世界でも珍しい韓国製武器を大人買い(大量購入)したことで有名になったポーランドだが、興味深いニュースが飛び込んできた。
ポーランド、大きくなる独裁懸念に判事懲戒も勝手に?
プレス:2023.06.01 14:26 修正:2023.06.01 14:26
韓国と緊密な協力関係を構築中のポーランド政治状況が混乱する中、裁判所さえ政争に巻き込まれ懸念を高めている。
~~略~~
結局、500兆ウォンに達するEU資金執行が引き続き問題を引き起こしていれば、韓国に支払わなければならない天文学的額の武器輸入代金はもちろん、関連協力資金執行も壮大に難しい地境に陥る可能性が大きいという点で慎重な歩みが要求される。
韓国メディアより
「ポーランドから、お金払って貰えるの?!」という焦りを韓国メディアが伝えている。杞憂だとは思うが、それでも心配する理由というのはそれなりに根拠があるようだ。
ポーランドの事情
強権化する?ポーランド国家
ポーランドの与党は保守系で、「法と正義(PiS)」という愛国保守政党が政権を握っている。そして、ポーランド大統領はアンジェイ・ドゥダ氏。彼もPiS出身の政治家である。
今年の2月にアメリカ大統領のバイデン氏はポーランドでこんな演説を行っている。
「民主主義は強くなった、独裁者は弱くなった」バイデン氏がポーランドで演説
2023/02/22 23:50
米国のバイデン大統領は21日にポーランドで行った演説で、民主主義陣営の盟主として、ウクライナへの侵略を続けるロシアに対抗する国際包囲網を率いる決意を改めて示した。侵略を自由や民主主義に対する挑戦と位置付け、ウクライナへの支援を先導してきた米国だが、自国民の支持をつなぎとめることも今後の課題となりそうだ。
讀賣新聞より
が、当のポーランドで強権的な政治が行われているので、何というか皮肉な話だね。
ポーランドで50万人デモ 保守与党の強権政治に抗議
2023/6/5 07:32
ポーランドの首都ワルシャワで4日、愛国主義を掲げる保守与党「法と正義(PiS)」による強権的な政治に抗議する大規模なデモが行われた。ポーランド元首相で中道野党「市民プラットフォーム」を率いるトゥスク欧州連合(EU)前大統領が呼びかけ、同党は推計で約50万人が参加したと明らかにした。
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PiSが率いる現政権は、ロシアのウクライナ侵攻後は対ロ強硬姿勢で支持を集めたが、一方でメディア規制や、LGBTなど性的少数者に対する差別的な政策などへの反発が高まっている。
産経新聞より
で、大規模デモが行われて、PiSの政策批判をしたよというニュースがあった。「強権的な政治をしているんだー」という主張なんだけど、その具体的な中身としては、メディア規制やLGBTに対する差別的な政策辺りが問題なんだと。
でもねぇ、PiSってキリスト教民主主義のうちでも特に保守寄りのカトリック右派政党なので、LGBTに対して厳しい態度というのは、仕方のない部分はあるんじゃないかと。
おっと、話が逸れてしまった。
戦後賠償を!
ポーランドのニュースで最近(最近と言っても2019年のことだが)面白いと思ったのがこちら。
ポーランド侵攻から80年、復活するドイツへの戦後賠償要求の動き
2019年9月2日 16:18
第2次世界大戦の口火を切ったナチス・ドイツによるポーランド侵攻から1日で80年を迎えた。だが、ナチスによる爆撃の音は、80年が経過した今も両国の戦後賠償論争の中にこだましている──。
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しかし、2015年のポーランド総選挙でその様相ががらりと変わった。与党となったEU懐疑派の右派政党「法と正義(PiS)」は、EUやドイツとの関係を政治的駆け引きの道具として利用し、また戦後賠償に関する論争も再開させたのだ。
ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は先月、「ポーランドはいまだ適切な補償をドイツから受けていない…第2次大戦でわが国は600万人の国民を失った。大きな補償を受け取った国々よりもその数はずっと多い」と発言していた。
AFPより
いやー、どこかの国と同じようなことを言ってるねぇ。
そりゃ、ポーランドと韓国とは親和性が高いわけだよ。
ポーランド、ドイツに賠償請求へ 第2次大戦の損害約183兆円
2022年9月2日10:15 午前
ポーランド政府は1日、第2次大戦中のナチス・ドイツの侵攻と占領による損害が約6兆2000億ズロチ(約183兆円)に上るとの試算を公表し、ドイツ政府に賠償交渉を求める方針を示した。
ドイツ政府は賠償問題は解決済みだとの立場を示している。
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ドイツ政府は、ポーランドが1953年に賠償請求を放棄したため請求権は消滅したとの立場で、賠償問題は解決済みだと主張している。
ロイターより
構図も、どこかで見たような構図になっているよ。ポーランドが東西ドイツに対する損害賠償請求権を放棄したのは1953年のこと。これは、第二次世界大戦中にソ連に占領されていたポーランドは、ソ連の一部としてポーランド共和国として生まれ変わり、ポーランド東部がソ連に併合される一方で、ドイツ東部がポーランドの一部となる。その課程で、ドイツの戦後賠償問題が議論され、ポーランドは債権放棄に同意している。更に、ワルシャワ条約(1970年)においても、債権放棄が確認されている。
故に、ポーランドが「戦後賠償を貰っていない!」と叫ぶのは無理筋なのである。
最高裁判所法改正案審議が延期
そんなわけで、ポーランドの立ち位置はなんとなく理解頂けたと思うが、そろそろ冒頭のニュースに戻りたい。
ポーランドメディアザファーストニュースは、憲法裁判所裁判官6人が与党である法と正義党(PiS)の核心人事の支持を背負った。仕事(現地時刻)報道した。
しかし、当事者であるプジャイルレプスカは2024年末まで延任できると辞任を拒否、裁判所内の紛争につながっていると付け加えた。これにより、EU(欧州連合)が資金を執行する上で核心的な最高裁判所法改正案審議が延期される結果につながった。
韓国メディアより
冒頭のニュースは、ポーランド与党のPiSが決めた人事を、憲法裁判所の裁判官が拒否したことが発端となっている。
人事の混乱で審議が延期されたようなのだ。コレだけでも、「困った話だ」と思うのだが、これはPiSに対する野党側の批判に繋がった話でもある。裁判所の裁判官は何処の国でも左派が多いからね。
で、この影響で、EU資金の引き出しが延期された。
ポーランドは、EU回復基金(Recovery and Resilience Facility)から115億ユーロ(16兆2419億ウォン)の貸出金と239億ユーロ(33兆7676億ウォン)の補助金を含む約354億ユーロ(500兆95億ウォン)を受ける予定だった。
しかし、EC(欧州執行委員会)はポーランドの権威主義的(法治無視)政治行動を理由に支援資金執行を凍結し、特に判事の独立性を大きく毀損する恐れが提起されている最高裁判所判事懲戒機構に対して是正を要求した。
韓国メディアより
このEU回復金という奴は、武漢ウイルス感染が深刻な被害をもたらした欧州において、特に被害の大きかった国に対して財政支援を行う目的で作られた基金であり、総額7500億ユーロ(約92兆円相当)を創設した。
これの引き出しが出来る立場にあったポーランドだったが、今回の騒ぎでこの引き出しを延期されてしまった。
その結果、韓国への支払いも滞るのではないかと。
結局、500兆ウォンに達するEU資金執行が引き続き問題を引き起こしていれば、韓国に支払わなければならない天文学的額の武器輸入代金はもちろん、関連協力資金執行も壮大に難しい地境に陥る可能性が大きいという点で慎重な歩みが要求される。
韓国メディアより
払って貰えるの?という心配は分かるのだが、韓国じゃああるまいし。え?似たもの同士だから踏み倒す可能性もある?
まあ、そりゃそうかも。
コメント
ポーランドが権威主義的というよりも、EU本部がリベラルすぎるのでは?
裁判官の任命・罷免権など、その国の内政管轄事項だと思うけどね。
それはさておき、ポーランドが2兆円近い買い物代金をどう返済するかは謎だったけど、
EU本部からの補助金と低利ローンをアテ込んでいたことがわかってスッキリした気分。
ポーランドが先鋭化している感じは、かなり相対的なものですからねぇ。
今の保守系与党の主張をいろいろ眺めていくと、まあ、妥当というか、ちょっと尖っている程度。EUが左傾化しすぎて、各国の政党は右派が勢力を伸ばす状況にありますから何とも皮肉というか。
ポーランドが補助金を引っ張って、全部兵器につぎ込むというのは、なかなか思い切った考えで、経済につぎ込む考え方はあったと思います。
ただ、結局、ロシアの存在を考えると、そういう選択は取れなかったのでしょうね。
世界中のマスコミが、いまのロシアを権威主義国家と評価している限り、
ポーランドを同様に権威主義的と指すことは違うと思うんですよね。
それなら、具体的に在留ロシア人の生活や権利を制限したバルト三国などは、
EU的には制裁対象にならないのか?
今回の話は、むしろEU本部によるポーランドへの”牽制”なのかもしれないね。
最近のポーランドの対露行動には際限がないようにもみえるので、
EU本部はポーランドをスローダウンさせたいのかもね。
そのうちに、止められた補助金はポーランドに支払われると思います。
ポーランドの過激な軍拡は周辺国に危機感を抱かせるには十分なのかもしれません。
止められた補助金はそのうち支給されることはまず間違いないとは思いますが、支払いが滞ることになると困るのは韓国ですよね。今は外貨が欲しい時ですから。