パイロットが無事で何よりである。これも少し遅れての記事になることをお許し頂きたい。
1000億ウォンの韓国空軍最新鋭ステルス戦闘機、車輪が出ないトラブルで緊急胴体着陸
記事入力 : 2022/01/05 12:14
韓国空軍の保有する最新鋭のF35Aステルス戦闘機1機が4日、訓練飛行中に着陸装置(ランディングギア)の異常のため胴体着陸するという事故が発生した。なお、パイロットにけがはなく無事で、機体にも大きな損傷はないことが分かった。F35Aの胴体着陸は韓国国内では初めてで、米軍を含め世界的にも例がない、と韓国軍当局は明かした。
「朝鮮日報」より
韓国空軍が欲しがって手に入れたF-35Aだが、胴体着陸する羽目になってしまったようだ。写真は何処かにないかな?
早速修理が必要になったF-35
ランディングギアが!
えーと、原因はここにはハッキリとは書かれていないが、ランディングギアが出なかったらしい。
韓国空軍によると、4日午後0時51分ごろ、訓練飛行中だったF35Aが航空電子系統の異常でランディングギアが降りず、忠清南道瑞山の第20戦闘飛行団の滑走路に胴体着陸した。
「朝鮮日報」より
F-35Aでランディングギア……。

これはアメリカでの事故で2018年8月22日に発生したF-35Aの事故である。降着装置の故障で前輪が降りないまま胴体着陸してしまったらしい。イメージとしてはこんな感じだろうか。
韓国空軍のF-35Aはどうだったかというと、写真など見つからないためハッキリしない。
問題が発生したF35Aのランディングギアは三つあるが、三つ全て作動しなかったことが分かった。ランディングギアが作動しないと、地上の滑走路への着陸が難しく、最悪の場合はパイロットだけ脱出して機体は海に墜落させなければなくなるが、韓国空軍は危険を冒して胴体着陸を選択したという。胴体着陸の過程で事故を防ぐには、火災の発生に備えて空中で燃料をできるだけ空にしなければならない。また、機体をできるだけ水平に保ったまま速度を落とし、滑走路に接するようにしなければならないなど、高度な操縦技術が必要だ。
韓国軍関係者は「事故機は外観上、胴体に大きな異常はないように見えるほどで、比較的無難に胴体着陸したように思う」と伝えた。無難な結果に落ち着いた「秘訣(ひけつ)」について、この関係者は「パイロットの技量と特殊な泡のおかげ」と語った。韓国空軍瑞山基地は、緊急の胴体着陸が決まると基地の滑走路に消防車を動員して特殊な泡をまき、胴体下部と滑走路の摩擦を減らしたという。
「朝鮮日報」より
しかし、ランディングギアが3つとも作動しなかったというから、メカ的なトラブルというよりは電子的なトラブルなんだろう。プログラムが拙かったか、別の理由があるのか。
「航空電子系統の異常でランディングギアが降りず」と報道されているが、そのうち原因はハッキリするかも知れない。だが、韓国でその調査が出来るのかどうかは不明だ。
整備はアメリカへ?
さて、こういったトラブルはさほど珍しいワケではないが、F-35が胴体着陸というケースは初かな。ランディングギアが降りなかったことはあったようだ。
で、戦闘機を胴体着陸させたということとなると、当然ボディにダメージが考えられる。
韓国軍関係者は「事故機は外観上、胴体に大きな異常はないように見えるほどで、比較的無難に胴体着陸したように思う」と伝えた。
「朝鮮日報」より
映像が出回らないのは、もしかしてその辺りに問題があるのかもしれないな。どういうことかというと、胴体着陸して、大きな異常がないというのはちょっと考えられないが、「大した事件ではない」ということにしたいのかも知れない。
しかし、この日事故が起きたF35Aは、外観上は大きな損傷がないとしても、韓国国内ではなく米国で修理しなければならない可能性もある。レーダーに捕捉され難くするステルスコーティングは極秘事項なので、韓国国内では手を付けられないからだ。
「朝鮮日報」より
大破したにせよ、そうで無かったにせよ、胴体着陸したF-35Aは当然修理しなければならない。記事では「ステルスコーティングしてあるから」という理由が書かれているものの、どう考えてもボディに損傷があった可能性が高く、大規模な修理は不可欠であろうと思われる。
そして、コーティングだけにしてもボディが大破した場合でも、修理できる国は限られている。以前も言及したのだけれども、F-35戦闘機は、国際整備拠点MRO&U(Maintenance Repair Overhaul and Upgrade)でアップグレード作業やメンテナンス、修理、オーバーホールなどをやることになっている。拠点はアメリカ本国以外には、イタリア、オーストラリア、日本の3箇所しかなく、韓国国内では簡単な修理しかできないといわれている。いや、正直、簡単な修理すら怪しいとは思っているが。
今のところ、アメリカに送って修理ということになりそうだが。そうすると、虎の子のF-35Aの1機が長期間メンテナンスで不在という事になりそうである。KF-16もアップデートが必要になって一部がアメリカに渡っているはずなので、韓国空軍は戦闘機のやり繰りに苦労しているんじゃないですかね。
追記
コメントでご指摘頂いたので、追記させて頂きたい。
胴体着陸でF35生かした韓国操縦士の機知
2022.01.09 12:38
「F35は着陸がとても速い。F16やF18、F111と比較する水準でない」。
オーストラリア空軍パイロット出身のグリフィス大学アジア研究所のピーター・レイトン研究員はCNNとのインタビューでこのように話した。彼は4日に韓国空軍の最新鋭ステルス戦闘機であるF35Aが胴体着陸した事故に個人的な意見を出した。
一般着陸も容易ではないが胴体着陸をしたF35Aの操縦士は負傷することなく歩いて出てきた。胴体着陸は着陸装置であるランディングギアを故障などの理由で出さずにする非常着陸だ。
~~略~~
4日午前11時45分ごろ、F35Aを操縦したペ少領は突然「ドーン」という音を聞いた。計器盤を点検すると操縦桿とエンジンだけが正常だった。残りのすべての装備は作動していなかった。通信まで途絶えた。
F35Aは搭載されたすべてのセンサーの情報がひとつに融合処理される。航空電子系統の異常が発生しランディングギア(着陸装置)を含んだ事実上すべての電子系統装備が作動しなくなったかもしれない。
「中央日報」より
全体的にはF-35戦闘機のパイロットを讃えるホルホル記事なのだが、ちょっと面白いことが書いてある。
飛行中に「どーん」という音を聞いたというのである。
そして、操縦桿とエンジンだけが正常で、残りの全ての装備は作動していなかったと。この時点で、着陸装置が作動しなくなって、ランディングギアを下ろすことが出来なくなったのだと。電子系装備が飛行中に死んでしまうというのは、恐ろしい話だな。この時点で緊急脱出して然るべきだとは思うのだが。
しかし、F-35のマニュアル操縦はできない様になっているのか?
ペ少領は両目で海岸線を見ながら飛行した。航法装置も作動していない上、もし戦闘機が墜落するならば内陸部に落ちる状況を防ぐためだった。
「中央日報」より
航法装置ナシで操縦できるパイロットの技量は確かに素晴らしいと思うが、操縦桿しか使えない状態であったというのは少々腑に落ちない。そして、「どーん」という音が一体何だったかについては言及されてはいない。
そのため、米空軍はAuto-GCAS(自動地面衝突回避システム)を開発し、実際に戦闘機F16などに搭載されている。これは衝突の可能性をコンピュータが解析・判断し、危険を知らせてもなおそのままでいると自動的に回避行動をとる仕組み。パイロットが空間識失調に陥った場合に役立つ可能性があるという。一方、事故を起こしたF35Aに装備されていたのはMGCAS (M=Manual、手動地面衝突回避システム)であり、回避操作はパイロットに依存していた。井上氏は〈航空自衛隊の事故機で空間識失調が発生したかどうかは分からないが、(引用者注:近く予定されているF35Aへの)Auto-GCASの導入が間に合っていれば、あるいは…、と思わずにはいられない〉と指摘している。
「Excite News」より
日本で発生した事故の時は、不幸にして回避行動どころか緊急脱出すらできなかったわけだが、韓国空軍のF-35Aはそうしたトラブルではなかったのは幸いなのだと思う。なお、引用元はリテラの記事なので、あくまで参考として読んで欲しい。
事故原因は、アメリカも非常に興味を持っていると思うので、調査の意味でも件のF-35Aはアメリカに送って調査を含めて修理するのが妥当だろうね。
追記2
そうか、バードストライクなら仕方ないね(棒)
最先端戦闘機、鳥1羽であわや墜落=韓国
2022.01.15 12:12
鳥1羽が1機あたり1000億ウォン(約96億円)を超える韓国空軍の最先端戦闘機をあわや墜落させるところだった。
空軍によると、4日に瑞山(ソサン)基地に非常着陸した空軍のステルス戦闘機F35Aを調査する過程で、右側エンジンの吸気口にバードストライク(Bird Strike)の跡が見つかった。
「中央日報」より
記事を読んだ時に、胴体着陸したF-35Aと直ぐに結びつかなかったのだが、どうやらこの胴体着陸したF-35Aの右側エンジンの吸気口にバードストライクの跡が見つかったのは事実であるようだ。
F35の最初のバードストライク事例だ。空軍は米国などF35A運用国にバードストライク事例を公示した。空軍はバードストライクが航空電子系統やランディングギアにどんな影響を及ぼしたかを精密調査する必要があるという立場だ。来月、米国からロッキードマーチンの技術陣が入国した後、精密調査を行う計画という。
「中央日報」より
さらっと誤報を飛ばしているが、F-35Aで最初というのならばともかく、F-35Bではバードストライクの事案は存在する。
米軍岩国のF35Bがバードストライク、損害額2億円超か
2019年5月16日 11:29
山口県の米海兵隊岩国航空基地(Marine Corps Air Station Iwakuni)で今月7日、最新鋭ステルス戦闘機F35Bが鳥と衝突する「バードストライク」で機体を損傷していたことが分かった。米海兵隊が15日、明らかにした。損害額は200万ドル(約2億1900万円)を上回るものとみられている。
「AFP」より
損害額は2億円と書かれているので、韓国軍のF-35Aも同等の損害額か、それ以上の損害額となりそうである。
これに先立ち空軍のペ少佐は4日、F35Aを操縦中に突然ドンという音がした後、操縦桿とエンジンを除いたすべての装備が作動しなかったため、瑞山(ソサン)基地に非常着陸した。車輪を含むランディングギア(着陸装置)を出さない状態での胴体着陸だった。F35の胴体着陸も今回が初めてだ。ペ少佐にけがはなく、F35Aは胴体下の一部が破損した。
「中央日報」より
胴体の一部を破損とあるのだけれど、板金で叩けば直るというレベルの話ではない。アルミニウムが43.4%、複合材が35.1%、チタンが15.4%、残りがその他という材質比率だと言われているが、一部を交換すれば破損部分が取り除ける、と言うものではないんだよね。
しかし、バードストライクで電子機器が使えなくなってランディングギアが出なくなるなんてことがあるのかどうか。ロッキード・マーティン社の技術者が確認するまで原因は分からないとは思うが、ちょっと怪しいな。
追記3
新しい記事にしようか迷ったが、ちょっとした追加情報なので追記にしておきたい。
1月に胴体着陸した韓国空軍F35A、ハゲワシとの衝突で武器庫の壁に穴…あわや大惨事だった
記事入力 : 2022/03/03 18:37
今年1月に機体の異常により滑走路に胴体着陸した韓国空軍の最新鋭F35Aステルス戦闘機は、ハゲワシと衝突して機体に穴が開き、あわや墜落の危機にあったことが分かった。
韓国空軍は3日に記者会見を開き、1月4日に瑞山基地(忠清南道)に緊急着陸したF35Aについて機体異常の原因を調査した結果、体重10キロのハゲワシとの衝突が主な原因だったと発表した。
「朝鮮日報」より
何というか、「バードストライクだった」ということは既に分かっていたそうだが、その正体がハゲワシだったということだった模様。
この手のトラブルは避けて通ることが難しい為、仕方が無かったとも言えるが、貴重なF-35Aを1機失ってしまったのもまた事実である。莫大な修理費をかけて修理するしかないだろう。
コメント
木霊様、皆さま、今日は
ニュースを見ていたら、続報らしき記事がありました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5d2b8951d062716d52722ae2a67d6f2f3b848f11
突然「ドーン」という音を聞いた。計器盤を点検すると操縦桿とエンジンだけが正常だった。
のだそうだけど、問題はその「ドーン」の方でしょう。何かが爆発したのならばこの程度では済まないと思うので、何かが破断して周囲の機器を破壊したのではないかな。いずれにせよ、エンジンと操縦系統が作動し続けたのは「幸運」でした。
それにしても、降着装置を出すバックアップくらい付いているでしょう。最終的には「手動」なんて機種もありましたね。それも動かなかったのでしょうね。
情報ありがとうございます。
続報というか、ホルホル記事ではありましたが、面白いことが書かれていますね。追記させて頂きました。
手動操作ができなかったのは不思議ではありますが、もしその機能を備えていたにも関わらず出来なかったのだとしたら、F-35はとんだ欠陥品であると言えるでしょう。
絶対、滑走路からステルス塗料を回収しているはず、チャンスニダ!
整備不良の意見があるようですが、韓国恒例の覗き見後の復旧が原因では?
復旧出来なくて、意図的に壊したとか。
シナのプーさんから、オーダーが出ているから、破損部品をくすねる為とか。
韓国軍ならそれくらいは余裕でやるでしょうね。
F-35Aは空自でも運用しているのですが南朝鮮は40機既に配備されているようです。
空自は初回40機中まだ8機程度だったはず、この配備に掛かる差はなんでしょうねェ~。
推測理由① : 南朝鮮に配備されたのは重要機密漏洩を恐れて、初期モデルあるいはモンキーモデルだった。
推測理由② : 空自調達中は最新モデルでLM社の生産ラインが追いついていない為。
胴体着陸した事故機の原因は判りませんが、やはり南朝鮮によくある整備が十分ではなかった...、と疑われても仕方ない気がします。
重整備はアメリカかオーストラリアで行うしかなく、おそらく良くて半年とか掛かる事を考えると、日頃の標準点検・整備が何より大事なんですが、今さら劣等朝鮮族に求めても詮無き事かも。
空自の初期配備予定数は42機ですが、現段階で何機配備されているのかは調べられませんでした。
こちらの記事が正しければ、現在20機/42機ということなのでしょうかね。最終的にはA型42機+63機・B型42機となる予定のようですね。
https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/428378
韓国は配備を急いだようですが、「日本よりも早く欲しい」と駄々を捏ねたのかも知れませんね。
航空自衛隊の方は、パイロット育成などのスケジュールや整備環境の構築など、色々な「準備」が必要なため、ゆっくりなのかも知れません。ハッキリはしませんが、スケジュール通りなのではないでしょうかね。
なんだかんだ言ってもパイロットは一流(でなきゃそもそも飛べない)なんですな。しかし整備が信頼できなければ…空軍パイロットの離職率が以上に高い。なんて話もありましたっけ。然もありなん。でしょうかね…
機付き整備員たちにも、操縦士の命を預かる覚悟と矜持を持たせなきゃならんでしょうに、まして最新鋭機を扱うなら整備員たちもエリート揃えなきゃ駄目でしょうに、そういうの無しで下っ端扱いでもしてるんでしょうかなぁ…
記事の通りであれば、パイロットの技量は優れていたのだと思いますよ。
で、整備に関しては重整備が出来ないこともあって、軽視している可能性はありますね。
アメリカの2018年8月22日に起きた着陸装置のトラブルは機内緊急事態が発生のため緊急着陸したときに停止直前か直後くらい?に前輪が引き込まれて地面と機体が接触した事故で最初から胴体着陸を試みたわけではなさそうです。(機内緊急事態が何だったかわかりませんが)
まあ米軍のパイロットならよほどの事情でもない限りF-35のような胴体着陸が難しい機体で着陸装置が最初から作動しなければ緊急脱出するでしょうしね。
https://fighterjetsworld.com/latest-news/f-35a-nose-gear-landing/7189/
同様のトラブルは2020年6月8日にも発生していてこちらは着陸して停止後に着陸装置が引き込まれて地面と接触したようです。(翻訳のニュアンスだと着陸停止後しばらくしてみたいな感じですけど)
https://gephardtdaily.com/local/landing-gear-of-f-35a-lightning-ii-collapses-after-landing-at-hill-afb/
いずれにしろF-35A自体にも何らかの問題をまだ抱えているのかもしれませんが韓国では機体の調査できないのでアメリカでの調査待ちですね。