【アーカイブス】【農業を考える その3】高齢化は農業の足枷になるか?

農業

さて、日本の農業を覆う闇は深く、そして様々な問題を内包するという、この問題エントリーの「その3」は、高齢化という方向で切っていきたい。

農業の高齢化問題と後継者不足の現状について

日本の農業は今や深刻な高齢化の問題を抱えています。 日本は世界でも5位の農業大国として知られていて、日本の農家が人口に占める割合は1.6%とされています。 日本の農業人口は2009年のデータでは289万人、確かに少ない数字ではありません。 しかしこの農業人口の6割が65歳以上であり、35歳未満の働き盛りはわずか5%という現実が非常に問題となっているのです。 65歳以上というとそれより高齢の人もいるということで、農家の平均年齢はなんと68.5歳、ほぼ70歳に近い世代が一生懸命農業に従事していることになります。

「あぐりナビ」より

この一文だけでも唖然とすること請け合いである。

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農業の担い手も高齢化

平均年齢は68.5歳?!

日本の農業人口は200万人以上いて、人口の約1.5%が農家であると言われている。これが多いか少ないかという議論は難しい。アメリカの人口は4億人程度と言われているが、このうち農業に従事する人口の割合は、3%程度。資料によっては1.7%程度という数字もあるので、何が正しいかを判断するのは難しいが……、注目したいのは平均年齢だ。なんと、55.3歳である。

農業輸出金額のランキング

アメリカは工業の先進国ではあるが農業でもかなりの収益を上げている。農業輸出金額では世界トップレベルなのである。日本はこの表によると57位だ。

さて、日本の農家の平均年齢が68.5歳という驚愕の数字を目の前に、立ちくらみを起こしそうだが、このデータは2009年のもので、今は更に高齢化しているだろうと思われる。

当然、安倍政権もこうした数字は把握した上で、色々と考えてはいるのだと思う。

農業の担い手を外国人に、という愚策

だが、そこから出た答えがこちら。

政府、外国人の農業就労で推定 9割が技能実習生に

2019年01月26日

 4月に始まる外国人労働者の新たな受け入れ制度で、政府は、農業で受け入れる外国人材の9割は技能実習の修了者が占めると見込んでいることが分かった。産地が安定して外国人材を受け入れられるかどうかは、技能実習生とのつながりの有無が大きく影響するとみられる。

「日本農業新聞」より

平成31年1月4日安倍内閣総理大臣年頭記者会見

皆様、明けましておめでとうございます。 ~~略~~ 60年後の今、我が国では、少子高齢化が急速に進んでいます。正に国難とも呼ぶべきこの課題に、現代の私たちもまた真正面から向き合い、未来への改革を進めなければなりません。 ~~略~~ 同時に、人生100年時代を見据え、意欲さえあれば65歳を超えても働くことができる生涯現役の社会を実現するため、これまでの働き方改革の上に、更なる雇用制度改革を進めます。

「首相官邸のサイト」より

さ、錯乱したのか?と、その様な印象すら受ける話ではあるが、しかし農家の平均年齢が68.5歳、多分現在では70歳を超えているであろう事を考えれば、もはや引くに引けないところに来ているという風に政治家が考えていてもおかしくは無い。

そういう意味では、「超リアリスト」の安倍氏らしい回答であると、そう言えるのかも知れない。外国人受け入れの方には、どうしても個人的に賛同出来ないが……。

無視出来ない農作業事故の実態

さて、農家の高齢化で、もう一つ考えねばならない話がある。

17年 農作業事故 10万人当たり死者 前年に続き最多更新 高齢化で拍車

2019年01月29日

農水省は28日、2017年の農作業死亡事故の概要を発表した。農業就業者10万人当たりの死亡者数は16・7人で、過去最高を記録した前年よりさらに増え、最多を更新した。事故死者数は304人と前年より8人減ったものの、農業就業人口が減少しているため、就業人口当たりの死亡者が増えた。農業の高齢化を反映し、死亡者に占める65歳以上の比率も増えた。

「日本農業新聞」より

なかなか凄い数字だと思う。

日本の農業は、機械化されている側面もあるのだが、そうした大型農業機械を使う機会が結構ある。稲作をやれば、そりゃそうだろう。

 事故死全体の要因を「農機」「施設」「農機・施設以外」に分類すると「農機」が211人(全体の69・4%)と3分の2以上を占めた。乗用型トラクターによる事故は92人(前年87人)でトラクターの転落・転倒による死亡が56人と多数を占めた。歩行型トラクターによる死亡事故は28人(同35人)。挟まれたことによる死亡が13人と突出している。 「施設」事故は13人で4・3%。「農機・施設以外」は80人で26・3%を占めた。17年は、熱中症による死亡者も増え、22人と前年より3人増えている。

そしてここには含まれないが、多分、農薬に関する事故も結構あるに違いない。これが高齢化と切っても切り離せない話であることは、この記事からも明らかなのである。

農業機械を自動運転で

まあ、しかしそこは変態技術立国の日本である。

クボタが農機で展開する自動運転戦略まとめ 技術やラインナップは?

レベル4にうってつけの環境が農業に 2019年1月31日 00:54 技術の進展とともに拡大を続ける自動運転分野。その波は農機具メーカーにも及んでおり、スマート化を進める農業分野において非常に重要な役割を担っている。

「自動運転LAB」より

無人化技術の波は農業に真っ先に訪れそうな話になっている。

自動化されていく機械

また、ドローンについても日本は規制が厳しいので、なかなか民間利用が進んでいないが……。

世界一!日本の農薬散布ドローン

2019年1月18日

実は農業でドローン活用する観点では、日本は他のどの諸外国よりも先進国でした。なぜなら1980年代からヤマハ発動機がシングルローター型の農薬散布ドローンを世界に先んじて開発していたからです。

「DRONE BLOG]より

ヤマハ発動機といえば、ラジコンヘリでも農薬散布の話があって、ドローン化も推し進めているらしいことは聞いたのだけれど、探してみると色々記事はあるものである。

もちろん、こうした機械化は、稲作だけではなく、色々な分野で試みられている話ではある。

お茶といえば…鹿児島? 見えた静岡の背中、そして世界

2018年12月4日13時26分

鹿児島県産のお茶が、静岡県産を生産量で猛追している。大型の機械を導入し効率化を推し進める。「お茶といえば静岡」。長年語られてきた常識を打ち破り、味とともに名実ともに日本一となる日が来るのか。業界は「鹿児島」を世界へアピールする。

「朝日新聞」より

地形によって機械化が難しい所もあるが、様々な工夫がされているというのは調べれば色々と出てくる。

もちろん、こうした機械化は、高齢者にとってハードルの高いものになる可能性もあるが、しかし一方で、省力化に貢献できる部分はあるので、お先真っ暗ながらも、一筋の光はあるのだ。

そして、こうした機械化の分野で一番の強みを発揮するのは、企業農業だろう。企業のバックボーンがあれば、開発資金もあって独自路線での開発はありうる。第1回で農業工場に触れているが、あれも1つの形なのだと言えよう。

もやしは価格の優等生?

今なお、モヤシは安く流通

さて、食品の中で一際異彩を放つ存在と言えば、「もやし」や「鶏卵」だろう。コメントにも頂いたが、非常に安く流通している現状がある。

リンガーハットに新工場建設を決断させたモヤシへの情熱

2018年09月07日 06時00分 公開

「新工場でいいモヤシを作っていきたいと思います」 リンガーハットの秋本英樹社長は新工場建設への意気込みをこのように語った。 現在、同社は鳥栖工場(佐賀県鳥栖市)と富士小山工場(静岡県駿東郡小山町)でそれぞれモヤシを製造しているが、鳥栖工場の老朽化に伴い、佐賀県吉野ヶ里町に新工場を建設することを決定した。2019年6月の稼働を目指しており、投資額は9億2000万円を見込んでいる。

「ITメディアビジネス」より

独自の生産ラインを外食産業が確保するほど、実はもやしは工業化の進んだ食品である。

ただまあ、こうした生産現場を知ると、果たしてそれが本当に正しいのか?という疑問は持つ人もいるだろう。

安い理由は

スーパーは「安い価格を維持しろ」と要求しているようだ。

もやし安すぎ問題、未だ解決せず スーパーで投げ売り状態、生産者のみならず原料豆の卸売り業者も廃業

2017.9.27

もやし生産者が依然として厳しい状況に立たされている。東京商工リサーチが9月26日に明らかにしたところによると、もやし原料豆等の卸売りを手掛ける大西商事(兵庫県)が13日までに倒産した。 同社はピーク時の1991年6月期には売上高約7億円を計上していたが、近年は年間売上高3億円で推移。豆の価格高騰もあり、今年4月には事業を停止していた。

「キャリコネニュース」より

更に驚きだが、なんともやしの値段は40年ほ横ばいである。

食品の価格はそれなりに上がってきていることを考えると、こうした実態の異常さが分かるだろう。だが、外食産業にせよ、スーパーにせよ、モヤシの安さを目玉にする業界も多いだけに、そう簡単に値上げができないという矛盾を抱えている。

何しろ、現状でも利益が出せる会社があるのだというのだから……。

もやしの豆、色を巡る攻防の歴史 黒がじわり復権

2018/9/15付

スーパーの店頭でどこか日陰の存在のもやし。他の野菜が高騰しても、年中価格が安定している物価の優等生だ。日本の食卓を縁の下で支えるもやしの歴史を探ってみると、「色」を巡る攻防が見えてきた。 ~~略~~ もやし生産者として長い歴史を持つ長萌産業(長崎市)の山田正信社長によると、「もやし栽培は中国から伝わり、戦前までは中国の緑豆を使っていた」。戦後、中国との貿易が途切れ、代わってビルマ(現ミャンマー)産の黒豆が広がったという。

「NKKEI STYL」より

実は、もやしは豆、緑豆またはブラックパッペと呼ばれる黒豆が使われるのが主流なのだけれど、この豆の輸入を外国に頼っている現状がある。

日本の食卓から「もやし」が消える? 生産者団体が「窮状」公表

2017/3/17 18:54

~~略~~   原料の緑豆は、中国産の輸入価格が2005年時の約3倍(17年1月時点)にはね上がった。一方で小売価格は約10%下落。2009年に230社以上あった生産者は、100社以上が廃業し、現時点では130を切っているという。「このままでは日本の食卓から『もやし』が消えてしまうかもしれません」と危機感を募らせている。

「Jcastニュース」より

最近では支那だけではなく、他国にもその入手ルートを広げたのだとか。

もやしの原料種子について

もやしの種類と原料産地の表示について

当社で生産しているもやしには、3種類あります。 「緑豆もやし」、「子大豆もやし」、「黒豆もやし」です。

こちらの会社では、支那の他に、ミャンマー、オーストラリア、アメリカとある。モヤシの大切な原料となる原料種子を外国に頼らねば、価格維持が出来ないという事でもある。

「株式会社サラダコスモのサイト」より

工業化は分かるが、価格維持のために安全性を犠牲にしたのでは無いか?という懸念を持つ方も多かろうと思う。実際にはしっかりとした検査をやっている様だが、しかし、そこまでしなければ価格維持が出来ないことこそ問題と言えよう。

日本の農産物は輸出できる

しかし、こうしたネガティブな部分だけではなく、攻めの姿勢もある。

オールジャパンで農産物・食品の輸出1兆円を目指す

2017.10.02 文=高山和良

この8月17~19日の3日間、香港でアジア最大級の食の祭典「香港フード・エキスポ2017」が開催された。「香港フード・エキスポ」は、約50万人もの集客を誇る一大イベントだ。香港市民が多数参加するだけでなく、2万人を超えるバイヤーが“めしの種”を求めて会場に足を運ぶフード・ビジネスの最前線でもある。香港への輸出を考える日本の農業関係者にとっては、消費者に直接アプローチできる機会であり、販売先や提携先などを見つける交渉の場にもなっている。ここでは農林中央金庫(農林中金)と全国農業協同組合連合会(JA全農)がタッグを組み、出展した生産者や事業者を全面的にサポート。実際に輸出につながる取り組みを進めている。

「未来開墾ビジネスファーム」より

安全で美味しい「食」を提供するという、農業の輸出をもっと増やし、ビジネスチャンスを広げる取り組みがあるのだ。

何処かの政党が政権を握っていた時代、農林水産物の輸出額は伸び悩んでいるが、しかし、安倍政権はこれを成長産業の1つに位置づける動きを見せている。手放しで喜ぶつもりは無いが、しかし、良い傾向だと思う。

だって、農業が儲かれば、若手の育成という目もある。

そして、年老いても農業を続けられるような技術的なサポートがあれば、日本全体が高齢化したとしても、それなりに食っていける産業に成長させる可能性は残されていると想う。

第1回と第2回では全体的に暗い話を持ち出したが、そればかりでは無いのだ。やるべき事は沢山あるけれど、それでも、完全に閉ざされたわけでは無い、というところで、今回は終わりたい。

コメント

  1. 山童 より:

    テスト送信です

  2. お笑い韓国軍シリーズ好き より:

    農業の未来、興味深いです。いつも思うんだけどなぜ地方の高校は修学旅行に東京を選ぶんだろうか。アメリカやフランス、ドイツの農家見学に行けばいいのに。かっこいいし豊かな生活をしているんですけどね。もちろん日本との違いが多くあるのは理解しているけど、まず若者に農業はかっこいい仕事って思ってもらう意識改革から始めるべきだと思うんだけど。
    自分の知っている神奈川の三浦の農家などは若い女の子がアメリカンなファッションでトラクター乗っているんだけど、ああいう事が大事なんじゃないかと、ファッション業界の片隅で生きている者としては思ってしまう。

  3. マスメディア反乱軍 より:

    木霊さん、おはようごうざいます。

    火急の話である朝鮮半島情勢の記事がどうしても多くなってると思うのですが、自給率や国土荒廃を防ぎ生活の基本である農業・漁業・畜産業・林業に関する深く大事な考察は、少しでも多くの国民が問題意識を持ち続けていかないといけないですよね。

    ひとつでも多くの知恵を絞りだし少しでも有効ならまず実行する、仮に失敗してもいいから次にノウハウが継承される様な真剣な対策の繰り返しと新発想の生み出しが大切じゃないかな。
    何十年も適当に扱ってきた訳なんで簡単に答えが見つかるはずはありませんから、少子高齢化と同じで20年後→50年後→100年後のグランド・デザインを本気でやり始めないと、「国破れて山河あり」なんて呑気に言ってるどころじゃなくなる恐れがあります。

    その推進力となるエンジンが必要ですし、それは木霊さんが仰る様にまずは民間のパワーが火付け役となるのかも知れません。
    己が為の票田として利用してきた古い農水族議員にはまったく期待できませんから一掃し、新しい発想で民間パワーを後押しできる人材の出現に、僕は淡いながらも期待を持ちたいと思っています。

    P.S.
    誠に鬱陶しいだけでできる事なら関わりたくない朝鮮半島情勢ですが、北の核を焦点に水面下ではかなり動き始めてきた様です。
    F-35の配備・グローバルホークの配備延期を初め4月には、何しに行くのか判りませんが文クンも訪米するとか...、トランプ大統領+ポンペオ国務長官&ボルトン氏の思惑が気になりますね。

    いずれにせよ予想外で火急の展開もありえますから、日本は現有戦力だけで対処する覚悟を持って作戦を準備しなければなりません。
    でも国会審議の惨状を見ていると、本当にこんなんで「国民の生命&財産、そして国土の安全。」を守れるのか、不安のネタだけは尽きません。

    • 木霊 より:

      政策課題を記事にまとめていくとはかなり大変なので、ついつい避けてしまいがちですが、もうちょっと頻度を増やしていきたいとは思っています。
      グランドデザインを考えられる政治家が少なくなっていると言うことかも知れませんが、それ以上にそのデザインを口に出来る政治家の少ない事。

      意見は口に出し、批判されて成長するものだと、そう思うんですけれど。