韓国、今さらFA-50のアルゼンチンへの輸出に問題があると思い知らされる

空軍

え、?今さらそれ?

UK bars sale of South Korean fighter jets for the Argentine air force

October 31st 2020 – 16:34 UTC

United Kingdom has effectively barred the sale of the FA-50 Fighting Eagle to Argentina, with the South Korean manufacturer informing Buenos Aires that it is unable to supply the light fighter and strike jet since it has British-made parts.

「Merco Press」より

韓国空軍の誇りである、韓国産の練習機派生の軽戦闘機FA-50を輸出する話が頓挫したらしい。いや、まだ決定ではなく、限りなく難しくなったと言うことらしいが。

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軽戦闘機FA-50

高等練習機T-50の戦闘機版

韓国には「国産機」と胸を張る高等練習機T-50があり、韓国空軍で運用されている。これが輸出にも成功して、複数の国に打診して結構勝って貰っている事実があるわけだが、いつもこれでホルホルする理由が、僕には理解できない。

というのも、高等練習機T-50というのは、割と中途半端な性能の練習機だからである。

コチラでも言及しているが、設計はロッキード・マーティン社で、ベースとなったのはF-16戦闘機である。

F-16のローカライズというのは幾つか事例があって、日本のF-2戦闘機という実績があるし、台湾のF-CK-1戦闘機「経国」という実績がある。

何れも各国の事情に合わせて改造された戦闘機なのだが、F-2戦闘機は日米共同開発で、F-16と似ているのは形だけで中身は別モノと言われるシロモノだし、F-CK-1戦闘機も航空工業発展中心(現・漢翔航空工業股份有限公司:AIDC)が中心に開発してアメリカの技術支援によって行われて、こちらもF-16戦闘機とは性能的に全く異なるシロモノとなった。なお、台湾では、後にF-16戦闘機を輸入出来る形となり、現在ではさらにF-16V改修するという流れになっている。

ともあれ、F-2戦闘機もF-CK-1戦闘機にしても、何れも戦闘機として使える機体である。ところが、韓国だけはT-50高等練習機という、訓練に用いる機体として開発されたのである。

img

ところがこの機体、練習機としてはかなり高価な部類に入るらしく、大々的に売りたい韓国にとって、練習機として外国に輸出するには色々と難があるようだ。とはいえ、ロッキード・マーティン社設計という意義は大きいらしく、アメリカの次期練習機の候補として検討された時期もあった(時系列的にはFA-50の登場した後の話だが)。

だから、それに武器を搭載して戦えるようにしちゃえ!という発想に至ったのは分かる。……分かるのだが、もともと練習機として開発されて、かなりボディが小さいことが影響し、搭載できる兵器が限られるのがネックであり、軽攻撃機としても性能は中途半端という結果になっている。

輸出の成功例

さて、輸出に成功した事例だけ少し触れておきたい。

  • インドネシア:2011年に輸出が決定し、T-50Iとして16機の輸出実績がある。
  • イラク:2013年に輸出が決定されて、FA-50が24機納入されている。
  • フィリピン:2014年に輸出決定し、FA-50PHとして12機が輸出されている。
  • タイ:2015年に契約され、T-50THが合計14機輸出される。

数字だけ見ると順調に実績を伸ばしていると言えると思うのだが、経過を見るとやはり紆余曲折はあるようだ。

冒頭に紹介したアルゼンチンの話も、結構前から出ていたのだけれども、どうやらダメになったという事のようである。

アルゼンチンのデフォルトで話が潰えたのでは?という報道もあったのだけれども、今回の報道ではイギリスからストップがかかったと言うことらしい。

In a letter dated 28 October, a senior official at Korea Aerospace Industries (KAI) told Argentina’s ambassador to the Republic of Korea Alfredo Carlos Bascou that the FA-50 cannot be exported due to the UK government’s arms embargo on the country. The FA-50 includes six major components that are sourced from the UK.

“It is our regret to inform you that the UK export license issue is not resolved to date. Although KAI did not yet find a solution, KAI is making a reasonable endeavor to resolve this UK export license issue,” the letter posted online said.

「Merco Press”UK bars sale of South Korean fighter jets for the Argentine air force”」より

ただ……、記事を読んでも何の部品がダメだったかというのがハッキリ分からないな。

Argentina denuncia el bloqueo británico para la adquisición de diez aviones KAI FA-50 - Noticias Infodefensa América
El ministro de Defensa argentino, Agustín Rossi, denunció un embargo de armas por parte del Reino Unido que le impediría a Argentina adquirir aviones FA-50 Figt...

コチラにも外国の記事があるのだが、コチラにも何も触れていない。電子部品っぽいのだが、一体何がダメだったんだろう。あちこち調べてみると、6つの主要部品が引っかかったということらしいが。

こういった事情も踏まえて完全国産化は韓国の悲願という流れになっているのかもしれない。

色々と改造を検討しているようだが、これを機に国産化を進めた方が良いんじゃ無いかな。

フォークランド紛争の影響

ちなみに、このイギリスのアルゼンチンに対する仕打ちだが、どうやらフォークランド紛争(1982年3月19日~6月14日)の影響なんだそうな。

このフォークランド紛争、イギリス領フォークランド諸島の領有権を巡ってイギリスとアルゼンチンとの間で勃発した紛争であり、色々な経緯はあったにせよ、フォークランド諸島にアルゼンチン軍が侵攻したことで話が大きくなり、イギリスとアルゼンチンの間で少なくない犠牲者を出している。

そしてこの結果、アルゼンチンは西側諸国から距離を置くようになって、支那との距離を詰めているというから、皮肉な話である。今なおフォークランド諸島はイギリス領であることを考えると、何というか歪な状況であると言わざるを得ない。

そんな感じで、今なおイギリスとアルゼンチンとの間には溝があって、武器禁輸措置が解除されていないことを考えると、今後もイギリス製の部品を使っている限りはこの問題が解決するとは考えにくい。一方で、ロシアや支那から戦闘機を売るという話がチラホラと出始めている事から、ムン君の狙いから逸れて、FA-50のアルゼンチンへの輸出は今後更に難しい状況になるだろうと予想される。

追記

コメントで戴いたが、流石にご存じの方がいたようである。感謝!

T-50 Type DMS | ACME Worldwide

この会社はダイナミックモーションシート(DMS)という、なんというかシュミレーター用のイスを作る会社なのだが、T-50に搭載された射出座席のレプリカ(DMSのこと)を作っていると書かれている。

T-50航空機は、フロントコックピットとバックコックピットの両方にマーチンベーカー射出座席のバリエーションも使用しています。また、他のプログラムと同様に、ACMEのT-50ダイナミックモーションシートは、ライセンスに基づくMartin-BakerのOEMエンジニアリングデータを使用して構築されているため、レプリカは可能な限り実際に近いものになります。レプリカシートには、乗組員がシートにストラップで固定し、ハーネスロック、シートアーミング、さらにはプルトゥイジェクトプロセスなどの機能を制御するためのすべての詳細が含まれています。

「ACME Worldwide社のサイト」より

ここにあるマーチンベーカー社というのが、射出座席のパイオニアでイギリスの企業である。多くの射出座席を作っているメーカーとして知られている。

アメリカにもUTCエアロスペースシステムズ社という射出座席を作るメーカーがあり、作っているシートACES IIはF-16にも搭載されているらしいのだが、どういう理由かは分からないけれども、T-50にはF-16とは異なる(F-2戦闘機にはACES IIが採用されている)シートが採用された模様。

小型故にF-16とは異なるシートが採用されたと言うことなのかも知れないが、射出座席のノウハウは一朝一夕で手に入れられるものでもなし、技術支援と称して手に入れられるわけでも無し。そりゃ、コピーして作るのは至難の業だろう。

コメント

  1. T-50,FA-50が採用しているイギリス製の部品で一番重要なものは恐らくマーティン=ベイカーの射出座席だと思います。

    https://www.acme-worldwide.com/products/dynamic-motion-seats/fighters/t-50-type-dms/
    のサイトにT-50が採用したマーチンベーカー射出座席について以下の記載があります。
    google翻訳のまま
    T-50航空機は、フロントコックピットとバックコックピットの両方にマーチンベーカー射出座席のバリエーションも使用しています。また、他のプログラムと同様に、ACMEのT-50ダイナミックモーションシートは、ライセンスに基づくMartin-BakerのOEMエンジニアリングデータを使用して構築されているため、レプリカは可能な限り実際に近いものになります。レプリカシートには、乗組員がシートにストラップで固定し、ハーネスロック、シートアーミング、さらにはプルトゥイジェクトプロセスなどの機能を制御するためのすべての詳細が含まれています。

    • 紹介頂きありがとうございました。
      なるほど。

  2. 先日のK2戦車のパワーパック部品がドイツの輸出規制がかかるかもに続き、オモロい話題連発してくれますねェ~。(冷笑)

    国産初のジェット軍用機を大々的に宣伝したのに、設計はLM社丸投げのF-16劣化版コピー→核心火器レーダーはイスラエル製→さらに射出座席他がイギリス製と核心技術は外国頼り...、どこが純国産なのかさすがに南朝鮮国民もウソに気づくんじゃないかな。

    それでも、インドネシア・イラク・フィリピン・タイと、T-50&FA-50が70機も輸出されてんですから驚きです。

    >ところがこの機体、練習機としてはかなり高価な部類に入るらしく、大々的に売りたい韓国にとって、練習機として外国に輸出するには色々と難があるようだ。

    予算のない開発途上国では国内内戦制圧として需要のある、COIN機という部類に入ると思いますが、さすがに国防線・沿海の迎撃軽攻撃機というのは無理がある機体ですよね。
    最低基本のバルカン砲ですら問題続出で実戦で使い物なるかどうかってレベル、行動半径500km以下で公称5t程度のペイロード(これもかなり怪しい)ですから、アルゼンチンの海域防衛には最初から向かない機体だと思います。
    仮に採用してどっから飛ばしてもフォークランドまで片道300km位ありますから、行って何もできずに帰ってくるしかないもんね。

    ディフォルト状態のアルゼンチンとしてはアホ過ぎる選択肢とはいえ、限られた防衛予算をドブに捨てずラッキーな話だと思う。

    • そうは言っても、国内で戦闘機を作ることができるということは、例え外国から部品を買っていたにせよ、それなりの技術力があることを意味します。
      核心部品は外国頼み、ということが問題というよりは、外国に売れることを前提に作っちゃった計画性のなさのほうが問題ですよね。
      高価な練習機を作ってしまったことは、将来性を考えていたのであればそれもやむ無しです。ですが、ちょっとそのあたりも怪しいですよね。

      さておき、T-50練習機は、性能だけ考えるとそれほど悪い期機体ではないようです。
      出来上がるまでには紆余曲折あって、かなりピーキーな性能だと評されたこともあったようですが。
      ただ、評価されていなければ、アメリカの次期T-Xの候補として最後まで検討されることはありません。
      問題は、韓国が作って整備するところですかねぇ(苦笑)

      COIN機としてFA-50を運用するということは、それほど悪い話ではないのでしょうが、ご指摘の通り沿海の防衛ということには難がありますね。
      それと、COIN機としては高いことも問題なんですよね。

  3. フォークランド紛争と言えば、英国面全開のこの空中給油を出さずにはいられませんが、
    https://twitter.com/kiyurashi/status/688343594013335552
    それは置いておいて。

    T-50、素性は割といい飛行機らしいですよね。
    ただ、訓練機からの戦闘機というと、本邦ではT-2からのF-1があるわけで、しかも同じ超音速高等練習機……
    時代背景的なものその他もあって、その後本邦は亜音速の専用練習機T-4になるわけですが、そう考えると、90式とK2戦車の関係からしても、いろんな意味であっちは2周遅れなんだよなぁ、と思わざるを得ません。

    まあ、無理矢理教訓を得るとしたら、海外に売りたきゃ完璧な国産品か、ライセンス元の許可を取ってからか、どっちかにしろって事ですね。
    あの国はいつもそれでドタバタしてるけど……

    • 七面鳥さん、横レス失礼します。

      >T-50、素性は割といい飛行機らしいですよね。
      >ただ、訓練機からの戦闘機というと、本邦ではT-2からのF-1があるわけで、

      なるほどジェット練習機から軽攻撃機ってのは実際あまりないんですすね。
      Beホーク派生型のホーク200・イタリアのM346・アルファジェット位しか見当たりません。

      そも意味で南朝鮮がT-50をFA-50で発展途上国に売り込むというのは、隙間を狙った賢いビジネスモデルといえるかもです。
      まあ、騙された4カ国以外にこれからも輸出が成功すればの話ですけどね。

      • マスメディア反乱軍さん
        世界的にはジェット練習機からの派生型として軽攻撃機が存在しないT-4のほうが珍しいです。(これは武器輸出に関して縛りがあり自国ではT-4クラスの軽攻撃機を必要としない日本ならではの理由からなのですが。)

        多くのジェット練習機は当初から軽攻撃機への転用を考慮した設計となっていてwiki(https://ja.wikipedia.org/wiki/練習機の一覧)の二次大戦後の日本以外のジェット練習機では純粋な練習機として設計されたイギリスのBAC ジェット・プロヴォスト、設計当初ビジネスジェットとの兼用を狙ったサーブ 105などが例外的な存在となります。
        その例外的なサーブ 105も後に武装を追加して軽攻撃機バージョンが追加され、ジェット・プロヴォストも無理やり機銃搭載した輸出用を作ったりしてます。

        輸出に自国による変な制限のない国(要は日本以外)だとジェット練習機の派生品として軽攻撃機を用意して練習機と軽攻撃機をセットで売り込むというのは輸出で稼ぎ量産効果で自国での調達コストも下がるので特に開発製造コストが上昇している近年ではやらない手はないということになります。(まあ韓国は自国ではなく他国から制限かかっちゃいましたが)

    • 寡聞にしてこの空中給油のことは知りませんでした。
      なかなか興味深いですね。

      T-50高等練習機は、F-16をベースにロッキード・マーティン社が設計していますから、素性は悪くないのですよね。
      実際に、アメリカも練習機として採用するか検討していましたし。
      ただまあ、設計思想としてはすでに古いということもあって、T-50そのままでは色々と困るかもしれませんね。

  4. 射出座席に関しては日本のF-2がACES IIを搭載しているのは実は例外的と言えるようです。

    ACES IIの生産はレイセオンですが権利自体はアメリカ空軍が所有していて、どうも基本的に他国が開発した軍用機への提供は行っていないようです。
    F-2やT-50同様アメリカの支援を受けた台湾の経国号もマーチンベーカー製ですね。

    マーチンベーカーは、イギリスもかんでるタイフーンは当然としてグリペンやラファールに米海軍のF-14DやF/A-18、果ては中国も採用しているくらいシェアを持ってます。(F-35も開発パートナーとしてイギリスも参加してたり空軍専用機でもないからかマーチンベーカー製ですね)

    • なるほどなるほど。
      マーチンベーカー製の射出座席というのは世界的なシェアを持っているとは聞きましたが、あっちこっちに使われているのですね。
      それだけ優秀ということなのかもしれませんが、そうするとF-2戦闘機が例外的にACES II採用できた理由は何なんでしょうか。ちょっと機になりますね。

      • Rodneyさん、おはようございます。レス遅れてすみません。

        >世界的にはジェット練習機からの派生型として軽攻撃機が存在しないT-4のほうが珍しいです。

        紹介頂いた練習機→COIN機の実際の運賞&輸出実績はどうなんでしょうね。
        T-4は機関砲装備を試したけどそれですら推力不足で諦めたとか、古いニュースにあった様な気がします。

        >多くのジェット練習機は当初から軽攻撃機への転用を考慮した設計となっていてwiki

        FX-3新型戦闘機が話題になっていますが、次期練習機計画も進めないといけないタイミングにきています。
        アメリカが採用したT-7で開発コストを下げ目先の利益を執るのか?

        僕は予算が懸かっても先端技術・生産ラインの継続的確保を優先し、国内生産に拘って欲しいと考えています。

        既にIHIが数年前に新型エンジン試作を納入したニュースもありますから、COIN機転用で輸出型まで視野に入れた開発計画となればいいのですが...、需要のある発展途上国の予算との兼ね合いになるのかもですね。

        輸出を考えてポイントは...。
        ①機関砲&空対地ミサイル(爆弾)攻撃が可能なペイロード。
        ②作戦行動範囲(航続距離)が3000km以上可能な事。
        ③輸出コストは開発費を除き単機と導入費用のみで換算し、格安値段で提供可能かどうか。(例えトントンでも輸出できればメンテ需要等で実績作り優先)

        色々とハードルは高いのですがチャンスと捉えて欲しいですね。