狙撃の話を調べていたら、とんでもない事件のニュースが流れてきた。
スロバキア首相が撃たれ搬送、生命の危機…容疑者は70代との報道も
2024/05/16 00:16
欧スロバキアからの報道によると、ロベルト・フィツォ首相が15日、中部ハンドロバで銃撃され、病院に搬送された。スロバキア政府によると、複数回にわたって撃たれ、命の危険にさらされているという。狙撃犯は現場で拘束された。
讀賣新聞より
老人が首相を狙撃?!ショッピングモールの元警備員が実行犯?
一国のトップが狙撃される事態に
スロバキアの首相
スロバキアの治安は一体どうなっているのか。

地理的にはウクライナのお隣の国家で、ロシア軍によるウクライナ侵攻で相当緊張している国家である。
フィツォ氏は政府の会合に出席した後、市民が多数集まる会場付近で銃撃された。地元メディアは、警護員(SP)が負傷したフィツォ氏を抱えて黒塗りの車に乗せたり、狙撃犯とみられる人物が後ろ手に手錠をかけられたりする映像を流している。70歳代の男が狙撃したとの報道もある。
讀賣新聞「スロバキア首相が撃たれ搬送」より
この首相、実は選挙においてウクライナへの軍事支援を反対して当選したという経緯の持ち主である。
ウクライナ支援への反対派優勢、スロバキア総選挙の行方に世界的関心…元外相「ロシアは我が国を悪用」
2023/09/30 06:50
中欧スロバキアで30日、国民議会(一院制、定数150)選挙が行われる。世論調査ではロシアの侵略を受けるウクライナへの軍事支援に反対する左派の最大野党「スメル」(道標・社会民主主義)が優勢だ。
~~略~~
争点の一つがウクライナ支援の是非だ。人口約540万人のスロバキアは欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の加盟国で、ウクライナに戦闘機や地対空ミサイルなどを供与してきた。スメル党首のロベルト・フィツォ元首相(59)はウクライナへの武器供与は「紛争を長引かせるだけ」として見直しを主張する。ウクライナのNATO加盟を支持せず、対露制裁にも反対している。
讀賣新聞より
もともとチェコと一緒にソ連に属していたスロバキアは、社会主義経済から自由経済への転換を目指したが、上手いこと出来ずに経済的に苦しんでいる。
そこで、ロシアへの擦り寄りの姿勢を見せて当選したということなんだよね。「我々の生活が苦しいのに、ウクライナへの軍事支援など無理だ」というロジックらしい。
路線変更
ところが、ロシア寄り戦略はイマイチ上手く行かなかったようで。
スロバキア首相、ロシア寄りから態度急変
2024年4月13日 14:13
スロバキアのロベルト・フィツォ(記事&category[]=ワールドカップ&category[]=五輪”>Denys Shmyhal)首相との会談後、「ロシアはウクライナで軍事力を行使し、国際法に甚だしく違反している」と述べ、ウクライナには支援と連帯が必要だと付け加えた。
AFPより
おおい、その発言は大丈夫なのか?

意見を翻したのに反発は受けなかったのか?
スロバキアの「ハンガリー化」に懸念 親ロシア姿勢、強権統治に批判
2024年03月23日20時22分配信
東欧スロバキアのフィツォ政権に対し、強権統治を敷くハンガリーのオルバン政権と同様、欧州連合(EU)の結束を脅かしかねないとして懸念が広がっている。25日で就任5カ月となるフィツォ首相は、ロシアによるウクライナ占領を認める形での停戦を主張。国内で進める司法改革も「法の支配」を弱めると批判を浴びている。
「非常に重要な問題を巡り、意見の違いがある」。チェコのフィアラ首相は6日、かつて同国と連邦を形成し、分離後も緊密な関係を維持してきたスロバキアとの政府間対話を中断すると表明した。チェコはウクライナ支援を強力に進めており、スロバキア外相が2日にトルコでロシア外相と会談したことを問題視した。
時事通信より
3月まではこんな風に批判されていたのに、一体何が?!
スロバキアにみる、ポピュリストが跋扈する時代
2024.04.23 15:15
AFP通信は今月、スロバキアのロベルト・フィツォ首相が11日、ウクライナ侵攻を巡る従来のロシア寄りの発言を改め、ウクライナの「領土保全」を尊重した平和的解決を呼びかけたと伝えた。フィツォ氏は昨年10月、ウクライナに対する軍事支援の停止を表明した。今年1月には、戦争終結にはウクライナによるロシアへの領土割譲が必要だとも発言していた。4月の発言は「ロシア寄りからの修正」とも受け取れるが、スロバキアの隣国チェコに在住する細田尚志チェコ国防大学インテリジェンス研究所助教は「フィツォ氏は態度を変えていません」と語る。
Forbesより
Forbesによると、フィツォ氏はポピュリストで、世論に併せて意見をコロコロ変えるタイプらしい。スロバキアの鳩山か?!
陰謀論に目覚めた老人の犯行か
犯人は71歳
さて、事件は瞬く間に世界に報じられ、犯人の情報もチラホラと出始めている。
スロバキア首相、銃撃され重体 容疑者は71歳作家
2024年5月16日 9:21
スロバキアのロベルト・フィツォ(記事&category[]=ワールドカップ&category[]=五輪”>Handlova)で銃撃された。同国政府によると、フィツォ氏は数回撃たれて負傷し、深刻な容体。現場で取り押さえられた容疑者は、71歳の作家だとされる。
フィツォ氏が搬送された中部バンスカービストリツァ(記事&category[]=ワールドカップ&category[]=五輪”>Matus Sutaj Estok)内相は「首相の容体は深刻で、生命が危険な状態。まだ手術室にいる」と語った。また、容疑者の身元について、メディアの報道通り71歳の作家だと認めた。
AFPより
71歳で自称作家?!他の報道だと、ショッピングモールの元警備員でもあったようなので、売れない作家という感じなんだろう。
容疑者は8年前にインターネットに投稿した動画で「世界には暴力と武器があふれている。人々は頭がおかしくなっているようだ」と述べていた。
また、この動画の中で移民や「憎悪と過激主義」への懸念に触れ、欧州各国の政府には「この混沌(こんとん)に代えて打つ手がない」とも話していた。さらにレビツェで「暴力反対運動」という団体を立ち上げたとも述べていた。
AFP「スロバキア首相、銃撃され重体 容疑者は71歳作家」より
「暴力反対」を主張しながら、首相を銃撃した。わけが分からないよ。フィツォ氏の容態は、一時期危険な状態だったようだが、生命の危機は脱したと報じられている。

そして、この報道の最後の部分で、非常に疑わしい話が。
ロシアのプーチン大統領は「フィツォ首相は勇敢で強い意志を持った人物だ」とした上で、銃撃事件を「恐ろしい」犯罪と非難した。
ロイターより
プーチン氏って、何かやらかすと饒舌に喋っちゃう傾向にあるんだよね。そして、フィツォ氏を褒めているところが怪しい。
まあ、現時点で何か分かっているわけではないのだが。
アマチュア詩人がテロリストにジョブチェンジ
こちらの記事では、犯人の属性がアマチュア詩人にジョブチェンジしている。ふーん。
容体回復の兆候 政権批判の詩人を拘束―スロバキア首相銃撃
2024年05月16日10時07分配信
スロバキアのフィツォ首相が15日午後、中部ハンドロバで銃撃され、搬送先の病院で集中治療を受けた。
~~略~~
フィツォ氏は左派「スメル(道標)」を率いて昨年9月の総選挙を制し、3度目となる首相に就任。ロシアの侵攻を受けるウクライナへの軍事支援を止めたほか、最近はメディアや司法の改革を推し進めていた。野党や欧州連合(EU)は、報道の自由や法の支配が損なわれると懸念を示し、国内では抗議活動が活発化していた。
時事通信より
政治的な理由で銃撃されたということになっているが、ロシア絡みの動きかと勝手に推測していたけれども、どうやらメディア改革や司法改革でも批判を受けていた模様。
それにしてもEUから「報道の自由や法の支配が損なわれる」という批判ねぇ。EUは全体的に左寄りなので、フィツォ氏が何を目指していたのかは、この記事からは読み取れない。とはいえ、暴力で何かを解決しようとしたテロリストの肩を持つ気にはまったくなれない。
追記
これはまた、結構ヤバイ話になりそうだね。「目覚めた老人」とか書いたけれど、笑い話ではなさそうである。
Atentátník sympatizoval s proruským hnutím Slovenskí branci a Kotlebou
16.5.2024
Pokus o atentát na slovenského premiéra Fica je zatím plný otazníků. Prokremelští aktivisté nejprve lhali, že za útokem může být člověk z Ukrajiny. Když se ukázalo, že atentátníkem je slovenský občan Juraj Cintula, především členové vládní koalice začali věc svádět na opozici a média. Mezitím se však ukázalo, že útočník minimálně okolo roku 2016 sympatizoval s někdejší proruskou polovojenskou skupinou Slovenskí branci (SB). Podle projektu vsquare.org vůdcům této skupiny poskytli výcvik bývalí příslušníci ruských speciálních jednotek.
~~対訳~~
暗殺者は親ロシア運動スロバキア徴兵とコトレバに共感していた
スロバキアのフィコ首相暗殺未遂事件は、いまだに疑問符だらけだ。親クレムリン派の活動家たちはまず、ウクライナ出身者が背後にいるのではないかと嘘をついた。暗殺者がスロバキア人のジュライ・チントゥラであることが判明すると、特に連立与党のメンバーは野党とメディアを非難し始めた。しかし、その間に、少なくとも2016年頃には、爆弾犯が旧親ロシア準軍事組織「スロバキア・コンスクリプツ(SB)」に共感していたことが判明した。vsquare.orgのプロジェクトによると、このグループのリーダーは元ロシア特殊部隊のメンバーによって訓練されていた。
manipulatori.czより
引用している記事が正しいのかはサッパリ分からないが、自動翻訳によれば恐らくは今回の犯人の背景を解説する記事のようだ。

この中央の老人が今回の主犯らしく、「スロベンスキー・ブランチ」という親ロシア派団体に所属していたのだとか。なお、この両端の若者は軍属ではなくコスプレなんだそうな。
追記2
日本の報道でも、チラホラ、テロリストの背景について報道するようになっているようだ。
スロバキア首相銃撃で内相「大統領選の結果に不満」
2024年5月17日 10:13
東欧スロバキアのフィツォ首相が15日に銃撃された事件で、警察は現場で拘束した男(71)を殺人未遂容疑で逮捕し、本格的な捜査を始めた。
~~略~~
シュタイエシュトク内相は、男が反政府運動に参加していたとし「(4月の)大統領選の結果に不満を持ち、行動を過激化させた」と述べた。大統領選ではフィツォ氏に近いペレグリニ元首相が勝利した。
日本経済新聞より
ただ、まだ表記にブレがあるんだよね。
フィツォ氏が「ロシア寄り」という表現を使っているところが多いけれども、集めた情報で判断する限り、「ロシア寄り」よいうよりはポピュリストであり、報道規制などの方向で政策を進めようとしていた事も分かっている。
反政府運動であれば、「スロベンスキー・ブランチ」という親ロシア派団体との関係がよく分からない事になってしまう。また、フィツォ氏が態度を変えた理由に関しても言及がないことは不自然である。
今のところ、これに関する日本の報道は注意しながら見た方が良いだろう。
追記3
さーて、おかしな話がまた出てきたぞ。
ベルギー首相、ラジオで「首相を撃て」発言の司会を告発 スロバキア首相銃撃で余波広がる
2024/5/17 11:06
ベルギーのデクロー首相は16日、6月の総選挙を前にラジオで「首相を撃て」と発言した司会者を告発した。首相の広報担当者がX(旧ツイッター)で発表した。スロバキアで起きたフィツォ首相の銃撃事件を踏まえ、司会者が暴力をあおったと批判している。
産経新聞より
このニュース、冗談めかして発言した「だけ」なのかと思ったら、どうもそうでもないようなのだ。
このラジオはベルギー北部オランダ語圏の地方局。公共放送によると、司会者は15日にスロバキアの事件に言及し、「デクロー氏を撃とうと考えながら、警備のせいで実行できずにいる人たちよ。首相銃撃は可能なことが分かった。やりなさい」と述べた。
発言は交流サイト(SNS)で拡散し、ラジオ局は「場違いな発言。司会者はふざけて言ったとしており、聴取者に謝罪した」とする声明を出した。司会者は停職になったが、首相側は「暴力扇動(者)は罰せられねばならない」として、警察に届け出た。選挙運動は予定通り続けるとしている。
産経新聞より
司会者は冗談を言っている感じだったようだが、SNSで拡散され、騒ぎになった模様。恐らくは発言が切り取られて拡散されたのだろう。
空気が読めずに、言ってはダメな発言までやっちゃう人というのは、世界中にいるんだね。
コメント
こんにちは。
>日本の報道でも、チラホラ、テロリストの背景について報道するようになっているようだ。
それはそれで結構なのですが……
当初、撃たれた首相が、「親露」だって報道は山ほど見かけましたが、「つい最近まで親露、ごく最近鞍替え」をほとんど見ないんですよね。出てましたでしょうか?
どうしても「マスゴミは、『親ウの犯行』を匂わせたい」と裏読みしてしまうのは、七面鳥の心が曇ってるからでしょうか?
こんにちは。
ご指摘の通り、外国メディアしか鞍替えの話をしていないんですよね。
取材力がないという以前の問題である気がします。取材力があるなら、「そういう噂はあるが事実ではなかった」と報じないと。
こんにちは。
>「首相を撃て」発言
自国内で、自国の政治家を撃ってる分には、まだいいです(良くないけど)。
※安倍氏殺害犯を、七面鳥は死んでも許さない。
セルビア人がオーストリア皇太子をボスニアで暗殺、みたいな事が起きなきゃいいのですが。
※イラクでヘリごと大統領が墜とされたようですし……
こんにちは。
「首相を撃て」って冗談でも発言してしまう辺りが、どうしようもありません。
そして、それは日常的に考えているから出てくる発想なのでしょう。
イラクの件はまだ、情報が出てきていないので何とも。事故っぽいですけどね。