なにそれ、と思ったのだが、本当に「ブルーカーボーン」という言葉があるようだ。カーボンならブラックに決まっているだろ!
関心高まる”ブルーカーボン” 脱炭素で漁業者・漁村の復活を
2023年03月16日 (木)
問題となっている地球温暖化を防ぐために、海が注目されています。しかも、海を活用して温暖化対策を進めると、漁業者や沿岸地域も元気になるという新しい仕組みも生まれています。その内容について、詳しくお伝えします。
NHKニュースより
日本秘密結社のニュースは、いつもトンチンカンである。
この「ブルーカーボン」という話も意味がよく分からない。
本日は、そんな言葉遊びは止めようね、というお話である。
言葉遊びは止めるべき
ブルーカーボーンって何?
概念としてのブルーカーボーンというのは、海の生き物に取り込まれた炭素のことを指すようだ。

……は?
2009年に国連環境計画の報告書において、海洋生態系に取り込まれた炭素が「ブルーカーボン」と命名され、地球温暖化対策としての吸収源の新しい選択肢として提示され、世界的に注目されている。
我が国においても、財団法人等において学識経験者、関係団体等で構成される「ブルーカーボン研究会」が2017年2月に設立され、検討・研究が進められており、ブルーカーボンの有用性が認められるとともに、CO2吸収量の試算結果も公表されている。
国土交通省のサイトより
ええと、国土交通省のサイトにもうちょっと詳しい記載があった。どうやら、「国連環境計画の報告書」に、海洋生態系に取り込まれた炭素を「ブルーカーボン」と名付けようと決め、その提議に従っているようだ。
しかし、海洋生態系に取り込まれた炭素というのはまた乱暴な話である。
海洋中の二酸化炭素蓄積量
海の中に炭素が取り込まれるという話は、比較的知られた話である。
産業革命(1750年ごろ)以降、大気中の二酸化炭素濃度は年々増加しています。大気と海洋が接している海面では、大気と海洋の間で二酸化炭素の交換が行われています。大気中の二酸化炭素の増加に伴って、海水に溶け込む量が増えるため海洋表面の二酸化炭素も年々増加しています。海洋中に吸収された二酸化炭素は、海洋の循環や生物活動により深層に運ばれ蓄積されていきます。
現在、海洋は大気中に存在する量の約50倍もの炭素を蓄えています。また、産業活動によって排出された二酸化炭素(炭素重量換算で1年あたり約109億トン炭素)の約4分の1を海洋が吸収しています(IPCC, 2021)。しかしながら、地球温暖化の進行により、海洋の二酸化炭素吸収能力や海洋の循環が変化することが予測されています。大気中の二酸化炭素濃度を左右する海洋の二酸化炭素吸収能力を監視するため、海洋に蓄積された二酸化炭素量を把握することが重要です。
気象庁のサイトより
二酸化炭素は海洋に取り込まれ、海洋生物にももちろん取り込まれていく。ただし、海洋生物に取り込まれる炭素の量よりも海洋中に吸収される二酸化炭素の量の方が多い。
そもそも、「炭素」が海中に取り込まれて固定されるということは、つまり、海洋生物が増えることにも繋がる。海洋資源を採取することは、海中に固定された二酸化炭素を取り出す行為になるのでは無いか?という懸念はあるわけだが、そこはさておこう。
取りあえず、年間25億トン程度(109億トン炭素の約4分の1)の炭素を海洋に取り込んでいるという事実が分かっている。
吸収から排出を差し引いた炭素の量は、陸では1年におよそ19億トンの吸収。一方で海は29億トンの吸収です。二酸化炭素を吸収しているのは、森林という印象が強いかもしれませんが、規模としては海のほうが多いんです。
NHKニュースより
その点に関してはNHKニュースでも触れられている。数字としても似たような数字が出ている。
地球上の29%が陸地
ただ、海の二酸化炭素吸収率が良いか?という点に関しては、少々疑問だ。何故ならば、地球上の29%が陸地だが、逆に言えば71%は海なのである。つまり、地球の表面の7割が海なのだから、炭素吸収割合が19:29で海の方が多いと言われても、それって効率が良いの?とは思ってしまう。
もちろん、海の方が炭素吸収割合が高いのだから、海に頑張って貰うという発想が悪いとは言わない。でもねぇ。
海はまず二酸化炭素が海水に溶けます。そのうえで、海中の植物などの生き物が水に溶けた二酸化炭素を吸収します。
このように海の生き物に取り込まれた炭素は、特別に「ブルーカーボン」と呼ばれています。今から14年前の2009年、国連の機関が初めてレポートを出して、一躍、脚光を浴びました。
~~略~~
アマモやコンブなどは、ものすごく成長が早いという特徴があります。大量の二酸化炭素を吸収するので、一部は分解されるとしても、たまる分も多くなります。
【漁村の衰退で藻場が危機に】 であるならば、藻場をもっと増やせばいいのではないか、と感じると思います。ところが、日本の沿岸ではむしろ減ってしまっています。
「磯焼け」という現象が起きているからです。磯焼けは「海の砂漠化」と言われています。
NHKニュースより
記事から分かることは、海洋面積のうち、ブルーカーボーンと呼ばれる二酸化炭素吸収の役割を果たす藻類の繁殖できる場所は、陸地の周囲と限られていることだ。
つまり、海で効率的に二酸化炭素吸収というのは、日本の周囲でということであればそれなりに説得力はあっても、世界的に見ると説得力は薄い。
にもかかわらず、漁業者や漁村を支える新たな仕組みを導入することで、二酸化炭素の吸収の効率化を図ろうということを言っているようだ。
温暖化防止に向けた漁村の役割が大きくなっているにもかかわらず、漁村が衰退している現状。これに対し、ブルーカーボンで資金を得る仕組みをつくって、漁村にうまくお金を回すというアイデアが活用されてきています。
それが「カーボン・クレジット」です。新たに二酸化炭素を吸収できた場合、その分を売って、お金を得ることができる仕組みです。
NHKニュースより

実際に、日本政府が認証した「J-クレジット」と呼ばれる制度があって、カーボンの取引を推進しているようではある。
海洋資源を守る観点から保護推進するという点に賛成だが
とはいえ、アマモや昆布などを増やすことを否定する積もりは無いのだ。

マルハニチロなどの一部企業や大学機関がアマモの育成に力を入れているが、こうした取り組みを進めることはメリットがあると思う。

海の環境の改善というのは、海洋資源を守る観点からも必要なんだと思う。
その研究や運動の原資調達のために「ブルーカーボーン」なる言葉をでっち上げて利用したいと言うことなのかも知れないが(注:「でっち上げて」と言ったけれど、上述したように「ブルーカーボーン」は国連の機関で使われた言葉らしいのだが)、言葉遊びで金を集めるのなら詐欺と同じである。止めるべきだ。
え?ブルー水素とかグリーン水素もある?

あれも、どうかと思うんだよね。
漁業は資源管理を徹底することで守るべき
日本において漁業が廃れつつあるのは、将来性を見越せないという点が問題視されていることだ。
我が国の漁業は、国民に対して水産物を安定的に供給するとともに、水産業の発展や漁村の振興に寄与するという極めて重要な役割を担っています。しかし、我が国の漁業生産量は、長期的な減少傾向にあり、国民に対して水産物を安定的に供給していくためには、この減少傾向に歯止めをかける必要があります。
漁業生産量の減少については、様々な要因が考えられますが、適切な資源管理を行い、水産資源を維持できていれば、その減少を防止・緩和できたと考えられるものが多くあります。
資源管理に関する従来の公的な規制は、船舶の隻数及びトン数の制限と漁具、漁法、漁期等の制限による漁獲能力の管理が主体でした。
しかし、近年の漁獲に係る技術革新により、船舶の隻数、トン数等当たりの漁獲能力が増加し、船舶の隻数、トン数等の制限による管理の手法が限界を迎えつつあり、むしろ、漁獲量そのものの制限に転換しなければ水産資源の持続的な利用の確保が十分になし得ない状況となりました。
このような状況に対応するため、漁業法等の一部を改正する等の法律(平成30年法律第95号。以下「改正法」という。)が成立し、数量管理を基本とする新たな資源管理制度が創設されました。
水産庁のサイトより
流石に水産庁も資源管理の方向に舵を切り始め、不十分ではあるが日本においても資源管理の必要性が認められ、その方向に動きつつある。
資源管理で魚種や漁獲量が決定されるが、漁師の収入も確保される。つまり漁師の絶対数は少なくなっても、安定収入の得られる職業になるということになるわけだ。
その一環としてのアマモ場の育成をやれば良く、仕事としてアマモ場の育成をしていくと言うことになる。その結果、さまざまな種類の魚が捕れるようになれば、安定した漁業収入に繋がるというわけだ。
民間に任せた「ブルーカーボーン」の仕組みを取り入れるより、漁業によって厳しく資源管理していく方が、理にかなった構造を維持できるだろうと思う。
温暖化対策?それって本当に効果あるの?というレベルの話をするよりは、マシだろう。
記事の構成がおかしい
さて、冒頭のニュースに戻って「ブルーカーボーン」の話をしようと思うが、この論説委員の書いている解説記事は構成がおかしい。
- ブルーカーボーンの注目が集まっている
- 海の二酸化炭素吸収量は多い
- ところで漁村が危機に瀕している
- ブルーカーボーン資金を使って、漁村にお金を回そう!
- そうすると二酸化炭素吸収量を海でも増やせる
- 海藻を増やせば二酸化炭素吸収量も増えるね!
- 海藻を原料にして新たなビジネスにしても大丈夫
- 漁村で海藻育成を事業化して、漁業活性化しよう!
まあ、こんな流れになっている。
ところがこの記事の前提は、ブルーカーボーンのシステムが機能して、カーボン・クレジット(日本ではJクレジットが導入済み)によって資金が得られるということになっている。
脱炭素支援株式会社サイトを見ると、「2030年までの制度です、2030年以降については未定です」と説明されている。
ちょっと待てよ!
なんと無責任な。

カーボンプライシングの試みは、始まったばかりで安定的な政策として機能するかは不明である。民間取引という形になっているので、そうそう破綻しないシステムだとは思うが、この流れ、そもそも欧米が「タンソガー」とか言い出したことが発端である。いつ何時掌を返されるか分かったものではない。
いやもう、素直に漁業の資源管理やろうよ。
追記
漁業の資源管理の話で、「成功した」としているのがノルウェー。
ノルウェーと比較すれば日本漁業の問題は浮き彫りに
2022年2月17日
筆者は20年以上、北欧諸国で毎年、水産資源管理を最前線で見て来た経験を踏まえ、2012年5月~15年3月にWEDGE Infinityで「日本の漁業は崖っぷち」を連載。特にノルウェーを中心とする北欧と日本の水産資源管理の違いをご紹介しました。
この度、編集部から連載再開の依頼を受けて連載タイトルも含めて装いも内容も新たに7年ぶりに執筆を再開します。この間、20年に改正漁業法が施行されるという前進がありました。しかしながら、資源評価やTAC(漁獲可能量)の設定、漁船や漁業者に漁獲枠を配分する個別割当制度(IQ他)を始め、科学的根拠に基づく国際的に見て遜色がない水産資源管理は、まさにこれからという段階です。
WedgeONLINEより
日本が取り組み始めたのがTAC(漁獲可能量)の設定なのだが、ノルウェーでは更に個別割当制度(IQ)という段階にまで行っている。
コレが幸せなことかどうかは、実は沢様な政治的背景を含んだ話となるため、何とも言えない部分はあるのだが、少なくとも1つの成功モデルとして水産庁辺りが注目しているのは事実である。
で、日本国内でも実際に資源管理の方で実績を上げたという実例もあって、それがニシンだ。
ニシン 石狩湾の漁港活気 水揚げ回復、資源管理の努力実る
2023年2月16日 05:00
一時は「幻の魚」と呼ばれたニシン。網の目を大きくして小型の魚を取らないなど、漁業者の資源回復の努力が功を奏し、近年の漁獲量は増加傾向にある。
北海道新聞より

とはいっても、かつては100万トン近い漁獲量があったのだから、まだまだ漁獲量回復したとはとても言えない状況ではあるのだけれど、それでもゼロに近い状態から少し回復したのだから、ぎりぎりセーフという感じだ。
マグロにせよサンマにせよホタルイカにせよ、漁獲量が激減している状況なのだけれど、日本近海の漁業管理をすればある程度の漁獲量回復の見込める魚種であれば、積極的にトライしていく価値はあると思うんだ。
ただ、ニシンの例でもそうなんだけど、理解を得るために非常に時間がかかったという実例があるだけに、一筋縄ではいかない話なんだよね。それでもやらない理由は無いので、頑張って欲しい。
コメント
こんにちは。胡散臭い話だなぁ。さすがは日本秘密決社。こいつらよく強引な勧誘に来ますが、録画すると腰砕けになって逃げ出しますよ。末端まで胡散臭い組織ですな。
で、ブルーカーボンね、んなことは「我らをめぐる海」のレイチェル・カーソンすら言ってなかったけど。
資源管理について「漁業を安定収入の仕事にする」という木霊様案には賛成。
ただ根拠となる温暖化≒CO2も、エビデンスないですからね。そもそも本当に長期的な温暖化に進んでいるのかも判明してない。前提が明らかでないので、こんな胡散臭い事を言われましてもねぇ。
やはり日本秘密結社ですわ。
理念からしてちょっと整合性がとれなくなってきていますから、構築し直すべき時期なんでしょう。
もはや、政府広報は別に作る話も出てきていて、そうなると本格的にNHKの存在意義が怪しいですね。
さておき、ブルーカーボーンですが、「ブルー」と付けば何でもOKなのかと。
カーボンプライシングって、言ってみれば実態の無いものに値段を付けようという詐欺のような話です。そこを、公共報道が片棒担ぐような記事を書いてしまうので困ったモノです。
日本秘密結社BSの番組コズミックフロントで、過去に二酸化炭素による海水酸化が多量絶滅の原因に成ったので、現代でも有り得ると放送しています。
日本秘密結社の学習能力の無さは以前から変わりません。
コズミックフロントなる番組、結構、ヤバ目ですね。
NHKスペシャル、昔は「スゲー」って観てたのですが、今やその面影も……。
こんにちは。
・新しい概念をブチ上げて「こぉんなに!お得!」って言い出す詐欺師が、まっとうな計算式や自分が不利になるデータを出すわけがない。
・欧米は、何か不利になると途端に新しい(自分達に有利な)ルール作ってゲームチェンジする常習犯
・そして本邦マスゴミは、それら詐欺師どもに加担する共犯に他ならない
十年以上前だと思いますが、海洋深層水あたりに、大量の二酸化炭素をシャーベット状にして沈めるアイデアが吹聴された事があったと記憶しています。
当時ものすごく「素晴らしいアイデア!」扱いされてましたが、気体を液体に閉じ込めるとか(一応、寒冷で高圧の深海で、ドライアイス状にするみたいではありますが……)、深層海流ってそのうち沿岸部で上がってくるんだよなとか、そっち方面詳しくない当方でも疑問がダースで浮かんできたものです。
大阪の「水から石油作ります!(キリッ)」とか、そもそも木材がCO2吸収するからカロリーゼロ(違 とか、「炭素系の何かを酸化させれば必ずCO2が出る」事を、そして化石燃料は時間と圧力分のエネルギーを蓄えたものである事を見て見ぬふりをしているようにしか思えないのですよね。要するに、口から出任せのその場凌ぎの舌先三寸であるとしか。
だったら、まずはアマゾンと中国とシベリアの森林破壊を何とかしてからものを言えと。
※利権と安保理が怖くて誰も何も言えない(というか言ったら死ぬ(物理)か最低でもおまんまの食い上げ)のだという事も、もう白日の元ですが。
詐欺の手口は、欧米から。
海水からウランを取り出す話もあったり、全固体電池の話があったり、科学技術の進歩も詐欺ぎりぎりのところをうろうろしている感じですが、成功すればブレイクスルーになります。
ですが、科学技術の進歩とは関係の無いところでの、この手の金融工学的な話は百害あって一理なしという事が結構あるように思います。
気をつけなければいけませんね。