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ロシア軍、ザポリージャ原発への給水をするダムを破壊

ウクライナニュース
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もう、やりたい放題だな。

ロシア軍 ザポリージャ原発に冷却水供給のダムを爆破か 洪水の可能性

6/6(火) 13:53配信

ウクライナ軍は6日、ロシア軍がザポリージャ原発の冷却水を供給している川の下流にあるダムを破壊したと発表しました。冷却水の取水に影響が出る可能性があります。

ABEMA Times

原発を破壊することに繋がるような行為か、許し難いな。

国際的に避難される行為

ザポリージャ原発の占拠

ロシア軍兵士がザポリージャ原発を占拠されて1年あまりが過ぎた。

「残る核と放射線リスク」 ロシア軍が占領するザポリージャ原発の今

2023年5月5日 7時00分

ロシア軍がウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の占拠を続けています。欧州の安全保障を中心に最近は中ロ両国の研究を続けているチェコのシンクタンク「ヨーロピアン・バリューズ(European Values)」が、ロシアによるウクライナ侵攻1年にあたる今年2月、報告書「ウクライナ戦争の教訓」を発表しました。ヤコブ・ヤンダ所長が、ザポリージャ原発の現状について語りました。

~~略~~

(ウクライナ国営原子力企業の)エネルゴアトムのペトロ・コティン総裁によれば、原子炉6基は稼働していません。4基は冷温停止、2基は高温停止の状態にあります。ロシア軍によって占拠されたため、発電所のすべての放射線安全基準が守られない状態になっています。

朝日新聞より

何度も危ない時期があったようだが、取り敢えずは現状でもなんとか事故には至っていないようだ。2基は高温停止の状態であるようだ。高温停止状態では、炉心は未臨界状態となっているものの、炉心崩壊熱 が発生している状態であり、高温停止後も蒸気発生器を用いて炉心崩壊熱を引 き続き除去し、1次冷却系統を減圧・冷却していく必要がある。

当然ながら、ロシア軍に正しい手順での減圧・冷却が出来るはずもない。当然、長期間高温停止の状態で維持することが好ましいとは言えない。

ダムや原発の破壊

さて、戦時下におけるダムの破壊だが、ロシア軍が行ったとされている。tweetは、堤が破壊されたカホフスキー貯水池の様子である。

しかし、ジュネーヴ協定(1954年7月)の第1追加議定書の54条、56条の条文規定において、戦時における水への攻撃は禁止されている。

まあ、このような規定があったにも関わらず、湾岸戦争でアメリカ軍はやらかしてはいるのだが、一応「誤爆」とかいう話になっている。

ともあれ、ダムの破壊行為自体が国際法上で問題となる。更に、原発の占拠や破壊行為も、ジュネーヴ協定の第1追加議定書の56条の条文規定において、禁止されている。

https://www.cistec.or.jp/jaist/event/kenkyuutaikai/kenkyu34/00-01fukui.pdf

この点だけでもロシア側の行為を養護できない。

が、そもそもロシアの力による現状変更そのものが養護できない行為なのだから、今更何かが増えたところで大きく変わる話ではないかもしれないが。

冷却水が必要

そして、今回のこの件は、そういった話とも趣が異なる。

ロシア軍の支配下にあるザポリージャ原発はこのダムから冷却水を取水していて、ダムが破壊されれば貯水量が下がり、冷却水が確保できなくなるおそれがあります。

ABEMA Times

原子力発電所は、稼働していなくとも冷却水が必要であるため、多くの原子力発電所は内陸部であっても湖などのほとりに建てられている。日本の原子力発電所はすべて海岸沿いだしね。

このような条件は、冷温停止状態にあっても高温停止状態にあっても同じである。

ザポリージャ原発の重大事故回避を呼びかける―中国外交部

2023年6月3日(土) 23時20分

外交部の毛寧報道官は2日の定例記者会見で、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長のウクライナ・ザポリージャ原子力発電所の情勢に関する発言に言及し、当事者は人道主義の精神と科学的な理性を堅持し、意思疎通と協力を保ちながら、原子力安全条約などの国際法を厳守し、原発施設に危険を及ぼすようないかなる行為も回避して、重大事故の発生を防ぐために最善を尽くすよう呼びかけました。

レコードチャイナより

支那は数日前にこのような発言をしていたが、もしかしたら何らかの情報を得ていたのかもしれないね。

かつて、スターリンが第二次世界大戦中の対ドイツ戦の折りにダム崩壊に走ったらしい。プーチンはそれをなぞったという訳である。この蛮行は、ウクライナに対して人的、物的に多大な損害を与えるだろう。そして、ウクライナの攻勢を挫く狙いがあるに違いない。

支那はそれを黙認したのだから、同罪と言わざるを得ない。事前に知っていたら、ではあるが。

追記

ロシアは、「ウクライナ軍がやった」などと寝言を言っているな。

ダム決壊「ロシアの侵略の結果」と国連事務総長 安保理会合も

2023/6/7 08:19

国連のグテレス事務総長は6日、ウクライナ南部カホフカ水力発電所のダム決壊について、ロシアのウクライナ侵略に伴う「破滅的な結果」と批判し、民間人や民間インフラへの攻撃をやめるよう訴えた。安全保障理事会は6日、緊急公開会合を開催、ウクライナとロシアが互いに「破壊したのは相手だ」と非難した。

産経新聞より

いや、誰が見てもロシア側の攻撃だろう。

ウクライナ軍が自作自演でダムを破壊したとしたら、自国の国民を自作自演によって危険に晒すということになる。そんな馬鹿な話は無いのであって、ロシア側の言い分に説得力が無いこと甚だしい。

ただ、気になる話も出ている。

翻訳すると、こんな感じになる。

2023年6月5日現地時間午後12時15分に@Maxarによって収集されたノヴァ・ハコフカダムの高解像度衛星画像は、道路と水門の一部が最近損傷/破壊されたことを明らかにしています。最初の画像は違いを示すために 5 月 28 日のものです。

このTwitterの言及する意味は、「道路と水門の一部が最近損傷」した可能性、つまり、老朽化による破壊の可能性を示唆している。「破壊された」ということであれば、戦争の影響と言うことになるが、損傷したということになると、老朽化ということは考慮する必要がある。尤も、老朽化などといってもコンクリート構造物の破壊は造りが粗雑でなければ100年単位で耐えるのだから、意図的な破壊の可能性のほうが遥かに高い。

仮に、老朽化であったにせよ、占領していたロシア軍にその責任の一端はあることになる。意図的に放置したために、あるいは管理不足で破壊に繋がったというシナリオも考えられるから。

追記2

どうやら、問題は回避できるようだ。

ザポリージャ原発、ダム決壊による問題は「回避可能」

2023.06.07 Wed posted at 09:56 JST

ウクライナ南部ヘルソン州ノバカホウカにあるダムが決壊したことを受けて、ウクライナ当局は、ザポリージャ原子力発電所が必要な対応を取れば、ダム決壊による問題を回避できると述べた。

CNNより

ウクライナ当局も、別の報道ではIAEAも、「回避可能」という報道をしている。一先ずは、ザポリージャ原発の問題だけは回避できそうである。

ただ、ダム決壊による影響は多岐にわたっているようだ。

ダム決壊で1万7千人避難、死者多数の情報も…ウクライナがICCに捜査要請

2023/06/08 00:29

ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所ダム決壊による洪水は7日、下流の被害を拡大させた。ウクライナ当局は4万人以上が洪水の危険にさらされ、1万7000人以上が避難したとしている。ウクライナの検察当局は同日、発電所を占拠するロシア軍が爆破したとして、国際刑事裁判所(ICC)に捜査を要請した。

讀賣新聞より

死者も多数出ているし、農地に対する影響も出る模様。

ウクライナ、ダム決壊で農地「砂漠化」も 農業省が懸念

2023年6月8日11:23 午前

ウクライナ農業省は、南部のヘルソン州で6日に起こった巨大ダムの決壊により農地が水没し、少なくとも50万ヘクタールの農地でかんがい農業ができなくなり、土地が「砂漠化」する恐れがあると指摘した。

ウクライナは小麦やトウモロコシなど穀物の主要輸出国。

ロイターより

被害は甚大なものになりそうである。

そうなると、犯人捜しという運びになりそうだが、しかしこの場合、ウクライナ側もロシア側も「自分に責任がある」とは絶対言わないだろう。

ウクライナ軍、ロシア軍のどちらの作戦にも大きな影響は避けられない。

ダムの建設は1950年9月に開始され、最後の発電機は1956年10月に運転開始されている。また、2019年以降、施設の大規模な修理と拡張が行われた。すなわち、ウクライナはこのダムに多額の資金を投入していることになる。

「老朽化による破壊」という説が出てきたものの、60年や70年程度でダムが破壊してしまうとしたら、今頃日本各地のダムは大変なことになっているだろう。世界中のあちこちでダムが破壊されるような事態が起こるはずだ。何より、大掛かりな発電施設の改修が行われており、ダムが満水に近い状態であったにせよ、老朽化で破壊されることは考えにくい。完全に可能性を排除できるものではないが。

そうすると、意図的な破壊があったとみるべきで、そうだとするとウクライナ側に動機があったとは考えにくいかなぁ。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    カホフカダムが、200メートルにわたり崩壊したらしい。↓はその映像。
    https://twitter.com/gbrumfiel/status/1665959437981429762

    ウクライナ軍の反攻作戦と関係があるのだろうか? 要観察。

    • 木霊 木霊 より:

      「老朽化で崩壊」なんて話も出てきましたが、タイミング的にちょっと……。
      決定的な話が出てこれば、犯人特定できるんですがね。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    記事に書かれているとおり、ダムへの攻撃は「国際条約によって」禁止されているわけですが。
    紙の証文など、屁の突っ張りにもならないことが証明されました。
    それも、戦時の国際条約としてはほぼ最上位のジュネーヴ条約が、です。
    ※ジュネーヴ条約にも、
     ・主に捕虜や傷病兵に関する、1864年締結のジュネーヴ条約(赤十字条約)
     ・上記を追補する、ジュネーヴ諸条約
     ・これらと全く別の、インドシナ休戦協定、ラオス中立協定に関するジュネーヴ協定
    の三つがあることを、今ググって知りました。今回の本題は二番目ですね。

    戦術戦略的にどんな目的があってどんなメリット得るために誰が行ったのか、現時点で全く不明ですが(目的と行為が一致しないのが戦争ですし)、最上位の国際条約にしてこれですから、一国家の国内法に過ぎない「憲法九条」などナンボのものかと……

    いいかげん、ロシアは常任理事国から強制的に排除すべきですよね。
    それをするための法整備、あるいは別の国際機関の設立が急がれるところですが……
    ※G7で暫定的に「疑似国連軍」組織しちゃっても良いと思います、歴史なんてその程度のものでしかないし。

    • 木霊 木霊 より:

      戦争中ですから、相手の嫌がることは何でもするんでしょうが……。
      ルール無用の国を相手にするのは、リスキーですよね。やったもん勝ちになってしまいますから。

  3. アバター けん より:

    こんにちわ、

    6/6付WP紙によると、6月5日にウ軍による反攻作戦が始まったらしいです。ザポリージャ州では、ウ軍集団が複数のルートで南下を始め、アゾフ海沿岸を目指していると。
    https://www.washingtonpost.com/opinions/2023/06/06/counteroffensive-ukraine-russia-dam-sabotage/

    カホフカ・ダムの決壊は、その最中に発生したため、ヘルソン州左岸(ロシア軍支配地域)へのウ軍侵攻を危惧したロシア軍による破壊工作ではないかという意見が出ているようです

    • 木霊 木霊 より:

      現状では、ウクライナ軍は苦戦している印象ですね。
      南下作戦が成功して、クリミア半島奪還まで行ければ良いんですが。

  4. アバター けん より:

    おはようございます、

    ダム決壊で水浸しとなったヘルソン州の左岸地域では、ロシア軍による住宅地への砲撃が散発的に行なわれているそうです。その理由は、そこの住民たちはウクライナ軍を待っている者たちだから。”ロシア人たち”はすでに安全な後背地やロシア本土に退避しているので、残留者は敵性国民認定らしいです。
    https://novayagazeta.eu/articles/2023/06/08/kherson-region-floods-the-buildings-collapsed-like-houses-of-cards-en

    • 木霊 木霊 より:

      酷い話ですね。
      ただ、情報戦の様相をていしていますから、何処まで信用して良いのかは。

      あ、新しい記事で触れさせて頂きました。

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