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「脱糞民主党」と書いて訴えられるネット民

報道
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呆れた話ではあるが、この話は色々とおかしい部分もあるようだ。

これは臭い!名古屋「脱糞民主党事件」が刑事告訴に発展した「新たな展開」

2023年5月24日 11:25

立憲民主党の愛知県議らが5月、名古屋市内の高級焼肉店で会食した際、人糞を放置した「事件」が、新たな展開を迎えている。ネット上に「脱糞民主党」と書き込んだ人物が、立憲民主党から「名誉棄損」だとして刑事告訴されているのだ。

Asagei plusより

流石に大手メディアでこのネタを扱っているところはなく、週刊誌レベルが扱う程度なんだが、何とも香ばしい話だ。当然、この記事は立憲民主党の名誉を毀損する目的ではなく、一体何が起こったのか?ということを公益性に鑑みて詳らかにする目的であることを、先ずはお断りしておく。

名誉毀損のスラップ訴訟

人糞報道

事件の発端は、週刊誌報道だった。

「このクソッタレが!」名古屋の高級焼肉店個室で“人糞”放置事件が発生 県議らの会食後に一体何が?《店のオーナーが“憤怒の告発”》

2022/05/30

「このクソッタレが!」

被害者ならば、思わずそう叫ばずにはいられないほどの“汚らしい”手口の事件が起こったのは5月8日、愛知県名古屋市でのことだった――。

立憲民主党の愛知県議らの会食がおこなわれた高級焼肉店の、議員が利用した個室に“人糞”が放置されるという前代未聞の“汚物事件”が起きたことが文春オンラインの取材でわかった。同店店主は既に愛知県警に被害届を提出し、現在警察が器物破損の容疑で慎重な捜査をおこなっているという。

文春オンラインより

選挙前のこのニュースにネットは「最低でも店外」などと大いに盛り上がったのだが、あくまで疑惑の段階での週刊誌報道であった。

2022年5月30日付の「文春オンライン」における立憲民主党愛知県連所属議員に関する記事について

当県連として、当日会食に参加した関係者全員に聴取したところ、記事中の「事件」に関わった事実はありませんでした。もとより、あるはずもありません。

お店からは被害届が出されており、当県連も真相究明に向けた徹底的な捜査を求めます。

2022年5月31日

立憲民主党愛知県総支部連合会

幹事長 塚本 久

―――2022.05.31付 立憲民主党愛知県総支部連合会HPより

翌日、立憲民主党愛知県総支部連合会は「事実無根だ!」というような声明をサイトに掲載したのだけれど、本当に関係者全員に聴取したのかもよく分からないし、文春オンラインで報じられたように折り菓子を持って「謝罪」に行くのもおかしい。

「“それ”はすぐに片付け、翌日にはプロの清掃業者を呼びました。A県議やB市議にこの件を電話で伝えると半信半疑の様子でした。仕方ないので、LINEで画像を送ると『なら、まずは謝らないと』と言って、A氏とB氏が2人で折り菓子を持って事務所に謝罪にきたのです」

「まずは謝罪というのは、順番が違うと思ったんです。私は謝罪よりも何でこんな状況になったのか原因を知りたかった。もし持病など、やむにやまれぬ事情があったのなら、別に取り立てて問題にする話でもないですしね。しかし、事務所でA県議とB市議と応対したものによると、2人は原因については『なぜこうなったのかわからない』『自分たちではない』というばかりだったそうです。

文春オンラインより

その点に関しては文春オンラインも同様の趣旨の指摘をしている。そもそも、酔っていたにせよ、ソレを放置してしれっと帰ることが信じられないし、気がつかないということもおかしい。

だが、店側はソレを見つけて、警察にまで届けたのだから、事件は起こったのである。問題は、立憲民主党議員やその関係者が関与していたかまでは不明な点だが、報道された内容を見る限りは極めて疑わしい立場にあると言える。

ネットでお祭り騒ぎに

当然ながら、ネットでも大騒ぎになるのでGoogleで「民主党」を検索しても「もしかして”脱糞民主党”」などと表示される始末であった。

img

でまあ、Twitterで悪のりした一人がこんなTweetをしてしまった。このパンパカ工務店さん、色々な時事ネタ画像を作ることでも有名な方なのだが、立憲民主党の議員が風刺画の題材にされることも少なくない。

ちょっと最近だとこんなのもある。例の事件に関するものだが、なかなかユニークだよね。

名誉毀損で訴える

ともあれ、立憲民主党の議員は、パンパカ工務店さんのTweetを問題視し、なんと、プロバイダ開示請求を出して、これが認められたという事らしい。

「排泄物放置事件」めぐり立憲民主党を揶揄、ネット投稿者の情報開示命じる…東京地裁

2023年03月23日 18時10分

Twitterなどに書き込まれた内容が名誉毀損にあたるとして、立憲民主党(泉健太代表)が起こした裁判で、東京地裁(長尾崇裁判官)は3月23日、権利侵害を認めて、投稿者の情報開示をプロバイダに命じる判決を言い渡した。

~~略~~

長尾裁判官は、問題とされた投稿が「立憲民主党の愛知県議会議員が焼肉屋のお座敷席に排泄物を放置したまま店員にこれを告げることなく退店してしまった事実を摘示するもの」と指摘。

そのうえで、このような記載やロゴも党の社会的評価を低下させることは明らかだとした。

弁護士ドットコムより

裁判所の判断だが、東京地裁が「権利侵害を認め」て、「投稿者の情報開示をプロバイダに命じる」というもの。

なお、問題とされた投稿について、「立憲民主党の愛知県議会議員が焼肉屋のお座敷席に排泄物を放置したまま店員にこれを告げることなく退店してしまった事実を摘示するもの」と指摘しているのだが、これって、事実認定をしたってことかな。

少なくとも、裁判長は「アレ放置が事実ではない」という主張を認めてはいないようだ。おそらくは真偽不明状態であるという認識なのだろう。

実際に店から被害届が警察に出されて、捜査が行われたという事実はあるのだし。

名誉毀損って?

ところで、問題とされている名誉毀損は刑法230条に規定される罪状で、事実を摘示し、公然と、人の社会的評価を低下させた場合に成立する。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処する

なお、公共の利害に関する内容や公益を図る目的があった場合、真実相当性があれば違法性が阻却されることになっていて、裁判所は「その範囲を超えている」という判断であったようだ。

つまり、事実を書いたとしても、名誉毀損は適用されると。

だが、これを訴えるのは公党である。名誉毀損は法人にも適用し得るという判断がなされていて、法人ないし権利能力のない社団、財団であっても名誉毀損は成立し得るという判決が出されてはいるのだが、政党はわざわざ法人格付与法と呼ばれる法律で、政党助成金を受け取りが可能なように法人格を付与されている。

特別法の設定で法人が認定され、その法目的が政党助成金の付与にある以上は、通常は「法人」として扱わないと言うことを意味する。

そうすると、今回の名誉毀損の対象になるのか?という疑問が出る。

裁判ではその点について争っていないので、或いは法人認定されているという理解として話を進めたい。

公党が名誉毀損で訴える衝撃

立憲民主党は、個人に対して「訴えるぞ」と脅す党員が多数所属する政党として知られているが、有名なのは小西氏だ。

有名な個人だけでなく、氏名が不明なTwitter民にも訴えるスタンスを示している。

こういうのをスラップ訴訟と言うのだが、立憲民主党はこれが得意な議員が多い印象である。

ツイッターの「デマ投稿」認定せず 立民・石垣議員が敗訴 東京地裁

2021/10/21 20:34

立憲民主党の石垣のりこ参院議員(宮城選挙区)が、自身が安倍晋三首相(当時)を中傷する内容をツイッターに書き込んでいたとの虚偽の投稿をされたとして、投稿者の情報開示を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。大浜寿美裁判官は「(投稿が)何者かによって加工されたものであると認定するのは困難」として、請求を棄却した。

産経新聞より

何というか、残念な話と言うよりは、民主主義の危機を覚える。もちろん、Twitterに関わらず、ネット空間に流言飛語や他人を貶すような言論をばらまくことを「言論の自由」とは言わないし、言うべきではない。

しかし、公党の立場で国民を訴える、それも事実に基づいた発言であるにもかかわらず、言論を封殺するために訴えたというのは理解し難い。

そして、この手の裁判を起こす場合には、それなりに費用を必要とする上に、勝っても旨みがない。そんなことは立憲民主党も分かっているので、見せしめの側面が強いのだろうね。

ネットリテラシーの問題なのか

他人事ではないのだが

さて、弊ブログでも色々な記事を扱っていて、今回のこの記事とて、おそらくは立憲民主党の逆鱗に触れる可能性はある。もちろん、気をつけてはいるのだが、「じゃあ、何を気をつけるのか」と言うことに関しては少し考えていきたい。

徳永信一弁護士は、次のようにツイートしている。

「安心してください。真実性のある事実(立憲民主党の議員による脱糞放置)に基づく『公正な論評』であり、意見論評の範囲を逸脱するものではありません」

この「パンパカ工務店」の書き込みが事実とすれば、立憲民主党としてみれば、「脱糞民主党」という単語がこれ以上広がるのを阻止するために、あえて訴えたのだろうが、あまりに印象が強烈すぎて、訴えただけでは、臭いが消えることはないようだ。

Asagei plusより

ある弁護士さんは、「真実相当性があり」「公正な論評だ」と指摘はされているが、東京地裁の判断(3月23日)はそうではなかったようだ。

長尾裁判官は、問題とされた投稿が「立憲民主党の愛知県議会議員が焼肉屋のお座敷席に排泄物を放置したまま店員にこれを告げることなく退店してしまった事実を摘示するもの」と指摘。

そのうえで、このような記載やロゴも党の社会的評価を低下させることは明らかだとした。

一方、被告のプロバイダ側は、政党への批判には公共性や公益目的が認められ、表現の自由として最大限尊重されるべきなどと反論していた。

この点において、長尾裁判官は「極めて低俗かつ卑猥な表現の仕方で原告の社会的評価を低下させようとする意図のもとにされていることは明らかであって、各投稿は、その表現の仕方の点において政党に対する表現の自由として最大限に尊重されるべきであるという類いのものではないというべき」として、採用しなかった。

弁護士ドットコムより

今一度、東京地裁の判断を整理してみると、以下のようなことになる。

  • 投稿の内容は、立憲民主党愛知県議会議員が焼肉店に排泄物を放置したまま退店した事実を摘示するもの
  • この事実を記載することは立憲民主党の社会的評価を低下させる
  • 改変したロゴも立憲民主党の社会的評価を低下させる
  • 「政党への批評には公共性や公益目的が認められる」という主張は、「表現の自由として最大限に尊重されるべきであるという類いのもの」ではない

つまり、パンパカ工務店さんのTwitterへの書き込みが、彼がそれなりのインフルエンサーであったがために、事実を拡散することで立憲民主党の社会的評価を低下させたと認定され、公共性や公益目的の範囲を超えているのだ、という認定をしたわけだ。

人を呪わば穴二つ

この判断が妥当であるかについては、幾つか疑念はあるのだが、少なくとも悪意を持って事実を拡散することにはリスクがあることを先ずは指摘しておきたい。「人を呪わば穴二つ」という奴だ。

なお、パンパカ工務店さんに悪意があったと言っているのではない事にご注意願いたい。

個人的な判断で申し訳ないが、多少皮肉が効きすぎているきらいはあるが、風刺の範囲内であったと、そのように言えるTweetだったと思うし、パンパカ工務店さんが愛知県の方であることを考えると、「なにやってるんだ」という怒りの感情が湧いても無理からぬことだ。

そういう意味で、「極めて低俗かつ卑猥な表現の仕方で原告の社会的評価を低下させようとする意図」が確認出来るかどうかが焦点になるのだが……、「脱糞」は事実であって「低俗かつ卑猥な表現」と言われましても。

寧ろ、原告の社会的評価を低下させたのは原告自身の行動によるもので、そのこと自体を争っていないことから、ちょっと裁判官の主張は無理筋だろう。また、パンパカ工務店がインフルエンサーとして影響力が大きかったにせよ、Twitterのあちこちで同時に似たような書き込みがあったことを考えると、特別社会的評価を低下させるTweetであったと認定する事も困難である。

ロゴの方はちょっと擁護が難しい(苦笑)が、風刺の範囲内ではあると思う。

だとするのであれば、結局の所、争いとなるのはロゴの方が風刺の範囲を超えているか否か、という争いになるのだと思う。

そうすると、結論としては「おそらくセーフ」の案件なのだとは思うが、この程度の事でも目を付けられれば政党から訴えられるリスクが存在するのだということになる(訴訟で負けるという意味ではない)。

そこは、押さえておいた方が良いポイントだろう。

コメント

  1. アバター みみこ より:

    立憲さんの立場は、「疑われた方が疑惑を晴らす義務がある」んでしたよね?
    なので、まずは「疑惑が事実ではない」ことを証明したらいいと思うのですが。
    事実ではないと言っているようですから。
    そうすれば、こんな風刺はできなくなるわけで。
    事実ではないと証明できたら、面白がって拡散する方が世間に白い目で見られることでしょう。
    (つい、つけてしまうwwwwww)

    • 木霊 木霊 より:

      今回のこれの恐ろしいところは、一般市民も無関係ではないという事なんですよね。
      沸点の低い方々のようですから、風刺だったにせよ、とにかく潰せというスタンスのようにも見受けられます。

      「疑惑を持たれたら証明しろ」とは、良くもまあ言ったもので。
      頑張って証明してくれることでしょう。

      • アバター 匿名 より:

        リベラルを自称する人々は、自身が持つ特権を侵されると激怒して見境が無くなります。
        疑惑をかける特権は、野党の特権なのでしょう。

  2. アバター タロウ より:

    民主党の宴会後に糞が放置されていた。ということは事実認定されたわけです。つまり、焼肉屋で脱糞する人が居る党である。訴える前にやらなければいい。焼肉屋にはトイレあるでしょう。

    • 木霊 木霊 より:

      少なくとも裁判所は否定していないようですね。
      焼肉店は客商売ですから訴えないでしょうが、損害賠償くらいはして貰いたいかも知れませんね。

      • アバター 団塊 より:

        >焼肉店は客商売ですから訴えないでしょうが、

         脱糞した団体(=党)を訴えないという毅然とした対応しないでいて、スシローはまだましだったと言われるような状況にならなきゃ良いですけどね!
         ネットにあった半島人が入居したどこかのアパートのように便器の横に脱糞・廊下に脱糞とか…は、まだましで
         裁判所が立憲民主党焼肉店脱糞宴会を事実認定したうえで
         裁判所が焼肉店宴会場で脱糞した立憲民主党の名誉=焼肉店宴会場で飲み食いしながら脱糞した名誉を護ってくれた
         焼肉店宴会場脱糞立憲民主党勝訴!
         焼肉店宴会場脱糞は合法だ…と飲み食い脱糞だらけの焼肉店宴会場…なんてことにならなきゃいいですけどね。

        • 木霊 木霊 より:

          外食テロは、本来であれば毅然とした対応をすることが望ましいのですが、「客商売だから」というのは、高級焼肉店で「よくご利用になる政治家」だからこそなんでしょうね(注:そのように分析していたのは文春)。
          証拠物件も水に流してしまったので、遺伝子レベルでの特定も難しい。
          下手をうったものです。

  3. アバター 七面鳥 より:

    こんにちは。
    御厨さと美さんの「NORA」の中に、独裁政権下のヨーロッパ連合で、ちょっと昼休みして政権批判してた男達が特高警察的な連中に引っ張られるシーンや、「裂けたパスポート」にも、クーデター寸前の独裁政権下で取材していた主人公の前で、(真偽不明の)反政府の名目で子供が射殺される、なんてシーンが出てきます。
    御厨氏は東大抗争とか知っている世代なので余計にそういうところに敏感だったのだと思いますが、民主党のやっている事は突き詰めるとそういう事ですよね。
    怖ろしいのは、彼らにその自覚がないこと、「人の振り見て我が身を直す」ではなく「人の振り攻め我が身は可愛い」な事だと思います。
    結局、彼らは活動家、アジテーターであって、政治には一番向かない人種なのだと。

    • 木霊 木霊 より:

      こんにちは。
      民主主義って言っても、結局、人権を守れるか、とか、国益を守れるかとか、そういう話は属人的な話になっちゃうんですよね。
      活動家の方々は、およそ民主主義に向かない方々のように思えますが、心に棚を作って他人を批難することが生きがいなんでしょう。