韓国空軍のエレファントウォーク

空軍

ステルス機の「エレファントウォーク」というと、言葉そのものに少々矛盾を感じてしまうのだけれども、効果はあるんだろう。

金正恩も恐れる韓国空軍ステルス戦闘機が示威行動

記事入力 : 2022/03/26 10:35

北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射に対応して、韓国空軍のF35Aステルス戦闘機28機が一度に滑走路に並んで移動する「エレファントウォーク(Elephant Walk)」訓練が25日に行われた。

「朝鮮日報」より

少なくとも、北朝鮮にF-35A戦闘機をレーダーなどを用いて補足する事は困難である。斬首作戦に使われてしまえば、これを防ぐことは北朝鮮人民軍には難しいと思われる。

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戦闘機には必要、メンテナンス

40機中28機

ただ、僕が気になったのは、韓国空軍が用意したF-35A戦闘機の数である。

今回の訓練に動員されたF35Aステルス戦闘機は計28機に上り、韓国空軍が持つ全40機のうち7割に当たる戦力だ。F35Aは第5世代ステルス戦闘機で、ステルス性能や電子戦能力など統合抗戦システムを備え、金正恩(キム・ジョンウン)が最も恐れる核心戦力に挙げられる。F35Aは2018年3月の1号機を皮切りに配備が始まり、今年1月に最後の4機が韓国空軍に引き渡されて全40機の配備が完了した。

「朝鮮日報”金正恩も恐れる韓国空軍ステルス戦闘機が示威行動”」より

確かに「使えるぞ」というアピールは重要であり、空を飛ばして「探知できるのか」ということを試させるよりも意味があるだろう。

これだけ並ばせると実に壮観である。

ただ、エレファントウォークに参加させたF-35Aは28機だとされており、40機あるうちの28機を並べたこととなり、これは全保有数の7割という数字になる。随分と出してきた印象だな。

エレファントウォークは戦闘機を飛ばすイベントではない(注:飛ばすケースもあるらしい)ので、多少整備に問題のある機体であっても参加させることは可能だろうから、「出せるだけ出せ」という指示が出て28機ということなのかも知れない。が、逆に言えば残りの12機はエレファントウォークにあわせて参加させることも出来ない状況にあるという意味なのだろうか?

多数機運用能力や即応態勢を確認する意味合いが強いので、「出せるだけ出せ」という方向性は間違ってはいないと思うのだが。

韓国空軍のF-35Aは使えるのか問題

なお、今年の1月にはこんなニュースがあった。

韓国空軍「F35A」 機体異常で緊急着陸(1月5日)

2022.01.05 08:01replay time00:42

韓国空軍のステルス戦闘機「F35A」1機が4日、訓練中に機体異常で緊急着陸した。

空軍によると、同機はこの日午後0時51分ごろ、航空電子システムの異常で着陸装置(ランディングギア)が降りず、西部の忠清南道・瑞山にある基地の滑走路に胴体着陸した。

熟練した操縦技術や素早い協力により乗っていた操縦士にけがはなく、機体の損傷もほぼなかった。胴体着陸は国内初のケースだという。

「聯合ニュース」より

このブログでもこの記事に関しては取り上げている。

事故原因は「バードストライクだった」ということで決着したようだが、バードストライクともなると機体に結構な損傷があった可能性は否定できない。

どうやらハゲワシがF-35Aの武器庫を直撃するレベルで突っ込んできたらしく、その影響で胴体着陸をしている。

飛行訓練の途中でこのような事故に遭い、パイロットの技術が高かったお陰で胴体着陸に成功したという事案なのだが、この事故で最低1機は使えない状態だったということが分かる。じゃあ残りの11機は?というと、メンテナンス中であったか、或いは任務中だったか、なのだが……。多分前者なんだろうな。そのこと自体は不思議ではないんだけど、問題は韓国国内ではF-35A重メンテが出来ないことにある。

解決したという話も聞かないんだよね。

バードストライクを受けた不遇の1機を含めて、修理する場合には多分アメリカに送らねばならないんだよね。

修理は外国で

何度もこのブログで触れてはいるのだが、韓国空軍のF-35A戦闘機は、メンテナンスを外国でする必要がある。

[単独] 「F-35整備、我が軍が判断…日本の三菱ではない」

入力 2020.07.02 14:59

空軍が昨年から導入中のF-35Aステルス戦闘機が日帝戦犯企業である三菱重工業に渡って整備を受けるという日本メディア報道を正面に否認しました。

空軍関係者は「我が軍戦力の整備は全く我が軍が判断して決定する事案であるうえ、日本や米国側の公式的な提案もなかった」とこのように明らかにしました。

「OBS」より

なかなか興味深い記事だが、前提としてF-35系の戦闘機は国際整備拠点MRO&Uと呼ばれる設備でのメンテナンスを必要とする。これは、ステルス性の維持や各種性能の維持、ブラックボックスとなっている部分の保護を目的として、整備能力を有するメーカーと契約を結んで各国にその拠点を設けているためで、アジア地域MRO&U拠点には三菱重工が指定されている。

ところが、韓国空軍としては、韓国政府が「戦犯企業だ」と勝手に認定してしまったために、ここを使う事が出来ない(国論が許さない)。

よって、韓国国内にも整備拠点の設置を要請したのだが、アメリカから素気なく断られた。当時から既にブラックボックスを開けちゃう問題や、整備性に難があることが分かっていて、高度な整備は任せられないだろうとアメリカ側が判断したのだな、同盟国なのに。

そんな訳で、韓国空軍はF-35Aの整備をアメリカかオーストラリアに任せなければならないのだが、どちらに運んでも時間がかかるというところがネックである。一説によると19時間飛行おきに定期メンテナンス(ステルス塗料のメンテ)を必要としているらしく、これは多分韓国国内でも可能である。しかし、重メンテナンスとなると韓国国内では行えない。

メンテナンスのタイミングが重なると大変

アメリカ軍がF-35AやF-35Bを中東に派遣していた実績があり、8ヶ月ほど重メンテナンスは行われていなかったようなので、短期間で重メンテナンスが必要となるワケではないようだが、恐らく1500~2000時間毎くらいの間隔では重メンテナンスを必要とすると思われる。

パイロットの年間飛行時間は200時間~400時間程度だといわれ、韓国空軍のそれは150時間程度だと聞くが、それでも10年に1度くらいは無事故でも重メンテナンスは必要になるだろう。不調になればもっと短期での重メンテナンスが必要となるはずなのだが……、さて、韓国空軍の残り11機はどういう状態だったんだろうね。

一時期にF-35A戦闘機を揃えた韓国空軍で、40機のうち1機を除いて使える状態になっているはずだが、実際は28機がエレファントウォークに参加した事実を考えると、時間経過と共にこの問題は深刻化する可能性が高かろう。

特に同じタイミングで40機揃えたのだから、似たようなタイミングで重メンテナンスが必要になるはずだ。それまでに韓国国内に国際整備拠点MRO&Uを誘致できれば良いが、それは有り得ない。隣国日本にあるからね。

そうなると、韓国はあと80機ほどF-35Aを買い足して運用しつつ、重メンテナンスは海外にお願いするといった手法をとらねばならないだろう。多分、韓国政府はそれを知っていながら問題を先送りにした。なんとも業の深い国である。

確かに、北の将軍様、金正恩はステルス戦闘機に恐怖した可能性はあるだろう。とはいえ、韓国空軍のF-35Aは使える武器はさほど多くない。購入時にプライスダウンを狙って兵器購入をディスカウントしたせいだ。もちろん北朝鮮の情報部はその事を知っているハズだから、さほど脅威だとは思っていないかも知れないが、実のところ北朝鮮のレーダーには普通の戦闘機でも補足が難しい。果たしてF-35Aを使ったエレファントウォークに意味があったかどうか。寧ろ、それ以上に恐怖しているのは韓国空軍上層部かもしれない。「あれのメンテ、どうするんだ」「無駄に動かすなよ」と。

コメント

  1. 韓国空軍のF-35Aと言えばスペアエンジンが1基だけという、そもそも整備する気があるのか怪しい状態じゃなかったっけ。

    • そうなんですよね。
      契約時点ではスペアエンジン1基で、F-35A用のミサイルやらもほとんど購入しませんでした。ただ、これに関しては何とも評価がし難いところ。
      購入価格を下げたと宣伝するために、敢えて色々最初に頼まなかった可能性もあって、後から購入したという可能性はありますし、そもそも自国でメンテできませんから、たくさんエンジンを買っても交換できるか?というと多分無理です。
      そんなわけなんですが、整備拠点がいまだに明らかでないというのは、ちょっと不安ですね。