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メディアが煽った「令和の米騒動」を振り返る

安全保障
この記事は約8分で読めます。

先ずは、「新聞」を騙るアジビラからの引用をしておく。

新米が出たのに価格は高いまま、なぜ? 消費者、飲食店、農家…みんなが悲鳴、コメ政策の転換期では

2024年10月30日 12時00分

スーパーの棚が空になり「令和の米騒動」と称されたこの夏のコメ不足。新米が出回り、品薄は解消した後も価格は高止まりし、消費者の負担感は増している。国は「食料安全保障の確保」をうたうが、高齢化やコスト高に直面する農家からは「耐えられない」との声も。持続可能なコメ政策とはどうあるべきか。

東京新聞より

このサヨク御用達のアジビラは、「コメ政策の転換をしろ」と喚いているのだが、説得力は無いなぁ。

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政策が良いとは言えないが、戦犯はメディア

今回の騒ぎはメディアの責任が大きい

そもそも、「令和の米騒動」などという大層な名前を付けているが、結果から見れば別に「コメが足りなくなったわけではない」ということになる。メディアが騒いだせいで、需要が唐突に増えたことが流通を混乱させたという話であった。

そこは先ずメディアが反省すべきだろう。

そう考える根拠はこちら。

農林水産省のサイトより

これは農林水産省のサイトで説明する、全国のスーパーにおけるお米の売れ行きを示すグラフである。

赤が令和5年~6年のデータで、青と緑が過去のデータである。POSデータとは、レジで取得された販売記録データのことなので、大まかなお米の売れ行きを示していると考えて良い。

見て分かるように、今年は5月頃からお米の売り上げ量が例年に比べて増えていて、7月~8月は唐突に売り上げ量が跳ね上がっている。そして9月以降が大幅に凹んで10月に徐々に回復基調にある事を示している。

前回の記事でも説明したが、どうやら5月頃から「米不足」になるという情報が飛び交ったせいで、業者が買い占めを増やしたという風に理解するのが良さそうである。

そして、決定的に不足した7月~8月はメディアが大騒ぎしたせいで、買い占める人が激増し、スーパーの店頭からお米が消えたと。しかし売り上げ量を見ると7月~8月は激増している。つまり、商品は出回っていたのだ。

在庫状況は

さて、ここでもう一つ紹介しておきたいのがお米の在庫状況である。コレは前回の記事でも説明したが、6月までのデータしかなかったので最新のモノを引用しておこう。

9月末時点での民間在庫の年単位での比較だが、150万tあるということになっていて、確かに例年に比べて少な目ではある。前回引用したNHKのグラフと齟齬があるのは気になるが、今回のデータを見る限り過去にも経験した程度の在庫量で、特に騒ぐ必要性を感じない。

「政府備蓄を放出しろ」などと騒いでいた人もいたが、コレを見る限りはその必要性はなかったことが分かる。

じゃあ、何だったんだ?という話である。

お米の価格高騰の理由は

なお、冒頭のアジビラは、お米の価格が高騰したことに怒りを滲ませている。

9月以降、スーパー店頭に新米が出回っても、価格は高止まりしている。総務省が発表した10月の東京都区部の消費者物価指数で、コメ類は前年同月比で62.3%の上昇となり、比較可能な1971年以降で過去最大の上がり幅だった。生産コストの増加が価格に転嫁されたという。

東京新聞「新米が出たのに価格は高いまま、なぜ?」より

確かに価格高騰は庶民としては苦しいところではあるが、しかしコレまで燃料費などが高騰してきていて他の商品の価格も値上げされている中で、お米の価格だけが据え置きというのはあまりに不自然である。

前年比で6割以上の上昇というのは少々困った話だが、コレまで価格転嫁されてこなかったことを考えればある程度の価格上昇は仕方のない側面はあるのだ。

そして、お米はJA等が農家から買い付けをして値段が決定されるのだが、収穫時期に大騒ぎして品薄感から高値を付けて買い取りしたのだから、当然ながら高値で売る結果になる。

お米の流通量が増えたからといって、直ぐに値下がりするような構造では無いのである。このアジビラ、そういう構造を欠片も説明しやがらない。

では、来年どうなるのか?といえば、恐らくは値下がりはしない。それはアジビラと同じ予測である。

ただ農水省の農業経営統計によると、水田で稲作などを行う農家の収益から経費を差し引いた農業所得の平均は2021、22年と2年続けて年間1万円。「農家の規模による差は大きいが、時給にすると10円。来年もコメが不足するはずで、作付面積を増やせば価格が暴落する。高齢化が進み、資材や光熱費は上がる一方でこの乱高下は耐えられない」と利益の出ない現状を嘆く。

東京新聞「新米が出たのに価格は高いまま、なぜ?」より

米農家が儲からない構造になっている事こそが問題なので、米作を止めてしまう農家が増えれば価格は高騰するしかないのである。

食の民主主義?

で、アジビラの提唱する解決策はこちら。

内向きの「食料安保」が強調される現状に、大野氏は危機感を覚える。「集団的自衛権や敵基地攻撃能力の保有などが議論される中で、農も食も軍事体制に組み込まれようとしている」。気候変動やウクライナ侵攻などで、世界各地の農業が影響を受けているとし、こう訴える。「一国だけを見て食料自給率や安全を強調することがいいのか。やるべきなのは食の囲い込みではなく、人権を考え、飢餓や紛争への道を回避する『食の民主主義』のための努力ではないか」

東京新聞「新米が出たのに価格は高いまま、なぜ?」より

何言ってるんだコイツ。日本語が書かれているはずなのに、何をしたら良いといっているかはサッパリ不明である。誰だよ、大野。日刊ベリタの農業ジャーナリスト?何をアホな事を言っているのやら。

今回の令和の米騒動の犯人はメディアで、5月頃からせっせと「米が値上がりする」「米不足になる」と騒いでいた結果ではないか。

この後に書かれた「デスクメモ」は更に意味不明だが、結局、「米政策の転換期」の根拠や、どう転換すべきとかいう方針は何一つ示されていない。

唯一、ソレっぽいことを書いているのが、キヤノングローバル戦略研究所の山下氏の「緊急政策提言」なのだが、コレを紹介したいならもうちょっと丁寧に書こうよ。

この人もメディアの責任は一切言及していないので、提言自身は注意して読む必要はあるのだが。

減反政策は、消費者に大きな負担を課す農業保護政策である。EUは農家の所得を保護するために、日本のような高価格維持ではなく、農家への直接支払いという政府からの交付金に転換している。米価を下げても主業農家に直接支払いをすれば、主業農家だけでなくこれに農地を貸して地代収入を得る兼業農家も利益を得る。減反を止めてコメの生産量が増加すれば農村の雇用機会も増え、地域の振興にも役立つ。

減反を止めれば、コメ不足は解消できるだけでなく食料安全保障にも貢献する。国内で1,700万トン生産して1,000万トン輸出していれば、国内の需給が増減したとしても輸出量を調整すればよいだけである。平成のコメ騒動も冷夏が原因と言われているが、根本的な原因は減反のやり過ぎである。

キヤノングローバル戦略研究所のサイトより

言っていることはソレほど間違っていないように思える。

減反政策は廃止されたが

なお、「減反政策」というのは表向き廃止されたことになっている。

減反政策とは? 廃止から4年、米農家の現状と今後の展望を考える

2022/03/22

生産過剰となった米の生産量を抑制するために1971年から本格的に実施された減反政策は、2018年に約50年の歴史を経て廃止されています。減反政策が廃止されたことにより、各地で米余りの状態が見られるようになってきました。今後、米農家は何をするべきなのか、現状を分析して解説します。

~~略~~

そのため、2021年の時点では自治体や農協などの団体が中心となり、米の生産量の目安を農家に提示して、急激な増産を回避するように調整しています。米農家自身が生産量を調整する必要が生じてきたともいえるでしょう。

minorasuより

だが、結局のところ生産調整をやっているので、減反傾向になっていることは事実である。だから、積極的に輸出していこうね!という提言には基本的には賛成したいのだが、そもそもの問題は米農家に多額の補助金を給付して、米余りをコントロールしていることが問題なのである。

米農家が儲かる構図にしなければならず、儲からないから単価の低い飼料用米を作る農家も増えている模様。

政策ミスがあるというのは事実なんだけど、米の価格が下がることと今後の農業政策はバランスしないので、残念ながら米の価格はこのまま下がらないだろうと思う。寧ろ、下げると更に農家の実情が悪化してしまうので、当面は維持せざるを得ないだろう。

米の輸出について

さて、キヤノングローバル戦略研究所の山下氏の話で、「米を輸出していけ」ということがあったんだけれども。

農林水産省のサイトより

輸出が伸びているか?といえば、多少は増えている。2023年に3万7186トンと、10年前の約12倍に増えているという事実はあるのだけれど、令和5年産で716万5,000トンの生産量を誇る日本としては、まだまだ少ないと言えよう。

そして、恐らくは減産していくスピードに見合わない感じではある。もっと、セールスしてもイインジャナイかな。輸出額で行けば、日本酒がぶっちぎりで多いのも面白いね。米は加工品の方が高付加価値を付けて売れるのだから、その辺りをもっと政策的に進められるとイイヨね。

農水省のサイトより

作付面積は減る一方だけれども、水田稲作は日本の原風景に関わる事でもある。今少し無理してでも米の消費を増やすような方向で政策を打っていくべきではないのだろうか。

とはいえ、ご飯を食べない人が増えている実情は変わらない。「米を食べたら太る」とか、アホな言説(糖質を多く含むため太ると誤解されているが、良く噛んで食べることはダイエットに繋がる)が出回っていることもあって、その辺りの食育も含めてしっかりやっていくべきでは無いだろうか。

当然、農水省もその辺りは真剣に考えているみたいだけれど、もっと大々的にやって良いと思う。

特集「朝からお米をおいしく食べたい!」:農林水産省
aff2023年6月号/特集「朝からお米をおいしく食べたい!」/「aff(あふ)」は、現場リポートから身近な食の話題まで、消費者の生活に役立つ情報をお届けするWebマガジンです。

我が家も人のことを言えないので、少し考え直したい課題である。

コメント

  1. 河太郎 より:

    食の民主主義?
    大野おまえアホなのか? そうなのか?
    歴史上、食物がなくなると争奪戦になり
    戦争が起きるのは人類史の鉄則!
    んで口減らしされて食物が行き渡るようになるわけすよ。乱暴な理屈だけれど。
    近世近代以降は貿易、輸送手段、決済法、などが発達し、そう単純じゃなくなりましたが、今もどこかにしわ寄せする事で飢餓を迂回、ババ抜きしとるのは変わらない。
    そう考えた時に、よりによって食の民主主義? お花畑にもほどかあるわ!!
    ロシアかウクライナの穀物輸出を封じたら、中東や西アフリカ諸国の治安が液状化して、ワグネルが大儲けしてる!
    つまり食料は戦略物資であり、である以上ほ兵糧攻めの武器と用いられるのは理の当然。何を脳内お花畑な事を言ってる💢💢
    んなヒマあったら、祖国か有事に食料を調達する方法でも考えろ!というのです。
    だからオレはリベラルぶった野郎が嫌いなんですよ。

    • 河太郎 より:

      一番に良い人材とは、
      有能で手抜の上手いやつ。
      二番目は有能で勤勉で真面目なやつ。
      即時射殺すべきは無能でお花畑なやつ。
      大野は3番目と推測されます。

      • 七面鳥 より:

        横合いから失礼。
        ゼークト先生の四分類ですね、七面鳥も大好きなやつ。
        https://schoo.jp/biz/column/1762
        「無能な働き者」は殺すしかないのですが、そう言う奴ほど声がデカくてマスゴミ受けがいいんですよね。
        まあ、マスゴミが「無能な働き者」の巣窟ですからね……

        • 河太郎 より:

          そうっすよね。ロシアやメキシコで調査報道するジャーナリストが殺されると哀しい気持になりますが、日本のマスゴミみてると、
          二、三人ぶっ殺した方が良いのでのいかと想うんすよね。
          天安門事件の時に命懸けで報道したのはフリーランスだし、いつもそう。テレ東で中国での拘束回数21回の猛者なディレクターがいるけれど、彼の手記で感動したのは、中国で報道の自由を手に入れようと、ウイグル弾圧などの取材を手助けする中国スタッフの心意気でしたかね。彼らの多くは今は失職とか行方不明でせうが……
          ああいうガッツあるジャーナリストなんて日本の大手メディアにはいますまい!
          オウムのテロ事件だって、第7サティアンのサリン製造施設をスクープしたのはフランス記者だった。新聞もテレビ局も潰れりゃ良いんです。

    • 木霊 より:

      謎ワード「食の民主主義」というのは、実に意味不明でして。
      食料政策は国家の根幹に根ざす重要課題なのですから、おかしなイデオロギーにとらわれず、多くの人々の腹を満たすことが出来るような安定供給というのが大前提ですね。電気でも似たような話になっていますけれど。