うんまあ、ネタ記事なので軽い気持ちで読んで欲しい。
光化門一帯で「国軍の日」市街パレード…「怪物ミサイル」玄武5が初登場
2024.10.01 14:48
建軍76周年「国軍の日」市街パレード行事のため1日、ソウルの都心と東南圏一帯の交通が統制される。
この日午前、ソウル空港で開催された第76周年国軍の日記念行事が終わった後、午後3時から5時まで崇礼門(南大門)と光化門一帯の世宗大路で市街パレードが実施される。
中央日報より
ええと、去る10月1日に、韓国では「国軍の日」を迎えて軍事パレードが行われた。日本では見られない光景だね。
その能力には疑いがある
ネタミサイルの疑い
なお、この玄武シリーズは、韓国陸軍にとって象徴的な兵器ではあるのだけれども、大変なネタ兵器である疑いを持たれている。あくまで疑われているだけで、正確なことは良く分かっていないんだけどね。
国軍の日の市街パレード行事は10年ぶりに開催された昨年に続いて2年連続となる。今回の市街パレードでは「怪物ミサイル」と呼ばれる「玄武(ヒョンム)5」が初めて公開され、長距離地対空誘導ミサイル(L-SAM)など主要武器体系が登場する。最も注目される武器は核爆弾級の威力を持つと評価される玄武5だ。
玄武5は弾頭重量が世界で最も重い水準の8-9トンで、通常兵器でありながらも戦術核兵器級の破壊力を持つ武器に挙げられる。
中央日報「光化門一帯で「国軍の日」市街パレード」より
玄武5の性能について、記事に書いてあることがなかなか凄いのだが、「通常兵器でありながらも戦術核兵器級の破壊力を持つ武器」という位置づけになっている。
恐らくは公式にそういうことになっているのだろう。
射程距離は弾頭の重量により600キロ(6トン)、300キロ(8トン)となる。弾頭重量を減らせば射程距離3000-5500キロの中距離弾道ミサイル(IRBM)以上の性能を発揮すると推定される。縦深が短い韓半島(朝鮮半島)では韓国の後方からでも玄武5で平壌を打撃することができる。貫通能力は数百メートル水準という。韓国軍は北朝鮮が南侵する場合、数十発の玄武5で北朝鮮指揮部があるバンカーと核施設を焦土化する計画と伝えられている。
中央日報「光化門一帯で「国軍の日」市街パレード」より
この辺りが韓国軍公式の玄武5のスペックということになるハズだ。報道でしか知られていないので、正確かどうかは分からないが。
弾頭重量と破壊力
さて、この中央日報の記事では、玄武5の弾頭重量は推定8tだということになっていて、「だから破壊力が核兵器に迫る」という理屈になっている。
だがこれは些か不可解だ。例えば、ロシアが保有しているとされているRT-2PM2 トーポリMだが、通常弾頭を使う大陸間弾道ミサイルだとされ、ペイロードは1t~1.2t程度、発射対重量が47t程度とされている。そして、これ以降開発されたミサイルは核弾頭が搭載されたタイプが選ばれている。
実は弾道ミサイルの命中精度というのは、開発当初で3km前後であったため、破壊力の大きな弾頭を選ぶ傾向にあった。このため、大威力の核弾頭(メガトン級)と相性が良かったといわれている。現在では随分改良が進んで誘導方式が採用されるようになったために平均誤差半径は0.1km程度にまでなっている。このため、小型複数弾頭が採用される傾向にある。
しかし、何れも弾頭重量は1t程度のものが多く、そういう意味で玄武5の弾頭重量8tというのは異例のタイプだと言える。
一方、重量の大きな兵器と言えば、アメリカ軍が実戦配備している大型貫通弾(MOP:Massive Ordnance Penetrator)が知られていて、コイツは13.6tである。玄武5はMOPよりも軽いが、MOPは大型爆撃機を使って投下するタイプの爆弾である。
また、GBU-57(MOP)は投下された後にGPSを用いて誘導される。そして、テストの結果、直径80cmの弾体が地中に70m以上貫通、爆発することが確認されている。この破壊力が大型貫通弾と言われる所以でもあるのだが、しかしこの能力を以て「破壊力が核兵器に迫る」とは言わないんだよね。
玄武5も弾頭重量を重くすることで地下貫通力を高めたのだと推測されるが、そうすると破壊力とはトレードオフの関係になる可能性が高い。高高度まで弾道ミサイルで打ち上げておいて、位置エネルギーを利用して狙った的に大質量の弾頭をぶち当てることで、地下施設を破壊するという発想はアリだとは思うが、地下施設を破壊するためには弾殻を強固にする必要がありそこに重量を割く必要があるため、結果的に内蔵する炸薬量を減らすことになる。
この辺りはJSF氏が解説されているので参考になると思う。
つまり貫通力の強化は、破壊力の強化に繋がるとは言い難いんだよね。両立していると主張している感じの発表の仕方はどうかと思うのだ。
世界最強バンカーバスター
また、韓国はこれとは別に宇宙開発をやっているのだが、韓国最先端ロケットであるヌリ号の性能なんかを見ると、本当に玄武5がこれだけの重量物を飛ばせるのか、或いは目標に命中させるだけの精度を確保できるのかはかなり疑問ではある。
というわけで、どうにも怪しい部分の多いミサイルなのではあるが、韓国軍は「世界最強バンカーバスター」だとホルホルしている。
金正恩委員長の隠れた地下壕も破壊する「怪物ミサイル」玄武5 国軍の日に初公開
2024.09.30 07:35
来月1日の建軍第76周年国軍の日記念式で「世界最強バンカーバスター」に挙げられる地対地ミサイル「玄武5」が初めて登場する予定だ。1日に京畿道城南市ソウル空港記念行事とソウル光化門-崇礼門一帯で進行される市街パレードがその舞台だ。玄武5は弾頭重量が8、9トンに達し、通常兵器でありながらも戦術核兵器級の破壊力を持つ武器に挙げられる。
中央日報より
これに対して、北朝鮮はこんな表現で批判していた。
うーん、「野良犬の群れが小川を渡る茶番劇」とは言い得て妙だね。
そもそも玄武5は、その性能が地下100m以上を貫通するバンカーバスターとされているが、上に書いたようにその打ち上げ能力からして怪しい部分が多い。ヌリ号のことも書いたが、ソレ以外にも韓国は固体燃料ロケットの打ち上げ実験をやっている。
韓国 “人工衛星搭載の固体燃料ロケット 打ち上げ実験成功”
2023年12月4日 21時54分
韓国国防省は、人工衛星を搭載した固体燃料ロケットの打ち上げ実験に成功したと発表しました。独自の打ち上げ技術を高め、北朝鮮に対する監視能力を強化する方針です。
NHKニュースより
このニュースは民間に開発をお願いしている感じのニュースなんだけど、この固体燃料ロケットの打ち上げって、まだ「テスト段階」なんだよね。
このロケットは1~3段目に固体燃料、4段目は液体燃料を用いる。昨年3月と12月の打ち上げ実験では2、3、4段目、3回目の今回は1、3、4段目エンジンの実験を行った。2025年の最終実験では1~4段すべてエンジンを搭載し、実物の衛星を打ち上げる計画だ。
国防部関係者は「4段式の固体燃料ロケットが完成すれば重量500~700キロの衛星も軌道に投入できる」と説明し、最終的には固体燃料ロケットで重量1500キロの衛星打ち上げを目指すとした。
聯合ニュースより
ちなみに弾道ミサイルの射程が600km以上ということになると、短距離弾道ミサイル区分で最高高度は200km以下程度であるとされている。衛星軌道は高度200~1,000kmが「低軌道」ということになっていて、「静止軌道」は高度3万6,000kmという高さまで打ち上げる必要がある。
だが、玄武5は弾頭重量8tで射程300km、6tで射程600kmということになっているので、その能力があれば固体燃料ロケットのテストなんて必要ないはずなのだ(玄武5の能力的には最高高度1,000kmということになっている)。
とまあ、そういう不可思議な部分はあるモノの、嘘を言っていない前提で考えれば、破格の破壊力を持った「世界最強のバンカーバスター」ということにはなるんだろうね。
ただし橋は渡れない
とまあ、そんな感じのミサイルが、韓国陸軍が保有する玄武5という短距離弾道ミサイルで、それをパレードでお披露目したらしいというのが冒頭のニュースであるのだが、こんなニュースを目にすることに。
重くて漢江を渡れなかった韓国の「怪物ミサイル」…さらに大きい北朝鮮のICBMは
登録:2024-11-16 06:17 修正:2024-11-16 07:53
10月1日午前、京畿道城南市のソウル空港で開かれた「国軍の日」記念式典で「玄武5」ミサイルが初めて公開された。玄武5は弾頭重量が8トンの世界最大級の超高威力地対地弾道ミサイルで、破壊力があまりにも強力で「怪物ミサイル」と呼ばれる。同ミサイルは、有事の際に地下100メートルにある北朝鮮の戦争指揮施設、地下軍事基地などを貫通して破壊するために開発された。
玄武5は、9軸(左右9個ずつ18個の車輪)の移動式発射車両(TEL)の上に円筒形の発射管が載せられた形で公開された。韓国軍当局は玄武5の諸元を明らかにしていないが、公開された外形を見るかぎり、2段固体燃料エンジンに発射重量36トン、長さ16メートル、直径1.6メートル、最高高度1000キロメートル、最高速度マッハ10以上と推定される。
ハンギョレより
最高高度1,000kmでマッハ10以上?ね。盛ったなぁ。JSF氏曰く、マッハ10出るのは中距離弾道ミサイルクラスらしい。
まあソレはいいのだけれど、このニュースはガッカリな話を伝えている。ここからがこの記事のオチである。
玄武5がソウル都心の街頭行進に登場しなかったのは、あまりにも大きくて重いためだ。 都心の行進に参加した戦車や自走砲のような機甲装備は、ソウル空港から出発して漢江大橋を渡り、龍山を経て南大門方面に進入した。漢江大橋の設計車両の荷重は43トン。ミサイルの重さ36トンに車両の重さを合わせると、玄武5の移動式発射車両は漢江大橋の設計荷重43トンをはるかに超える。玄武5の移動式発射車両の長さは約20メートル。積載物を含む長さ16.7メートルを超える場合、過積載車両でソウル市の取り締まりの対象になる。玄武5は漢江大橋を通過するには大きすぎ、重すぎた。
ハンギョレ「重くて漢江を渡れなかった韓国の「怪物ミサイル」」より
えええ、ソレはいいんですか?!
玄武5さんを載せた移動式発射車両(TEL:transporter erector launcher)は漢江大橋を通過できないらしい。
デカくて重い「玄武5」だ。
お陰で配備の幅が狭くなってしまうのだが、まあ、ソウル市内に配備しなければならないという類いの兵器でもないので、パレードに参加出来ない程度の問題を抱えるだけで済むはずだ。
うん、問題ないよ。
ただ、「漢江大橋の設計車両の荷重は43トン」というところはちょっと引っかかるんだよね。
だって、韓国の誇るK2戦車は重量55t、K1戦車で51.1t、K1A1戦車で53.2tなんだよね。つまり、韓国保有の戦車は何れも漢江大橋を渡れないことになってしまう。
いや、パットンなら、パットンならワンチャン!……と思ったが、M48「パットン」戦車は49tなんだな。
こりゃ、漢江人道橋爆破事件(1950年6月28日)のように爆破せずともソウルからの撤退に漢江大橋を韓国陸軍保有の戦車が渡れないことが明らかになっちゃったね。
尤も、韓国の戦車には渡河機能が求められている他、K1AVLB自走戦車橋のような装備やKM3「ウオータードラゴン」のような水陸両用渡河装備も保有しているので、問題はないかもしれないのだけれど。
「怪物ミサイル」さんも、渡河できるとイイヨね。
コメント
こんにちは。
……まあ、弾道弾は後方から撃ってナンボですから、橋渡れなくても……
よりも、「過積載車両でソウル市の取り締まりの対象になる」の方がお笑いポイントとしては高得点かと。
まあ、有事にいちいち警察の許可なんて取ってられないでしょうけれど……
ただ、この手の通常弾頭ミサイル、どんだけ撃っても決め手にはならないのは、ウクライナ戦争が証明しているような気がします(黒電話をピンポイントで撃ち抜ければ話は別ですが)。
こんにちは。
どちらかというと、戦車がソウルに入れない可能性の方がヤバいんですよね。
弾道弾は遠くから発射すれば良いのですけれど、戦車の方はそうはいきませんから。
とはいえ、漢江大橋を渡れないだけで、他の橋は渡れるでしょうから(多分)騒ぐようなことでもないかも知れません。だから、ネタ記事ですね。
「橋なんか飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」
※橋を爆破する起爆装置のスイッチを押しながら。
ええ玄武がゲンブじゃなくてヒョンムなの? これだけで当社比-70%ぐらいは弱っちそうだ
ハングル読みになりますから、日本語感覚で聞くと「ええ?」と思っちゃいますよね。
K2戦車も「黒豹」でちょっと格好いいかな?と思いますが、ハングル読みだと「フクピョ」ですから、かなりガッカリですよね。
おはようございます。
>嘘を言っていない前提で考えれば
これが一番怪しいですね(笑)。
>漢江大橋の設計車両の荷重は43トン
一〇式戦車は44tなので、ギリ、渡れそうですね。ばれちゃってよいのかな。
こんにちは。
>これが一番怪しいですね(笑)
ソレ言っちゃうと、もう話が崩壊しちゃうので。
でも、怪しいと思っているのは僕も同感であります。物理的に無理なんじゃないかなぁ?と思うような話が幾つもありますから。