物ニュース」より

ウクライナの主力戦車はT-72という旧ソ連製の戦車である。それなりに優秀な兵器と言われているが、トップアタックに対する脆弱性が近年明らかになっていて、戦車の更新というのはT-72戦車を使用する国の共通した課題でもあった。

そして、ポーランドにとってはウクライナがロシアの手に落ちれば、次は自国にも火の粉が降りかかってくる地政学的な問題もある。

img

ポーランドにとってウクライナはまさに防波堤なのである。ポーランドには、地図でちょっと赤く塗られているロシアの飛び地、カリーニングラード州という地域があり、ここには多数のロシア製兵器が配備されているという事情もある。

そんな訳で、ポーランドとウクライナの利害が一致し、ウクライナがロシアの猛攻に耐えるためにも、即戦力になるT-72戦車が必要だったし、ポーランドが防波堤としてのウクライナを維持する上でも都合が良かった。

で、保有するT-72の殆ど(ポーランド陸軍が保有するT-72M1は382両だったとされるため、200両の戦車を供出すればT-72のほぼ全数を渡した計算になる)を放出した結果、新しい戦車が必要になったわけだ。

ミグ29もウクライナへ

ちなみに、戦車だけでなくポーランド空軍が保有するミグ29戦闘機も、ウクライナへと供与されたようである。

ポーランド、ロシア製戦闘機「ミグ29」供与用意 米の管理下に

2022年3月9日7:43 午前

ポーランドは8日、自国が保有するロシア製戦闘機「ミグ29」をドイツのラムシュタイン空軍基地に配備し、米国の管理下に置く用意があると表明した。

「ロイター」より

この話はアメリカを巻き込んでの動きで、ミグ29全機をアメリカの管理下に置くことと引き替えに、アメリカからF-16を購入する話を持ちかけたのだと思われる。既にポーランド空軍はF-35Aの取得を決めているしね。

一方のアメリカ空軍は自国の戦闘機が思う様に補充できない問題を抱えていて、F-15やF-16の延命などを行っている。最新のF-16系戦闘機F-16Vの引き合いはアメリカ空軍を含めて世界的に高まっている。F-35A戦闘機の開発遅れやランニングコストの高さなど、アメリカ空軍としても色々な問題を抱えているだけに、簡単に「F-16を売るよ」と言えないのである。

で、入手出来るマシな戦闘機となると……。

一方、韓国製兵器は、ポーランドの要求を十分に満たすものだったという。韓国のFA50軽攻撃機は、韓国航空宇宙産業(KAI)と米ロッキード・マーチン社がF16戦闘機をベースに共同開発したT50練習機がモデルになっている。F16はエンジンを単発にするなど、日本が導入したF15をダウンサイズした航空機だが、価格も安く、世界のベストセラー戦闘機として知られる。ポーランド軍もF16戦闘機を保有していて、「本当はF16が欲しかったが、米国から購入のめどがつかなかった」(韓国政府関係者)という。

「乗り物ニュース」より

まあ、残念兵器のFA50軽戦闘機くらいしか無いんだよね。

COIN機(暴動鎮圧用の戦闘機)くらいの性能しか無いFA50軽戦闘機だが、選択肢が他に無い以上は仕方があるまい。繋ぎとして使う分には悪くない話のようだし。……いや、エアルマッキM-346なんかも候補には挙げられるはずだし、ポーランド空軍は16機程度取得する話になっていたはず。追加発注を繰り返して数を増やしていたから、「ダメ」って訳じゃなかったハズなんだけど。

韓国メディアの報道通りであれば、ポーランドはFA50軽攻撃機48機を約3千億円で手に入れたことになる。単純計算すれば、1機あたり約65億円になるが、契約にはポーランドにメンテナンスや飛行訓練の各種施設を建設する内容も含まれている模様で、機体の価格は1機50億円を下回りそうだ。航空自衛隊が調達するF35Aステルス戦闘機の約96億円、F35Bの約128億円に比べれば割安ということなのだろう。

「乗り物ニュース」より

良く言えば、韓国は「商機を掴んだ」と、そういう事になる。F-16やF-35AとFA50の親和性が高かったことが勝因だろう。

K武器3点セット販売

色々不安の残る韓国製兵器だが、セット販売でお安く買えるとなればポーランドとしても悪い話ではない。今なら技術まで付いてきてこのお値段!という、テレビコマーシャルに出てきそうな勢いでの販売をおこなったようだ。

この結果、K武器3点セットの第1次契約締結が順調に完了した。K武器3点セットの第1次輸出額は11兆8460億ウォン(約1兆2200億円)で、今後10年間に予定されている3回の額を全て合計すれば最終的な輸出額は25兆ウォン(約2兆6000億円)から最大で40兆ウォン(約4兆1000億円)に達する見通しで、これは韓国からの武器輸出では過去最大の規模となる。今回の輸出を足がかりにオーストラリア、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビアなどへの武器輸出にも弾みがつくとの見方もある。

「朝鮮日報」より

同じ設計思想で作られた韓国製兵器、K2戦車、K9自走砲、FA50軽戦闘機の3点セットは、ポーランドにとっては「今買える兵器」という意味でもありがたかったと思う。

こちらの記事でも突っ込みを入れたが、特にFA50軽戦闘機の使い道はかなり限定的である。が、空戦などはアメリカから購入するF35A戦闘機にお任せして、導入期的な働きを期待してのことらしい。

ポーランドのマリウス・ブワシュチャク国防大臣は、F-16の操縦経験のあるパイロットのFA-50への機種転換が容易であることを、FA-50導入の理由の一つとして挙げています。今回導入計画が発表された48機のFA-50のうち12機は、2023年中に引き渡される予定となっています。

「乗り物ニュース」より

打算的な話も色々聞こえてくるが、FA50軽戦闘機自身、Block20で大型コックピット用ディスプレイ、電子戦システムを採用し、AMRAAMの搭載が可能になるなど、地道に改良が続けられている点も評価されたようだ。

この改良は、アメリカ空軍の練習機にエントリーしたこととも関係しているのだと思うが、何にせよ、韓国が外国にFA50を売り込むための開発努力が結実した事は間違いがない。

ポーランドが最初に買う12機は現行のBlock10らしいが、最終的にはBlock20に刷新する方向で契約が結ばれた模様。

技術移転も

ポーランドとしては、韓国からの技術移転や部品関連の保守が充実していたところも評価したようだ。

最初の合意は、大韓民国空軍が使用する現在の構成の 12 機の FA-50 ブロック 10 航空機に関するものであり、2 番目の合意は、将来の FA-50 ブロック 20 に近い、新しい構成の 36 機の FA-50PL 航空機に関するものです。 AESA レーダー、空中給油機能、幅広い武器セットを備えています。最初の FA-50 は銃、AIM-9 サイドワインダー、AGM-65 マーベリック ミサイル、数種類の爆弾で武装し、FA-50PL はより有能な誘導兵器システムも搭載します。

最初の FA-50 は 2023 年後半に納入され、36 機の FA-50PL は 2025 年から 2028 年の間に納入される予定です。契約の正味額はそれぞれ 7 億ドルと 23 億ドルなので、総額は 30 億ドルになります。 どちらの契約にも訓練、予備品、兵站支援が含まれていますが、武器は別途調達する必要があります。別の契約では、FA-50/FA-50PL 航空機の保守能力を受け取るポーランド軍備グループ (PGZ) への技術移転もカバーするものとします。特にポーランドはNATOとEUでFA-50の最初のユーザーになるため、ポーランドと韓国の間の航空宇宙産業における長期的な協力のためのさまざまなオプションも検討されています。

「Defense24 com」より

ディフェンスニュースを読んでいくと、FA50軽戦闘機の評価された点は、F-16戦闘機との親和性が高く、F-35A戦闘機のトレーニングにも役立つと判断されたことらしい。

なるほど、確かにアメリカ空軍にT-50高等練習機を売り込むにあたっても似たようなセールスをしていたし、おそらくその辺りのサポートはロッキード・マーティン社が請け負うことになりそうである。そして、アメリカが直接ポーランドへ武器を販売するよりも、韓国から調達する形になっていた方がアメリカとしても都合の良い部分があるのだろう。

日本の軍事産業も、韓国のこの姿勢の半分でもいいから見習って貰えないだろうか。そのためには日本政府が積極的に売り込む必要があり、学術会議などのおかしな団体から横槍が入らない環境の構築も必須であるため、直ぐに、というわけには行かないのだろうが。

追記

僕が信頼しているサイトの1つに航空万能論さんのサイトがあるのだが、そこで面白い情報が開示されていたのでしょう介しておきたい。

FA-50にPhantom StrikeとAIM-120Cを統合、能力が大幅に向上か
韓国のFA-50にPhantom StrikeとAIM-120Cの統合を米国政府が承認したと報じられており、2025年に完成予定のFA-50 Block20の能力は大幅に向上する見込みだ。

AIM-120(AMRAAM)の統合の話は知っていたのだが、Phantom Strikeが統合されるとは知らなかった。Phantom Strikeは、軽量で小型な航空機機向けのAESAレーダーで、最大の特徴は嵩張る冷却装置が不要=空冷式を実現している。

Farnborough 2022: Raytheon PhantomStrike radar ready for export by 2025

21 JULY 2022

Raytheon plans to have its PhantomStrike active electronically scanned array (AESA) radar ready for export by 2025.

Speaking to Janes at the Farnborough International Airshow 2022 on 20 July, Eric Ditmars, president of Secure Sensor Solutions, Raytheon Intelligence & Space, said that the company intends to have its radar exportable by 2025, with plans to integrate the system onto specific platforms by the end of 2023 or early 2024.

「JEANS」より

JEANSには確かにPhantom Strikeが2025年までに搭載できるようになると書かれている。小型のAESAレーダーなのだが、空冷式らしい。

FA-50は小型機なので、こういった小型で高性能なレーダーを手に入れる事は重要である。Phantom StrikeはF-16にも搭載される予定と書かれているので、その辺りもポーランドに評価されたのだろう。

コメント

  1. こんばんわ、

    いま韓国製がポーランドのニーズに合致している理由は、いますぐ買える・安い・技術移転ОKの3点が揃っていて、ポーランドにとってお買い得だからですね。
    ポーランドは技術移転を受けて、K2戦車の国内生産を始めることになっていますが、トルコのアルタイ戦車のように、改良を加えての輸出も視野に入れているはずです。(相手先は主に東欧諸国でしょうか?)
    また、両国はIFVやミサイルの共同開発にも着手するそうですが、ぶっちゃけポーランドの目的は、韓国から(主に米国の)先進技術をできるだけ取り込み、ロシアに対抗できる軍を建設することでしょう。それは十分可能な話だと思います。

    • 羨ましい限りですね。
      日本も商品を棚の上に並べた状態にしないと買っては貰えないでしょう。
      なんというか、ガラパゴス兵器が多いので、買ってくれる先もかなり限定されそうな自衛隊の運用兵器ですが、売れるアイテムもあると思うんですよね。
      もうちょっとその辺の開発に力を入れて欲しいというのが、本音であります。

  2. 手持ちのF-16が在庫切れのロッキード・マーティンにとって米次期練習機選定プログラムで落選したT-50A(ロッキード・マーティン改修版T-50)の技術を盛り込んだFA-50 Block20をポーランドに売れるのは渡りに船かと思います。
    ロッキード・マーティンにとっては米次期練習機に採用されることを想定して準備していたであろう高額な機材も韓国がポーランドにFA-50を売ることで捌けるし更にF-16の代わりにF-15EXとか他社の戦闘機に入り込まれるのも防ぐことが出来るので非常に都合がいいわけですからね。

    まあポーランドにとってもT-50Aの技術を盛り込んだFA-50 Block20ならパイロットのF-35Aへの機種転換も容易ですし既存のFA-50もF-16への機種転換は容易となるので韓国製のパーツと韓国での組み立てには不安は残りますがポーランド国内に技術移転と整備拠点を作るということなのでそこはポーランド自身で補えばなんとかなるでしょうね。

    あとアメリカはポーランドへの武器売却でロシアに恨まれてもどうってことはないですが韓国はロシアからこの件で恨まれる可能性は考えてもいないのでしょうね。
    アメリカでさえ中国と友好的に付き合えると考えていた時は台湾への武器売却では厳しい制限をつけていたくらいで制限を緩めたのは中国はもはや敵と決断した時からでしたから。(敵に武器を売る国も敵と考えるのは当然のことなんですけどね)

    • アメリカ軍の練習機にエントリーするためにBlock20仕様に変更したばかりでしたから、都合が良かったんでしょう。
      ロッキード・マーティン社は部品供給に頭を悩ませそうですが、韓国内に作ってある工場を稼働させてある程度は目処を付けることができるのでしょう。韓国国内ではFA50軽戦闘機の供給は低調で、Block20に更新する計画は伸び伸びになっているようですしねぇ。
      2022年から更新開始の予定でしたが、韓国国内分をポーランドに振り向ければ2023年までの納入完了は可能でしょう。韓国政府としても経済情勢を考えれば何としても外貨が欲しいところ。巧いことやったと褒めるべきでしょうね。後は手抜きをしないように監督が出来れば御の字でしょうが、アノ国はファーストロット以降の出来が非常に宜しくありません。その辺りはポーランドが思い知ることになるかも知れません。

  3. ポーランドにとって渡りに船、であるのは木霊さんの記事や他の方のコメントにお譲りするとして。

    これだけ大量に、ほぼ同時期に導入が決まるとなると、10年くらいしてから政治問題化しないかな?って余計な心配しちゃいます。

    純粋な契約問題から、贈収賄までよりどりみどりつかみ取りで。

    • なるでしょうね、間違い無く。
      韓国の軍事産業は汚職だらけです。
      そもそも、退役軍人の天下り先のような位置づけになっているのですから、汚職が発生しないわけがありません。政治問題になって、その火消しに飛び回らねばならない羽目になるでしょう。ただ、その時韓国という国が存在すれば、なんですけどね。