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ウクライナに引き渡す自衛隊装備品の話

ウクライナニュース
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引き渡しの式典が行われたようだね。

ウクライナへ 陸上自衛隊の車両100台規模提供で引き渡し式

2023年5月24日 17時59分

ウクライナへの支援として、陸上自衛隊が保有するトラックなどが100台規模で提供されることになり、24日、防衛省で引き渡し式が行われました。

NHKニュースより

引き渡し品の詳細について少し説明していきたい。

武器輸出三原則の幻想

ウクライナ支援品

さて、今回の岸田氏の英断の1つに、自衛隊装備品の引き渡しがある。

岸田総理大臣は、今月21日にウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、追加の支援として、自衛隊が保有する10人乗りのトラック「高機動車」や、がれき処理の対応にあたる「資材運搬車」などおよそ100台と、非常食およそ3万食を提供する方針を伝えました。

NHKニュースより

詳しい話が書かれていないので、防衛省のサイトから引用する。

ウクライナへの自衛隊車両の引き渡し式について

令和5年5月24日

防衛省・自衛隊においては、ウクライナ政府からの要請を踏まえ、自衛隊車両(1/2tトラック、高機動車、資材運搬車)を合計100台規模で今後提供することとしておりますが、本日、このうちの最初の提供となる1/2tトラック2台を展示して、目録を贈呈する式典を防衛省において開催しました。

防衛省のサイトより

1/2tトラック

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ご存じ三菱パジェロの自衛隊仕様が「1/2tトラック」の正体である。当然、製造は三菱自動車が行っているので、民生品というわけだね。

なお、64式対戦車誘導弾を搭載したモデルや、60式106mm無反動方を搭載したモデルも存在する。

高機動車

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こちらはトヨタ(日野自動車)のメガクルーザーの自衛隊仕様で、当然、特殊仕様にはなっているけれども日野自動車が生産を担当する民生品である。

なお、93式近距離地対空誘導弾や、96式多目的誘導弾システムなどを搭載したバージョンが存在する。

資材運搬車

資材運搬車

製作は産業機械メーカーの諸岡で、民間向けの不整地運搬車を自衛隊仕様にしたもので、こちらも民生品である。

当然ながら、12.7mm重機関銃を備え付けて対空戦闘に対応出来るモデルが存在する。また、ラインメタル37mm砲を搭載したものもあった模様。

この3種類のようだね。

これらのチョイスは悪くはないと思う。兵器に改造されるかどうかは知らないが、戦争において兵站は重要であるし、復興に向けても不正地走破性の高い車は歓迎されるだろう。あと、「非常食およそ3万食」だが、既に送られた分が随分と歓迎されたようで、今回はその追加ということらしい。自衛隊の糧食は世界的に見てもクオリティが高いらしく、前線で美味しく食べられる食料はとても貴重なんだそうな。

反対するメディア

なお、当然のようにこうした動きに対して、事前に口出ししているメディアがあった。そう、東京新聞である。

<社説>殺傷武器の輸出 平和国家の信頼損ねる

2023年5月2日 07時07分

自民、公明両党が防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を見直すための協議を始めた。政府・自民党は殺傷能力を持つ武器の輸出解禁を目指すが、武器輸出を厳しく自制してきた平和国家の歩みを止めてはならない。

東京新聞より

平和国家の歩みねぇ。武器輸出を厳しく自制したら、どうして平和国家になるのかはさっぱり分からない。

我が国としては、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念及びこれまでの平和国家としての歩みを堅持しつつ、防衛装備移転三原則に基づき防衛装備の海外移転の管理を行っています。主な内容は以下のとおりです。

防衛省のサイトより
  1. 移転を禁止する場合の明確化(第一原則)
  2. 移転を認め得る場合の限定並びに厳格審査及び情報公開(第二原則)
  3. 目的外使用及び第三国移転に係る適正管理の確保(第三原則)

一応、お堅いお題目が並んでいるけれども、寧ろ、「どうやって使っているか」を明確化して貰えるなら、殺傷兵器を輸出しても問題あるまい。これで非殺傷装備に限定する理由がよく分からない。

武器輸出三原則の現実

更にここ。

戦後日本は一九六〇〜七〇年代に「武器輸出三原則」を確立し、武器輸出を実質的に禁じてきた。紛争当事国への武器提供は戦闘を助長する恐れが強く、武力による国際紛争の解決を否定した憲法九条と相いれないためだ。

東京新聞より

ちらっと書かれているが、実は昭和35年以前には武器輸出を行ってきた実績がある。昭和20年に敗戦を迎えた後、15年は殺傷装備を輸出したことがあるのだ。つまり「憲法九条と相容れない」というのは真っ赤な嘘。ちなみに、「武力による国際紛争の解決を否定した憲法九条」というのも嘘だね。憲法9条は、「日本国民は」が主語で、「放棄する」と結んでいる。

そして、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあるように、国権の発動たる戦争は放棄しているが、武力紛争の鎮圧や自衛手段の行使は放棄していないと解釈でき、ここで書かれた「国際紛争」とは、日本と他国の関係を意味することは明白なので、武器を輸出した先の国が武器を使用して戦争したからといって、憲法9条と相容れないなんてことはないのだ。そもそも、日本国憲法はその効力は外国に及ばないのだし。

ところが、三木武夫がGHQの陰に怯えて武器輸出三原則を作っちゃった。ただ、ここでは「武器輸出を慎む」ということになっていて、国際紛争を助長させない場合には慎む必要がないという事になっていた。つまり、何でもかんでも武器輸出はダメということではなかったのだ。

武器輸出三原則が出来た時点では、「武器輸出は絶対ダメ」というアホな方針ではなかったのだ。

日本のウクライナ支援は現在、民生品や非殺傷装備などにとどまるが、殺傷性武器の輸出が解禁されれば、日本製武器が戦闘に使われることになる。共同開発した武器が第三国経由で紛争当事国に渡ることも否定できない。

東京新聞より

そもそも、日本製武器が戦闘に使われる等と言っているが、トヨタの作ったピックアップトラックの荷台に機関銃を載せたテクニカルと呼ばれる兵器があちらこちらで使われているではないか。

テクニカルと呼ばれる車両のベースにされるのは、どんな車でも良いのだが、出来るだけ頑丈で壊れにくいのが望ましいらしく、トヨタの車は使われることが多いのだとか。

これだって、立派な武器だ。

この他にも、ドローンに使われるエンジンやカメラも日本製の製品が使われているし、ミサイルにゲーム機のCPU、GPUが使われるという話も有名である(実際に使われたことは確認されていないが)。

何というか、「武器を売らないという」そのポリシーは一体何の役に立つのか?という気がしてならない。

侵略戦争を助長する気はないが

とはいえ、日本から輸出された製品が、ロシアに渡ってウクライナ人を殺傷するとしたら、それは「あってはならないこと」だとは思うのだ。

結局、輸出された製品が「どう使われるのか」が問題であって、輸出してはいけない、という動機付けにするのはちょっとおかしいと思う。

では、何故、メディアは武器輸出三原則を掲げ「武器輸出を止めよ」と迫るのか?

政府が「同志国」と認める途上国に防衛装備品や関連インフラを無償提供する新制度「政府安全保障能力強化支援(OSA)」も地域の緊張を高める恐れがある。

OSAは防衛装備移転三原則に基づいて実施され、政府が念頭に置く東南アジア各国や太平洋島しょ国などに殺傷性武器を輸出すれば、中国に挑発と受け取られる可能性があるからだ。

東京新聞より

ここに東京新聞の本音がある。

支那が怖いのだ。「支那様の不利益になるようなことはいたしません」というのが、彼らのポリシーであり、別に、人道がどうとかいう積もりは全くないのだ。

「地域の緊張を高める虞がある」だぁ?その緊張を高めているのは、支那ではないか。バカも休み休み言えよ。

寧ろ、相互主義の観点からすれば、いざという時に武器の融通をしていないことが、外国からの支援を頂けない結果に繋がる可能性がある。いつまでも駄々をこねて「武器は輸出しない」では通用しないのだ。そういう意味では、岸田内閣は平和国家への道をようやく歩み始めたのである。

コメント

  1. アバター 砂漠の男 より:

    今晩は、

    特にコメントらしいコメントではないのだけれど、いまウクライナ側で戦っている日本人志願兵(元自衛官)のGangsta氏が「なぜウクライナで戦っているのか?」と質問され、「いま日本人が他国のために戦っている事実が、日本の未来のために必要だから」と答えていたことが強く印象に残っている。

    万が一に備えるならば、普段のつながりこそ大事だということだろうね。

    • 木霊 木霊 より:

      Gangsta氏はTwitterでも活躍されているみたいですね。
      「日本の未来のため」というのはなかなかくるものがありますが、そういうことなのでしょう。

  2. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。

    ふと、ロシアの漁船が北海道や新潟(だけではないはずだけど)から持って帰っている中古車を片っ端から召し上げて、テクニカルとしてウクライナに回せば、って思っちゃいました。

    地味だけど、極東経済に効くかも……(ロシアの民意に訴える効果はあるかと)

    • 木霊 木霊 より:

      ロシアへの中古車販売は旺盛なようで。
      テクニカルになって出てくるかどうかは知りませんが、ロシアも兵器調達には苦労しているようですから、冗談ではなく出てくるのかも。
      ロシアとの貿易を続けていることは、プラスにはならないのでしょうけれど、止めるのも影響が大きいということなんでしょうかね。

  3. アバター 河太郎 より:

    日本車のエンジンは優秀ですね。盗賊団が集めたハイエースのエンジンが、エチオピア海賊の襲撃ボートに搭載されてる事は、警視庁がレーザー切断機などを持っている先端町工場に「怪しい仕事は受けないでね」と頼んで回ってる事から解ります。んで、木霊様が言う通り、自動車だぅて日本のピックアップは、機銃架をつけるだけでウエポンになる。だいたいステルス機のステルス素材って、ゴルフ用品メーカーの20世紀の発明から始まってる。民需品の開発から軍事応用が普通な流れになっていて、言い出したらキリがないですよね。
    自衛隊が直接参加しなくても、在日米軍基地があるだけで、米国と紛争する国による日本攻撃は(国際法で)合法です。
    じゃぁ米軍基地を無くせというなら、その後の防衛はどうするの?となる。
    そこきちんと答えないでないすか共産党とかはさ。はっきり言って、「非武装中立」とか言っていた御花畑が老害となって残っていて、それが高齢化社会な為に、想像以上の弊害を産んでいる想うのですよ。非現実的な非武装中立論を唱えていた世代が死に絶えるまではリアルな国防論はムリなのかなぁ。正直、私は国賊と言われるかも知れませんが、尖閣を中国に奪わらたら良いと想うてます。
    それぐらいブン殴られないと、この国の御花畑を黙らせる事はできないから。そのくらいの衝撃を受けた方が良いと。
    この国は種子島に伝来した後の半世紀で全欧州より高性能で大量の火縄銃を開発保有した国であり、鎖国から30年ちょいでロシア帝国を破った国です。殴られてショックを受ければ、その後は凄い勢いでリアルに適応すると想うですね。

    • 木霊 木霊 より:

      なかなか過激ですが、黒船が来ないと日本は開国出来ない(軍隊を持てない)かも知れませんね。

      日本共産党は滅びそうで未だ未だ生き残りの多い政党です。国政に爪痕を残せない状況にまで追い込まれれば良いのですが、そういえば社民党も未だ生き残りがいましたっけ。
      ショック療法ならば、安倍晋三が暗殺されるので十分だったと思うのですが、お代わりで岸田氏まで暗殺されそうになって。それでも未だ足りないんですかねぇ。どう考えても、「政治的な意図」はあったと思うんですが。