【アーカイブス】【農業を考える その1】日本の農業の未来はどのように切り開くべきか?

農業

このテーマ、引っ越し前のブログで扱ったテーマで、真剣に考えたいなと思った内容なので、再掲載と言うことでこちらにも移動しておこうと思う。

農業工場は未来の日本の農業の姿ですか?

さて、まずは「農業工場」に関するニュースを紹介しておこう。

【京都発 輝く】アースサイド 青果の流通・生産革新で売上高1000億円狙う

2019.1.31 09:35

全国各地の卸売市場や仲卸業者、農家との間で青果物の新たな流通取引の選択肢を提供し、業績を伸ばしてきたアースサイド(京都市下京区)。近年は傘下企業のスプレッド(同区)を通じ、京都府内でレタス栽培の植物工場を展開しているのをはじめ、野菜の生産・販売や外食店の展開など、経営の多角化も進める。

「SankeiBiz」より

近年、「農作物工場」というのが規制緩和によって実現できるようになった。これは、行政の後押しも関係しているとは言われている。

イメージとしてはこんな感じなのだが、ポイントは「工場」ではなく、会社が農業をできる様になってきている点である。

カゴメ トマト栽培、軍上官の勧め

会員限定有料記事 毎日新聞2019年1月13日 

東京朝刊 トマトケチャップやトマトジュースで国内過半数のシェアを誇る加工食品メーカー=写真はカゴメのロゴ、同社提供。本社は名古屋市中区にある。農家の跡取りだった蟹江一太郎(1875~1971年)が創業した。 蟹江は兵役を終えて軍を除隊する際、上官から当時珍しかった西洋野菜の栽培を勧められ、1899年にトマトの栽培を始めた。

「毎日新聞」より

実は、某有名企業も農業に手を伸ばしていて、企業が農作物を作るという話は、それほど新しい話では無い。カゴメのケースでは形としては、企業に委託生産ということにようだけれど。

政府が後押しする農業企業

ただ、農協の力が強かったこともあって、流通にそれを載せるとなると色々と問題が多かったようだ。しかしこのハードルがちょっとだけ下がったのは最近の話なのである。

企業等の農業参入について

更新日:平成30年11月5日

☆平成21年の農地法の改正により、法人が農業に参入しやすくなりました。

【ポイント】

  • 貸借であれば、企業や法人などの一般法人であっても全国どこでも参入可能です。

  • 農地を利用して農業経営を行う一般法人は平成29年12月末現在で3,030法人となっています。
  • 平成21年の農地法改正によりリース方式による参入を全面自由化し、改正前の約5倍のペースで増加しています。
「農水省サイト」より

政府としても、企業が農業に手を出すのを容認したいという風に考えている為、この様な法改正にも動き出している模様。これは、後継者不足により農地を手放す農家が増えていることに対する、苦肉の策ともいえよう。

この事の是非については、ひとまずは置いておきたい。

利益の出にくい構造

カゴメ、生鮮トマト栽培会社解散 台風被害で

2018/11/30 14:18

カゴメは30日、生鮮トマトを栽培する子会社の加太菜園(和歌山市)を解散すると発表した。8月、9月と相次いだ台風の影響でガラス温室など生産設備に大きな被害を受け、栽培を停止していた。今後の復旧が見込めないことから解散を決めたとしている。 加太菜園は栽培したトマトを西日本で販売しており、2017年12月期の売上高は8億7800万円。年間2000トンほどのトマトを生産しており、カゴメグループが扱う生鮮トマトの1割強にあたる。カゴメは同社解散による生産減少分は、他の菜園からの調達で補うとしている。

「日本経済新聞」より

さて、上に挙げたカゴメのトマトだが……、実は子会社の解散と言うことを決めたニュースが去年の末に報じられている。これは天災の影響だったようだが、生産量としては2000tと決して少なくはない。

実際、カゴメはこの子会社だけでは無く複数の子会社に野菜を作らせるような事をやっているので、市場に大きな影響を与えるということでも無かったようだが、しかし、事と次第によっては、企業の農業参入は大きな影響も考えられる。

「利益が出ないからやーめた」という事になった場合に、供給がある日突然途絶えて市場に大きな影響を与えるケースは想定されるからだ。

では、もう一つ記事を紹介していきたい。

「夢の植物工場」黒字達成が困難な理由

2017年7月21日(金)

高瀬 「『未来の農業』に異変が起きています。」 まるで宇宙基地のような光景。 温度や湿度を管理した人工的な環境で野菜を育てる「植物工場」です。 天候に左右されず、安定した生産ができる「未来の農業」として注目されてきました。

和久田 「きっかけは2009年。 農業の再生と技術の輸出を期待して、農林水産省と経済産業省が150億円の補助金をつけるなど後押しました。 特にLEDなどを使う『人工光型植物工場』は当初の6倍に急増。 しかしその一方で、黒字を達成した企業は19%にとどまり、事業から撤退するケースも増えています。」

「NHK」より

実は、「農業工場」はコストに見合わない、という判断をするところもかなり出てきているのである。

農業は気候や天災に大きく左右される業種で、非常にギャンブル性の高い一面がある。

しかし、工場内で作ることで気候変動や天災の影響を避けられたとしても、黒字化できるところはわずかだという実績がある。なぜか?生産コストを下げられないからだ。

それでもグラフが示すように、工場そのものの数は増えているようだ。今のところは儲からない農業工場、というのが現実なのである。

企業が農業をやるという形態はこれから増えてくこともあるかも知れないが、リスクの大きい事業である事は間違い無い。特に日本においては災害によって甚大な被害を生みかねないので、その傾向が強いだろう。

だが、「農業工場」の様に建物の中でやると、なかなか今のところは上手く行かないと言うのが現状のようだね。

外国人に農業を任せるという愚かな発想

では、労働単価を下げるために農業を外国人に任せるのはどうだろうか?

実際に、農家の嫁に外国人が沢山入ってきていると聞くし、人手不足が深刻化していることを考えると、一案であると言えるのかも知れない。

ただ、それが本当に良いかというと、僕にはどうしても良い方法とは思えないのである。

農業に外国人労働者を!

こんなニュースを見かけたことはあるだろうか?

農業に外国人労働者 総理、受け入れ検討を指示

[2016/10/05 00:05]

 安倍総理大臣は、国家戦略特区を活用して農業分野で働く外国人の受け入れを実現するため、来年の通常国会で法改正を目指す考えを示しました。

「テレ朝ニュース」より

人手不足を補う為に、農業に外国人労働者の参入を許すという記事なのだけれど、これは非常におかしな方策だ。

平均年収2500万円、「レタス長者」の川上村 実態は中国人実習生に過酷労働強いる「ブラック農家」?
2014/12/ 4 19:15

日本有数の高原レタスの産地として知られる長野県川上村。平均年収が2500万円にものぼるとされ、「成功農家」のモデルともてはやされるが、一方で外国人技能実習生らに過酷な労働を課している、「ブラック農家」との評判もある。

「Jcastニュース」より

こちらの記事にあるが、技能実習制度というおかしな制度を悪用して、農家を含む零細企業が外国人実習生を受け入れて、奴隷労働に近いようなことをやらせたことが問題となったケースである。

農業は非常に魅力的な仕事になりうるのだが、様々な規制があってなかなか新規参入が難しい。また、他人がやらないことをやる、ということは往々にしてブラック農家に繋がりかねない。

だが、蓄積したノウハウは次世代に受け継がねばならない。それを、日本に締着するかどうか分からない外国人に任せようという発想は、まあ、ちょっと考えれば如何に愚かな行為か分かると思う。

農業はデータベース化できますか?

個人的な話になって申し訳ないが、我が家では家庭菜園の延長線上にあるような農作物の栽培をやっている。しかしこれが非常に難しく、かなりのノウハウを必要とするんだな、と、あらためて実感した次第。一方、僕の親父は長年農業をやっていて、最近では少量ならが流通に乗せるようなこともやっている。先輩の指導は偉大で、一見非効率に見えることが実は必要だったりするから、侮れない。

じゃあ、データベース化しておいたら便利じゃ無いか!という事を考える人もいるかも知れない。

栽培ノウハウのデータベース化を提言

4月17日 20時32分

政府の総合科学技術会議が開かれ、有識者議員が、高品質の農作物の安定生産などに向けて、IT技術を駆使して、ベテラン農家の栽培ノウハウをデータベース化することなどを盛り込んだ提言を行いました。

「NHK NEWS WEB」より:リンク切れ

農業において栽培ノウハウというのは個人的な実感としても日本の財産たり得る。しかし、農家が受け継がれていかなかったら、こうしたノウハウも消えてなくなってしまう。

しかし、データベース化した結果、外国に盗まれたでは目も当てられない。

6次産業化は儲けの出せる最適解ですか?

もう一つ重要なテーマを出しておきたい。

日本の農家を改革!6次産業化に挑む農業集団

Update : 2018.07.05

千葉県香取市を拠点に地域の生産者と連携し、「農業の6次産業化」に挑む企業がある。株式会社 和郷(農事組合法人和郷園)。その取り組みは、およそ30年前、わずか5人の産直仲間の集まりとしてスタートする。そこには、農業生産者として自立を成し遂げたいと願った木内代表の思いがあった。

「日本食農連係機構サイト」より

最近言われるのが農業の6次産業化である。

政府も後押し

この、取り上げられている企業が記事に書かれるほど素晴らしい会社かどうかは知らないが、6次産業化するというのは、1つの方向性として政府も考えているようだ。

農林漁業の6次産業化

農林漁業の6次産業化とは、1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、農山漁村の豊かな地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組です。これにより農山漁村の所得の向上や雇用の確保を目指しています。 このページでは、6次産業化の事例や制度等に関する情報を掲載しています。

「農林水産省サイト」より

要は、農産物を加工して売れば良い!という発想なのだけれど、6次産業化の最大のポイントは、産地で加工して売り出すという点である。1次産業が食品加工・流通販売にも業務展開する経営形態が6次産業だと、その様に言っている。

しかし、これも、大企業が真似をしたら、そこで食いつぶされてしまうという問題はある。

地域団体商標制度など、利用できるツール

ここで利用できる制度が「地域団体商標制度」というヤツなのだが、これもまたいろ色ハードルが課されている。

地域団体商標制度

「地域団体商標についてこれ1冊でまるわかり」をコンセプトに、同制度の概要、Q&A、活用事例、特許庁の支援策を掲載する他、現在登録されている621件の地域団体商標を全件紹介しています。

詳細は「地域団体商標ガイドブック2019」についてをご覧ください。

これ、地域の特産品を保護しようという観点から作られた制度で、6次産業化と非常に親和性が高いと個人的には考えている。

ただし、地域団体商標権という制度は、ともすると使いづらい側面を持っていて、きちんと設計されないとなかなか維持していけない問題をはらんではいる。商標は一般名称化すると登録できないし、マークなどを含む場合には登録ができないという、面倒な側面もある。

簡単に言うと「イセエビ」や「サツマイモ」のように、普通名称として認識されている物品は、登録できない。「温州みかん」もダメだね。

まあ、守る方法はいろいろあるよ、そのうちの1つだよくらいの認識でいてくれると有り難い。

そんなわけで、非常に残念なことに、「ただ作るだけ」ということでは、農業が続けられなくなりつつあるということになっている。

日本の農業の後継者は、いるのですか?

少なくとも、農業専業で、ということは難しいようだ。

多世代農家が半減 後継者の未婚化背景 農研機構の研究者推計

2018年08月14日

親とその子ども、孫の3世代以上で営む農家の数は、2015年までの10年間で半減したとする推計を、農研機構の研究者がまとめた。多世代で構成する家族経営は日本農業の基本型となってきたが、後継者の未婚化などを背景に、減少が加速しているとみられる。一方、多世代の家族経営は依然として農業の基幹的な担い手となっており、経営継承への支援などをどう充実させるかが課題となっている。

「日本農業新聞」より:リンク先の方針で非公開化

農家がいかに減っているか、という記事なのだが、日本が戦後、「農業」に真剣に向き合ってこなかったこと、「補助金をつければ良いや」という考えで済ませてきたことのつけを支払わされるような状況になってきているのである。

漁業でも後継者不足

これは、実は農業だけではなく漁業も同じだ。

“ニッポン漁業”は成長できるのか?

2019年01月30日 14時15分 公開

2018年12月の臨時国会で、70年ぶりとなる改正漁業法が成立した。同法案の改正は、企業の新規参入を促すなど、漁業を成長産業につなげるための第一歩となる。

「ITメディアビジネス」より

このニュースは、あまり指摘されていないことだが、安倍政権は今まで放置されまくっていた漁業にも、ようやくメスを入れたというニュースである。

スルメイカ不漁、1月6割減 平均価格4年で2倍

2019/1/30 11:30

スルメイカが一段と不漁になっている。1月の全国主要港の漁獲量は前年比6割減で推移する。九州や山陰地方など多くの漁場でとれず、卸値も過去最高値圏で高止まりしている。2018年の年間漁獲量は過去最低だった17年から3割減った。イカで最も漁獲量が多いのがスルメイカだが、最近は高級な寿しネタになるヤリイカの価格と並ぶこともある。

「日本経済新聞」より

スルメイカの不漁なども報じられていたが、農林水産省では「ショートした」という認識のようだ。つまり、スルメイカの今後は絶望的、ということである。ウナギもダメだし、ニシンの様にすでにどうしようもない状況を迎えて久しいものもある。

補助金漬けでも進める植物工場

故に漁獲量管理に踏み出すのが遅きに失した、という印象は否めないのだが、しかしそれだってやらないよりはマシである。

補助金漬け「植物工場」の不毛~どうなる?日本の次世代農業

2016年04月25日 16時43分

1980年代後半の第1次、90年代後半の第2次を経て、農水・経産両省連携の国家プロジェクトとして2009年に始まった植物工場の第3次ブームが今なお続いている。しかし、植物工場の多くは(1)コストが高い(2)栽培法・経営ノウハウが未熟(3)露地野菜との差別化ができない――の三重苦に喘あえぎ、赤字経営に陥って撤退・倒産するケースも珍しくはない。

~~略~~

約420社のうち人工光型の約200社について、植物工場研究の第一人者、古在豊樹・千葉大学名誉教授は、「全体のうち15%は黒字だが、単年度では黒字でも工場建設費の減価償却がまだなのは10%。残りの75%は赤字」と指摘した。太陽光型はというと、さまざまな報告で40~50%は赤字と指摘されており、たとえ難度は低くても、環境制御は難しいようだ。 結局、01年に撤退したオムロンに始まり、居酒屋チェーンを運営する親会社を持つエコファーム・マルシェは10年に解散。産業用LED照明のシーシーエスは12年に撤退するなど、撤退・倒産が珍しいものではない。

「読売新聞」より:リンク切れ

そして、「期待の星」みたいに言われてきた農業工場も順調ではない。企業参入のハードルを下げたけれど、結局のところ生き残ることができるのは、多大な労力をかけてノウハウを獲得できる一握りの企業だけで、なかなか「将来性」というところまでは繋がらない。

かつて、SF小説などで描かれた、「食料工場」で「安定的に農作物を作る」なんてのは、まだまだ夢のまた夢と言ってもよいような状況だ。

だが、それでも、旧態然とした農業の手法だけではなく、新たな農業の形も模索することは、やらないと日本の未来が無いような状況を迎えている。

バター業界に見る補助金行政の歪み

実のところ、農作物だけではなく、上にあげた漁業や、言及はしなかったが畜産業など、課題山積なのが日本の食を取り巻く環境である。

「職」を取り巻くと言ってもいいかもしれない。

バター輸入枠「50%増」のワケ 2019年度は2万トン

カテゴリ:暮らし2019年1月30日 水曜 午後6:58

また、バター不足に見舞われるからなのだろうか。 農林水産省は30日、2019年度のバターの輸入量を大幅に増やすと発表した。 こんがりと焼かれたアツアツのトーストの上で、とろりととろけるバター。 東京都内のスーパーの乳製品のコーナーでは、バターは食塩不使用のものは3つだけ、そして食塩入りのものは、品切れになってしまっていた。

リンク切れ

このニュースは、「バター不足再び」という煽った内容なのだが、しかし、掘り下げ不足は否めない。

バター不足の元凶。農水省バターマフィアのセコ過ぎる利権構造とは?

2015.01.24 前2回

(『バター不足の怪。牛乳やチーズは山ほど売ってるのに、なぜ?』『バター不足は農水省による「チーズの作らせ過ぎ」が原因』)では、バター不足が生じる下地ともいえる農水省の補助金制度について説明したが、今回は国産バターの不足を補うことができない、特殊なバターの輸入制度について、農業ジャーナリストの浅川芳裕氏が解説する。

「ハーバードビジネス」より

なぜかというと、小麦にもこの「マークアップ」という謎の制度が採用されていて、業界を腐敗させているのだが、バターもまた利権構造に絡めておかしなことになっているのである。

日本の行政に携わる小役人達は、こうした愚策が大好きだが、これは将来的にも宜しくない。

今変わらなければ

僕自身は、企業が農業に参入することそのものに否定的な意見を持っているわけではない。また、「農業工場だから」ということも言うつもりはない。

ただ、「農業工場」が従来の農家を駆逐する未来を見たい訳ではない。

しかし、そもそも農業は取り巻く環境が非常に厳しい現実があるし、それは畜産業も、漁業も同じだ。色々なトライをするしかないのである。

そして結局、小麦にせよバターにせよ、政治的な「利権」が、価格や生産量に大きな影響を及ぼしていて、官僚が食い物にしている部分もあるのだ。

だから、将来的なことを考えると、「何を守って」「何を切り捨てるのか」ということは、しっかり見極める必要がある。農家の利益をどうやって守るのか?企業を参入させてでも、日本の「食」を守れるのか?その辺りをしっかりと見極めることこそが、日本の農業の未来に大きく影響するのだと思う。

そして、その一例が岩盤規制で、岩盤規制が日本を滅ぼす、というのは、現実の問題としてとらえねばならず、それを打破しようとすると、一昨年、去年と、大騒ぎしたモリカケ問題みたいなことになる。

しかし、血を流してでも、勝ち取らねば日本の農業の未来は無いし、漁業、畜産業も悲惨な未来展望となるだろう。

残念なことに工業ですらそうなっている(まだ、金があるだけマシの様に見えるが、白物家電が日本から駆逐されてしまったように、かなり絶望的である)のだから、笑えない。

国民として、政治家に何を求めるのかは、今一度考えてみるべきなのだと思う。

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