スポンサーリンク

LGBT法案を巡る誤解

政治
この記事は約10分で読めます。

なんというか、バカバカしい話になってきたな。

LGBT法案の自民修正 「否定すべきでない」公明・山口代表が言及

2023年5月11日 0時13分

公明党の山口那津男代表は9日の記者会見で、自民党が「LGBT理解増進法案」の文言を修正して国会提出を検討していることについて、「法制的な意味が変わらない範疇で文言をいろいろと検討することは否定すべきものではない」と、一定の理解を示した。

朝日新聞より

公明党がまた余計な動きをしているが、邪魔だけはしないで欲しい。

今、必要なの?

獅子身中の虫

公明党も与党にいて邪魔することの多い厄介な存在だが、自民党の中にもおかしな議員が多いのは厄介だ。特に最近問題なのは、稲田氏だ。

自民稲田氏「LGBT法案、サミット前に成立を」

2023/4/20 18:28

LGBTなど性的少数者の課題解決を目指す超党派の議員連盟は20日、国会内で役員会を開いた。会長代理を務める自民党の稲田朋美元防衛相はあいさつで、性的少数者への理解増進法案について「5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)までに成立させたい」と重ねて強調した。

産経新聞より

稲田氏は一体何をこんなに急いでいるのだろうか?

LGBTQ理解に批判4000件、サミット目前に動けぬ自民・進まぬ議論

2023年3月29日 8:30 JST

自民党の稲田朋美議員の選挙区で落選運動が展開されたのは2年前。LGBTQなど性的少数者への理解を深める法案作成に奔走した後のことだ。主要7カ国(G7)広島サミットを前に国内外から改めて同法案の成立を求める声が上がる中、稲田氏が受けたバッシングの数々は同党内での議論を停滞させている。

「1ミリも進んでいないんです」ー。2021年に超党派の議員連盟で性的少数者に対する「理解増進法」作成の自民党責任者を務めた稲田氏は23日のインタビューで、膠着している党内議論にいら立ちを見せた。今年新たに組織した議員連盟は2月15日に総会を開いたが、次回の開催見通しすら立っていない。

Bloombergより

何か、議論が前に進んでいないことに怒りを感じているらしい稲田氏だが、議論が進むも何も、おかしいんだよね。

中身をしっかり議論すべきところを「進んでいない」なら未だ分かるのだが、自民党内で揉めているのは「差別」の定義や「性自認」を含むかという根本的な部分で、そりゃ前に進みようがない。

メディアが煽る

しかし、中身の問題をさておき、LGBT法案がないことそのものを問題視する動きはメディアを中心として動いている。

それは、どうやらアメリカの左派の動きに乗せられている感はあるのだが、例えば、この方。

オカシオコルテス米議員、日本のLGBTQ認識はG7に「極めて重大」

2023年2月23日 1:51 JST

訪日中のアレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員(民主、ニューヨーク州)は、5月の主要7カ国(G7)首脳会議(広島サミット)を前に日本が性的少数者(LGBTQ)の権利で前進するよう求めた。

民主党の急進左派とされるオカシオコルテス議員はブルームバーグニュースとのインタビューで、「G7諸国の中で明確に一致する点についてメッセージを打ち出すことは、G7全体として重要だと考える」と発言。「そういう意味で、日本が婚姻の平等だけでなく、LGBTコミュニティー全般の認識で前に進むことは極めて重大だろう」と話した。

G7諸国の中で、同性婚を認めず、LGBTQの権利を法的に保護していないのは日本だけとなっている。

Bloombergより

この方、アメリカ民主党の議員で、その主張はかなり意味不明だ。例えば大増税をしてグリーンニューディール政策の財源にしろとか、MMTに依拠する経済認識だとかもかなり問題だが、環境問題強行派で、電力源を100%再生可能エネルギーへ移行しろという主張をしている人物でもある。要は、かなりの環境過激派なのだ。

そんな彼女は日本に対してLGBT法を作れと要求している。Bloombergも「G7諸国の中で、同性婚を認めず、LGBTQの権利を法的に保護していないのは日本だけ」などとさらっと嘘を書いているね。

世界の同性婚 | EMA日本
現在、同性婚および登録パートナーシップなど同性カップルの権利を保障する制度を持つ国・地域は世界中の約20%の国・地域に及んでいます。(2022年10月時点) 同性婚が認められる国・地域は以下の通りです。 国名 法律施行日 1 オランダ 20...

同性婚を認めているのは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダで、イタリアは登録パートナーシップという制度を認めている。日本には同性婚を認める法制度はないが、同性パートナーシップ制度を各自治体で認めるようになっている(2022年現在で総人口の4割をカバー)。

一方、LGBTの反差別に関する法律があるのはカナダ(ただし、ヘイトスピーチを含む広い範囲での差別禁止)だけで、アメリカは州によっては法規制しているが、連邦政府は法整備していない。イギリス、フランス、ドイツ、イタリアは何らかの法整備がなされているようだね。

ただ……、日本にも憲法14条に「法の下の平等」を謳っていて、法律がないというわけではないんだよね。

これは内閣法制局が出した資料のようだけれど、法律レベルでは特化法は存在していないと説明している。ただし、一般的な差別を禁じる法律に、性的指向に基づいた差別を禁じる旨が4カ国、性自認まで明文化されたのがカナダだとして説明している。

ファクトチェック

なお、「日本ファクトチェックセンター」を名乗るサイトがファクトチェックをしているようだが、それによると「LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ」との認定は誤りのようだ。

「LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ」は不正確(ミスリード)。カナダ以外の国にもLGBT差別を禁じる法律がある【ファクトチェック】(日本ファクトチェックセンター) - Yahoo!ニュース
「LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ」などの言説が拡散していますが不正確(ミスリード)です。実際には、G7各国に「性的指向」「性自認」に基づく差別を禁止する法律があります。

笑えるのは、検証に使った資料が内閣法制局の出した資料であり、日本国内で今検討されているLGBT法案のような特化法の存在について言及すべきところ、どういうわけか「明文化」の方に舵を切ってファクトチェックをしている。

で、判定は「不正確(ミスリード)」だということらしい。

しかし、ミスリードはこの記事の方だから始末が悪い。

内閣法制局の資料を見る限り、日本と同じで「性的指向」「性自認」の両方に○がついていない国はアメリカとドイツ。

アメリカでは2019年時点で28州に「性的指向」や「性自認」に基づいた差別を禁止する法律がなかったが、2020年には連邦最高裁が性的マイノリティであることを理由に解雇することは公民権法に反するという判決を下した。

Yahooニュースより

ところがアメリカにはそんな条文はなくて、判例によって解釈ということになっている。厳密に言うとアメリカは成文法主義ではなく不文法主義(判例法)を採用しているので、判例がでていればOKと言えるが、それは「明文化」されたことにはならない。

ドイツの「一般均等待遇法」では、労働環境や日常生活での「性別」や「性的指向」による差別を禁止している。「性別」は「全ての性別や性自認」を含んでおり、トランスジェンダーやインターセックスを事例に挙げている。

Yahooニュースより

ドイツの方はもっと酷くて、ドイツは成文法主義の国なのだが、一般均等待遇法の解釈事例に載っているから「明文化」されているのだとか。

そうすると、「LGBT特化法はカナダにもない」が正確で、「LGBT差別禁止法があるのはG7でカナダだけ」は不正確というのなら分かるが、あたかも日本以外のG7諸国にはLGBT法があるような記載はミスリードではないか。

むしろ、日本が作ろうとしているのは「世界で1つだけ」の法案らしいしね、稲田氏によると。本当に必要か?

日本ではLGBT法案を真剣に議論している

結局のところ、G7開催にあたって、日本はLGBTの差別を禁止するための法律はなく、しかし憲法14条で禁止しているので問題は無い。そして、必要性については今まさに議論中である、という回答で必要十分である。

LGBT法案、サミット前成立困難 自民修正案に立民反発

2023年05月10日07時11分

LGBTなど性的少数者への理解増進法案は、19~21日の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前の成立が困難な情勢となった。自民党は党内保守派に配慮し、超党派議連がまとめた法案の修正に着手したが、立憲民主党が反発しているためだ。G7はジェンダー平等を掲げており、議長国・日本の姿勢は論争を呼びそうだ。

時事通信より

サミット前成立は困難になって、立憲民主党が自民党案に強硬に反対している構図となっている。

立民 泉代表 “LGBT法案 サミットまでに成立させるべき”

2023年5月9日 17時24分

LGBTの人たちへの理解を増進するための議員立法をめぐり、自民党内で文言を変更する案が示されたことについて、立憲民主党の泉代表は、超党派の議員連盟でまとめた法案を来週のG7広島サミットまでに成立させるべきだという考えを重ねて示しました。

NHKニュースより

そして、反対によって法案成立が困難である主原因にも関わらず、立憲民主党は何故か「サミットまでに成立させろ」と主張する始末だ。

どういうことかを説明するとまたややこしいので、ここでは議論が続いているという認識だけで良いと思うが、日本の法案には深刻な問題があるので、時間をかけて議論すべきだと、僕は考えている。

そもそもサミットの議題は別

大体、G7サミット開催をするにあたって、議題として取り扱うのは「平和」についての話である。

G7広島サミット10日後に開幕 首脳間での討議テーマ 詰めの調整

2023年5月9日 6時59分

G7広島サミットの開幕を10日後に控え、政府は首脳間で討議するテーマについてウクライナ情勢や中国、北朝鮮への対応に加え、核軍縮やコロナ後の世界経済などを取り上げる方向で詰めの調整を進めています。

~~略~~

政府はサミットに向けて、首脳間で討議するテーマについて詰めの調整を進めていて、ウクライナ情勢や、中国、北朝鮮への対応、それに、核軍縮を主要な議題として扱う方針です。

NHKニュースより

ロシア軍がウクライナへ侵攻していることや、支那が台湾有事に対して揺さぶりをかける状況にあって、世界の平和が脅かされ、西側、東側の枠組みが崩れようとしている大混乱の中、経済も減速しようとしていることこそを話し合うのである。

バイデン氏、G7欠席の可能性に言及 債務上限問題を優先

2023年5月10日 9:52

バイデン米大統領は9日、日本で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)に欠席する可能性に言及した。米連邦債務の上限引き上げ問題について「最も重要なことだ」と指摘し「解決するまで、ここにとどまるだろう」と語った。

日本経済新聞より

まあ、アメリカ抜きで話をしても何も決まらない可能性が高いんだが。

そういう意味でも、日本がLGBT法案の成立を急ぐ理由はどこにもない。それを、やたらと拙速にことを運ぼうという人達がいるのは困ったモノである。

そもそも、今回のLBGT法案には、条例の目的と手段を基礎付ける社会的な事実(データ、市民の意識などを含みます)、つまり立法事実がないのである。LGBT問題はメディアによってクローズアップされ、日本のLGBT層の割合は1割に届こうという状況だという調査結果が報じられていて、だから法律が必要だと言っているのだが、今回の法案を成立させた時に、問題がどう解消するかはさっぱり不明である。

「差別をなくそう」とか「差別は許されない」などという法律を作ったところで、何が差別なのか法案に記載されていないのだから、どうしようもないんだよね。理念法だから問題ないという人もいるけれども、だったら憲法14条で問題ないだろうと思うのは僕だけだろうか。少なくとも、急いで作る法律じゃないよ。

追記

問題点を丁寧に説明している記事があったので追記しておきたい。

「百害あって一利なし」島田洋一福井県立大名誉教授

2023/5/10 23:25

国際政治学者で福井県立大名誉教授の島田洋一氏は10日、産経新聞の取材に応じ、LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案について「何が差別に当たるかが明示されていない」と指摘し、法案に否定的な考えを示した。

産経新聞より

「理解増進を図る」とソフトな文言で書かれたこの法案は、中身はずいぶんなクソ法案であり成立しても害を及ぼすだけである。

急いで成立させる必要のある法案は、他に沢山あるのに。

コメント

  1. アバター みみこ より:

    何故急ぐのか。
    法案が成立すると予算がつくそうで、
    新しい「公金チューチューシステム」を狙っているのかもしれません。
    「福祉関係」は、いろいろ周囲の目が厳しくなってますものね。
    差別の具体例を明記しなければ、なんだかんだと(因縁つけて)お金にできそう、か。、
    或いは具体例を示したら反対が増えそう、なのかな。
    そもそもキリスト教国でない日本は、LGBTに関して欧米諸国よりずっと寛容だったはず。
    江戸時代に「ゲ○バー」のような存在があった国なわけで。
    そんな法案が必要なのかは疑問です。

    • 木霊 木霊 より:

      女性関連予算関係は岸田政権が甘いので、たくさんつけて貰えますからね。狙い目なのかもしれません。
      結局、colabo問題はメディアにも殆ど取り上げられずに鎮静化しましたし、その取り巻き団体は話題にすら上りません。
      当然ながら、色々糸を引いている輩はいるのでしょう。

  2. アバター 太郎 より:

    色々さわいで女子トイレが無くなるという誰にとっても不便な結果だけが増えている不毛な議論だ。

    • 木霊 木霊 より:

      あれ、どうしてあんな結論になっちゃうのでしょうかね。
      女子トイレをなくせば解決!って、何というか短絡的というか。

  3. アバター けん より:

    おはようございます、

    まず、迷惑至極な法案ですね。
    昨日、岸田首相が森まさ子参院議員をLGBT担当特命大臣に任命する方針との報道がありました。G7前に強行突破でしょうか、それとも「前向きに検討しています」でしょうか。
    もしこの法案がなんであれ法律化すると、岸田政権は大多数の国民の支持を失うと思います。それでもやるんでしょうか。

    • 木霊 木霊 より:

      岸田氏は押し切るつもりのようですが、最大限抵抗したいと思います。
      やれることは殆どありませんが。

  4. アバター 七面鳥 より:

    「LGBTが差別されない法案」≒「LGBT以外が差別される法案」
    ですからね。
    これは、法案じゃなくて、人々の意識の問題であり。
    そもそも、子孫繁栄と繁殖を旨とする雌雄異性体の生物として、一般的ではない状態である事を、精神性、社会性でどう位置づけるかという、答えが出るわけがない問題なのだと認識してます。

    まあ、「本当のLGBT」の人も、苦々しく思っているようですが>政治問題化したがる圧力団体

    • 木霊 木霊 より:

      「LGBT理解増進法案」という理念法ですから、「あってもなくても」と思う人は多いのでしょう。
      ただ、この話の根っこにあるのは利権構造の創出です。

      差別があってはならない、というのは当然の話なんですが、法整備をするにあたって「何が差別か」を定義しなければ話になりません。